GIGAスクール構想と府中町の児童生徒の学習保障 2020年6月議会 一般質問

《第2回目》

専門家は一斉休校に反対

小児科学会の見解についてはお答えにならなかったわけですが、「学校や保育施設の閉鎖は流行を防ぐ効果に乏しい」という指摘は重要な指針となるものです。過去に向かっていえば、3カ月にもわたる休校措置は不要だったということであり未来に向かっては、長期にわたる休校はよほどのことがないかぎり止めようということです。

厚労省の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議も、4月1日の「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」で、「現時点の知見では、 子どもは地域において感染拡大の役割をほとんど果たしてはいないと考えられている。したがって、 学校については、地域や生活圏ごとのまん延の状況を踏まえていくことが重要である」と全国一斉の休校に対して慎重な判断を求めていたわけです。

この提言を紹介しながら和田耕治・国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授は「子どもたちにとって学校は、とても大切な場所です。感染対策を十分に行うことは当然ですが、できるだけ学校を続けるという方向性を捨てないでほしかった。感染拡大が起きた場合の責任から逃れたい、と安易に休校という選択肢が取られることを危惧しています」と言っています(「新型コロナウイルスとどう向き合っていくのか」『月間高校教育』2020年6月号、学事出版)。

また、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員で東京大学医科学研究所教授の武藤香織氏は次のように述べています。

「専門家会議では、感染症の流行の観点からしか助言ができません。この感染症が子どもで重症化しやすかったり、死亡率が高かったりしているという根拠が出てきていないので、専門家会議としては、当初から、学校の休校はできる限り最小にしていただきたいと考えてきました」(「新型コロナウイルスに学校はどう対応していけばよいのか」同上)。厚労省に設けられた専門家会議は、学校の一斉休校に早くから反対していたわけです。

「全国一斉休校を極力避ける」が政府の方針

ご紹介になったように、6月5日付の文科省のガイドラインでも「学校の全部または一部の休業」は、「学校で児童生徒や教職員の感染が確認された場合」です。今回の3カ月にわたる全国一斉休校が専門家の知見から離れた不要な措置だったことを事実上認めたに等しい。

安倍総理もまた6月2日に、首相官邸で面会した柴山昌彦前文部科学大臣に「なるべく全国的な休校措置を取る必要がないような形での取り扱いも可能ではないか」と伝え、新型コロナウイルス感染の第2波、第3波が発生した場合、再度の全国一斉休校を極力避ける考えを明らかにした、とマスコミは伝えています。

以上のことから分かるように、3か月にわたる一斉休校は適切ではなく、今後、安倍総理も言うように「全国一斉休校を極力避ける」ということになったわけです。

全国一斉休校がないわけですから、日本全国の児童生徒950万人の全てに緊急措置としてタブレット端末を慌てて持たせる必要もない。もし、どこかの地域で休校措置が必要で、タブレット端末がどうしても必要ならばそこへ投入すればいいだけです。

オンライン授業のハードル

タブレット端末は今年度中に買えというのが文科省の方針ですが、契約はしても今年度中に手に入る保証はない。1回目の質問で明らかにしたように短期間に950万台ものタブレットを揃えることは到底無理な話です。第2波、第3波が今年度中に来た場合、ほぼ間に合わない。来年でも間に合うかどうか。忘れた頃に届くアベノマスクのようなものです。ですから、やはり急ぐ必要はない。

では、コロナの波が来たときに、幸運にもタブレット端末が入手できたら、休校時の「学びの保障」はできるのか。答弁でもオンライン授業に必要な機器が整備されないとできないということでした。

紹介されたeライブラリというのは「学校で利用しているドリル教材をご家庭のパソコン・タブレット・スマートフォンから無料で利用できる」というものです。私も小学生のときに紙のではありますがドリルやりました。同僚議員の皆さん、職員のみなさんのドリルを使ったと思います。計算、文章題、漢字などを繰り返しすることによって知識を定着させようとするものですが、継続してやるのは、なかなか忍耐力のいる学習です。すぐ飽きてしまう。正直言って私は嫌いでした。

また、「G Suite for Education」は、教育機関向けに作られたGoogleのアプリセットで、メールソフトやウインドウズでいう、ワード、エクセル、パワーポイントといったアプリが入っているわけです。オンライン授業の前提ではあっても、アプリセットが事業の代わりになるわけではありません。答弁にあったように休校時に「学習課題の配布」ができるぐらいです。

教員の負担が重くなる

オンライン授業の準備はとても大変だと聞きました。準備と事後処理に、対面授業の3倍から5倍の時間がかかるというんです。今でさえ過労死ライン超えの先生方がオンライン授業に取り組むとなれば、実際の過労死が起きる。

大学で教えている友人は次のように言っています。

「学習効果を上げるためには、メディア特性に向いた内容に授業を設計し直す必要があり、そのためにはソフトやアプリについての勉強や情報収集も必須、学習者に対しては対面授業以上にきめ細やかなフォローが必要となります。通信環境が悪くてオンラインから離脱する者も必ず出るので、授業内容を録画してアップすることも必須です。その処理には、パソコンの性能によっては、1コマの授業につき数時間を要する」。

「学びの保障」は困難

ですから、多くの保護者が期待しているような学校の授業に代わるものをつくることは、タブレットがあればなんとかなるというようなことではないのです。現状では、教えるべきこと、学ぶべきことのほんの一部を補うことしかできません。これが実情なのです。

にもかかわらず、「休校時の学びの保障」を看板に掲げ、予算で縛りをかけたうえで、「感染症対策で世の中が変わった」「やろうとしないことが一番子供に対して罪」と脅して、全国の自治体、教育委員会をタブレット端末購入に追いこんだわけです。

そもそも一斉休校の必要もなかったし、今後はできるだけ避けるという方向になっている。タブレットはすぐには手に入らない、タブレットが入っても使えるかどうかわからない。

おそらく小学生は、高学年でないとタブレット端末を使って何かをすることは難しい。小学校1、2年生はゲームぐらいは出来るかもしれませんが、タブレットを使って学習することは至難の業。にもかかわらず全児童、全生徒一人に一台を一気に揃えるというのは壮大な無駄遣いになります。

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