無投票選挙をなくすために
統一地方選挙の前半戦が始まりました(41道府県議選、17政令指定市議選)。
道府県議選では、全体の4割(348選挙区)が無投票。投票を経ることなしに565人(全議席の4分の1)が「当選」となりました。1人区では、無投票が半数を超しています。
無投票割合がもっとも高かったのは山梨県で62.2%。和歌山県、徳島県、岐阜県、そして広島県が40%超えです。
広島県は23選挙区中11選挙区、48%が無投票でした(下表、黄色が無投票)。
有権者による審判を経ることなく議員が決まる。これは由々しき事態であり、民主主義の衰退・破壊です。
候補者不足になる理由は色々ありますが、都道府県議選の場合には選挙区の定数が少ないという問題があります。
広島県を例に取りますと県会議員の定数は64人に対して選挙区は23です。選挙区をどのようにするかは、公職選挙法に次のように定められています。
公職選挙法 第15条第1項 都道府県の議会の議員の選挙区は、①一の市の区域、②一の市の区域と隣接する町村の区域を合わせた区域又は③隣接する町村の区域を合わせた区域のいずれかによることを基本とし、条例で定める。
①は、一つの「市」が単独で選挙区になる場合で、呉市、大竹市、東広島市、廿日市市、安芸高田市、福山市、江田島市、三次市、庄原市が、これにあたります。
②は、一つの「市」に周辺の「郡」がくっつく場合で、竹原市・豊田郡、三原市・世羅郡、府中市・神石郡が、これにあたります。
③は、「郡」が選挙区になる場合で安芸郡と山県郡が該当します。府中町は、海田町、坂町、熊野町と一緒の「安芸郡区」です。
さらに政令指定都市の場合には、区が選挙区になる(第15条第9項)。広島市の場合は、中区、東区、西区、南区、安佐南区、安佐北区、佐伯区、安芸区です。
この公職選挙法の規定に基づいて区割りをし、定数64を振り分けると、定数1が8選挙区、2が2選挙区、3が8選挙区、4が2選挙区、5が2選挙区、10が1選挙区となります。
この少ない定数で現職候補を破って当選することは並大抵ではありません。当選のハードルは高く、チャレンジする人が少ないのも当然だと言えるでしょう。
定数が少なければ少ないほど、立候補者が少なくなり無投票が増え、選挙があっても当選するのは自民党ばかり。
2020年10月1日現在、自民党系の県議は36人。県会議員の6割を占めます。
河井マネーで辞職した4人を加えると占有率65%。さらに公明党(6人)も含めれば74%です。ちなみに共産党は1議席(福山市選挙区)しかありません。議席占有率1.6%です。
このように国政における小選挙区と同じように、第1党の議席を実力以上に増やす役割を現在の区割り制度は果たしています。しかも、被選挙権を持つ人たちを立候補しにくくさせ、選挙が成り立たないようにしている。
この不公平な区割りと定数を改めるべきです。そのためには公職選挙法第15条を改正し、選挙区の定数が多くなるように区分けを変更することが必要です。
広島県ならば全県1区でもいいのではないかと私は考えます。それだけ新人が当選する可能性が広がり、チャレンジする人が増えるでしょう。
しかし、いくらなんでもそれは広すぎるというのなら、3あるいは4の選挙区にすることも考えられます。広島県の定数は64ですから県内を3つに分ければ20人前後の定数になります。選挙区を4つにすればだいたい15人前後でしょう。
ちなみに府中町議の定数は18人、お隣の海田町は16人です。町議選と同じぐらいの定数となり、ハードルはぐっと下がります。ただ、当選に必要な得票数は多くなり、その点では大変です。
選挙区を広げ、一選挙区当たりの定数を増やすことこそ、都道府県議選の無投票を防ぎ、民主主義を衰退・破壊から救う特効薬です。
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