保育料の「無償化」にともなう問題点と待機児童解消について

9月議会一般質問(2019年9月10日)

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はじめに――限定つきの無償化

10月から幼児教育・保育の「無償化」が始まります。

無償化そのものは、すべての子どもに質の高い保育を格差なく平等に保障するために必要なことだと思います。

しかしながら、今回の「無償化」は、無償化とは言うものの、すべての保育や、幼児教育に関わる保護者負担がゼロになるわけではありません。3歳以上の保育園、認定こども園、小規模保育などの市町が設定する保育料は無償になります。しかし、あとでも述べますが制服代などさまざまな実費負担が施設ごとにあり、さらに、これまで保育料のなかに含まれてきた副食材費=おかずも実費徴収されることになりました。

今回の「無償化」は、幼稚園や認可外保育施設も対象になります。しかし、そこでの保育料は、それぞれの園が自由に設定しているため、すべてが無償、無料になるわけではなく、上限のある「利用料補助」というべきものになっています。また、今回の「無償化」は、住民税非課税世帯を除いて0~2歳児は対象ではありません。

このように、今回の幼児教育・保育の「無償化」にはさまざまな限定がついていることが第一の問題点であります。

消費増税とセットの「無償化」

第二の問題点は、「無償化」の財源を消費税に求めていることにあります。

政府は、消費税の「福祉目的化」「社会保障の安定財源確保」を進めています。これは消費税によって福祉予算・社会保障予算を充実させることではありません。

消費税だけでなく法人税や所得税ほか全ての税収を使って社会保障、教育予算を賄っているわけですが、それをやめて消費税収しか使わないようにするという意味です。

財務省の作った「消費税の使途に関する資料」には次のように書かれています

「社会保障・税一体改革により、消費税率引上げによる増収分を含む消費税収……は、全て社会保障財源に充てることとされています。しかしながら、社会保障4経費の合計額には足りていません」

これはどういうことか? 2019年度予算の場合、年金、医療、介護、子ども・子育ての「社会保障4経費」の合計が約30兆円で、消費税収が約15兆円。その差を財務省は「スキマ」と呼んでおり、これが15兆円になります。この「スキマ」を埋めることが、「社会保障の安定財源確保」です (*)。そして、これまで社会保障や教育に使っていた税収を他に振り向ける――大企業向けの減税、防衛予算などに使おうというわけです。

(*)9月4日付「中国新聞」一面は政府税制調査会の中間的な骨子について「社会保障維持へ安定税収を」という見出しをつけ「10月の消費税率引き上げ後も何らかの増税策が必要との考えをにじませる」と報じた。政府税調もさすがに消費増税目前に「さらなる消費税の増税を」とはっきり書くことはできなかったようである。

 

 

消費税は所得の低い人、収入の少ない人ほど負担の重い税金です。生協の調査でも、年収400万円未満世帯の消費税負担率は5.72%なのに対して1000万円以上の世帯は3.79%と2ポイントも違います。ですから、税率が上がれば上がるほど庶民の暮らしは苦しくなります。

消費税収は現在の8%で約15兆円ですので、スキマを埋め、社会保障と教育予算を全て消費税で賄うためには少なくても16%まで消費税を上げることが必要であり、そうすることが「安定財源」の確保なのです。

消費税で負担すべきだという中身も増やされました。2013年までは基礎年金、老人医療、介護の「高齢者3経費」を消費税でまかなうということでしたが、2014年からは先ほどの4経費になりました。2013年にスキマは10兆円ほどでしたが14年から15兆円へと1.5倍になったのです(下表参照)。

今回、10月1日からの増税にあわせて保育の「無償化」をスタートさせる。ねらいの一つは「保育予算を確保し、充実させるためには消費税の増税しかない」と国民に印象づけることです。だから安倍首相は5月9日の参議院内閣委員会で、「幼児教育・保育の無償化は消費税率の引き上げが前提。10月の消費税率引き上げが延期されれば見送る」と答弁したのです。

保育予算、さらには社会保障予算を充実させるのは消費税を上げるしかない、消費税の引き上げを拒めば社会保障の充実はできないということにしてしまう。今回の消費税10%への引上げとセットになった幼児教育・保育の「無償化」は、さらなる消費増税へ向けてのステップでもあるのです。

所得が多いほど無償化の恩恵を被る

第三の問題点は、所得が高いほど「無償化」の恩恵があるということです。生活保護世帯はもともと保育料が無料ですので負担は変わりません。

2号認定(保育園の3~5歳)標準時間の場合は、町民税非課税世帯の年間保育料は36,000円ですので、その分負担が軽減されます。

区分の最高である町民税所得割課税397,000円以上の場合は、年間保育料は384,000円で、副食費の負担が月4,500円ということになっていますので差し引き330,000円の負担軽減となる。

保育の無償化は所得の高い世帯ほど恩恵があり、消費税は所得の低い世帯ほど負担が重い。保育の「無償化」そのものが悪いわけではありませんが、消費税とリンクするとこのような問題があるわけです。

第四の問題点として、優先順位です。「無償化」より先にすべきことがあるのではないでしょうか。

なにより待機児童の解消のために認可保育園をたくさんつくることが求められています。保育士のなり手不足、中途退職をなくすために劣悪な賃金と労働条件といった処遇を改善し、低すぎる職員の配置基準を改めることも必要です。

この二つは緊急を要している課題であり、これらにこそ優先して予算を使うべきではないかと思います。

副食費の負担

今回の「無償化」で、有料化されたものがあります。それは給食の副食費(おかず)です。「無償化」を進めると言っておきながら副食材費をあらたに徴収するのは、あきらかに矛盾しており、逆行です。

これまで保育園では、公立・私立を問わず、すべての園児について保育活動の一環として給食が実施され、その経費は公立園では設置者である市町村が負担し、私立園では、市町村が支払う委託費に給食費用が含まれていました。政府は、今回の無償化を契機として3歳以上児給食の副食材料費を保護者の負担としました。

関係閣僚合意「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」(2018年12月28日)は、「食材料費の取扱いについては、これまでも基本的に、実費徴収又は保育料の一部として保護者が負担してきたことから、幼児教育の無償化に当たっても、この考え方を維持する」としています。

また、内閣府「幼児教育・保育の無償化に関する都道府県説明会」(2019年5月30日)配付資料23「幼児教育・保育の無償化の実施に伴う食材料費の取扱いについて」は、次のように述べています。

「①これまで保護者が負担してきた経緯のほか、②在宅で子育てをする場合でも生じる費用であること、③授業料が無償化されている義務教育の学校給食や④他の社会保障分野の食事も自己負担されていることを踏まえ、主食費・副食費ともに、保護者から徴収可能な費目に位置付けるとともに、事前に保護者に説明し同意を得ることとする」〔丸数字は二見〕。

副食費(副食材料費)有料化に道理はあるのか

一見もっともらしい説明ですが、いずれも道理がなく誤っています。

まず第一に、副食材料費を「保護者が負担」してきた事実はありません。

第二に、家で子育てしている場合でも昼飯代はかかっているということですけれども、給食は保育の一環であり、「保育所保育指針」にも「食育の推進」として位置づけられています。

そこには「保育所における食育は、健康な生活の基本としての《食を営む力》の育成に向け、その基礎を培うことを目標とすること」と書かれています。

厚労省の作った指針の解説には次のようにあります。

「各保育所は、保育の内容の一環として食育を位置付け、……健康な生活の基本として食を営む力の育成に向けて、その基礎を培うために、各保育所において創意工夫を行いながら食育を推進していくことが求められる」

単にご飯を食べさせればいいという問題ではない。家でもご飯は食べているからというのは大変、次元の低い論議であります。

四番目の社会保障分野についても同じです。

病院であればその給食は治療の一環であり、医療給付の対象となるべきものです。厚生省自身がかつては給食を「医療の重要な一部」「治癒あるいは病気回復の促進を図る」と位置づけ、公的保険による「療養給付」を行っていました。ところが1994年に給食を給付から外し、患者に負担を求める改悪がなされました。

1日3食600円からスタートして760円(1996年~)、780円(2000年~)、1080円(2016年~)と増え、現在は1380円(2018年~)と導入時の2倍以上になっています。自分たちが制度を後退させてきたものを他の制度を改悪する理由にするなどもってのほかです。

三番目の「授業料が無償化されている義務教育の学校給食」が有料だからという理由はどうでしょうか。この点については1951年、今から70年近く前、敗戦から6年後になされた国会の論議を紹介したい。

参議院・文部委員会で、「義務教育の無償をどの程度まで果すべきものだと考えているのか」という質問(1951年3月19日、共産党・岩間正男議員)に対して、辻田力(ちから)・文部省初等中等教育局長は、「憲法に定められている義務教育の無償をできるだけ早く広範囲に実現したいということは、政府としての根本的な考え方」だとはっきり述べました。

現在は授業料だけが無償の対象だが「そのほかに教科書とそれから学用品、学校給食費、さらには交通費も将来的には無償にしたい」と辻田局長は言っているんです。いまはまだ国力――財政力ですね――が足りないのでできないが、将来的には広範囲に無償化したいと答弁したのです。

ついでながら申しますと、このとき後に文部大臣になる内藤誉三郞(たかさぶろう)初等中等教育局庶務課長は、辻田局長の答弁を補足して「学用品の内容は相当広範囲なものでございまして、その中には鉛筆、ノート、クレヨン、用紙そのほかに定規、コンパスというふうな学校で使うところの教材は全部網羅している」と述べています。

鉛筆から定規、コンパスにいたるまでと、一つひとつ具体的に列挙している。教育にかかわる費用を広範囲にわたって無償化する強い意志が伝わってきます。「義務教育は、これを無償とする」という憲法26条の規定を当時の文部省は誠実に実行しようとしていた、ということも分かります。

その後日本は奇跡的とも言われる高度経済成長を達成し、「経済大国」とまで呼ばれるようになりました。しかし残念ながら、これらの答弁は実現することなく今日に至っています。

日本国憲法に基づく「無償化」、政府自らが授業料以外も広範囲に無償化したいと答弁したことを実行せず、サボタージュしてきたことを保育園の副食費有料化の理由にする。これも恥ずかしいことだと思います。

このように厚労省が副食費有料化の理由に挙げている四点はいずれも道理がありません。

副食費への助成を

今回の「無償化」は、所得の少ない世帯ほど恩恵が少ないわけですけれども、広い層にわたって負担が減らされるようになります。

しかし副食費がその対象から外れ、新たな負担になるわけです。

京都府内の自治体のように独自の助成が手厚くなされてきたところでは、もともとの保育料負担が少なく、副食費の有料化によって負担が大きくなったという逆転現象が起きているようです。当町の場合には逆転現象はなく、程度の差はあれ全ての所得階層で負担が軽減されています。

さらに町民税所得割57,700円未満(年収360万円未満)の世帯のお子さん、一人親家庭、障害者手帳を持っている家庭で、町民税所得割77,101円未満の世帯は副食費は免除されています。

しかしながら、免除より上の階層はこれまでの主食費に加えて副食費を払わなければならない。

厚労省の出した「目安」は主食費3,000円、副食費4,500円ですが、7月に公表した全国調査では、平均5423円(主食費703円、副食費4720円)となっています。仮に目安通りだとして、主食費を含め一人7,500円、二人ならば15,000円の負担です。これでは無償化の意味が半減です。

都道府県段階では全国で11県が副食費の無償化ないし一部助成を実施するそうです(7月現在、広島県調査)。東京23区の場合、主食費を含め全額行政が負担するのが13の区、主食費だけを行政が負担するのが3つの区、あとは8月8日段階では未定だそうです。

広島県内をみましても23市町のうち7市町、府中市、庄原市、安芸高田市、三次市、神石高原町、大崎上島町、安芸太田町が、全ての3~5歳児の副食費をが副食費を助成し無料にすると聞いています。江田島市や北広島町も対象は全員ではありませんが助成があるようです。

そこで、質問いたします。

①これらの自治体と同様に副食費を町で助成することは、保護者の負担をさらに軽減することになり、子育てしやすい町に近づくことになると思います。当町でも実施すべきだと思いますが、どのようにお考えですか。

福祉保健部長 議員ご指摘のとおり、令和元年10月1日より、幼児教育・保育の無償化に伴い、3歳から5歳の就学前子どもの保育料等は無料になりますが、従前の保育料に含まれておりました給食費の副食代は実費徴収されることになります。これは、自宅で子育てをおこなう保護者と同様に、給食に係る費用を負担することが原則とされたからです。

ただし、利用料の無償化と合わせて負担が増える世帯が生じないように、年収360万円未満の世帯および全所得階層の第3子以降の子どもからは徴収しない制度となっております。
これは、保育料が月額13,800円までの世帯を補えると見込めるため、無償化による負担増にならないように、国の制度でカバーできるものと見込んでおります。

実費徴収に伴う施設の負担増

ふたみ議員 つぎに副食費の実費徴収にともなう問題について質問いたします。

②実費徴収は各々の施設が行うことになっており、喫食率の把握など徴収実務が増え、滞納・未納への対応など保育士、幼稚園教諭、事務職員の負担が重くなるという問題も生じます。この点についてどのような対策をとるおつもりですか。

福祉保健部長 これまでも教材費等を独自で徴収されており、各施設とも事務に関する心配はないかと思われますが、今回の改正による追加の実費徴収部分について事務を明確にするなど、情報提供をしっかりしながら、施設及び保護者の皆さんの負担とならないようにサポートしていきたいと考えております。

さまざまな実費負担

ふたみ議員 三点目に、これは今回の無償化とは直接関係ありませんが、保育施設の実費負担について伺います。

保育園や幼稚園などでは副食費以外にも行事代、教材費、布団シーツ、制服制帽、通園バス、保護者会費など保育料以外に徴収される実費があります。この実費負担が施設ごとに違い、その差が大きいことが問題となっています。

「保育料以外の負担を考える会」という民間団体が京都市内の保育施設を対象に実施したアンケート調査によりますと、5歳児の場合、実費負担の平均年額が約36,000円。一番負担の少ない施設はゼロで最高額は14万円を超すんだそうです。

そこで三点目の質問ですが、

③今回、町内で無償化の対象となる施設(保育園、幼稚園など)の実費負担の現状はどうなっているでしょうか。教えて下さい。

教育・保育に必要な物品の購入に要する費用への助成

四点目に、日用品、文房具などの購入に対する助成について質問します。

副食費の有料化も加わり、保育料そのものは無償になっても、実費負担が増えていくのでは困ります

子ども・子育て支援法第59条に「所得の状況その他の事情を勘案して市町村が定める基準に該当する」世帯に対して、「日用品、文房具その他の教育・保育に必要な物品の購入に要する費用又は特定教育・保育等に係る行事への参加に要する費用その他」について助成することが規定されています。

そこで質問ですが、

④当町における助成の基準はどのようになっているでしょうか。あわせてお答え下さい。

福祉保健部長 町内には保育園が5園、認定こども園が1園、小規模保育事業等が4施設、私学助成幼稚園が5園、認可外保育施設が3施設あります。

全園とも民営事業者で、特色ある保育・教育を実施されており、議員ご指摘のとおり、教材費、制服代、事業代など園でばらつきがあります。
また、0歳児から5歳児までを対象とする保育所等では、年齢によっても負担額に違いがあります。

しかし、現在も、無償化に関係なく徴収されている経費ですので、現行どおり徴収されているようでしたら、問題は生じないと思います。今後は、過度に徴収金があがることがないように、監査等で注視してまいります。

議員ご指摘の助成制度は、子ども・子育て支援新制度では、地域子ども・子育て支援事業の13事業に位置付けられた「実費徴収に係る補足給付を行う事業」でございます。

この13事業は、子ども・子育て支援事業計画の中で、提供体制の確保の内容及び実施時期を定めなければならない事業ですが、「実費徴収に係る補足給付を行う事業」については、任意事業であることと、保育所入所支度に要する費用(布団カバー、帽子、スモッグ、運動靴、かばん、制服、弁当箱等)が生活保護で必要経費として認められていることなどから、平成27年度の計画策定時には、事業の実施に至りませんでした。

今年度が計画の見直しの年でもありますので、ニーズ調査の結果も踏まえながら、事業内容についてしっかりと検討してまいります。

劣悪な保育にならない歯止めを

 

ふたみ議員 五点目に無認可施設について伺います。

今回、無認可施設を含め広く「無償化」することになっています。待機児童が多く、無認可施設にしか預けることができない保護者にとって喜ばしいことであると同時に問題もあります。無認可施設は、保育士の配置、施設の面積などの点で認可施設より不適切な環境におかれている場合が多い。

内閣府の調査によりますと、去年1年間に全国の保育施設などで起きた子どもの死亡事故は9人でそのうちの6人が無認可、1人が家庭的保育事業でした。内閣府の資料を元に計算すると1000施設あたりの死亡事故は、

・認可保育園(2人)   0.085 / 1000
・認可外保育施設(6人) 0.78 / 1000
・家庭的保育事業(1人) 1.06 / 1000

施設数で比較すると認可外施設は認可保育園の10.5倍死亡事故が多いことになります。

さらに利用児童数1万人あたりで計算すると、

・認可保育園  0.01 / 1万人
・認可外保育施設 0.27人/ 1万人

子どもの数で比較すると認可外施設は認可保育園の実に27倍も事故が多いのです。

もちろん、認可外施設の全てが悪いというわけではありません。頑張っているところもある。しかし、保育士の有資格者の数、施設の面積などの最低基準が異なり、同じ保育とは言い難い現実があります。

厚労省が2006年に実施した調査によりますと、認可外保育施設の保育従事者のうち保育士資格をもつ人の割合は約6割にすぎません。全員有資格者の施設が2割強ある一方で50%未
満の施設も2割強あるのです。

補助金を出すことは町にも責任が生じます。

そこで五点目の質問ですが、

⑤無償化の対象となる無認可施設へ立ち入り検査の強化など、保育の質確保に向けた取り組みを何かされていますか。

福祉保健部長 町内には認可外保育施設が3施設ありますが、毎年指導監督に入っており、適正に保育が行われていることを確認しております。

また、平成29年度より、認可外保育施設に対して、職員の衛生・安全対策補助金として、職員の定期健康診査の費用の一部助成及び腸内細菌検査費用を助成して、衛生管理をサポートしております。大切なお子さまをお預かりする保育施設として、今後も指導・支援を継続してまいります。

大型マンション建設と待機児童

ふたみ議員六点目に待機児童の問題について質問いたします。
町内には、100戸以上のマンションが現在3つ建設中で、その総戸数は600近くになります。これら3つのマンションは2020年から2021年にかけて入居が始まる予定です。

◆アルファステイツ府中大通(128戸/2020年6月入居開始)
◆ジェイグランディア府中向洋(284戸/2021年3月入居開始)
◆ザ・府中レジデンス(172戸/2021年5月入居開始)

また、戸数は分かりませんが宮の町2丁目下榊公園南側の広い土地にもマンション建設の看板が掲げられています。

3つのマンションの広告には「独自の子育て支援策が充実している府中町」「子育て世代に嬉しい、府中町の取り組み」「幼稚園や保育園等の施設も徒歩圏内に多く子育て環境も整っています」と書かれており、これらマンションの住民として、小さなお子さんをもつ、あるいはこれから家庭を築いていく若い夫婦が想定されています。

下榊公園南側のマンションはどの程度の規模になるか分かりませんが、かなり大きそうです。それ以外にも戸建てや10~15軒の賃貸物件もあちこちに造られています。

3つのマンションに限っても、約600世帯が増え、これに平均出生率の1.44をかければ800人以上の子どもが増える計算になります。現在は保育園、幼稚園、在宅などそれ以外の比率はほぼ3分の1ずつです。そうすると新たに約300人の子どもたちを保育園に受け入れる必要がある。
保育の無償化に伴い、保育園に子どもを預けて働こうという保護者の比率も高まると予想され、そうするとさらに保育園が必要となるでしょう。

来年4月から新しい保育園ができます。その努力を高く評価したいと思います。しかしながら、このような状況を考えると、120人の定員増では待機児童は解消せず、増えることになるでしょう。

六点目、最後の質問です。

⑥来年には新しい「府中町子ども・子育て支援事業計画」が作られると聞いています。待機児童を出さないためには保育園のさらなる建設が必要だと考えますが、町の考えをお聞かせ下さい。

福祉保健部長 議員ご指摘のとおり、平成27年に策定しました「府中町子ども・子育て支援事業計画」は、今年度が5年計画の最終年度となり、来年度から新しい計画策定に向けて、現在、ニーズ調査を実施し、子ども・子育て会議の意見を伺いながら、内容を精査しているところです。

現在、来年4月の開園をめざして、定員120名の新しい保育園を建設中です。保育園の新設にあたっては、府中町の人口推計及びマンションの建設予定等も勘案し、定員を設定いたしましたが、今後も、さらなるマンションの建設、女性就労率の上昇、10月1日から開始される幼児教育・保育の無償化の影響など待機児童が発生していくと思われる様々な要因が予想されます。計画で設定する「見込み量と確保方策」についてもしっかり検討して設定してまいりますが、今後、見込みが大幅に変わるときは、修正しながら、対応していきたいと考えております。

 


《第2回目の質問》

(1)

残念ながら副食費について町独自の助成はしないという答弁でした。国の制度によって免除される子どもの数は、保育園・認定こども園が138人、幼稚園も138人で、3歳~5歳児(保672人、幼776人)のほぼ2割になります。先ほども申しましたように全国や県内で全児童の副食費を免除する自治体があります。それらの動向もみながら町としてどうするのかよく検討して下さい。

また、本来であれば副食費を含めた無償化は国が進めるべきものです。県内の他の町と協議して無償化を求めてほしいと思います。

(2)

実費徴収にともなう実務の負担増については、施設や保護者の負担にならないようサポートするという答弁でした。ぜひそういう方向で頑張っていただきたいと思います。

この実費徴収にかかわって3点質問いたします。

一つめは、全国で給食費の滞納を児童手当から徴収する動きが進んでいることです。

給食費というのはどこでも未納・滞納問題がある。学校給食の場合ですと未納者の割合は、小学校0.8%、中学校0.9%となっています(文科省「学校給食費の徴収状況に関する調査の結果について〔2016年度調査〕」2018年7月27日発表)。

未納の主な原因についての学校の認識――あくまで認識ですが――は、「保護者としての責任感や規範意識」に問題があると考えられるケースが68.5% で、「経済的な問題」だと考えられるケースが18.9%だと答えています。私は、「責任感や規範意識」に問題があると学校側が判断している未納者のなかにも経済的な状況がよくないケースが含まれているのではないかと考えます。
学校給食の場合、生活保護世帯と就学援助世帯は給食費が免除されます。

それでもなお、1%近い家庭が経済的な問題で給食費が払えない。そして、少なくてもその2割が経済的な理由だと学校側も判断している。こういう状況ですから、世帯収入360万円未満の世帯が副食費を免除されても、未納、滞納問題が発生する可能性がある。

文科省は当然このことを想定しており、「幼児教育・保育の無償化の実施に伴う食材料費の取扱いについて」においても「副食費の徴収を施設が行うこととなった場合、滞納者が多く出れば、施設の運営にも悪影響が出る」と述べています。

だから滞納を生まないために、児童手当から副食費の徴収が可能だという話になる。しかしながら、児童手当の支給要件や金額などが定められている「児童手当法」第15条には「児童手当の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない」とあります。

もちろん文科省はこのことも知っていますので、児童手当からの徴収は「あくまで任意」であり、児童手当「受給者からの申し出に基づく」としています。

ところが、千葉県市川市は、給食費を滞納した際の児童手当からの徴収を認める「申出書」の提出を市立保育園の児童の保護者全員に求めています。「赤旗」が全国20の政令市に滞納した場合の対応を尋ねたところ、堺市と岡山市は児童手当から徴収する方向で検討中、さいたま、千葉、新潟、大阪の各市も検討中と回答。13政令市が現時点で「検討していない」と回答しています。(「しんぶん赤旗」2019年9月2日付)。

「家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資する」という児童手当の目的からいっても、児童手当受給権の保護の観点からみても、児童手当からの徴収を認める「申出書」を強要することは許されません。

そこで質問です。

①副食費について児童手当から徴収することについて、町はどのように考えているでしょうか。
また、②児童手当からの徴収は「あくまで任意」で受給者からの自発的な申し出に基づくということを厳格に守らなければならないと思いますが、町の認識を伺います。

子育て支援課長 ①現在、副食費について、児童手当からの徴収は考えておりません。しかし、今後、滞納者が増えるような状況になった場合、受益者負担の公平性の観点から、制度を利用することも検討して参ります。

②児童手法の規定により、児童手当から保育料を特別徴収が可能です。現在、保護者の同意を得たうえで、保育料については、特別徴収を行っているところでございます。この認識に基づき、副食費についても保護者の同意を得たうえで行うこととなりますので、申出書を強要することはありません。

ふたみ議員 内閣府は、「10月からの特定教育・保育の費用告示案」を8月22日付で各自治体に送付しました。そこには副食費の実費聴取にともない保育所、認定こども園などの3~5歳児の公定価格を5,090円引き下げるということが通知されています。

※この引き下げは9月18日付通知で撤回されました。

実費徴収の目安は4500円であり、免除対象者に実費相当分として支払われる副食費徴収免除加算も4,500円としています。保護者から受け取るのが4,500円なのに国からの運営費は5,090円も減らされる。その差は児童一人あたり月額600円、年間7,200円となります。3歳以上の子どもが100人いるならば年間70万円を超す減収です。

③この減収は保育園や認定こども園の運営に支障をきたすと思いますが町としてどのように考えているのか、なにか対策を講じるつもりがあるのか伺います。

子育て支援課長 町から保育所、認定こども園等に支給している施設型給付費は、国が定めている公定価格に基づいて算定しているところです。このたび、教育・保育の無償化に伴い、3歳以上児の副食費が保護者から直接徴収することによる減額分(5181円)、及び消費税引き上げによる増額分の改定があり、3歳以上児については月額約5,100円程度の減額が示されているところです。

施設が保護者から徴収する副食費は4,500円を目安に各施設で決定しますが、年収360万円未満相当世帯及び第3子以降の副食費免除対象者に対する町からの補填は1人月額4,500円となり、先ほどの5,100円とは600円程度差が生じています。

この差額については、国の方針ではチーム保育推進加算、栄養管理加算の要件緩和及び価格改定等をし、これらの加算を適用することにより解消する方針です。町といたしましても国の方針に基づいて対応する予定です。

ふたみ議員 ④教材費や制服代などの実費徴収についてですが、各園でばらつきがあるという答弁でした。ぜひ各園ごとの実費徴収について調査をして頂きたいと思いますが、どうでしょうか。

子育て支援課長 無償化は、幼児教育の負担の軽減を図る少子化対策の観点などから取り組まれるものでありますから、各園ごとの教材費や制服代などの実費徴収の調査を行います。

ふたみ議員 補足給付事業は2015(平成27)年には実施に至らなかったという答弁でした。理由の一つとして生活保護制度で保育所入所支度に要する費用が認められていることを挙げられました。そうであれば、小中学校の就学援助の基準――当町の場合には生活保護基準の1.2倍――に対象者を広げれば、補足給付事業の主旨が生かされるとともに保護者からも喜ばれると思います。ぜひ就学援助基準での補足給付事業を実施する方向で検討して頂きたいと思います。

(3)

無認可施設への立ち入り検査の強化については、「毎年指導監督に入っており、適正に保育が行われていることを確認している」「今後も指導・支援を継続していく」ということで安心しました。

この9月定例会で「府中町子ども・子育て支援法施行条例」が一部改正され、「子育てのための施設等利用給付」の給付を受ける者又は施設等を運営する者等が、正当な理由なく、町から求められた報告をしない場合には過料を課す規定が設けられました。

現在は認可外が3施設ですが、待機児童が増れば認可外施設も増えていくことになるでしょう。町内3施設は問題がなく指導も行き届いているようですけれども、全国的には指導監督に問題があります。

2016年度に立入調査を実施した4,771か所の施設のうち、指導監督基準を満たさないものの割合は約41%であるにもかかわらず、改善勧告を行ったものは6か所で、公表、事業停止命令、施設閉鎖命令を行ったものはない、というのが実状です(参議院内閣委員会2019年4月23日、田村智子議員に対する政府答弁)。

認可外保育施設・事業で子どもを失った保護者の方々は、認可外施設を無償化の対象にすることについて大変危機感をもっています。

「保育ママ」事業を使い、生後4カ月の長男颯生(そうせい)ちゃんを亡くした須田博美さんは、「最低限の基準すら守れないところは排除しないといけない。事故が起きたら、(預けた方と預かった方の)双方の人生が壊れてしまう」「どんどん認めてお金を出して安心感を与えながら、有事の際は個々の保護者の自己責任としてうやむやにするのは、国のやることではない」とシンポジウムで訴えました(「朝日新聞」2019年4月9日)。

子どもの命は壊れやすく。失われた命は戻ってきません。改正された条例を生かし、事故がないよう、引き続き指導監督をしていただきたい。

(4)

大型マンション建設にともなって待機児童が増えるのではという質問に対して、しっかり検討していくという答弁でした。

このままいけば多くの待機児童が増えるのは目に見えています。足りないからといってすぐに保育園が建つわけではない。そのことは十分ご承知でしょうから、後手後手にならないようにしていただきたいと思います。

以上、2回目の質問です。


《第3回目の発言》

ふたみ議員 さまざまな問題を抱えた幼児教育・保育の「無償化」が3週間後にスタートします。保育園や幼稚園などの事務の負担増についても質問しましたが、子育て支援課の仕事量も「無償化」によって相当負担が増えるのではないか心配しております。

膨大な仕事を抱えることは、メンタルヘルス(精神的健康)不調をもたらす最大の要因です。

厚労省が毎年行っている「労働安全衛生調査(実態調査)」(2018年)で、「強いストレスを感じている」と回答した労働者の割合は約6割( 58.0%)。その要因の一番目に「仕事の質と量」(59.4%)を挙げています(*)。

*2番目が「仕事の失敗、責任の発生等」( 34.0%)、3番目が「セクハラ・パワハラを含む対人関係」( 31.3%)

日本の多くの労働者が「仕事の質と量」に対して日常的に負担に感じている。要するに働き過ぎであり、限界を超すとメンタルヘルス不調になるわけです。当町も例外ではありません。現時点でもメンタルヘルス不調で休職されている職員がいます。本人にとっても町にとっても大きな損失です。

「子育て支援課」だけの問題ではありませんが、メンタルヘルス不調の職員を増やさないためにも、また町民のみなさんに喜んでいただける業務執行のためにも職員増を要望して私の質問を終わります。

 


《参考文献》
全国保育団体連絡会・保育研究所編『保育白書2019』(ひとなる書房)
中山徹『だれのための保育制度改革』(自治体研究社)
同「政府・自治体が進める保育制度『改革』の全体像と対抗軸」(『住民と自治』2019年5月号)
逆井直紀「待機児童解消と規制緩和」(同上)
田中智子「保育無償化政策により子育て世代に生じる問題」(同上)
田中智子ほか編『隠れ保育料を考える』(かもがわ出版)
田村和之「保育所給食費の保護者負担の法学的検討」(『保育情報』2019年8月号)

 

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