府中町のまちづくりと立地適正化計画 2021年6月議会一般質問

《2回目》

二見議員 来年(2022年)度から立地適正化計画の策定に取りかかる予定で、この計画をつくらない場合、まちづくりや防災に関する補助金が得にくくなり、いろいろ支障をきたすことになるという答弁でした。

当町にとって最も影響があるのは、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)や急傾斜地崩壊対策危険区域、地すべり防止区域は原則居住誘導区域に含まないという問題です。

ただいまの答弁で「町の既成市街地の大半が人口密集区域となっており、国の示す災害ハザードのある区域から居住誘導区域への移転は難しい」という認識を示されました。

そして、既成市街地の災害危険区域については、災害対策工事などによって災害警戒区域から外せるようにし、居住誘導区域になるように努力する、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)や浸水想定区域については、居住誘導区域に含めたうえで、防災指針等によって総合的な安全対策を進めていく、そういう方向で国、県と協議・調整を図りたいということでした。大変重要な答弁で、おおいに評価したいと思います。

国交省は、土砂災害特別警戒区域などを居住誘導区域から外すことを徹底するよう地方公共団体に対応を強く促す、と言っていますので、負けずに頑張っていただきたい。

4.道州制を見据えて

「平成の合併」の失敗と道州制の頓挫

立地適正化計画は人口減少や自然災害、中心市街地の衰退への対応を理由にしていますが、それ以外にも目的があります。

一つは「平成の合併」が失敗し、道州制が頓挫したことへの対応です。1999年から市町村合併、いわゆる「平成の合併」が始まり1999年3月に3232あった市町村は2010年3月には1730にまで減りました。①地域づくり・まちづくり、②住民サービスの維持向上、③行財政の効率化を掲げて合併を進めましたが、合併によってかえって地域は衰え、人口が激減した自治体も少なくありません。

市町村合併を進めつつ、国は道州制の導入も計画しました。しかし、全国町村町会から「強制合併につながる道州制には断固反対する」という特別決議がだされ、地方六団体も慎重な意見が強く、計画は頓挫しました。

道州制・市町村合併を見据えて

市町村合併の失敗、道州制への強い反対によって、その後の政府の文書から「道州制」への移行や「合併」を推進するという文言は消えています。しかし、けっして諦めたわけではなく、迂回してを進めようとしている。コンパクトシティ+ネットワークは、その布石なのです。

「グランドデザイン2050」は次のように述べています。

複数の地方都市等がネットワークを活用して一定規模の人口(例:生活の拠点となる人口10万人以上の都市からなる複数の都市圏が、高速交通ネットワーク等により相互に1時間圏内となることによって一体となって形成される概ね人口30万人以上の都市圏)を確保し、行政機能のみならず民間企業や大学、病院等も含め、相互に各種高次都市機能を分担し連携する「高次地方都市連合」を構築する(全国60~70箇所程度、地方中枢拠点都市圏構想等とも連携)。その際、新たな都市圏を設定するに当たっては、都道府県境を越えるなど、従来の行政エリアではなく、交通圏、経済圏など地域住民の実際の生活実態に即したエリアを想定していくことが重要である(20頁)。

このように、新たな「圏域」、「都市圏」づくりが立地適正化計画のねらいの一つにあるわけです。昨年の3月議会で「自治体戦略2040構想」について質問したさい、答弁のなかで総務企画部長が2021年11月に開かれた「全国町村長大会」の特別決議を紹介しました。

新たな圏域行政の推進は、連携やネットワーク化の名のもと、都市部を中心とした行政の集約化・効率化につながることが強く懸念され、周縁部の町村を衰退に追い込む危険性をはらんでいる。……我々が納得できる十分な検証が行われないまま、新たな圏域行政の法制度化が行われるならば、屋上屋を重ねるだけでなく、町村の自治権を大きく損なうものである。我々全国の町村は、このような圏域行政の推進に断固反対する」

圏域行政を進める方策の一つとしてもコンパクトシティ+ネットワークが考えられているわけです。

当面は現在の自治体の枠内でコンパクト化を進めながら、それを広域のネットワークで結び、さらには現在の市町村の枠を超えて広域の都市圏でコンパクトシティ化を進める*1。

どのような規模の都市圏を想定しているのかというと「概ね人口30万人以上」だと言っています。

道州制が提起されたときに、人口30万人の基礎自治体を全国で約300つくるというようなことが言われました。この数と符合するわけです。ということは衆議院の小選挙区とだいたい同じになる。

県内で最も広い小選挙区は第6区です。尾道市、三原市、府中市、三次市、庄原市、世羅町、神石高原町の6市2町。

2020年の人口が約37万人で2045年の社人研推計が約26万人です。面積は3637k㎡で奈良県(3,691k㎡)とほぼ同じ広さ、大阪府や香川県の2倍です。

このような広さと規模でコンパクトシティ+ネットワークを進めるとどうなるのか。

現在の6市2町が2つか3つの人口10万人の都市圏に集約され、それを高速道路で結んで30万人の都市圏にするということです。

そこへ向けて数段階にわたって居住誘導区域が狭められ、「周縁部の町村を衰退に追い込む危険性」――現在の市や町が丸ごと人の住めない、人が住まない地区になる危険性――が現実のものとなります。


*1)「コンパクトシティの効果を高めるためには、同一都市圏を形成する市町村が広域に連携し、効率的な施設配置や、統一的な方針に基づく市街化抑制、災害への対応等に取り組むことが重要である」前掲「都市計画基本問題小委員会中間とりまとめ」12頁

 

 

インフラの節約と住民サービスの切り捨て

中山間地域から大都市に至るまで居住地の集約化、コンパクト化を進めていく、もう一つの要因は「持続可能な都市経営」という名目で「公共投資、行政サービスの効率化」「公共施設の維持管理の合理化」をはかることです。

『国土交通白書』(平成25年度版)には、「除雪や訪問介護等の公的サービスの効率化や公共施設の再配置・集約化等により、財政支出の抑制につながるという財政面での効果」があるとはっきり書いています。

道路の除雪もしなくていいし、遠いところまで訪問介護も行かなくていい。公共施設も減らすことができる。老朽化した上下水道の修繕、更新もしなくていい。道路の維持修繕もコンパクトになったまちの中だけをすればいい。

「グランドデザイン2050」のいう「選択と集中」です。「都市機能誘導区域」「居住誘導区域」を選択し、そこへ財政を集中する。現在であれば、各自治体に選択はまかされています。

しかし、現在の市町村の枠を超えた新たな圏域、都市圏を単位にして「立地適正化」が進められれば、当町にとって不本意な結論を押しつけられる可能性もあります。

そこで伺います。

④複数の市町村にまたがる広域的な立地適正化についてどのようにお考えでしょうか。

都市整備課長 立地適正化計画は、住民に最も身近であり、まちづくりの中核的な担い手である市町村が作成するものとされています。また、複数の市町村で広域都市計画区域が構成されている場合や、広域生活圏・経済圏が形成されている場合などは、当該複数の市町村が共同・連携して計画を作成することが望ましいと、国は、その方針を示しています。

広島県が今年3月に策定しました「都市計画区域マスタープラン」では、広島県が指定している22の都市計画区域について、都市計画区域を越えて強い結びつきある一体的な地域として、「広島圏域」、「備後圏域」、「備北圏域」の3圏域を設定しており、府中町は、広島圈域の中にある「広島圏都市計画区域」に含まれます。

この「広島圏都市計画区域」は、広島市、呉市、大竹市、廿日市の各市の一部と安芸郡四町で構成されています。

都市計画の観点から考えますと、複数市町による計画策定については、「広島圈都市計画区域」、または、「広島圈域」での作成が望ましいと思いますが、既に、広島市を含む了市町は本計画を策定していることのほか、現在、策定中の市町と作成意向を持だない市町があり、現段階では、短期間で各自治体の主体性を取り入れ、一つの計画を策定することは難しいと思われます。

しかしながら、今後、全国的な人口減少化、高齢化社会が一層進んでいく社会での都市づくりにおいては、広域的な立地適正化の取り組みは非常に重要だと考えます。

町といたしましては、その第一として、本町のまちづくりの方向性を示す「立地適正化」について検討してまいりたいと思います。

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