不要な救急車12台なぜ? 書評『過疎ビジネス』
「しんぶん赤旗日曜版」2025年10月26日号に、横山勲著『過疎ビジネス』についての書評が掲載されました。

横山勲著『過疎ビジネス』集英社新書(1,100円)
評者 二見伸吾(広島県府中町議会議員)
2022年、福島県国見町が、「企業版ふるさと納税」(4億3,300万円)を使って高規格救急車を12台購入し、地域創生事業を始めようとしていた。
国見町は、他市町と共同で消防組合をつくっているので救急車を所有する必要がない。
なぜ12台も? 本書はこの謎に迫ったルポである。
この謎を解く鍵は「企業版ふるさと納税」である。
企業が自治体に寄付すると最大9割も減税され、それだけでも十分なメリットがある。
さらに「隠れ」返礼品も用意されている。
寄付企業への経済的な見返りは表向き禁止されているのだが、抜け道があり、うまくやれば寄付金で自社(子会社を含む)が扱う商品・サービスを自治体に売りつけることができる。
寄付した企業名、事業を発注した企業名を公表する義務がない。
寄付企業名は約3割の事業が非公開か一部公開。事業の発注先の半分は非公開である。
これでは見返りがあったとしても見つけ出すことが難しい。
「地域創生」と言い始めて10年が経つが、人口減少も地域経済縮小も止まらない。それはなぜか。
「地方創生」は名ばかりで、企業に「稼ぐ場」を与えることに力が注がれているからだ。
本書は自治体が食い物にされる実態を暴くとともに、三つの希望が示されている。
一つめは議会である。当初、対応を誤ったが、問題に気づくと百条委員会を立ち上げ、厳しく追及し議会の力を示した。
二つめは、職員である。不正を公益通報したがために懲戒処分された職員は、「全体の奉仕者であることを愚直に信じて、いつまでもたたかう」と語った。
そして三つめは、議会と職員の背中を押した住民の怒りである。












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