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2025-12-19

消防庁舎の建て替えについて 2025年12月議会 一般質問

 

府中町消防本部

以下の原稿は、府中町議会の公式記録ではありません。また、年号については西暦に統一しています。

はじめに

11月18日、大分市佐賀関(さがのせき)が大規模な火災に見舞われました。住宅地や山林が約4万8900平方メートル焼け、住宅など約170棟が延焼し、焼け跡から1人の遺体が見つかりました。

火災の規模が大きくなった理由について「昔ながらの漁師町で、古い木造住宅が密集し、火が広がった。道路が狭く、消防車両が迂回せざるをえないなど、活動の妨げになった」と市の担当者は説明しています*1)

当町には空き家はさほど多くなく、新しい建物は燃えにくい材質となっているものの、古い建物と新しい建物が混在し、道路の狭い密集市街地が町内のあちこちにあります。ひとたび火事が起これば佐賀関のような事態が起きないとも限らない。

なにより、密集市街地が解消されなければなりませんが、ごくわずかしか進まないのが現状です。

そういうなかで、火災や地震が起きた場合、消防の力――消防本部・消防署・消防団――と地域、住民の力によって、被害を最小限にとどめなければなりません。

現在の消防庁舎は、1976年3月に竣工したものです。もうすぐ50年となり、施設は老朽化し、機能の点でも時代にそぐわないものなっています。

2020年に策定した当町の「維持保全計画(建築物)」では40施設82棟中解体・建替などが決まった5施設を除いた77施設中、消防庁舎の改修優先順位は25番目です。このままいくとなかなか順番が回ってこない。

しかし、消防庁舎は町民の命と安全に関わる重要な建物であり、南海トラフ大地震をはじめとする自然災害や火災などに備え、今日にふさわしい設備と機能を持つ庁舎建設に、早急に着手すべきです。

10月に同僚議員のみなさんと昨年(2024年)11月に完成した北広島町の消防庁舎を視察してきました。そのときに得た知見も踏まえて質問したいと思います。

なお、消防活動に携わる職員は、正式には消防吏員*2)といいますが、ここでは一般的に使われている「消防士」・「消防職員」という呼称を使います。 

*1)「東京新聞」2025年11月22日。
*2)消防吏員とは、市町村の消防本部・消防署に勤務する職員のうち、階級を持ち、制服を着用して消防活動に従事する職員のことをいい、いわゆる消防士のことを指す。

1.大規模火災は「過去のもの」ではない

大規模の火災は、この半世紀、ほとんど起きていません。「通常の市街地大火は克服し、もはや過去のもの」と思われてきました。

しかし、大規模火災は減っているものの、やはり起きています。この半世紀ですと1976年の酒田市の大規模火災、それから40年経った2016年の新潟県糸魚川市大規模火災。そして、今回の佐賀関火災です。

11月に起きた佐賀関の大火事については述べました。

糸魚川市の大規模火災は、いまから9年前、2016年12月22日に発生。ラーメン店の大型こんろの消し忘れにより出火し、147棟(全焼120棟、半焼5棟、部分焼22棟)が燃え、1976年の酒田市の大火災以来40年ぶりの市街地における大規模火災だと言われています(地震を原因とするものを除く)。一般人2人、消防団員15人、合計17人が負傷しましたが、幸いにも死者はいませんでした。

40年ものあいだ大きな火災がなく、消防関係者や火災の専門家は「通常の市街地大火は克服できた」と考えていたようです。燃えにくい建築材料の普及や都市の不燃化が進んだこと、常備消防の消防力が高まったことがあり、「克服した」と考えるのも無理ありません。

しかし、2016年に糸魚川市で、それから9年経って、今年、佐賀関で大火事が起きました。木造の建物が密集した市街地で強い風が吹き、初期の段階に十分な消防力がないなどの悪条件が重なれば、今でも大規模な市街地大火が起きる。2つの大規模火災は私たちにそのことを教えています。

 

2.消防庁舎に求められる 7つの要件

2-1.消防技術の維持・向上

以上のことを踏まえて、消防庁舎に求められる5つの要件について質問したいと思います。

第1の要件は、消防技術の維持・向上に役立つことです。

全国消防救助技術大会

今回、消防庁舎について質問しようとした直接のきっかけは、消防士の訓練です。

みなさんもよくご覧になっていると思いますが、消防庁舎の狭い裏庭などで工夫して様々な訓練をしています。その努力に頭が下がるとともに、果たしてこのような窮屈な場所での訓練でいいのだろうか、こういう環境で十分な訓練が果たしてできるのかと疑問に思ったわけです。

一般財団法人全国消防協会が毎年、全国消防救助技術大会を開催しています。

この全国大会は、「救助技術の高度化に必要な基本的要素を練磨することを通じて、消防救助活動に不可欠な体力、精神力、技術力を養うとともに、全国の消防救助隊員が一堂に会し、競い、学ぶことを通じて、他の模範となる消防救助隊員を育成し、全国市民の消防に寄せる期待に力強く応えることを目的としています」*3)

この大会は陸上の部と水上の部があり、陸上の部の訓練は、隊員一人ひとりが基本的な技能を練磨する「基礎訓練(2種目)」と、隊員個人の技能とともに隊員間の連携を練磨する「連携訓練(5種目)」、さらに、使用器材や訓練内容を定めず出場隊員の創意工夫のもと訓練想定から救助方法までを披露する「技術訓練」の全8種目があります。
 
基礎訓練は、はしご登攀(とはん)とロープブリッジ渡過です。


はしご登攀(とはん) 上下とも 郡山地方広域消防組合フェイスブックより

 

 

はしご登攀は、隊員が命綱を装着し、高さ15メートルの垂直はしごを安全、確実、迅速に登る訓練であり、ロープブリッジ渡過は、水平に張ったロープ20メートル間、往路は下を向いてのセーラー渡過、復路は空を向いてのモンキー渡過を行う訓練です。

セーラー渡過 伊達地方消防組合消防本部HPより

モンキー渡過 伊達地方消防組合消防本部HPより

 

連携訓練は、①ロープ応用登攀、②ほふく救出、③ロープブリッジ救出、④引揚救助、⑤障害突破、の5つです。

そこで伺います。

〔質問①〕 当町の消防本部は、全国消防救助技術大会に参加しているのでしょうか。また、基本とされている、はしご登攀とロープブリッジ渡過の訓練は、当町ではのようにしているのでしょうか。連携訓練5種目については、どうでしょうか。

消防長 現在の消防庁舎は、1976年3月に竣工し、旧耐震基準により建築された施設のため、2006年に耐震改修工事を実施し、今年度で50年目を迎えます。また、職員定数は29名から現在は62名、消防車両も、5台から13台に増えている状況です。

当町は平成5年度から中国地区消防救助技術指導会の陸上の部「ほふく救出」という種目に出場し、現在まで全国消防救助技術大会へ4回出場しています。
 
はしご登はんとロープブリッジ渡過を含めた連携訓練は、種目に適した訓練施設やスペースが無いので、当該種目には参加していません。

訓練の重要性

二見議員 訓練は一般的にも大切ですが、火災に対する訓練は特別の重要性があります。

府中町の火災発生件数は、2020年8件、2021年7件、2022年3件、2023年6件、2024年10件。その大半は「ぼや」です。

先ほども述べたとおり、全国的にも大きな火事は 大地震のとき以外はめったにありません。そのことはもちろん良いことなのですが、消防士が現場で経験を積むこともできません。ですから、訓練によって対応力をつけるしかないのです。
 
消防・防災・レスキューの専門誌『Jレスキュー』のサイトを見ますと次のように書かれていました。

 

「近年、建物の高気密高断熱化により、消防活動中の職員の受傷事故――けがを負うわけです――が増加傾向にある。その反面、火災件数は減少傾向にあることから、若手消防職員が実際に炎上する建物内部へ進入し、消火活動を行う機会は多いとはいえない。しかし、現場に安全な場所など存在せず、経験を積んでこそ、実災害現場で的確な判断と技術が発揮できる」*4)

 

 日頃の訓練が大切だということです。

*4)「消防隊の経験値をUPさせる『移動式模擬家屋訓練施設』」 Jレスキュー2021年11月号

訓練塔の必要性

多くの消防本部には訓練塔があります。先ほどのはしご登攀やロープブリッジなどは訓練塔を使ってやるわけです。

訓練塔には、高さやできる訓練内容がさまざまあります。

横浜市消防訓練センター

横浜市消防訓練センターには2つの訓練塔があり、高さ31.8メートルの高層訓練塔は9階建てで、

【2階】消防用設備等習熟訓練、

【3階】火災現場に近い環境を再現できる模擬消火訓練装置(AFT)を用いた消火・救助訓練)、

【4階】濃煙熱気下(のうえんねっきか)での人命検索訓練、

【5階】レイアウト変更可能な訓練室での消火・救助訓練、

【7~9階】はしご車による救助訓練、

【屋上階】ヘリコプターによる救助訓練などが出来るようになっています(1・6階はポンプ室や倉庫など)。

さらに高さ20.1メートルの救助訓練塔があり、この訓練塔では崖地からの転落を想定した救助訓練、マンホールなど狭い空間を想定した救助訓練、ロープでの救出を想定した救助訓練などが実施できます。

北広島町や今年(2025年)7月に竣工した岡山県新見市の新庁舎の訓練塔は5階建てです。

北広島町消防庁舎

新見市消防庁舎

全国消防救助技術大会の登攀訓練は高さ15メートルですから、5階以上の高さがなければなりません。また、北広島町の場合は本庁舎とのあいだで、新見市の場合は副訓練塔とのあいだで、ロープブリッジ渡過訓練ができるようになっています。

なお、訓練塔の立地についてですが、訓練塔を消防署と別の場所につくることも考えられます。しかし、消防庁舎と別の場所では、出動に支障をきたすので敷地内に整備することが必要だと考えます。

そこで伺います。

〔質問②〕県内で訓練塔のない消防本部はありますか。また、府中町消防として、訓練塔はどのようなものが必要だと考えていますか。

消防長 まず、県内消防本部の訓練塔の設置状況を見ると、府中町を除いた県内12消防本部では訓練塔が整備されています。

なお、本町は、訓練塔が無い代わりとして、府中町消防団第2分団詰所での放水訓練や広島県消防学校の実践的訓練施設を活用した火災防ぎょ訓練、他の消防本部の訓練施設を活用した他本部との合同救助訓練、また、他県の非営利民間法人が主催する実践的火災防ぎょ訓練へ職員を派遣することにより、知識技術の習得を補っています。

次に、必要な訓練塔の機能としては、ロープを渡ったり登るといった訓練塔よりも、より実践的な火災や救助事案に対応できる、具体的には崖地からの転落を想定した訓練や、ロープを活用し視界が無い状態でも逃げ遅れた人を救出する人命検索訓練、実際に室内を燃やし、濃煙熱気の環境下での屋内進入の訓練や放水訓練ができる機能が備わっている訓練塔を考えます。

現在、高気密高断熱住宅の増加や近年激甚化する災害の状況下において、全国的に見ると消防職員の殉職や負傷者が発生しており、消防職員の安全を担保する上でも、実践的な訓練施設は必要と考えます。

また、日ごろから容易に訓練ができる施設、訓練スペースの確保も視野に入れ、調査研究してまいります。 

2-2.堅牢で災害に強いこと

第2の要件は地震や水害など災害に強い堅牢な庁舎であることです。

庁舎は耐震工事がされていると思いますが、それでも震度7クラスの地震が来れば相当なダメージをうけるのではないでしょうか。

また、榎川や八幡川は天井川で越水の可能性があり、高潮*5)も心配です。現在の庁舎のあたりは高潮の最大予想が1~3メートルで、そのクラスの高潮が発生すると、通信指令室、車庫、仮眠室などがある1階は水に浸かります。

*5)台風に伴う風が原因で起こる「吹き寄せ効果」と、台風が接近して気圧が低くなって起こる「吸い上げ効果」などで、海面が上昇する現象。

 

過去の大地震による被害事例をみると、1階に車庫がある庁舎では、柱が損傷し、車庫部分が潰れて車両が出場できなかった例や倒壊は免れたものの車両の出動に困難を生じた事例があったといいます。2004 年に発生した新潟県中越地震では、消防庁舎の横揺れにより消防車両が柱に接触し、職員が挟まれてもおかしくない事例もありました。

海部東部消防組合消防本部 完成予想図

 

そのような経験から、愛知県海部(あま)東部消防組合消防本部の新庁舎は、庁舎棟と車庫棟を分け、浸水時には緊急車両のすべて(15台)を車庫棟屋上にに退避できるようにしています。また、愛知県豊川市では、現在建設中の消防庁舎建設(2024年8月着工、2027年11月竣工予定)に当たり、車庫について次のような課題と対応策を掲げています。

・「車庫は、地震の揺れで車両同士がぶつかることがないよう離隔距離を確保し、新たな車両の配備にも対応できるスペースが必要である」ので、「間口を広く確保し、原則として、優先緊急車両8台以上が横一列になる配置を検討する」、「車両と柱、壁の間隔、車両ごとの間隔を十分確保し、出動時に防火衣着装や隊員のすれ違いに十分な広さを確保する」。

・「安全かつ迅速な出動態勢を整えるために、出動する隊員同士が緩衝〔干渉か?〕しない――ぶつからないような――スペースを有した出動準備室や資器材収納庫などの付帯施設を最適な位置に配置する必要がある」。

・車庫内は車両点検時の排気ガスによる職員の健康管理対策が必要である」ので「排気ガスを容易かつ効率的に排気できる構造又は装置を設置する。

そのほか、「出動を安全かつ容易にできるよう、前面道路と車庫の間に空地を設ける」「車庫〔の〕前後にシャッター等を配慮する。また、雨天時の出動準備、帰署後の処理を容易にするため、庇を設ける」「出動の多い車両配置を考慮したレイアウトに留意する」といった点が指摘されています。

そこで伺います。

〔質問③〕 地震や水害など災害に強い堅牢な庁舎という点で当町の消防庁舎はどのような問題、課題があり、新しい庁舎を「災害に強い堅牢な庁舎」にするためにどのような要件が必要だと考えますか。

消防長 先に述べました通り、消防庁舎は、今年度で50年目を迎え、耐震改修工事を行い耐震性は確保されているものの、経年劣化に伴う修繕は後を絶ちません。 

また、冒頭で述べた通り、消防庁舎建設当初の職員数は29名でしたが、現在職員定数62名で、消防の体制は拡充する一方で、庁舎内特に事務執務室の狭隘化が課題となります。消防車両も、当時と比較すると5台から13台になり、車両同士の間隔が狭くなり隣接する車両のドアを開放すると双方の車両で干渉することもあり、緊急を要する災害出動時等の支障となっています。

さらに、議員のご指摘のとおり、消防庁舎から見ると榎川や八幡川が天井川となっているため、津波や豪雨災害時には越水し、消防車両や警備通信室、仮眠室などが浸水する可能性があることから、浸水防止対策が必要です。

2-3.消防援助隊の受け入れ体制 

第3の要件は消防援助隊の受け入れ体制です。

1995年1月に発生した阪神・淡路大震災を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害における人命救助等をより効果的かつ迅速に実施できるよう、全国の消防機関相互による援助体制として、同年6月に緊急消防援助隊が創設されました。

創設当初1,267隊であった登録隊数は6,661隊(2024年4月1日現在)となり、地震、火災、土砂・風水害のほか、噴火や列車事故などのあらゆる種別の大規模災害に対して、発足から2024年11月までに45回出動し、人命救助活動等を実施しています。

南海トラフ大地震、首都直下地震及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの災害の発生が予想されるなか、緊急消防援助隊の充実強化を進めていくことが、ますます重要だとされています。

もしどこかで大規模災害が起きれば、当町の消防も緊急消防援助隊として応援に駆けつけるわけですが、当町で大規模な災害があれば全国の緊急消防援助隊の力を借りることになるわけです。

そのときに必要なのが受援体制――受け入れる体制です。緊急消防援助隊が迅速・的確に活動が行えるよう、必要な施設や設備を整備しておくことが必要です。大規模災害が発生した場合、消防対策部と指揮支援本部を消防局庁舎内に設置することになります。現消防庁舎であれば3階の講堂になると思いますが、現在、3分の1程度が倉庫となっており、スペースは十分とはいえません。

そこで伺います。

〔質問④〕 府中町で大きな災害があった場合、緊急消防援助隊をどこにどうやって受け入れるのでしょうか。

消防長 まず、大きな災害が発生し緊急消防援助隊の派遣を要請する場合は、広島県知事を通じて消防庁長官へ緊急消防援助隊の派遣を要請されます。その後、消防庁長官が必要と認めた場合は、予め決められた都道府県の応援隊が派遣されることになります。

次に、受け入れ先ですが、緊急消防援助隊府中町受援計画では、
府中町指揮支援本部は消防本部内に設置し、緊急消防援助隊の各県の責任者は、消防本部内へ受け入れることになります。また、活動隊の進出拠点は空城山公園としております。

 

2-4.災害に迅速な対応ができること

北広島町消防本部 通信指令室

第4の要件は、災害に迅速な対応ができることです。

この点で重要なのは通信指令室です。

通信指令室は、119番通報を受け出動指令、現場への指示を行い、関係機関への連絡、要請、職員及び団員の非常招集など、消防活動上最も重要な情報がいち早く入る場所です。

最近の指令室は「高機能消防指令システム」といって、正確な状況把握とスムーズな情報伝達を行うことで、より速やかな現場への到着と、適切な消火・救助活動を可能にします。119番通報の受付から出動、現場活動までの一連の消防・救急業務を、コンピューターと最新の通信機器を駆使して迅速かつ的確に行うことができます*6)

「携帯電話等位置情報通知システム」を装備し、携帯電話やIP電話から119番通報すると、音声通話とともに通報者の位置情報が自動的に通知され、消防局指令室の地図画面上に表示されます。土地勘のない人からの通報でも、迅速に通報位置を特定することができ、消防車や救急車の、より早い出動につながります。

北広島町の指令室は、こういう機能を備えた「高機能消防指令システム」となっていて、府中町とのあまりの違いに驚きました。

当町の指令室は1階の車庫の横にありますが大変狭く、通報の電話をとって、聞き取った内容から地図で場所を特定し、出動指令を出しています。出動編成はマグネットに名前が書いてあり、マグネットを動かして次の出動隊を決めるというやり方でした。
 
そこで伺います。

〔質問⑤〕 当町にも、「高機能消防指令システム」が必要と考えますが、町の考えをお聞かせ下さい。

消防長 当消防本部の警備通信室は、消防庁舎の1階のガラス張りの部屋になりますが、町民からの119番通報はすべてここへ通報されます。昨年1年間で2,790件(1日平均7.6件)の救急件数が発生し、火災や救助事案を含めると相当数の119番通報が入電することとなります。

それだけに、他の消防本部が整備している設備の中で最低限必要な設備は整備すべきと考えています。具体的には、管内図や必要な情報が大型モニターで表示されるディスプレイや、通報者の場所がモニター上に表示される位置情報通知装置、地図等検索装置は、出動から現場到着までの時間短縮及び確実性に繋がり、そのことで火災の延焼拡大の防止や傷病者の救命率の向上に繋がるものと考えています。

しかしながら、今現在の警備通信室の広さは9㎡であり、決して広いスペースとは言えないため、他消防本部が整備しているすべての機能を整備することは広さ的にも困難ですが、通信指令システムを更新する際には、必要な機能を精査し、取り組むこととします。

*6)119番通報から出動までの流れ。
①〔119番通報受付〕119番通報の受信と同時に、指令システムが稼働します。
②〔災害地点特定〕通報者の位置情報と通報内容を合わせて 災害地点を特定します。指令台の画面や大型表示盤には、災害地点の地図情報を表示します。
③〔出動隊編成〕災害地点や119番通報の内容から判断した災害種別(火災、救急、救助)に基づいて、現場により適した出動車両を選定し、自動編成します。
④〔出動指令〕消防署所に対して、合成音声による出動指令を送出するとともに、指令情報を送信します。出動車両に対して、指令情報と災害地点地図を送信します。
⑤〔災害現場活動〕出動部隊の動産情報や現場映像などの災害現場の状況を指令センターと共有しながら災害活動を行います。また、病院や警察 などの関係機関とも連携を図ります。
(新居浜市消防本部HPより)

2-5. 良好な執務環境の確保

第5の要件は、消防士が働きやすい、良好な執務環境が確保されることです。

2-5-1.女性職員のための環境整備

女性職員のための環境整備が急がれます。

2024年4月1日現在、女性消防士の数は全国で6,124人(前年比295人増加)。全消防士に占める女性消防士の割合は3.7%で、近年増加傾向にあります。当町では57人中2人です。

1994年の女子労働規準規則(現・女性労働規準規則)の一部が改正され、女性消防士の深夜業の規制がなくなりました。予防業務の他に、指令管制、 救急隊、消防隊などの業務にも携わっています。

しかし仮眠室ほか、女性のための執務環境はきわめて不十分なままです。トイレ、仮眠室、休憩室、浴室、洗面、洗濯室など、女性職員専用の諸室を今日にふさわしく整備する必要があります。

2-5-2 男性職員のための環境整備

当町の場合、男性職員の環境も決して十分ではありません。

仮眠室はもともと畳に雑魚寝だったそうですが、現在は2段ベッドで2人ずつパーテーションで仕切られてはいます。しかし通路側にドアはなく薄いカーテンがあるだけで天井側も広く空いており、音は筒抜けですし、プライバシーの確保もできません。

先日、仮眠室を拝見しましたが、よくこんな環境で我慢しているなというのが正直な感想です。

このような状態を放置することは、職員の安全衛生にとって問題であることはもちろん、職員採用や若手職員の定着にも悪影響を与える要素となりますので、抜本的な改善が望まれます。

個室化を進め、24 時間体制で勤務する職員に対して健康に配慮し良好な仮眠環境を整える必要があります。仮眠室の個室化は、新型コロナ感染症やインフルエンザ等の感染予防にも有効です。

2-6.人と環境に優しい庁舎

 第6の要件は人と環境に優しいことです。

2-6-1.バリアフリー化及びユニバーサルデザインの採用

 人に優しいという点ではバリアフリー化とユニバーサルデザインを採用することが必要です。開放的で圧迫感のないレイアウトにし、防災展示スペースや住民対応スペースを設けるなど、親しみやすさが感じられる庁舎が必要です。

2-6-2.地球温暖化問題への対応及び自然環境・生活環境の確保

環境に優しいという点では、再生可能エネルギーの導入、雨水の利活用や訓練水の再利用を図ること、庁舎の断熱性能を高めること、人感センサー、LED 灯などの使用によって省エネルギー化を図ることがあげられます。

ZEB――正式名称「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(Net Zero Energy Building)――は、省エネと創エネによって年間のエネルギー消費量を実質ゼロにすることを目指した建物をいいます*7)。2030年以降の新築建築物では、ZEB基準への適合が義務づけられる見通しですから――当町の消防庁舎建替がいつになるか分かりませんが――ZEB 基準を満たすことが求められるでしょう。

*7)住宅においては、ZEH(ゼッチ)net Zero Energy Houseという。ZEB同様に「エネルギー収支をゼロ以下にする家」を意味している。

2-7. 町民の防災意識・行動力向上のための機能

第7の要件は、町民の防災意識・行動力向上のための機能です。

防災意識啓発活動は、地域防災力の向上に不可欠です。

体験型の消火訓練や避難体験ができる施設、視聴覚機器を有効に使った防災学習ができる施設整備が必要です。

町内会や事業所単位で受講できる研修室や来庁者用の駐車場など、誰でも気軽に受講できる環境を整備し、定期的に火災予防や救急などの講習会を開催することにより、町民の防災知識と技術が向上し、災害に強いまちづくりを進めていくことに繋がります。

そこで伺います。

〔質問⑥〕 庁舎には、良好な執務環境の確保、人と環境に優しい庁舎、町民の防災意識・行動力向上のための機能が必要だと考えます。とりわけ、現在の庁舎では良好な執務環境が著しく損なわれており、庁舎の建て替えを待たずに早急に改善する必要があると思いますが、町の見解をお聞かせ下さい。

消防長 仮眠室や食堂等の職員の感染症対策、エレベーターや多目的トイレ、バリアフリー化されていないこと等から、高齢者や障害者の来署時の障害等、消防本部は幼稚園児から高齢者まで多数の方が来署される公共施設でありながら、設備が整っていないのも事実です。

今後、消防庁舎の建替えを見据えつつ、緊急性のあるものから随時、執務環境の改善に努めてまいります。

《2回目》

全国消防救助技術大会に「匍匐(ほふく)救出」一種目しか出場していない。他の種目の訓練に必要な、訓練塔やスペースがないからだということを知ってショックを受けました。

しかも県内13消防本部で、府中町消防本部だけ訓練塔がない。私は議員になって10年ですが、この事実に今まで気づかなかったことを反省しています。

緊急自動車の隙間にトレーニング機材が…

 

訓練という点で付け加えておきたいのはトレーニング室です。当町の庁舎にはトレーニング室がなく、消防車と消防車のあいだに筋トレのマシンが置いてあります。しかもこのマシンは大型ゴミで捨てられていたものを有効活用したというのです。部屋もなければ機械もない。創意工夫で乗り切っているわけです。

庁舎の耐震化工事はされているものの、老朽化に伴う改修工事が継続的に必要なこと、職員定数が竣工時の2倍になっていること、消防車両も5台から13台に増えていることなど全体として手狭になっているということです。緊急消防援助隊の受け入れ体制も十分ではない。通信指令室も時代遅れになっている。

職員の感染症対策、バリアフリー化、エレベーターがないことなど、様々な点から現在の庁舎が、早期の建て替えを必要としていることが分かりました。

 
今回、庁舎の建て替えの必要性について質問したわけですが、新たな庁舎建設待ちにせず、早急に改善しなければならないと感じたのは、仮眠室です。

天井が高く上部は広く空いていて、2段ベッドが6列。通路側はカーテンがあるだけでドアはない。プライバシーは全く守られません。

出動した職員が戻ってくると、はしごを登る音で眠りから覚めてしまう人もいると伺いました。

職員は仮眠室に月に12日から13日も泊まります。月の半分近くを仮眠室で寝泊まりするわけです。

こんな劣悪な環境に職員を置くことは、「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進」するという労働安全衛生法(第1条)の考え方に反しています。

消防庁が2021年8月に発出した通知*8)は、新型コロナウイルス感染症の流行によって業務の継続が困難となった消防本部が生じるなど、感染症流行時における消防力の維持・確保が課題となっているとし、「平時より万全な感染症対策」をとることを求めています。

その具体的な方策=施設及び設備の整備について8点*9)あげていますがその1番はじめに書かれているのが仮眠室の個室化です。

個室化は感染防止の効果が高い。コロナの場合には症状の出ない感染者もいて、無自覚のまま人にうつしてしまうことがあります。そういうことを防ぐわけです。

消防職員の安全と健康、快適な職場環境のために、また、感染症流行時における消防力の維持・確保のためにも個室化が必要です。

個室化を含む消防本部棟の感染防止対策には、地方財政措置として緊急防災・減災事業債(充当率100%)が使え、元利償還金の70%が地方交付税措置されます。有利な起債だと思います。

新庁舎待ちにならずに、新庁舎建設とは切り離して、一刻も早く仮眠室の改善、個室化を図って欲しいと思います。

*8)「感染症に備えた消防本部等の業務継続のための 施設及び設備の整備について」消防消第343 号 2021年8月 19 日。
*9)他の7つは以下の通り。①消毒室の整備、②事務室、食堂、待機スペース等の個別化、③トイレの整備、④洗面所の整備、⑤浴室の個室化、⑥救急資器材・資機材用備蓄倉庫の整備、⑦換気扇の整備

そこで伺います。

〔質問⑦〕 新庁舎建設待ちにせず仮眠室の個室化を実施すべきだと考えますが、町の見解をお聞かせ下さい。

消防総務課長 近年、消防署の仮眠室につきましてはプライバシーの保護や女性職員の働きやすい環境づくり、感染症対策から個室化が進んでおり、仮眠室の個室化は職場環境改善の観点から重要なものと認識しているところです。

そのため、消防本部としましても仮眠室の個室化について実施すべきと考え調査研究してまいりましたが現庁舎で完全個室化を実施する場合、新たに自動火災報知設備の設置も必要となる可能性があります。

新しい庁舎の建て替えを考慮し、可能な範囲で対策を実施するものとして検討を進めているところです。

また、これまで女性職員の働きやすい環境の点では当初救急隊仮眠室であった部屋を女性仮眠室に変更し、更に後の平成24年度には女性仮眠室を改修し、ユニットバス、トイレ付の仮眠室に仕立て直したものです。

感染対策の点では消毒室を設置するとともに非接触型自動水栓や換気扇を配置していますがプライバシーの観点では課題が多く、また完全な仮眠室の個室化と比較すると十分とは言えません。

繰り返しとなりますが、仮眠室の個室化は消防職員の快適な職場環境の重要な部分であることから、新庁舎建て替え時期を考慮しつつ、関係部署と調整を図りながら実施に努めてまいります。

 

《3回目》

 

仮眠室の個室化

仮眠室の個室化は消防職員の快適な職場環境の重要な部分であり、新庁舎建て替え時期を考慮しながら、関係部署と調整を図って進めていくという答弁でした。

確かに「新庁舎建て替え時期を考慮」することは必要です。仮眠室を改善しても、わずかな期間で建て替えとなれば余分な支出だと言われかねない。

しかし、基本計画の策定から竣工まで最低5年はかかります。私が調べた範囲では6年から8年ぐらいが多いようです。

当町の場合にはまだ建て替えそのものが決まっていないわけですから、新庁舎建設のときに改善するというのではまずいと思います。仮眠室の個室化は切り分けて、実施すべきであります。ネットで検索しますと、移設可能なユニット型の仮眠室もあるようです。

そのようなものもぜひ検討していただいて、1日も早く仮眠室の個室化をはかり、快適な職場環境にしていただきたいと思います。

相次ぐ火災

全国各地で火災が相次いでいます。

火災で恐ろしいのは煙だと言われています。

火災の煙には、一酸化炭素などの有毒ガスが含まれており、この煙を吸うと身体のまひなどで避難ができなくなり、短時間で死に至る。火災が起きたとき、消防士はそういう煙の中に突入し、救助することが求められるわけです。場合によっては自らの死を招くかもしれない。だから、平時における十分な訓練が求められており、訓練塔やトレーニング室などの条件整備が必要です。

南海トラフ大地震

12月8日には青森県東方沖地震(M7.5)が起きました。12日までの間に67回余震があり、そのうち震度3以上が9回です。日本列島は1995年の阪神・淡路大震災以降、本格的な活動期に入っていると言われています。大地震がいつどこで起きてもおかしくありません。 

〔2025年12月〕13日付「中国新聞」に出ていましたが、広島県は、南海トラフ大地震の新たな被害想定をまとめました。

府中町の被害想定は、直接死37人、災害関連死37人~74人、全壊建物560人となっています。あくまで想定であり、実際に被害がどうなるかは、起きてみないと分からない。

いま求められるのは、できる限りの準備をして被害を最小限にとどめることです。そのためには、消防庁舎の建て替えを急いで準備することが必要です。

早期に基本計画の策定を

南海トラフ大地震をはじめとする自然災害、火災・救急に対応できる庁舎――21世紀後半の日本と府中町を視野に入れた、庁舎建設が求められています。

北広島町の新庁舎は昨年11月に竣工し、海田町にある安芸消防署も基本計画、実施計画が決まり、来年(2026年)着工で2028年から新庁舎の運用が始まります。当町でも基本計画の策定を急ぐべきです。

そのことを再度強調して、私の質問を終わります。


《参考文献》
宮崎市「消防局庁舎のあり方検討結果について」2021年
「草加消防署の基本方針」2021年
「豊川市消防署本署庁舎整備基本計画」2022年
北広島町「消防本部・本署庁舎整備基本計画」2022年
愛知県海部東部消防組合「海部東部消防組合新庁舎整備基本構想・基本計画」2024年
横浜市消防訓練センター「訓練施設の整備更新について」2024年
「安芸消防署新庁舎整備に係る説明会 資料」2025年

 

ふたみ伸吾 ほっとらいん

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