府中町のまちづくりと立地適正化計画 2021年6月議会一般質問

コンパクトシティ+ネットワーク

この2つの危機に対する処方箋として打ち出されているのが、コンパクト+ネットワークです。

人口減少、高齢化、厳しい財政状況、エネルギー・環境等、我が国は様々な制約に直面している。今後ますます厳しくなっていくこれら制約下においても、国民の安全・安心を確保し、社会経済の活力を維持・増進していくためには、限られたインプットから、できるだけ多くのアウトプットを生み出すことが求められる。その鍵は、地域構造を「コンパクト」+「ネットワーク」という考え方でつくり上げ、国全体の「生産性」を高めていくことにある。(「グランドデザイン2050」9頁)

 ここに述べられているように、目的は「国全体の『生産性』を高めていくこと」にあり、住民にとって暮らしやすいまちづくりではありません。

市街地を集約――立地適正化計画

2014年8月、このコンパクトシティ+ネットワークを実現するために都市再生特別措置法が改正され、立地適正化計画の策定が進められていきます。

立地適正化計画の最大のポイントは、居住誘導区域と都市機能誘導区域を設定することにあります。居住誘導区域とは、強制ではないものの、「ここへ住まわれたらどうですか」と誘導する地域であり、都市機能誘導区域とは、医療・福祉・商業等の都市機能を誘導する地域です。現在の市街化区域を絞り込んで、中心に都市機能誘導区域を設定し、そのまわりに居住誘導区域を設定する。

居住誘導区域が想定される区域として「都市機能や居住が集積している都市の中心拠点及び生活拠点並びにその周辺区域」があげられており、この通りであれば、府中町の市街化区域はすべて該当すると思うのですが、「現在の市街化区域全域をそのまま居住誘導区域に設定すべきではない」というのが国交省の方針であり、人の住むところを今より狭くしないといけない。 

今、人が住んでいるところでも、居住誘導区域に指定されなければいずれ住むことができなくなるということです。

府中町の実態にそぐわない

「グランドデザイン2050」が想定している「急激な人口減少」とは次のようなものです。

「我が国は2008年をピークに人口減少局面に入った。合計特殊出生率は、ここ数年若干持ち直しているものの1.43と低水準であり、2050年には人口が1億人を割り込み、約9700万人になると推計されている」

このままいけば現在の人口1億2563万人(2021年1月1日)が2割以上減るということです。しかも、全国均等に減るわけではない。

日本の国土を縦横1㎞のメッシュに分割して推計すると、現在人が住んでいる地域の約6割で人口が半減以下になり、その3分の1(全体の2割)で人が住まなくなる。

実際にそうなるとは思いませんが、国交省はそう言っているわけです。そして、人口が半分以下になるような事態に対応するために「グランドデザイン2050」や処方箋としてのコンパクトシティ+ネットワークが考えられている。

しかし、府中町はどうでしょうか。面積わずか10k㎡、半分近く(43,4%)が山林で、都市的地域をあらわす「人口集中地区」の面積は5.6k㎡。人口密度は9000人/k㎡で、札幌市、仙台市、名古屋市より高く、福岡市と同じくらいです。

先日、国勢調査の速報値(2020年)が発表されましたが、人口51,193人、21,673世帯(住民基本台帳では6月1日現在人口52,589人 23,492世帯)です。大きなマンションが3つ出来ましたが、マンションだけでなく、一戸建てや数戸から10数戸の集合住宅が次々建設されています。

社人研(国立社会保障・人口問題研究所)の推計でも2045年の人口は47,643人で、2000年との比較で6%減、2020年との比較でも7%減です。人口が6割、7割も減ると推計された自治体もあるなか、わずかしか人口が減らない。

「第4次総合計画」において2025年までに53,000人にしようという目標を掲げて町は努力しているわけです。

町域が狭く、人口が多く、人口密度が高い。将来的にもあまり人口が減らない。増やそうという努力している。それが府中町です。

そういう府中町が、「急激な人口減少」を前提にした「立地適正化計画」、具体的には市街化地域の縮小を進めていくことは現実的でなく無理があると思います。

そこで伺います。

①すでに十分にコンパクトな府中町に立地適正化計画はそぐわないと思いますが、この計画を作るメリットはどのような点にあるのでしょうか。

建設部長 「立地適正化計画」は、平成26(2014)年7月に国が発表しました「国土のグランドデザイン2050 ~対流促進型国土の形成~」の基本戦略のひとつである「コンパクトな拠点とネットワークの構築」の考えのもと、同年8月に都市再生特別措置法の改正により市町村が策定することが可能となった計画です。

本計画は、人口の急激な減少と高齢化を背景として、高齢者や子育て世代にとって、安心で快適な生活環境を実現し、財政面において持続可能な都市経営を可能とするまちづくりを構築するため、医療、福祉施設、商業施設や住居などが、まとまって立地し、住民が公共交通によりこれらの生活利便施設にアクセスできるなど都市全体の構造を見直し、「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」の考えのもと、まちづくりを進めるとしたものです。

また、府中町では、第4次総合計画の策定に併せ、都市計画マスタープランを平成28(2014)年に改訂し、将来の都市構造として、「町の特徴であるコンパクトな都市構造を将来にわたり維持しつつ、都市機能の一層の集約化による魅力的な都市拠点の形成と町内全域から都市拠点へのアクセスを支える公共交通ネットワークの再編・充実を図った集約型都市構造を目指す。」ことを、まちづくりの指針として示しております。

本町においては、「集約型都市構造」への転換については、都市計画マスタープランにおいて方向性を示し、また、関連して令和元年には「府中町地域公共交通網形成計画」を策定し「公共交通ネットワーク」についても、併せて取り組んでいます。

「立地適正化計画」を策定するメリットについてですが、「立地適正化計画」は都市計画マスタープランの高度化版として位置づけられており、医療・福祉サービスや公共交通サービスの充実など他分野を横断する都市全体のマスタープランとされています。

また、昨年9月に改正都市再生特別措置法が施行され、安全なまちづくりのため、立地適正化計画の居住誘導区域内で行う防災対策・安全確保策を定める「防災指針」を作成することとされました。

町といたしましては、長期的な時間軸で将来を見据え、更なる既成市街地での住環境の向上や防災機能の強化を効率的に実施し、まちづくりに関連する施策、事業を適正にマネジメントしていくために、本計画を策定することとしています。

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