町民に寄り添った町政をさらに前へ 令和2年度決算についての意見表明

20/09/22

第42号議案「令和2年度府中町歳入歳出決算の認定について」に賛成の立場から討論いたします。

令和2(2020)年度の一般会計決算額は歳入227億8,512万円、歳出224億1,636万円で、形式収支は3億6876万円の黒字、翌年度へ繰り越す分を差し引いた実質収支は3億858万円の黒字となりました。

財政力指数、実質公債費比率、将来負担率、経常収支比率からみて引き続き堅実な財政運営がなされていると評価できます*1)

今年度の決算は、歳入・歳出とも新型コロナウイルス感染症拡大の影響を強く受け、前年度と比べて歳入が50億円、歳出が47億円増えました。

*1)

1に近いほど財政力が高いとされる財政力指数は令和元年度の0.906から0.872に下がった。財政力指数が示すのは、地方税収入の高さであって、指数が高い=町財政が豊かとは言えない。
標準財政規模に対する地方債の元利払いの比率を示す実質公債費比率は、平成30年度は7.1%、令和元年度は5.6%、令和2年度は5.7%となっている。
標準財政規模に対する将来負担すべき実質的な負債の比率を示す将来負担率は、令和元年度109.6 %から104.1%へと下がった。
財政構造の弾力性を表す経常収支比率は、人件費、扶助費、公債費などの経常的な経費に、地方税、地方交付税、地方譲与税などの経常的な収入がどの程度充当されているかを比率で示したものであるが、比率が高いほど財政構造の硬直化が進んでいるとされ、この比率はおおむね70%から80%の間であることが理想だと言われている。令和元年度98.6%から97.3%に下がった。
地方債残高は251億2千万円からへと248億4千万円と2億8千万円減少した。

1.歳入――住民に寄り添った徴税

まず、歳入についてですが、一般会計の町税は元年度よりわずかに下がったものの98.2%という高い収納率となりました。

老人ホーム入所者負担金85.3%、保育所負担金99.6%、道路占用料100%、町営住宅使用料100%、国保税88.5%、介護保険料99.2%、後期高齢者保険料が99.3%で、いずれも高い収納率です。

2年度は、新型コロナの影響で納付困難になる個人や企業に対して、納期限を1年猶予できる制度や持続化給付金・住居確保給付金制度を紹介し、固定資産税と国民健康保険税の減免制度の活用を呼びかけたと聞きました。納税猶予された額は固定資産税、法人税、軽自動車税、個人住民税、国民健康保険税をあわせて249件7147万4400円で、現在はその68%が納付済みだと伺いました。

固定資産税は170件8084万7700円、国保税は151世帯2835万7000円が減免措置されました。減免額は全て国が負担しますので、町財政の損失はありません。

当町の国保税の減免決定世帯数は、151世帯でした。人口20万人の東広島市や人口10万人を超す尾道市(人口14万人)、三原市(人口10万人)より多く、廿日市市(人口11万人)とほぼ同じだと伺っています。

また、滞納処分、いわゆる「差し押さえ」ですが、町税が80件、1298万円、国保税が26件105万円でした。滞納処分や督促もコロナの影響が直撃した2月から5月はできるだけ抑えるようにしたとのことです。

以上のことから、いかに住民に寄り添った徴税を当町がしているかが分かります。

2.歳出の評価と要望

つぎに歳出です。歳出は47億円増えていますが、新型コロナ感染症拡大関連施策、町民1人あたり当たり10万円を支給した定額給付金が52億円、「新型コロナウィルス感染症対応地方創生臨時交付金」を使った感染症対策や町民支援に4億円が支出されました。これらを除くと町の歳出は減っていて、翌年度繰越金は8億6千万円、不用額は18億5千万円、実質収支でも3億円を超す黒字となりました。

決算審査特別委員会要求資料「不用額に関する調べ」は事業において30%かつ100万円以上のものがリストアップされていますが39のうち17がコロナによる影響を受けたものです。

医療関係の助成もコロナによる受診控えによって減少しています。

受診控えは全国的な傾向で、厚労省によると令和2年度の概算医療費が42.2兆円と前年度に比べて3.2%、額にして1.4兆円減ったといいます。減少が特に大きかったのは、小児科(22.2%減)と耳鼻咽喉科(19.7%減)で、受診延べ日数も、小児科では31.5%、耳鼻咽喉科では24.4%減少。

かぜなどで受診する子どもが減ったことが要因と考えられ、未就学児の医療費は前年度から19.1%減りました。マスクや手洗いなどが定着し、風邪やインフルエンザにかかりにくくなっていることがある一方、受診が必要なのにコロナ感染を恐れるあまり受診を我慢するということもあるのではと思われます。

こういう全国的な傾向を受けて当町の医療関係の助成も、重度心身障害者医療費が1億4036万円から1億2450万円と11.3%の減少、子ども医療費が1億2852万円から1億0288万円と20%の減少、精神障害者通院医療費が10.9%の減少、ひとり親家庭等医療費が16.4%減少しました。

コロナ感染症拡大は不測の事態であり、不用額の増加は、やむを得ないものだと考えます。現在、第5波は山を越えたようですけれども、感染症の拡大は波を描きながら数年は続くものとみられます。予算編成および執行にあたって、公正な財政運営を守りつつ、創意を凝らして不用額が少なくなるよう努力していただきたいと思います。

具体的な個々の事業について7点ほど指摘します。

①通院を中3まで無料化に

まず、子どもの医療費助成の拡充です。

先ほども申しましたように、令和2年度の子ども医療費助成は1億2852万円から1億0288万円と20%も減りました。この傾向は数年は続くわけですから、ここで思い切って通院の助成を小学校卒業までから中学校卒業まで引き上げることを提案したいと思います。

全国では中学校卒業まで一部負担金なし、所得制限なしが標準です。

広島県内でも「通院」の無料が「18歳まで」となっているのが6市町*2)、中3までが7市町*3)であり、県内市町の半数以上が「18歳まで」あるいは「中3まで」となっています。よそでできて府中町でできないはずはありません。コロナ禍で医療費が下がっている今が制度拡充のチャンスだと思います。

*2)三次市、安芸高田市、安芸太田町、北広島町、世羅町、神石高原町。
*3)三原市、尾道市、福山市、府中市、庄原市、大竹市、大崎上島町。

②妊婦に対する給付金

第2に、妊婦特別定額給付金です。国の制度である「子育て世帯への臨時特別給付金」*4)、「ひとり親世帯臨時特別給付金」*5)に加えて、町独自の施策として「妊婦特別定額給付金」を妊婦1人当たり5万円、329人に支給しました。

ただでさえ、妊婦は大変ですが、コロナ禍で「感染への不安」「外出への不安」「周囲からのサポートについての不安」「気分障害についての不安」などを抱え、「人間関係のストレス」にもさらされています。この給付金は、町が「あなたとお子さんの健康を気にかけていますよ」というメッセージにもなっていると思います。妊婦さんから「大変喜ばれた」と伺いました。私も嬉しく思います。

*4)児童1人当たり1万円、支給件数4,436件。内閣府。

*5)1世帯5万円、子ども2人以上、1人につき3万円(コロナの影響で収入激減の場合、プラス5万円)。支給件数849件。

③学生へのエール継続を

第3に「学びの継続支援給付金」ですが、これも町独自の施策です。新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、学生生活の維持が難しくなっている学生*6)1人につき3万円を支給しました。国(文科省)が日本学生支援機構を通じて実施した「学生支援緊急給付金」*7)、に上乗せする形で実施。好評だったようで、とりわけ東京や大阪など離れた地で暮らす学生に対して、ふるさとの町からのエールになったのではないでしょうか。

予算は148人を見込んで446万円でしたが、申請は50人・支出額150万円にとどまりました。努力をされたと思いますが、もう少し申請が増えなかったのか、という思いです。また、この施策が令和3年度に継続しなかったことがさらに残念であります。

事情を伺いましたところ、国の「学生支援緊急給付金」が令和2年度限りで、町の支給要件が「日本学生支援機構から、学生支援緊急給付金の支給を受けた学生等であること」としていたため、施策の継続が難しくなったということでした。

学生の置かれている状況は令和2年度、3年度で違いはありません。町独自の基準をつくるのは大変だと思いますが、この給付金事業を継続の手立てを考えていただきたい。

*6)大学・大学院・短大・高専・専門学校に通う学生。

*7)住民税非課税世帯の学生20万円、それ以外の学生10万円。

④困窮者の相談から支援へ 

第4に、生活困窮者の自立を促進するための相談事業ですが、述べ相談者数は令和元年度135人に対して2年度は353人と2.6倍になりました。これも新型コロナの影響によるものです。この相談事業から住居確保給付金支給となった人が申請57人、決定54人です。

社会福祉協議会の生活福祉資金特例貸付制度の利用へと結びつき、緊急小口資金を借りることが出来た人が270人、総合支援資金を借りることが出来た人が133人です。

この相談事業を継続・充実させ、相談が給付や貸付などに結びつくようにしていただきたいと思います。

⑤チャージ場所を町内に

第5に、パスピーの購入・チャージとタクシーの乗車割引に使える、「乗って応援!クーポン券」事業(地域公共交通利用促進事業)ですが、住民登録のある小学生以上にクーポン券1,000円分が配られました。乗客数が激減したバスやタクシーを応援しようという事業です。パスピーの場合、半額を自己負担して2,000円分チャージできます。配布されたクーポン券の55%が利用され、この種の助成としては高い利用率だと伺いました。

しかし、広島市内に通勤・通学していない人にとってはパスピー・チャージが難しく、もっとも近い曙営業所までバスに乗って片道200円程度かかります。2,000円分のチャージ(半額の1,000円は自己負担)のために400円を使うのはもったいないと思うのは当然です。今後、同種の事業をする場合には、チャージ場所を町内に設置するなどの工夫をしていただきたいと思います。

⑥事業費が膨らまないように

第6に、「広島市東部地区連続立体交差事業」、いわゆるJR山陽本線の高架化です。

令和元年に改めて事業認可がされて以降もなかなか進んでいない感じがしましたが、今年に入って仮線工事が進んで、このまま順調に進めば10年後に完了できるのかもしれないという希望をもちました。令和2年度の府中町の負担金は3,680万円で、進捗率は事業費ベースで13.1%*8)です。

これから残りの86.9%の負担金支払いが待っています。10年間でおよそ30億円です。今までは年間数千万円の負担金でしたが、工事の本格化に伴い、平均して年間約3億円という大きな負担となるということです。えてして事業費は膨らんでいくものです。町民の負担がこれ以上増えないよう、今後JR、広島市、広島県と十分協議・調整して下さい。

*8)平成9年からの地元負担金の累計は約3億2千万円。

(JR向洋駅北口のイメージ図)

⑦証明書1枚にコスト4千円

第7、これが最後ですけれども、「証明書等コンビニ交付事業」と「番号カード交付促進事業」についてです。

コンビニ交付事業は601万円ですが、利用実績は1,589人(3.72%)に過ぎません。令和元年度は679万円かけて利用は631件でしたので1枚の証明書のために1万円の経費がかかっていました。2年度は1枚につき4千円のコストで引き続き不採算事業であります。

証明書等をコンビニで交付する事業は、住民の利便性からではなく、マイナンバーカードを普及する手段として考えられたものです。特別定額給付金やマイナポイントによって、マイナンバーカード所持者は増えました*9)が、給付金やマイナポイント以外に使うことはあったのでしょうか。

デジタル庁が9月1日に発足しました。データ資源の利活用が設置目的の一つであり、「第32次地制調答申」は、「地方公共団体が全て自前で行うよりも、組織や地域の枠を越え、官民が協力して、相互のデータの利活用や、アプリケーション開発等の取組を進めることが重要である。また、そのためには、公共データのオープン化等によるデータ利活用環境の充実も求められる」(9頁)と述べています。

デジタル手続き法*10)は「国、地方公共団体、民間事業者、国民その他の者があらゆる活動において情報通信技術の便益を享受できる社会」の実現を目的とし、「事務又は業務の遂行に用いる情報を書面等から官民データへと転換すること」を原則として掲げています。国や自治体が持っているデータを民間企業と共有するということです。マイナンバーとそこに結びつけられた情報が除かれる保証はどこにもありません。

内閣官房は「官民データ活用推進法」のねらいとして「データを活用した新ビジネスとイノベーションの創出」によって「GDP600兆円の実現」を掲げています。経団連の十倉雅和会長も「各分野で徹底した規制改革とデジタル化、データ共有を促すことが重要」*11)だと今年6月の就任挨拶で強調しました。デジタル化推進の動機が国民の利便性の向上ではなく、国や自治体の持つ情報をいかに企業の利潤に結びつけるかにあるのです。

デジタル化そのものを否定するつもりはありませんが、自治体の持つ情報が企業によって利活用されることに対して強い警戒心を持つものです。官民データの共有と証明書コンビニ交付事業や個人番号カード交付促進事業は分かちがたく結びついています。したがってこの2つの事業に対して反対いたします。

*9)全国の交付率37.6%、府中町42.4%(R 3 年9 月 1 日時点)。

*10)情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律

*11)DXは、Society 5.0が目指すオールインクルーシブな社会の実現に不可欠なツールであります。従来できなかった多様な個人のwell-beingの実現と社会全体の最適化の両立を可能とするDXに対して、医療、教育、行政などあらゆる分野で集中投資を進め、各分野で徹底した規制改革とデジタル化、データ共有を促すことが重要であります。経団連は、生活者が暮らしやすさを実感できる社会を目指して、「経団連DX実装プロジェクト」を加速・強化してまいります。(経団連定時総会における十倉会長就任挨拶2021年6月1日)

以上の点に留意し、今後の予算編成や行財政執行に生かしていただくことを要望し、賛成討論といたします。

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