府中町第2次環境基本計画(改定版)について 2024年3月議会 一般質問

 

府中町第2次環境基本計画改定版

以下の原稿は、府中町議会の公式記録ではありません。また、年号については西暦に統一しています。

 


 

はじめに

 

 

当町では2016年に「府中町第2次環境基本計画」(以下、「基本計画」)を策定し、昨年(2023年)7月に改定しました。

改定の背景として、計画策定から7年が経過し、「国際的な地球温暖化対策の枠組みとなる《パリ協定》や国連サミットでの《持続可能な開発目標(SDGs)》の採択など、地球環境をめぐる社会情勢に大きな変化が生じており、国内外において脱炭素社会の実現に向けた動きが加速化」していることを挙げています。

当町の環境づくりの目標像である「ひと・まち・自然が共に生き、心豊かにくらすまち」を実現するために何が必要なのか、基本計画の第4章「目標像の実現に向けて」のなかから、「第2節 豊かな自然環境との共生 ①森林の再生」と「第3節 快適な生活環境の維持 ②水辺環境の保全」に関わって質問します。

1. 森林整備

まず、「森林の再生」のための森林整備についてです。基本計画は「府中町の取り組み」として次の3点を掲げています。

①荒廃した森林の再生を図るため、間伐や植樹などの森林整備を加速化します。
②手入れが行き届いていない私有林について、森林経営管理制度に基づき、林業経営者への再委託や公的管理などについて、段階的に検討を進めていきます。
③松くい虫やナラ枯れなどの病害虫被害を早期に把握し、拡大防止に努めます。(55頁)

この3つの取り組みのなかにある、森林整備と病害虫対策について伺います。

(1)森林整備と適正管理

まず、森林整備です。基本計画にある通り、「森林の再生」のためには森林整備と適正管理が必要です。その際、府中町の森林の特性を把握し、「どのような森林にしてゆくのか」をよく検討しなければなりません。

今年4月からスタートする「府中町森林整備計画」(以下、森林整備計画)は府中町の森林の状況について次のようにまとめています。

本町の総面積は1,041 haであり、その内、森林面積は430haである。北部域の森林(全森林面積の約50%)は標高が高く、林地全体が深層まで風化作用を受けた砂質のマサ土からなり、しかも急傾斜地が多く、崩壊、流出し易い危険性を持っている。

加えて、林地土壌を緊縛する役割の高い上層木であるアカマツ林は、長年の松くい虫被害でアカマツ林としての林分構成が失われつつある状態の箇所が拡大してきた。さらに、近年多発する豪雨に伴う山地災害への対策として、土砂流出防備保安林等の適正な配備、間伐等による根系(こんけい)等の発達促進や治山ダム等を整備していくことが重要である。   

ここ数年来実施されてきた森林改良事業により、整備対策の必要性は幾分緩和されたが、引き続きこの地域の森林整備を図る必要がある。

マツ林の減少とマツ枯れ

いつの時点での調査か分かりませんが、広島県農林水産局「林務関係行政資料」によると町内の森林構成は広葉樹が84%、針葉樹のマツが13%、ヒノキが4%、スギはほとんどありません。

かつては町内の森林に占めるアカマツ林の比率は相当高かったようです。1977年に刊行された『安芸府中町史』(以下、『町史』)第2巻には「府中町を取り囲む山地の植生は、ほとんど全てアカマツ林になっている」と書かれています。

もともとはシイやカシといった常緑広葉樹林で覆われていたのが、燃料を得るために森林伐採が繰り返されたことによりアカマツ林へと変化したものです。

マツ枯れにどう対応するのか

町内のアカマツ林は、長年の松くい虫被害でアカマツ林としての林分構成が失われつつある状態の箇所が拡がったものです。おそらく現在では森林面積の1割を切っているのではないかと思われます。

マツ枯れは、「マツ材線虫病」とも呼ばれ、マツノザイセンチュウという生物がマツノマダラカミキリに媒介されてマツの幹に侵入し、増えてくると幹のなかの水の流れが止まることによって起きます。

このマツ枯れにどう対処するのか。基本計画では「松くい虫やナラ枯れなどの病害虫被害を早期に把握し、拡大防止に努め」るとなっておりおり、対策を立てて、マツ林を維持するという方針のようです。

しかし、「マツ林の再生には強い覚悟とコスト負担が必要」だとされ、「安易に取り組むと失敗する」と言われています。「山地のアカマツ林で防除に成功した場所は皆無」だそうです。一方、「マツの集団枯死から広葉樹林への転換は10~20年ほど」であり、「西日本の多くの地点ではマツ林からコナラやシイ・カシ類の林への変化が起こっている。生態学的観点からは、このように広葉樹林に遷移した場所をアカマツ林に戻す必要性は低い場合が多い」と神戸大学・森林資源学研究室教授の黒田慶子氏は述べています。

第二次世界大戦後、マツが燃料や肥料として使われなくなったことにより、マツ林は放置され、そこにマツ枯れが起きて、マツ林が減少しているものと推定されます。町内でもすでにマツ林から広葉樹林への遷移が進み、広葉樹の比率が高まっているわけです。

そこで伺います。

①どうしてもここはマツでなければというところを除いて、アカマツ林の維持にこだわらず、コナラ、シイ・カシ類からなる広葉樹林への遷移を促してゆくことに重点を移すべきではないかと考えますが、町の見解をお聞かせください。

町民生活部長  〔③と一括して答弁〕

(2)天然林にも人の手が必要な場合がある

第2に、天然林再生の取り組みです。

広葉樹林への遷移は、なりゆきに任せて上手くいく場合と、人間が手助けしてやらないと上手くいかない場合があるようです。

森林は人工林と天然林に分けられますが、公式統計上では、人工林以外のもの全てが天然林とされ、伐採されたあと人の手が加わらず、「自然に」再生した天然生林、伐採や風水害、山火事などによって森林が壊されたあとにできた二次林などを含んでいます。

天然林のなかで人間の手が一度も入ったことがない、自然の力により生長していく森林のことを原生林と呼びますが、国土の4%もありません。

府中町域で、「天然林」に区分されているもののほとんどは、もともとあったシイやカシといった常緑広葉樹林が伐採されたあと、マツ林(二次林)となり、それがさらに広葉樹林に遷移したものです。ですから、町内の森林の7割以上を占める「天然林」は本当の意味での天然林ではありません。人の手が加わったあと放置されたものなのです。

天然林というと、人間が手を加えてはいけない、放っておくのが一番と思われがちです。しかし、本当の天然林ではないので、放っておくだけでは健康な森林に育ちません。

人工林については、木を伐ったあと、引き続き植林するのか、新たな苗木を植えず、「天然力」を活用して「天然更新」するという二つの方法があります。

当町の森林整備計画においてもスギ、ヒノキ、クヌギ、アカマツなどを植えて人工造林する場合と、アカマツ、ナラ類、カシ類、カエデ類、サクラ類、シデ類などの蘖(ひこばえ)や自然に落ちた種子などによって「天然更新」する場合の両方を想定した方針です。

「天然更新」という言い方も誤解を受けやすいのですが、放っておくということではありません。「地表処理」、「刈出し」、「植込み」、「芽かき」といった「天然更新補助作業」が必要です。

調査をしてみないと分かりませんが、天然林や広葉樹林と区分されているエリアでもシダやススキ、つる類、そしてシカによる食害によって木が育たなくなっている可能性があります。

これらの問題を取り除き、健全、健康な森林づくりをすることは、山を崩れにくくし、災害を防ぎます。

ですから、「天然林」についても調査をし、広葉樹の成長が妨げられている場合には、それを取り除く必要があるでしょう。

「森林整備計画」では、2023年度より3カ年で約50haを整備する計画です。町有林面積225haのおよそ4分の1にあたり、このテンポで進めば、十数年で町有林の整備が終わります。3カ年計画で整備する町有林は、崩落しやすい箇所を含むエリアを優先したと聞いています。

そこで伺います。

②町域にある森林の7割以上を占める天然林についての調査を含めた整備方針はあるのでしょうか。

町民生活部長 議員ご指摘のとおり、健全、健康な森林づくりは、土砂災害の防止といった災害予防のみならず、水源涵養、野生生物の生息、二酸化炭素の吸収源など、本来、森林が持つ多くの公益的機能や、安らぎや癒しの効果など、多くの人々に広く恩恵を与えるものであり、事業を推進していく必要があると認識しているところですが、現時点では、全体としての整備方針は策定しておらず、一つひとつの課題に対し、計画的に取り組んでいるところでございます。

最も優先すべき森林整備と位置づけ、現在取り組んでいる事業としては、2018年7月豪雨災害により斜面崩落、土石流の発生により、大きな被害が生じた町有林について、「ひろしまの森づくり事業」を活用し、3ヶ年事業で約47haの範囲に対し、「土砂災害防止機能の向上」を基本方針として整備に着手したところでございます。

この事業も2023年度から開始したばかりですので、事業費や業務ボリュームなどを勘案し、今後、全体の整備方針の立案、その他課題の解決に向け、取り組んでまいりたいと考えております。

(3)山の涵養力を高める取り組み

3番目に、山の涵養力を高める取り組みについてです。

涵養とは、雨水が土壌中に浸み込み、一時的に貯えられ、ゆっくり流れ出ることです。

山の涵養力という点で、町域にある山林には弱点があり、『町史』(第1巻)は次のように指摘しています。

府中町の山地は全般的に谷の規模は小さくて浅いが、谷壁(こくへき)の傾斜は大きい。いわゆる。山ふところが浅いので、河川の流域面積がいちじるしく狹くなり、平時における各河川の流水量は少ない。しかし、ひとたび大雨になると、呉娑々宇山地は小さいながらも谷壁が急で、水源の涵養地帯が狭いうえ、岩質が風化された花崗岩であることから、たちまち土砂が奔流し、洪水の危険をもたらす要因を秘めている。このことは、後述のように幾度かの水害が発生し記録に残されている。

 

2018年の豪雨災害が予見されていて驚きました。

「森林整備計画」にも「林地全体が深層まで風化作用を受けた砂質のマサ土からなり、しかも急傾斜地が多く、崩壊、流出し易い危険性」があると書かれています。山に水が浸み込みにくく、大雨が降ると一気に流れ出てしまう。

森林には、①水資源の貯留、②洪水の緩和、③水質の浄化といった涵養機能があります。雨水は山に蓄えられ、地下水となり、ゆっくり時間をかけて川へ送り出されます。森林土壌のはたらきによって雨水は地中にゆっくり浸透し、濁りが少なく、適度にミネラルを含んだ中性に近いおいしい水が森林から流れ出ます。

この森林のもつ涵養機能を発揮させるためには、次の三つの条件が必要だと言われています。

①孔隙(こうげき=すきま)の増加を促すことによって根系(こんけい=根)が発達すること。
②下層植生(背の低い植物)の発達が十分であること。
③葉や枝が落ち、有機物の供給が豊富であること。

当町の森林整備計画でも、「良質な水の安定供給を確保する観点から、適切な保育・間伐を促進しつつ、下層植生や樹木の根を発達させる施業を基本とするとともに、伐採に伴って発生する裸地については、縮小及び分散を図ることとする。また、立地条件や町民のニーズ等に応じ、天然力も活用した施業を推進することとする」(2頁)とあります。 

森林整備計画がいうように「下層植生や樹木の根を発達させる施業」をし、木も草も生えない裸地をつくらないことが山を崩れにくくして災害を防ぎ、水の涵養力を高めます。

そこで伺います。

③「下層植生や樹木の根を発達させる施業」をどのような形で進めていく計画ですか。

町民生活部長 環境基本計画における施策「森林の再生」の実行計画として、現在改定作業中である「府中町森林整備計画」が位置付けられます。

府中町森林整備計画では、森林が持つ多面的機能を総合的かつ高度に発揮させるため、森林を「水源涵養機能」「山地災害防止機能」「快適環境形成機能」「レクリエーション機能」「文化機能」「生物多様性保全機能」「木材等生産機能」の7区分に分類するとともに、それぞれの機能に応じた適正な森林施業の方法を定めています。

1つ目のご質問、「どうしてもここはマツでなければというところを除いて、アカマツ林の維持にこだわらず、コナラ、シイ・カシ類からなる広葉樹林への遷移を促してゆくことに重点を移すべきではないかと考えますが、町としての見解をお聞かせください」と3つ目のご質問、「『下層植生や樹木の根を発達させる施業』をどのような形で進めていく計画ですか」について、答弁内容が関連しますので、一括で答弁します。

当町の森林においては、2018年7月豪雨災害により、斜面崩壊や土石流が発生し、大きな被害が生じた経緯があり、求められる森林の機能としては「山地災害防止機能」に集約されます。

山地災害防止機能の維持・向上のための森林施業の方法としては、適度な光が差し込み、下層植生が生育する空間を確保するとともに、現状の植生を残しつつ、年齢や樹種の違う木で構成される複層状態の森林をつくる複層林施業を実施する方針としています。

よって、町の方針としては、議員のご意見とほぼ一致するものと考えます。

また、現在「ひろしまの森づくり県民税」を活用し、3.26haの町有林の整備を行っていますが、人工林の間伐後に植樹を行うこととしており、森林内の管理道や遊歩道沿いは、サクラやカエデ等を植え、風致効果を高める配慮を行います。

(4)国産材・県産材の利用促進

第4に、国産材・県産材の利用促進についてお伺いします。

2010年「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定され、広島県は、同年に「建築物等木材利用促進方針」を、当町は13年「府中町公共建築物等木材利用促進方針」を、それぞれ策定しました。

当町の利用促進方針は「公共建築物等への広島県産材等による木造化・木質化等を促進することにより、林業の持続的かつ健全な発展を図り、健全な森林の育成、循環型社会の構築や地球環境の保全、林業・木材産業の振興に資することを目的」としています。

「木造化」とは、建築物の構造耐力上主要な部分に木材を用いることであり、「木質化」とは、天井、床、壁などの内装や外壁などに木材を使うことです。

残念ながら、この方針策定後に建てられた町の公共建築物である府中町公民館は木造化はともかくとして、木質化も意識していなかったように思われます。大変残念なことです。

木材は環境にやさしい

木材は環境にやさしい資源です。

第1に、木材を使うことは、二酸化炭素を貯蔵し、排出を抑制して地球温暖化防止に貢献します。

木材を住宅や家具にたくさん利用し、手入れをしながら大事に使い続ければ、木材のなかに固定された炭素をそれだけ多く、長い間蓄えることになり、大気中の二酸化炭素の濃度が上昇するのを抑えるのに役立ちます。つまり、木造住宅を増やしていくことは、街にもう一つの森林をつくることと同じような効果があるといえます。

第2に、木材は、鉄やアルミニウムと比べ、製造や加工に必要なエネルギーがとても少なくてすみます。これらの資材の代わりに木材を使えば、その分だけ省エネルギーに繋がります。

第3に、石油などの化石燃料の代わりにエネルギーとして利用すれば、さらに二酸化炭素の排出を抑制することができます。

第4に、鉄やアルミニウム、プラスチック、石油などは限りある資源ですが、木は再生産することができます。木を使い、伐ったら植えて育てればなくなることはありません。

第5に、一度使用した木材も再利用でき、繰り返し使えば環境への負荷をさらに少なくすることができます。

第6に、微生物等の働きにより分解されますので環境を汚すことがありません。

国産材を使用する意義

このように木材の利用は多くの利点があり、国産材や県産材を使うとさらなるメリットが生じます。

日本は森林大国ですが、2022年の木材自給率は40.7%、建築用材等の自給率は49.5% となっており、半分以上が輸入木材です。

日本は1950年代まで木材自給率が9割以上であり、木材供給の100%近くが国産材でした。1964年の木材輸入自由化以降、自給率は低下し、2002年には過去最低の18.8%まで落ち込みました。

それがなんとか4割まで回復したというのが今日の状況です。

自給率が低いのは、木が足りないからではありません。森林に生えている樹木の幹の体積の合計を「森林蓄積」と言いますが、毎年約1億立方メートルも増加し、2022年現在では約56億立方メートルとなっています。1966年は19億立方メートルでしたので、3倍近くに増えています。

終戦直後に植えられたスギやヒノキが育ち、すでに利用できる状態にある木が伐採されず、木材として使える木があるのに使われていない。ここに大きな問題があります。

国産材を使うメリットとして、第1に、輸送に伴うCO2排出量(ウッドマイレージ)の削減があげられます。現在日本で使用されている木材の輸入先は、南米やアフリカ、オセアニアなど8,000km以上離れた国の割合が4割も占めています。

大量の化石燃料を使って日本に運ばれてくるわけです。ヨーロッパ産の木材でつくった住宅は国産材でつくった住宅の5倍以上、CO2を排出します。木造住宅で使われる木材の比率が高くなればなるほどCO2を削減できます。

第2に、森が元気になります。木を伐ることによって森林のなかに光が通り、下草が育ちます。下草があることによって昆虫やそれを餌にする動物が繁殖し、生物多様性が保たれます。

第3に、スギ・ヒノキは耐久性・耐蟻性(シロアリに強い)が高く、高温多湿な日本の建築物に向いていることがあげられます。

第4に、世界の木材価格変動に左右されないことです。コロナ禍の影響によって木材の価格が国際的に高騰し、日本では「ウッドショック」と呼ばれました。日本には十分に森林蓄積があり、これを活用すれば国際的な価格変動による影響を受けにくくすることができます。
 
県産材を使用する意義

次に広島県内で育った木、県産材を使う意義です。

広島県の県土面積85万haの約7割が森林(61万ha)で、国有林を除く民有林面積56万haに占める人工林は17.5万ha (31%)、天然林は37.6万ha (67%)です。

スギ・ヒノキの人工林14.5万haの多くは1955年以降に植林されたもので、現在伐採適期に達しつつあり、51年生(11齢級)以上のスギ・ヒノキ人工林が全体の約半分を占めています。広島県内にも十分、森林資源があるわけです。

「家を建てるなら、裏山で採れた木を使うと家が長持ちする」という昔からの言い伝えがあります。ある住宅メーカーのホームページに、「現存する『築100年以上の木造住宅』のほとんどは地元の木材で建てられている、とありました。

長く住み、長く使い続けられる家や建物ができることは、地元の木を使う最大のメリットではないでしょうか。

第2に、輸送に伴うCO2排出量(ウッドマイレージ)やコストが極めて少なくなるという利点があります。

第3に、県内の森が元気になる、災害に強くなることもあげられます。建築に向いたスギ・ヒノキは町内にはほとんどありませんので、町内にこだわらず、町の周辺、そして県内産の木材を大い使って家や建物をつくることが府中町の環境を守ることにも繋がります。

2018年に「広島県県産木材利用促進条例」が制定されました。県産材の利用拡大を通じて「循環型社会の形成」「地球環境の保全」「県経済の活性化」を図ろうとするものです。

条例は、「県及び市町は、それぞれが実施する県産木材の利用の促進に関する施策が円滑かつ効果的に推進されるよう、相互に連携を図りながら協働するものとする」と規定しています(第5条)。

この条例に基づく「県産木材の利用促進に関する実施状況(令和4年度)」についてのとりまとめ文書は、「今後の対応」の一つとして「市町が関わる建築物については、引き続き、木造化・木質化の促進に向けて、コスト削減や木材調達をテーマとしたワークショップ等を開催し、木造建築に対する市町職員の知識の習得と意識改革を図る」と述べています。

町の基本計画にも、「公共施設における木材利用を促進するとともに、県産材の利用拡大を図ります」(55頁)と掲げられています。

 町内では古い家が壊され、新しい住宅が次々建っています。建て主に対しては「『ひろしまの森に木づかう家』融資制度」、建築業者に対しては「県産材消費拡大支援事業」という県の制度があり、これらの制度や事業を周知しながら県産材の利用をもっとアピールする必要があるのではないでしょうか。

そこで伺います。

④国産材・県産材の利用拡大について、どのような取り組みを検討されているでしょうか。

町民生活部長 国内外において、脱炭素社会の実現に向けた動きが加速化しており、建築物等における木材の利用を促進し、脱炭素社会の実現に資すること等を目的として、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が改正(2021年10月1日施行)され、法律の題名も『脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律』に変わり、対象範囲が公共建築物から建築物一般に拡大されました。

法の基本理念を踏まえ、木材の利用を促進していく必要があると考えておりますが、議員ご指摘のとおり、当町において、木造化、木質化に対し、事業費などの観点から、実現できなかった現状があります。

今後は、府中町第2次環境基本計画(改定版)の施策2の1「森林の再生」において、『公共施設における木材利用を促進するとともに、県産材の利用拡大を図ります』と位置付けしたことも踏まえ、『府中町公共建築物等木材利用促進方針』を法改正後の基本理念に則った内容に改め、町が整備する公共建築物において、率先して木材の利用に努めることなど、『ゼロカーボンシティ宣言』を行った町として、カーボンニュートラルに取り組んでまいりたいと考えております。

2.水辺環境の保全 雨水の浸透(涵養)と雨水の利用

次に、第4章第4節「②水辺環境の保全」に関わって、「雨水の浸透(涵養)」と「雨水の利用」について伺います。

かつてはオアシスだった府中町

府中町はかつて、清らかな水が湧き出る町、オアシスでした。『町史』には次のように書かれています。

古代において此の地が安芸郷として発展した一つの理由は、沖積世に入ってから、府中の北部地区に多くの丘陵と同時に海抜3~10メートルの処々に自然湧泉が存在したからである。……そして現在も細々と残っている「東川」「坂川」「総社川」はデルタ的な府中平地部を形成したが、その小川の中間部には幾つかの自然湧泉が二千年以上にわたって湧出し続けている。「出合清水」や「尾首の池」はその代表的なものであるが、そのほか二、三のものを除いては農業の消滅とともに埋立てられてしまった」

呉娑々宇山に降った雨が、みくまり峡の奥から伏流水となり、扇状地の端――現在の石井城1丁目あたり――で湧き出た。その代表的なものが今出川清水、出合清水でした。以前は、湧水が周辺に多くあったと言われています。しかし、農業の衰退、宅地化の進行などによって水量が激減したり、消滅してしまった。現在は、非常に残念な状況ですが、府中町の歴史を振り返ると、古代からつい最近まで美味しい水の湧き出る町、オアシスだったのです。

 

都市化による地下水の減少

なぜ、湧水は枯れてしまったのでしょうか。原因はいくつか考えられますが、最も大きな理由は地下水の減少にあり、地下への水の浸透が減っているからです。

森林の荒廃により、山の涵養力が落ちていることは先ほど述べました。田畑にも水を涵養する働きがありますが、府中町に田畑はほとんどありません。川にも水を浸透させる力があるのですが、榎川、八幡川はコンクリートの三面張りのところがほとんどで、地下へ水の浸透は望めません。道路も多くがアスファルト舗装になっていますので、降った雨は排水溝から川へと流れてしまいます。住宅に降った雨も同様です。

都市化によって地下水の浸透力はいちじるしく弱くなっているといえるでしょう。これは府中町に限らず、都市化の進んでいる地域に共通の問題となっています。

地下水の涵養・雨水の利用

2014年に制定された水循環基本法は、「貯留・涵養機能の維持及び向上」(第14条)を掲げています。

水循環基本法に基づく水循環基本計画においても「地下水の水量や水質への効果や影響に留意しつつ、水の貯留・涵養機能の維持及び向上に向けた取組を進める」(19頁)とし、「政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」の一つとして都市の貯留・涵養機能の維持・向上を掲げています。

2019年に公表し、23年に全面改定された「グリーンインフラ推進戦略」においても「自然の機能を活用した温室効果ガスの吸収源対策や、流域治水の推進や雨水貯留・浸透施設の整備など自然の機能を活用した防災機能の向上等の取組を推進する」(17頁)とあります。

さらに、2021年公表され。23年に改定された国土強靱化基本計画においても、自然災害への対策の一つとして、雨水貯留浸透施設が位置づけられています(64頁)。

雨水を浸透させる

以上のように、雨水の貯留浸透施設の整備は国の施策として位置づけられています。

雨水の貯留浸透施設には、貯留施設と浸透施設があります。貯留施設とは、屋根に降った雨水をタンクなどに溜めて、水資源として活用するための施設であり、浸透施設とは、雨水を効率よく大地に浸透させるための施設です。

まず、浸透施設ですが、各家庭に設置できるのが雨水浸透枡です。枡の側面や底面に浸透のための穴を空け、そのまわりに砕石等の充填材で囲むと、雨水は地中へ浸透します。浸透の能力は地盤に大きく左右されますが、ある一定量の雨水を常に浸透させることができます。

雨水浸透施設で雨水を積極的に浸透させることによって、下水道施設へ流出する雨水が減ります。激しい雨の場合、約1割程度の効果があるといわれています。

それ以外に、地盤沈下の抑制、浸水被害の軽減、地下水・湧水等の自然環境の保全及び回復、河川・井戸水等の水循環の保全といった効果が期待できます。

東京都小金井市は、毎年、約2,000基の雨水浸透枡が設置され、2022年3月末現在、雨水浸透施設の設置軒数が18,914件、浸透ますの設置数が84,706個に達しています。
 

浸透枡を設置することがふさわしいところと、そうでないところがありますが、設置可能な地域では約7割が浸透枡を設置しているそうです。


(東京都小金井市ホームページより) 

 

雨をたくわえて使う

 
次に、雨水の貯留施設ですが、雨水を屋根から雨樋を通して収集し、浄化したあと、タンクなどに溜め、散水・洗車・トイレの洗浄に再利用し、限りある水資源を有効に活用するものです。

貯留タンクに溜められた分だけ、下水道施設や川への流入が減りますので水害防止が期待できます。降雨時に溜めた水を晴れたときに使うわけですが、夏の暑いときに撒けば涼しさを感じることもできます。

災害で断水したときには、トイレの洗浄水として利用することもできます。

(岡山市ホームページより)

 

国交省が2021年度に実施した調査では、首都圏を中心に全国で約300の市町村が雨水タンクや雨水浸透ますの設置など、雨水利用に対して助成制度を設けています。

そこで質問です。

⑤当町でも、雨水の浸透枡や貯留タンク設置に対して、助成するお考えはありませんか。

町民生活部長 議員ご指摘のとおり、雨水が地下へ浸透し、地下水として循環していくことは、自然環境保全の観点から重要であるのみならず、生活や産業活動においても重要な役割を果たしています。

また、雨水の浸透や貯留により、河川への流入が減少することから、集中豪雨などの際に、災害の危険性を低減させることにもつながると考えられ、国土保全の観点からも有益なものと考えております。

当町としても雨水の利用に取り組んでおり、「くすのきプラザ」及び「府中小学校」に雨水貯水槽を設置しています。これにより、貯留した雨水を散水等へ使用するなど、有効活用を図っているところです。

以上を踏まえ、ご質問にありました「当町でも、雨水の浸透桝や貯留タンク設置に対して、助成するお考えはありませんか」について答弁します。

まず、浸透桝などの雨水浸透施設についてです。

雨水浸透施設とは、雨水桝の底や側面に穴が開いた構造とすることで、雨水が地中に浸透するようにしたものになります。

この雨水浸透施設については、設置にあたり、「擁壁の上部や下部の区域」や、「隣接地その他の居住及び自然環境を害する恐れのある区域」などでは設置が禁止されているほか、「斜面や低地に盛土で造成した造成した区域」や「隣地の地盤が低く、浸透した雨水による影響が及ぶ恐れのある区域」、「地下水位が低い区域」などでは設置にあたり注意を要することとされています。

当町では、住宅が密集した地区や、斜面を造成した地区が多く、雨水浸透施設を設置するにあたり個別に設置の可否を判断することが困難であるうえ、設置した場合の当該住宅や隣地への影響が否定できないことから、現在、雨水浸透施設の設置の推奨は行っていない状況となっています。

一方で、雨水の浸透は、環境保全や国土保全に資するものでもあることから、他の自治体の事例等を参考に、助成制度も含めた設置の可否や効果等について研究(検討)してまいりたいと考えています。

次に、貯留タンクなどの雨水貯留施設についてです。

雨水貯留施設とは、雨どい等から流れてくる雨水をタンクに貯留し、晴天時に散水等に使用するものであり、設置にあたっては、新たにタンクを設置するほか、廃止した浄化槽をタンクとして活用する場合もあります。

雨水貯留施設の設置にあたり助成制度を導入している自治体は、県内では現在、府中市及び神石高原町のみとなっており、当町としても、これまで助成制度の導入については検討を行っていなかったところであります。

雨水貯留施設についても、環境保全及び国土保全の観点からは有益なものと考えられることから、かかる事業費やそれに対する効果等を十分に考慮し、制度について今後研究(検討)してまいりたいと考えています。

《第2回目》

(1)二見議員 町の方針は、さまざまな森林のもつ機能のなかで、とりわけ「山地災害防止機能」を重視し、その維持・向上のために森林施業の方法として、「適度な光が差し込み、下層植生が生育する空間を確保する」ことによって、樹種の違う木で構成される複層林施業を実施する方針」であり、私の意見と町の方針はほぼ一致するという答弁でした。

そのうえで、第一に、2018年7月の豪雨災害による被害を復旧して土砂災害防止機能の向上を図るための整備をする。これは当然のことですので、全体の整備方針の立案はこれからというのも分かります。

整備方針の立案にあたって、町域にある森林の現状をまず調査し、把握することが必要だと考えます。1回目の質問で述べたように、下層植生や樹木の根が発達しているかどうか、シダやススキ、つる類によって覆われていないか、シカによる食害はどうか、など人工林、天然林、あるいは針葉樹、広葉樹に関わらず「森の健康度」をチェックする必要があると思うのです。

いま、申しました「森の健康度」の調査ですが、町域の森林の多くが急峻で大変だとは思うのですが、最近は、レーザー光線を使って地上からや上空から調査ができるようになっています。また、可能なところは目視での確認も必要です。

そこで伺いますが、町として「森の健康度」調査をするお考えはありますか。

環境課長 広島県が2020年度から21年度にかけて、レーザー測量のデータを用いて県内の森林の植生や密度などの概況を解析し、提供されたデータを活用しているところでございます。
 そのデータに基づき、最も整備を優先すべき町有林の約47haを抽出し、22年度に現地踏査を行い、町民生活部長の答弁にもあったように今年度より「ひろしまの森づくり事業」を活用して3ヶ年の森林整備に着手したところです。

このデータを基本に、可能な範囲での目視確認などにより、「森の健康度」をチェックしながら今後も整備を進めてまいりたいと考えております。

(2)二見議員 次に「県内産木材の利用促進」ですが、「町が整備する公共建築物において、率先して木材の利用に努める」という答弁で、ぜひその方向で進めていただきたいと思います。

町が率先して木材利用、とりわけ県内産木材の利用を進めつつ、町民のみなさん、町内あるいは、町内に住宅や建物を建設する業者に対して、先ほど紹介した、県の制度である「『ひろしまの森に木づかう家』融資制度」、「県産材消費拡大支援事業」を、町としても周知徹底し、県産材がもっと使われるようにしていく必要があると思います。

この点について、町の見解をお聞かせください。

環境課長 2021年12月に改正された『広島県建築物等木材利用促進方針』において、市町は率先して自らが整備する公共建築物における木材の利用に取組むほか、民間建築物における木材の利用が促進されるよう取り組むものとすると記載されており、今後改正する『府中町公共建築物等木材利用促進方針』においても広島県の方針を踏襲する予定であります。

この方針に基づき、「ひろしまの森に木づかう家」融資制度、県産材消費拡大支援事業など、民間建築物の木材の利用が促進に関する情報についても、ホームページや広報などを通じて、周知を図っていきたいと考えております。

(3)二見議員 雨水の浸透施設についてですが「当町では、住宅が密集した地区や、斜面を造成した地区が多く、雨水浸透施設を設置するにあたり個別に設置の可否を判断することが困難であるうえ、設置した場合の当該住宅や隣地への影響が否定できない」という答弁でした。

確かに、浸透施設を設置すべきではない土地があるのは事実です。しかし、「雨水浸透施設を設置するにあたり個別に設置の可否を判断することが困難」だとは言えません。雨水浸透装置、浸透枡の設置を進めている自治体は「雨水浸透ます設置基準」をつくり、設置できるところとそうでない地域を明確にしています。

横浜市は、①急傾斜地崩壊危険区域でないこと、②浸透しにくい土質でないこと、③浸地下水位が地盤から2m未満でないこと、を調査したうえで、「浸透施設設置判断マップ」をつくっています。

京都市も、次のような3つの基準を示しています。

①設置禁止区域
 地盤が滞水することにより土砂災害を誘発する恐れのある場所では雨水浸透ますの設置を禁止する。
②設置不適地
 雨水が浸透しにくい粘土質のような地盤又は地下水位が高い場所は設置不適とする。
③斜面近傍における設置不適地
 高さ2m 以上,斜度30 度以上の斜面近傍において,雨水の浸透で斜面の安定性が損なわれる恐れのある場所については,浸透施設の設置を避けるものとする。

 

面積437.4k㎡の横浜市や827.8 k㎡の京都市にできて、府中町でできないはずはないと思うのです。また、一気にやる必要もない。

いま紹介したような基準をつくり、モデル地区を設定して実証実験する。効果がそれなりに見えれば、少しずつエリアを拡げてゆくというやり方もできるはずです。

例えば、石井城、みくまりなど「今出川清水」「出合清水」に通じる水脈がありそうなところを先行する。効果があるかどうかも分かりやすい。

「他の自治体の事例等を参考に、助成制度も含めた設置の可否や効果等について研究(検討)」ということですが、モデル地区を設定して、実証実験するお考えはありませんか。

下水道課長 先ほど町民生活部長が答弁しましたとおり、当町の場合、雨水浸透施設の設置に関しては、土地の性質の関係上、設置の可否の判断が困難である箇所が多いと考えられるところではありますが、設置に適した地区を選定してモデル地区を設定し、効果を検証することは有効であると考えられます。

一方で、設置に適した地区を選定する際の判断基準や、地下水位や土質などの地質の調査方法など、実施に当たって必要となる知見が、当町において不足しているのが現状であります。

地質調査の実施や、それを踏まえた雨水浸透施設の設置基準の作成を行っている自治体が各地にあることから、これら自治体の事例を参考に、当町においても安全かつ効果的な取り組みが可能であるか、研究を行ってまいりたいと考えています。

《3回目》

二見伸吾議員 ①「森の健康度」の調査、②「『ひろしまの森に木づかう家』融資制度」、「県産材消費拡大支援事業」の周知徹底、③浸透施設について、すでに実施している自治体の事例を参考に、当町においても安全かつ効果的な取り組みが可能であるか研究する、という答弁でした。私の問いました3点とも前向きに取り組んでいただけるということで、よかったと思います。

 以上で私の質問を終わります。


《参考文献》
榧根勇『地下水の世界』NHK出版、1992年
只木良也『新版 森戸人間の文化史』NHK出版、2010年
田中敦夫『日本の森はなぜ危機なのか』平凡社新書、2002年

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