大学院不合格 進学塾講師 再び大学院にチャレンジ

歴史学の研究者をめざし、中村政則先生のいる一橋大学の大学院を受験。4年の時はだめでも、一浪すればなんとかなると思いましたが、2年目も「来ていただかなくて結構です」という返事が来ました(笑)。今にして思えば全く勉強に実が入っていなかった。

研究者になりたいという淡いあこがれはあっても、何を研究したいかということが全くはっきりしていなかったのです。先輩研究者からも「大学院での研究生活をするだけのテーマを持っていないのではないか」と厳しい批判を受けました。

2年続けての不合格。もう心はボロボロでした。

研究者はあきらめることにして、仕事を探しましたが、どれも今ひとつしっくりきません。結局、アルバイトをしていた進学塾で働くことにしました。 進学塾の仕事は面白かったです。授業が分かれば子どもたちの目が輝き、確かな手応えがありました。大学院受験で傷ついた心も回復。しだいに、「おまえは本当にこのままでいいのか」という内なる声が聞こえてきます。

そんなある日、東京神田の岩波ブックセンターで一冊の本を見つけました。渡辺治さんの『現代日本の支配構造分析』(花伝社)です。日本の労働者が、大していい暮らしをしているわけでもないのに、なぜ世の中を変えるという方向に動かないのか。「企業社会」をキーワードにしながら鋭く分析しています。

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納得がいく説明でしたが、では「企業社会」にからめとられた労働者に働きかけるような労働運動をつくるためにはどうしたらいいのか。示唆するようなことは書かれていましたが、それはまた別のテーマであり、それを研究したい。第1回目の大学院受験は大正期の農民運動をテーマにしようしていたが、自分が知りたいのは現代、そして労働運動なのだということに気づいたのです。

さて、どこの大学院が受け入れてくれるかと考えたところ、労働運動について指導できる教官がいる大学院はそう多くはありません。そして、芝田進午先生のいる広島大学を受験することにし、今度はさいわいにも合格。回り道をしましたが1990年春、広島の地にやってきました。

Shin-Go物語(6) たたかう仲間とともに