2020年度 一般会計予算に賛成

第4号議案「令和2年度府中町一般会計予算」に賛成の立場から討論をおこないます。

消費税増税と新型コロナウィルスによる景気の減退

施政方針で町長は「緩やかな回復傾向が続くことが期待」しながらも、新型コロナウイルスへの影響は極めて大きなものとなろうとしていると警戒感を示し、予算特別委員会のなかでも、その影響は大きく変動していると答弁しました。

消費税の10%増税による経済・暮らしへの影響については述べられませんでしたが、総務省が今月6日発表した1月の家計調査で、前年同月から3.9%減、2019年10月から4カ月連続の減少と、その影響は明らかです。

その上に今回の、新型コロナウイルスによる景気の後退が急速に進んでいます。昨日、一昨日の中国新聞を見ますと、中国地方に限っても「スポーツジム営業縮小」「JR広島支社44%の収入減」「宮島来島3万人減」「山口県 宿泊取り消し5万人」(以上11日)、「行き場なき生乳 酪農家苦悩」「愛トラベル自己破産申請」「マツダ春闘 ベアゼロ」「青山商事 コロナ余波でスーツ売上げ落ち込み、業績予想下方修正」(以上12日)などが記事になっています。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は11日、新型コロナウイルスについて「パンデミック(世界的な大流行)とみなせる」と表明しました。今朝のニュースでは、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価が大幅続落し、下げ幅2352ドルと過去最大の値下がりを記録したと伝えています。

今後どのような事態になるのか予断を許しませんが、どのようなことが起きても、町民の苦難に町が寄り添い、いのちと暮らしを守る砦とならなければなりません。

評価する事業

 さて、当町の令和2年度予算ですが、評価すべき事業として①保育所の新設事業と②府中東小、府中北小のトイレ改修事業、③揚倉山運動公園上段、多目的広場を天然芝から人工芝に改修、を挙げることができます。

 第一に、保育所等創設助成事業です。工事の関係で4月開園とはなりませんでしたが、新たな保育園ができ、待機児童が減ることになります。大型マンションが複数、建設中であることや、長引く不景気、保育の無償化などがあいまって、子どもを預けて働く女性が増えることが予想されます。『第2期 府中子ども・子育て支援事業計画』の素案も示され、「教育・保育の量の見込みに応じた定員数を確保できるよう、受入体制の充実や施設整備等に取り組」むということですので、引き続き頑張って欲しいと思います。

第二に、府中南小学校に続き、府中東小、府中北小のトイレ改修工事が予算化されたことです。これで町内すべての小中学校のトイレが洋式化され綺麗になります。子どもたちが安心して行けるトイレになること自体が大変喜ばしいことだと思います。トイレが綺麗になると「授業への集中度が違う」「子どもたちが落ち着く」と言われています。そういう点での効果も期待したいところです。

第三は、揚倉山運動公園ですが、人工芝への張り替えと夜間照明の修繕によって、町民のみなさんに喜ばれ、利用者が増えることを期待したいと思います。

問題のある事業

つぎに問題のある事業です。「子どもの予防的支援構築事業」は、AI(人工知能)を活用して虐待などのリスクを予測するシステムを構築することに予算のほとんどが充てられており、昨年度は予算総額1800万円でシステムのために1200万円、今年は総額5600万円でシステム5000万円となっています。中国新聞によりますと「AIがビッグデータを解析し、子どもを取り巻く貧困や家庭環境の急変などを分析。社会的孤立や虐待が発生するリスクが高い家庭を予測」するのだそうです。

「AIがビッグデータを解析」というとものすごく確からしい感じがしますが、コンピューターは計算機にすぎません。入力されたデータが間違っていれば答えも間違う。そもそもビッグデータとは数十億とか数百億のデータをさし、そのなかから「確からしい」ものをAIが拾い出すわけですが、虐待やネグレクトにそんな単位のデータなどあるはずもない。

また、国立情報学研究所教授、新井紀子さんの『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)は「英語の単語や世界史の年表を憶えたり正確に計算したりすることは、AIにとって赤子の手をひねるようなことです。一方、教科書に書いてあることの意味を理解するのは苦手です」(4頁)と書いています。

この本にも紹介されていますが「近くにあるおいしい料理店」とパソコンやスマホで地図検索すれば、おいしいと判断されたと思われる料理店が表示されます。「近くにあるまずい料理店」で検索するとどうなるか?まずい店が出てくるわけではないのです。近くにある料理店が出てくるだけのことです。

ビッグデータがあるはずの自動翻訳でもデタラメが多い。厚労省のホームページで新型コロナウイルスはSARS-CoV-2*1とすべきところを「new-style coronavirus」、渡航歴はTravel historyとすべきところをstay rekiになっている。コンピュータには文脈は読めないのです。

子どもたちの情報が集められること自体にそもそも問題がありますが、AI診断に基づく指導、支援は大きな問題がある。AIがはじき出す予測結果が間違っていれば、間違った対応になるからです。虐待の可能性があるのに見のがしたり、逆に虐待の事実がないのにデータの組み合わせで虐待の可能性ありと診断される危険性がある。そしてその根拠としてAIとビッグデータが使われる。

私たちは、間違った情報による誤った指導がもたらした悲劇を体験したわけですから、本当に慎重にならなければなりません。

生活保護や児童扶養手当の担当者、ネウボラ、学校の教職員が緊密に連携することこそが、虐待や育児放棄を防ぐ手立てになると思います。そのために必要なのはコンピューターではない、人です。それぞれの部署に人を増やして連携する。

問題発生の予兆を掴むために必要なのは人とゆとりです。このことを強く申し上げたい。

制度の拡充を求める

制度の拡充を求めるものの第一は、子どもの医療費助成です。

小学校卒業まで制度を拡充して平成30年度で3年となりました。この3年間で事業にかかわる費用は約1億3千万円でほぼ変わりません。

全国では中学校卒業まで一部負担金なし、所得制限なしが標準です。

広島県内でも「通院」の無料が「18歳まで」となっているのが6市町(三次市、安芸高田市、安芸太田町、北広島町、世羅町、神石高原町)、中3までが7市町(三原市、尾道市、福山市、府中市、庄原市、大竹市、大崎上島町)であり、県内市町の半数以上が「18歳まで」あるいは「中3まで」となっています。通院、中3まで無料化は「子育てしやすい町」の必須条件だと思います。

第二に、森林整備予算です。森林環境譲与税423万円が新たな税収となりました。森林環境譲与税は、市町村において間伐や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の「森林整備及びその促進に関する費用」に充てることとされております。当町では府中の森づくり事業の予算となり、昨年度280万円の2倍以上となりました。

当面は災害復旧が優先されますが、「治水は治山にあり」と言われるように豪雨災害に対して最も有効なのは森林整備です。県、国の財源だけでなく町からも支出をし基金をさらに充実させて、豪雨に強い森づくりをすべきだと考えます。

職員の知恵を集めて
 
予算特別委員会において、後期高齢者医療の保険料が上がっていくなかで、市町が負担を軽減する措置が制度上とれないこと、そうである以上、府中町議会における予算審議が形骸化し、それが国保などさらに広がってゆくことに対して危惧の念を表明しました。それに対して、町長は保育の無償化を例に出し「福祉の充実は国にしかできない」と開き直りました。

しかし、子どもの医療費や35人学級、精神障害者の自立支援など、国の施策の不十分さを自治体が補って例はいくらでもあります。そのことは町長もよくご存じのことと思います。

冒頭にも申しましたように、消費税増税や新型コロナウイルスの影響によって、失業や収入減による生活苦が広がっていかざるをえないでしょう。

町民のみなさんの苦難を軽減するために、職員のみなさんの知恵を集めて対処することが求められており、「できない」と開き直るのではなく、できることを見つけ出していく姿勢を町長には求めたいと思います。

予算そのものについては、いくつかの点で評価すべきな施策があると判断し、賛成したいと思います。

以上をもって賛成討論といたします。


2019(平成31)年度 一般会計予算に賛成

2018(平成30)年度一般会計予算に反対

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