憲法のこころを聴く(1) 日本国憲法の〝こころ〟とは

(5)国際社会における努力目標

【正文】
われらは、平和を維持し、
専制と隷従(れいじゅう)、圧迫と偏狭(へんきょう)を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。

【池田訳】
わたしたちは、
平和をまもろうとつとめる国際社会、
この世界から、圧政や隷属(れいぞく)、抑圧や不寛容を
永久になくそうとつとめている国際社会で、
尊敬されるわたしたちになりたいと思います。

平和を失わず4つのことをなくそう

日本国憲法は、国際社会の進み行く道を、一つのことを「なくさない」(preservation)ことと、四つのことを「なくす」(banishment)ことだと考えています。プリザベーション(維持する=なくさない)とバニッシュメント(除去する=なくす)は対(つい)になっています。

「なくさない」のは平和。「なくす」べき四つのことは、専制、隷従、圧迫、偏狭。

難しい言葉が並びましたね。一つずつ解説しましょう。

「専制」はティラニー(tyranny)で、タイラント(tyrant)は暴君のこと。ティラニーとはみんなの意見を聞かずに政治をする独裁政治のことであり、その結果は、みんなが酷(ひど)い目にあうことになるので圧政、暴政、虐政とも訳されます。

「隷従」は、スレイブリー(slavery)で、スレイブ(slave)は奴隷のことです。スレイブリーとは奴隷であること、苦役に服していることを意味します。

「圧迫」は、オプレッション(oppression)で、力で押さえつけること。

「偏狭」とは国語辞典をひくと「かたいじで度量が小さい」と書いてある。了見が狭いということでしょう。なぜこんなことが書いてあるのか、よく分かりませんでした。池田訳を見たら「不寛容」そして英語はイントレランス(intolerance)だと知り、ようやく意味が分かりました。イントレランス(不寛容)の反対はトレランス(寛容)で、宗教の違い、人種の違い、考え方の違いを認めあうということなのです。

以上をまとめるとこうなります。

独裁政治をなくそう、奴隷状態をなくそう、自由を押さえつけるのもやめさせよう、互いの違いを認めあい尊重しあおう。そして、平和な世界をつくろう。これが世界の進む道なのだ。私たちはその道をまっすぐ進もう。

「名誉ある地位」とは、そういう国際社会の進む道を、困難を乗りこえて先頭を切って進むことによって得られるものではないでしょうか。

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