第5は、町の相談窓口へ相談した形跡がないから、「パワハラがあったかどうか疑わしい」とする手口です。
議会の自律権が分かっていない
田中議員は次のように書き、述べています。
「『概要』35項目のほとんどが3~4年前の出来事である。ハラスメント被害は、町の総務課長を窓口とする相談申出ができ、ハラスメント苦情・相談処理委員会(県の人事委員会への申出も可)が対応措置する。それらがされた報告がない」(文書①2頁)
「もともと、パワハラだとか、不当要求だとか、そういうのを受けたという場合であればですね、町にはちゃんと先はどの要綱が、ハラスメントに関する要綱、あるいは不当要求に関する要綱が定めてあって、町の総務課長を窓口として、そこを受け付けて、それを処理して、解決を図る窓口があるわけですよね。本当に解決を急がれるんであれば、そこも通してですね、やった方がその被害があるなら、本当にやった方が早いと思うわけですけれども」(会議録12頁)。
田中議員がこのような発言をするのは、議会の「自律権」について全く理解していないからです。
2021年2月19日に開かれた全員協議会で、不当要求やハラスメントを議員が順守しなければならない政治倫理基準に含むとすることが決まりました。
説明にたった議会運営委員長は次のように述べています。
「議員の皆さんは現在でも当然こういった行為をしてはいけませんが、もしこれらの行為があったときは、議会は自ら自律権を発動させるべきですので、要綱とは別に政治倫理基準を適用することを申し合わせることによって、こういったことが起こらないようにするべきことを目的とするものです」(審査会資料3、7-8頁)。
議会の自律権とは、一般にはなじみのない言葉ですが、「議会が国や県の機関やその町村の執行機関からなんらの干渉や関与を受けないで、自ら規律する権限」(全国町村議会議長会編『議員必携』)です。
また、自律権には「①規則の制定、②議会の開閉及び会期の決定、③規律の維持、④懲罰、⑤議員の資格決定等があげら」れています(同)。
議会のなかで繰り広げられているパワハラ・不当要求についての問題を町執行部の機関に委ねるのではなく、審査会は「自ら規律する権限」を発揮して問題解決にあたろうとしている。
そのことを理解しているから職員は相談申し出を行っていないわけです。
「医務室の保健師に田中議員を指名して最初から相談をした」職員がいるという証言もありました(第3回審査会)。
田中議員に対して相談事例や処理委員会が開催された「報告がない」、田中議員が「知らない」からといって、パワハラ・不当要求がなかったという証明にはなりません。
さらに田中議員は、倫理請求(倫理委員会の開催?)は「被害の救済」より「対象議員への追及」の方が強い、という珍説を述べています。
何が言いたいのか「ちょっとよくわからない」ですね。
「倫理請求自体はその被害の救済というよりはですね、対象議員への追及の方が強いわけですからね。どちらに重きを置いておられるのか、私はちょっと何かよくわからんわけでありますね」(会議録12頁)。
倫理審査委員会には被害の救済以外の目的、意図があると言わんばかりです。
ごまかす手口 その3 「きつい言葉づかい」をパワハラから切り離す
出典について
1月17日提出「田中説明」(文書①と略記)
1月23日第2回審査会会議録(会議録と略記)
2月8日提出「田中説明」その2(文書②と略記)