2017(平成29)年度決算についての意見表明
9月7日から始まった平成30年第4回府中町議会定例会が本日(9月19日)終わりました。
本会議での2017(平成29)年度決算に対する賛成討論をしました。以下、その討論原稿です。
第54号議案「平成29年度府中町歳入歳出決算の認定について」に賛成の立場から討論いたします。
◆歳入――引き続き、人権を守り生活に配慮した徴税を
歳入についてですが、一般会計の町税の収納率は昨年度より0.1ポイント下がったものの98.3%です。
平成28年度決算審査特別委員会において、「生活保護などの相談を福祉課にしたり、多重ローンの方には法テラスに行くように助言。生活に応じた対応を心がけ、疾病や離職等により、納付困難な方に対して経済基盤を確立できるよう、関係部署との連携を図っている。また、差し押さえは明らかに所得や預貯金があり、納付可能にもかかわらず納付がない場合に限っている」と税務課長から説明がありました。今回もその方針は変わらないのかと質問しましたところ、その通りであるという回答でした。
さいたま市では「色々な所から借りて払ったり死んで払う人もいる」「滞納者は死んでもいいから働け」「お金がなければ家を売ってでも払うように」「ヤミ金から借りて一括納付しろ」「県民共済の死亡保険金で全額納付できるはず」など、人権を無視した強引な取り立てが行われ、問題になっています。差し押さえや暴言が深刻化するなか2016年に2人が自殺しました。
また栃木県では「県内一斉地方税滞納整理強化月間」というポスターを公的施設に貼り、「滞納見逃しません」と滞納者を犯罪者扱いしています。
当町では、先ほど紹介しました税務課長の説明の通りで、そういうことはないと思いますが、引き続き人権を守り町民の立場に立った丁寧な対応を続けていただきたいと思います。
◆不納欠損から見える町民の暮らし
不納欠損は平成27年度1,779万円(376人)、平成28年度1,770万円(380人)、平成29年度2,358万円(354人)となっております。固定資産税の不納欠損が増えたわけですが、時効の成立によるものとのことですので、そのことを差し引けば大きな変化はないということになります。
滞納の末に行き着いた不納欠損は生活に困り、処分する財産もない。その果てに行方知れずになる方もいる。不納欠損は町民の暮らしの苦しさ、困難さの一面を示しています。「平成29年度主要施策の成果に関する調書」に書かれているような「雇用・所得環境の改善」「(日本経済の)緩やかな回復基調」といった状況ではないということは不納欠損をみるだけでも明らかではないでしょうか。この点については平成30年度ならびに平成29年度の「府中町一般会計予算」に対する討論で詳しく述べました。
歳入196億5,189万円、歳出194億3,759万円で、実質収支額は3,088万円の黒字です。1に近いほど財政力が高いとされる財政力指数は前年度の0.873から0.906に上がりました。標準財政規模に対する地方債の元利払いの比率を示す実質公債費比率は、平成27年度10.8%、平成28年度8.8%で、平成29年度は7.9%へと下がっています。一方、標準財政規模に対する将来負担すべき実質的な負債の比率を示す将来負担率は前年度の96.4%から130.7%へ34.3%上昇しています。
しかしながら、繰替え運用金が平成30年5月31日に収入済みになり全額基金に繰り戻しているので実質的には114%であり、平成27年の111%とほぼ同じであるとの説明を受けました。従って、当町の財政はほぼ健全な状況にあるといえます。
監査委員による「決算の概要及び審査意見(総括)」は、法人町民税が約12億5千万円(67.1%)減少していることをあげ、「自動車関連企業を中心とする製造業の動向が法人町民税の税収に大きく影響し、当町の特徴を顕著に現す」と指摘しています。財源不足を財政調整積立基金4億8千万円の取り崩しと減収補填債4億円で手当しているわけですが、法人町民税の多寡が町財政に与える影響の大きさ、財政運営の難しさを感じました。
◆歳出の評価と要望
つぎに歳出です。
①広報公聴事業として、公式ホームページをはじめ、広報ふちゅうをスマホで読めるようにしたり、公式フェイスブックを立ち上げるなどインターネットによる発信を強化しました。スマートフォンによる情報収集は年々増えていきますので、この分野を強化することは大切です。今回の災害でもホームページやフェイスブックによる発信は重要な役割を果たしたと思います。
②子どもの医療費助成事業(約1億3千万円)は、一部負担金や所得制限があり、その撤廃が求められるものの、子どもを持つ親にとって大変ありがたい制度です。現在は小学生までの入通院、中学生の入院が助成対象です。助成は平成29年度で未就学児3,305人、小学生2,252人。中学生は入院のみの助成で、12人となっています。ですから中学生の利用が極端に少ない。全国では中学校卒業まで一部負担金なし、所得制限なしが標準です。まず、中学生の通院に対する助成を始めるべきではないでしょうか。
また、一部負担金のあるなしや所得制限によって、窓口で①2割ないし3割負担を払う、②500円を払う、③払わない、という3種類の支払いに分かれます。当然複雑な思いが生じることになるでしょう。一部負担金も所得制限もなくして、どの子も等しく無料で医療を受けることが出来る。そんな府中町にしたいものです。
子ども医療費助成の拡充は「広島都市圏で一番の子育てしやすいまち」にするうえで重要な施策と考えます。前向きに検討されることを望みます。
③成人風しんの接種費用の助成と啓発についてですが、39歳以上の男性は学校での集団接種がなく、ほとんどの人が一度もワクチンを受けていません。「風疹の感染拡大を防止するためには、30~50 代の男性に蓄積した感受性者を減少させる必要がある」と国立感染症研究所感染症疫学センターは述べています。
当町の風しん予防接種費用の助成は、「妊婦健康診査またはその他の抗体検査で抗体価が十分でないと判断された女性およびその同居者」に限られています。助成対象者の拡大を検討すべきです。
④スクールカウンセラーの継続配置とスクールソーシャルワーカーの増員は、学校における困難の軽減、教職員の多忙化の軽減に役立っていると思います。教育支援員によります児童・生徒の介助指導や発達障害の児童・生徒への学習支援も大変重要と考えます。
⑤町内すべての小中学校普通教室にエアコンを設置しました(小学校5校・約3億円、中学校2校・約9千万円)。今年は異常な猛暑で、気象庁が「命に危険があるような暑さ」「1つの災害と認識している」と注意を呼びかけるほどでした。町内のある小学校の校長先生は「今年間に合って本当によかった。もしエアコンがなければ授業にならなかっただろう」とおっしゃっていました。
文部科学省の調査によりますと、全国の公立小中学校の普通教室でエアコンを導入している割合は2017年4月時点で49.6%、約半数です。一歩先んじた努力を評価したいと思います。
⑥私立幼稚園の保育料・入園料を補助する就園奨励費補助金が拡充されました。市町村民税非課税世帯の第2子を無償化し、ひとり親世帯等の市町民税課税世帯で所得割課税額が77,100円以下の第1子の補助限度額を217,000円から272,000円に引き上げたことは国の基準にあわせたこととはいえ、保護者の負担軽減となり評価したいと思います。
◆不用額をできる限り少なく
平成28年度決算について「住宅確保給付金、高齢者住宅整備資金、障害者住宅整備資金、家事・育児の支援訪問、居宅介護住宅改修費、介護予防住宅改修費のいずれもが申請がなく《不用額》となりました。宣伝不足や、そもそもニーズがなかったりといった問題があると思います。制度について広く周知するとともにニーズがないものは、あらたなニーズに応える施策を考えていただきたい」と指摘しました。
平成29年度も住宅確保給付金、高齢者住宅整備資金、障害者住宅整備資金が全額「不用額」となりましたが、それぞれ見直して必要な措置をとったことは評価できます。
障害者通院医療費助成事業ですが、予算479万5千円に対して支出済額152万3千円、不用額327万1千円となっています。自立支援医療は本人1割負担です。町の制度は自立支援における自己負担分の2分の1を申請により助成するものです。いったん1割を払って、申請すると半分戻ってくる償還払いで、2017年から国保以外も助成対象になりました。しかしながら現在、償還払いの手続きをしている人は3割で、せっかくの負担軽減策なのに使われていません。広島市は1割を市が負担し、窓口での支払いもなく、助成金の交付申請も必要もありません。領収証をなくしたので助成を受けられないということも避けられます。
平成30年度は予算を減らしたようですけれども、29年度予算を倍にして約1千万円にすれば広島市の制度と同じことができるでしょう。3割でなく100%の方が助成事業を利用でき不用額はゼロになります。制度の拡充を求めるものです。
「不用額に関する調べ」は事業において30%かつ100万円以上のものについて報告されていますが、それぞれの理由はおおむね妥当なものと判断します。
しかしながら、その総額は13億3千万円であり、予算の7.2%を占めます。不用額は必ず生まれるものであり、またお金そのものがなくなるわけではありませんが、不用額を減らすことができれば、新たなこと、必要なことに予算を使うことができます。なかなか難しいことではありますが、予算作成上留意していただければと思います。
◆永世守屋奨学基金を受け継ぎ新たな奨学金制度を
当町には「府中村永世守屋奨学基金」があります。守屋義之さんという篤志家が今から90年前の昭和3(1928)年に株券を寄付され、それを元にした基金です。時価1万円とありますので、公務員の初任給を基準にすれば今日の価値は2,500万円ぐらいでしょうか。この基金、平成29年度末現在高164万円で90年経った今なお府中町の教育予算に貢献をしております。
いま、教育費は家計に重くのしかかっています。高校生以上の子どもがいる世帯に対し、日本政策金融公庫が実施した平成29年度の「教育費負担の実態調査」によると、世帯年収400万~600万円未満の家庭では、年収に占める割合は20%、世帯年収600万~800万円未満の場合は17%、年収800万円以上では約12%となっています。
日本育英会は、平成16年に独立行政法人日本学生支援機構となり有利子奨学金がほとんどで、いまや学資ローンと化しています。たとえば4年間で学費、生活費など600万円を借りた場合、200万円の利子が付く。800万円を月々3万5千円ずつ20年(240回払い)もかけて返済しなければなりません。
(卒業間近の学生に日本学生支援機構から届いた奨学金返還手続き書類)
奨学金が返せなくて自己破産する人もいます。国の施策が不十分なので、こういう状況を少しでもなくすために全国の自治体が奨学金制度を作るようになっています。
全日本教職員組合の調査によりますと1741自治体のうち、返還する必要のない給付制の「奨学金等」があるのは、高校生向け295自治体(16.9%)、大学生向けが112自治体(6.4%)となっています。日本学生支援機構の調査では給付・貸与あわせて全国で1,000を超す自治体が奨学金制度を作っています。広島県内で奨学金制度を持つのは福山市、府中市、三次市、江田島市、大竹市、竹原市の6市です。
また、地方創生・奨学金返済支援制度が始まっています。
今のところ長崎県佐世保市、岡山県津山市、北海道北広島市、北海道枝幸町、富山県立山町ほか全国29の市町が導入しています。
佐世保市の場合、①佐世保市に居住している、②奨学金を返還している、③町内会に加入している、④佐世保市に今後10年以上定住する、⑤市税を滞納していない、という基本要件をすべてを満たし、①佐世保の離島に定住し、働く人、②特定の創業支援制度を受け創業する人③市内の製造業・情報サービス業を営む企業に就業する人、④市内で一次産業に就業する人、⑤保育士として保育所に就業する人、⑥その他の就業は給与月額基本給20万円以内、という条件のいずれかを満たしている人に対して奨学金の最大3分の2を10年間交付するというものです。
奨学金制度や奨学金返済支援制度は学生の負担軽減につながります。
90年前の篤志家の思いを引き継ぎ、発展させるような制度について検討されることを要望して討論を終わります。
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