国保税の引き上げに反対 2025年3月
もくじ
第16号議案「府中町国民健康保険税条例の一部改正について」反対の立場から討論いたします。
物価高騰のなかでの値上げ
最近のNHKニュースから物価高騰に関連するものを拾ってみました。
▼3月5日 去年1年間の生活保護の申請件数は前の年より0.3%増えて25万件を超え、この12年間で最も多くなりました。厚生労働省は「単身世帯の増加や物価高の影響などさまざまな要因の影響で申請が増えている可能性がある」とコメントしています。
▼3月10日 ことし1月の働く人1人当たりの現金給与の総額は、前の年の同じ月と比べて2.8%増えたものの、物価の上昇に賃金の伸びが追いつかず、実質賃金は3か月ぶりにマイナスとなりました。
▼3月12日 企業の間で取り引きされるモノの価格を示す先月の企業物価指数は、コメの価格が上昇していることなどから去年の同じ月と比べて4.0%上昇しました。伸び率は前の月の4.2%から縮小しましたが、引き続き高い水準となっています。
物価の値上がりはみなさん日々実感されていると思います。
内閣府では、エネルギー・食料品価格の物価高騰の影響を受けた生活者や事業者の支援を通じた地方創生を図るため、2023年11月に「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」(重点支援地方交付金)をつくり、当町でもこの交付金を使ってさまざまな物価高騰支援策を実施しています。
物価高騰に対策をとり国民、町民の暮らしを守らなければならないときに、広島県や町が国保税を引き上げ、さらなる負担増と生活苦を町民に強いることがあってはならない。このことをまず申し上げたい。
大幅な引き上げ
国保税引き上げについて、全員協議会資料には次のように書かれています。
広島県では、令和6年(2024)度に保険料水準の準統一を実現することに全市町が合意し、令和9年度の完全統一の実現を目指すことで調整をしていた。しかし、令和6年度一人当たりの保険税収納必要額が想定以上に大きく伸びたため、令和6年度の準統一は見送られた。
これを受け府中町では、令和6年度については、急激な保険税率の上昇を抑えるため、令和6年度に示されていた準統一時の保険税率を参考とした税率を採用し、不足分を基金から充当することとした*1)。
*1)「令和7年度府中町国民健康保険税の改正について」全員協議会資料2025年2月10日。
今年度、県に納める金額が思った以上に多くて県内市町は驚き、引き上げを見送った。
しかし、県単位化の完全統一のために、事態は何も変わっていないのに令和7年度は上げるということです。
町は努力しなかったわけではない。
収納率を向上させて、県繰入金交付金の確保に努め、国保基金を投入して保険税率を引き下げようとしてきたが、基金も尽きて、やむなく国保税を引き上げるということでしょう。
町内、7,404人約5,000世帯の国保加入者への影響は大きなものがあります。全員協議会資料のモデルケースでは、
ケース① 夫(70歳)、妻(69歳)の2人世帯。世帯の所得は43万円。国保税は7割軽減され、今年度の保険税は年間33,400円ですが来年度は38,800円で引き上げ額は5,400円、引き上げ率は16.17%。このケースに該当する世帯の割合は約33%です。
ケース② 夫(42歳)、妻(40歳)の二人世帯で、営業所得は150万円。今年度の保険税は年間237,700円ですが来年度は274,200円で引き上げ額は36,500円、引き上げ率は15.36%。このケースに該当するのが約25%です。
ケース③ 夫(42歳)、妻(40歳)。子どもが10歳と8歳の4人世帯。自営業で営業所得が400万円。今年度の保険税は年間646,900円ですが来年度は748,100円で引き上げ額は101,200円、引き上げ率は15.64%。このケースに該当するのが12.5%です。
モデルケース①は減免されているので引き上げ額は大きくありませんが、諸物価高騰のなかでの負担増は大変厳しいものがあります。
この3つのケースのなかで最も過酷なのが、ある程度所得がある3番目のケースです。
今でも65万円近く保険税を払っているのにさらに10万円も増える。これは町内で頑張っている自営業者に大打撃です。
国保の構造的問題
国民健康保険と健康保険・公務員共済とは大きな違いがあります。
まず加入者ですが、国保は広島県の場合、無職――その大半が年金生活者ですが45%。被用者――雇われて働いている人が26.1%ですが、大半は非正規労働者です。そして自営業者が11.8%。
一方、健康保険と公務員共済は、基本的に現役で働いている人が加入者であり、その多くが正規労働者です。
健康保険と公務員共済は負担能力の高い人たちの集団であり、国保は低い人たちの集団です。
国保の被保険者は65歳から後期高齢者医療制度に移行する前、74歳までの人が46%を占めていますが、健保は4.1%にすぎません。
国保は病気になりやすい高齢者が半数近くを占め、健保や共済に高齢者はほとんどいない。
大きな違いがもう一つあります。
健保・共済の保険料が労使折半、被保険者の負担は半額です。国保には、国庫支出金がありますが、その額は折半(半額)にはほど遠いので健保や共済より被保険者負担が重い。
保険として機能しなくなる
これらの問題を放置し、国保税を上げ続ければ「国民健康保険特別会計の健全な財政運営」どころか、国保制度そのものが崩壊します。
今回の引き上げは通過点に過ぎません。国保税の引き上げが続き、さらに問題が深刻化する。
非正規で、フルタイムの4分の3以上働いている人は健保へ移行します。非正規労働者のなかで比較的賃金が高い層が抜けてゆく。
自営業者はどうか。このまま国保税が上がっていくと、労使あわせた健康保険料負担の方が国保より安くなるので、それを期に法人化して健保に移行する人が出るでしょう。
現在は年収500万円の協会けんぽの保険料は労使あわせて48万円です。現在年収500万円の国保保険税は家族構成によって違いますが、だいたい40万円ぐらいです。
今度の引き上げで、おそらく両者の違いがなくなる。その次の引き上げの時には、法人化を検討する自営業者が増えます。
さらに、脱法的な行為によって国保から抜け出る人も出てくるでしょう。小規模な法人を設立したり、どこかの法人に形式的に「勤務」し、低い報酬を受けるようなかたちにして、社会保険に加入する。そうやって安い保険料で済ませる。こういうことを唆すサイトがあるのです。
このように、非正規労働者でも比較的賃金の高い人は健保に行く、自営業者のなかからも法人化して出ていく。脱法的なかたちで国保を抜ける人がでる。
そして、負担に耐えられず滞納する人も増えるでしょう。
残るのは、わずかな年金から国保税を天引きされる年金生活者です。
今まで以上に、「所得が少なく、医療を必要とする人たち」の比重が高まる。
これでは保険はなりたちません。国保は崩壊します。
以上、述べた理由により本税条例の一部改正について反対いたします。
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