行ってみて、見てみることが大切ですね。行政視察報告 2016/11/15-16
(あいさつする梶川三樹夫総務文教委員長)
●1日目(15日) 奈良県橿原市「大型商業施設における期日前投票所の設置について」
奈良県橿原市は人口12万4千人で、奈良市につぐ2番目の都市です。2016年7月実施の参議院選挙においてイオンモールほか6か所(市役所内、県立橿原高校、奈良県立医科大学、シルクの杜、かしはら安心パーク、イオンモール橿原)に期日前投票所を設け、投票者の利便性と投票率の向上を図りました。
※シルクの杜…浴場、温浴施設およびトレーニングルーム
かしはら安心パーク…橿原市民向けに消防・防災・防犯について訓練・学習する場
6月23日(木)~7月9日(土) 橿原市役所
6月27日(月) 奈良県立橿原高校
6月29日(水) 奈良県立医科大学
6月30日(木) シルクの杜
7月2日(土)~3日(日) イオンモール橿原
7月4日(月) かしはら安心パーク
イオンモールでの投票は7月2日239人、3日268人の計507人。担当者は「千人を超したがった」と残念がっていましたが、橿原市の期日前投票全体は2013年の参議院選挙に比べて135.5%増。奈良県平均の124.6%を10ポイント以上、上回っています。
イオンモールへの投票所設置のみならず、他の投票所の設置や橿原高校での「選挙出前講座」など、総合的な取り組みが功を奏したといえるのではないでしょうか。
橿原高校での「出前講座」は、高校に本物の投票箱、投票記載のための机などを寄付して、生徒会役員選挙に使ってもらい、体験型(ワークショップ)で選挙を理解してもらうとのこと。橿原高校での投票所には高校生19人、一般市民11人、計30人が投票しました。投票日当日に投票した高校生はもっといたことでしょう。各クラスの選挙管理委員がボランティア9人が事務作業にあたりました。担当者の方は「一番スムーズにいった投票所です」とうれしそう。
(橿原高校の投票所は新聞各紙で報道されました)
「投票所入場整理券」にも工夫があります。裏面に「期日前投票宣誓書」が印刷してあり、期日前投票がしやすくなっています。奈良県で初めてだそうです。「整理券」は封書で郵送し、「選挙のご案内」を同封し、その裏面には、期日前投票所の場所と時間が明記されています。
役場以外の期日前投票所においてクリアすべき課題は、LANが敷設されていない会場での選挙人名簿との対照(二重投票を防ぐ)でした。松山市の経験に学んで役場と投票所のあいだを電話でやりとりする仕方を採用。1分間に3人の対照ができ、「かなりスムーズにすすんだ」とのことです。
投票機会を広げ、投票率の向上をめざす。意欲的な取り組みだと思いました。
なお、イオンモールの会場使用料は無償貸与だそうです。
●2日目(16日) 京都市市民防災センター
京都市市民防災センターは、地震、火災、水害などの「災害時に不可欠な防災知識や行動を『見る』『聴く』『触れる』『感じる』ことで学ぶ」、体験型施設です。奇しくも阪神淡路大震災の起きた1995年にオープン。
京都市内からはもちろん、北海道から修学旅行生が訪れるなど全国各地から毎年、10万人を超す来館者があるといいます。
小学校からの参加が多く、訪れたこの日も小学生約100人が来ていました。自主防災会や消防団、子ども会、幼稚園、保育園、PTAなど年間、約1000団体が利用。個人も事前申込みなしで利用できます。入館料はありません。
入口で出迎えてくれたのは、ゴルフカートを改造した「こども消防隊」消防車です。全体として小学生を意識した施設で、「中高生の来館は少ない」とのことでした。
地震体験室、強風体験室、消火体験室、都市型水害体験コーナーなど自然災害の怖さを実感してもらい、「防災意識と行動力を高める」ことが目的になっています。
地下街が冠水する状況を立体映像で体験するコーナーに小学生とともに参加。迫力満点の映像です。
建設費は約39億円(土地16億円、建設費23億円)、京都市の全額出捐による財団法人、京都市防災協会が指定管理者となり、年間運営予算は2億円弱です。
京大防災研究所の協力のもとで、防災講演会、災害に強いまちづくり講座なども開催し、防火・防災講習も実施しています。
防災に関しても「自助→共助→公助」という序列が強調されるなかで、こういう体験型施設は、公的責任をより減ずるものになるのではと心配しつつも、「釜石の奇跡」※の経験は、一人ひとりが災害時にどのように対応するかがいかに重要かを教えています。小学生からの防災教育を充実させることは重要です。
しかし、一般会計年間約200億円の、わが府中町には39億円は無理ですね。
防災教育の充実と、そのための施設をどう身の丈にあった形で整備するのか。引き続き研究していきたいと思います。
※「釜石の奇跡」…片田敏孝・群馬大教授(災害社会工学)の指導で津波からの避難訓練を8年間重ねてきた岩手県釜石市内の小中学校で、全児童・生徒計約3千人が即座に避難し、生存率99.8%でした。
片田教授は行政による災害対策と住民の防災意識の関係について次のように指摘しています。「行政による災害対策や堤防などの社会資本が充実してくるほど、人間の意識が減退するという矛盾をはらんでいたからだった。住民はいつの間にか、津波警報が発令されても、結果として「到来した津波は数十センチ」という繰り返しに慣れてしまい、「本当に津波が来たときには、指示された避難所に行けばよい」と思う人が多くなり、さらには「それでも、堤防があるから大丈夫」という油断が生まれていた」
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