中野量太監督「兄を持ち運べるサイズに」

「兄を持ち運べるサイズに」? えっ、「南君の恋人」のように小さくなる話なのか。しかし、そうではありませんでした。兄は遺骨になったのです。確かに持ち運べます。
兄(オダギリジョー)は、「クズ」です。生活能力がなく、借金を重ね、勝手に家を売り、いつもテキトーなウソをつき、カネを無心する。
主人公である妹、理子(柴咲コウ)は、兄に愛想を尽かしていました。メールも無視していたのですが、ある日、警察から「お兄さんはなくなりました。遺体を引き取りに来て下さい」と電話が来たのです。
兄の元嫁、加奈子(満島ひかり)と娘、満里奈(青山姫乃)の三人で荼毘に付し、力を合わせてゴミ部屋を片付けてゆくのでした。
「怒り、泣き、ちょっと笑った数日間」を描いていますが、クズ兄はクズでありつつも、そうではない面も見えて(思い出されて)きて、人物像が膨らんでゆきます。
「兄も案外幸せだったのかも」と思ったりして。しかし、元嫁、加奈子がきっぱり否定して、このシーンがなかなかよいです。
昨年末、日本の貧困の断面を描いたナイトフラワーを観ましたが、この映画もまた日本の貧困が背景になっています。
クズ兄は決して頑張らなかったわけではない。さまざまなウソをついてきましたが、結果としてウソになってしまったものもあるわけです。
原作者の村井理子さんは次のように書いています。
「最近、生前の兄ちゃんを知る人たちから、亡くなる前の様子を教えてもらう機会が増えました。多くの病気を抱えながら、郵便配達、警備員、ポスティングなど、一生懸命働いていたんだってね」。
仕事はまちがいなく非正規だったでしょう。賃金は安い、税金、国保など社会保険料は高い。
兄は糖尿病などの病気があり、死の直前まで生活保護を受けていなかった。だから、十分な治療は受けられなかったはずです。生活保護を受けていれば医療費は無料なのに。
心優しく、ちょっと変わった兄は、今のような自己責任社会でなければ、クズにはならなくて済んだでしょうし、生き続けることもできたのではないかと思います。












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