2021年度決算についての意見表明 2022年9月議会

22/09/21
二見 伸吾

第43号議案「2021年度府中町歳入歳出決算の認定について」に賛成の立場から討論いたします。

2021年度の一般会計決算額は歳入216億9,985万円、歳出224億1,636万円で、形式収支は3億2,443万円の黒字、翌年度へ繰り越す分を差し引いた実質収支は2億9,397万円の黒字となりました。
財政力指数、実質公債費比率、将来負担率、経常収支比率からみて引き続き堅実な財政運営がなされていると評価できます*1)

2021年度の決算は、2020年度に引き続き、歳入・歳出とも新型コロナウイルス感染症拡大の影響を強く受けたものとなっています。

*1)1に近いほど財政力が高いとされる財政力指数は2020年度の0.87から0.84に下がった。財政力指数が示すのは、地方税収入の高さである。交付税も大きな財源であり、指数が高いことをもってして「財政が豊か」とはいえない。
標準財政規模に対する地方債の元利払いの比率を示す実質公債費比率は、令和元(2019)年度は5.6%、2020年度は5.7%、2021年度は6.8%となっている。
標準財政規模に対する将来負担すべき実質的な負債の比率を示す将来負担率は、2020年度104.1%から99.3%へと下がった。
財政構造の弾力性を表す経常収支比率は、人件費、扶助費、公債費などの経常的な経費に、地方税、地方交付税、地方譲与税などの経常的な収入がどの程度充当されているかを比率で示したものであるが、比率が高いほど財政構造の硬直化が進んでいるとされ、この比率はおおむね70%から80%の間であることが理想だと言われている。2020年度97.3%から92.3%に下がった。
地方債残高は248億4千万円から258億8千万円となり約10億円の上昇だが、公民館改築事業債(10億3千万円)によるものである。

1.歳入

住民に寄り添った徴税による高い収納率

まず、歳入の収納状況ですが、一般会計の町税収納率(現年課税分)は、コロナ前の2018年度は99.5%でしたが、2020年度は99.0%に下がりました。コロナの影響で納付が困難な状況になったことと、それにより徴収猶予の手続きがされたためです。2021年度は99.7%という高い収納率となりました。コロナにより法人税・固定資産税の減免手続がなされたことにより滞納とならなかったためと思われます*2)

国民健康保険税の収納率はコロナ前の2018年度は96.4%でしたが、2019年度96.1%となりました。コロナにより納付困難となられた方があったためです。2020年度はコロナによる減免で調定額・滞納額が減ったため96.6%となりました。2021年度の収納率は96.8%です。

2021年度はコロナによる減免もあり、過去最高の収納率となっています。なぜ過去最高となったのか、税務課に伺いましたところ、「コロナにより、固定資産税・法人税・国民健康保険税には減免があり、国民健康保険税には、会社都合による離職軽減や、収入申告による軽減の手続きがあるので、対応できる手続きはしてもらうことと、差押えはできるだけ避け*3)、自主納付してもらうように努めた」ということでした。

厳しい取り立てでなく、住民に寄り添った徴税によって高い収納率になっていることを高く評価したいと思います。

*2)町税以外の収入状況は、老人ホーム入所者負担金83.4%、道路占用料100%、町営住宅使用料99.4%、国保税89.3%、介護保険料99.3%、後期高齢者保険料が99.6%で、いずれも高い収納率となっている。
*3)2021年度の滞納処分(いわゆる「差し押さえ」)は町税が77件、1638万円、国保税が21件183万円。

堅実ではあるがゆとりはない

一般会計決算は、前年度比で町税が1億6千万円減の72億円、地方交付税が7億円増の18億円、国庫支出金が38億円減の55億円、町債が16億円増の31億円となりました。歳入総額は11億円減って217億円です。

国庫支出金の減少ですが、2020年度にあった定額給付金(町民1人10万円を支給)52億円がなくなったことによるもので、歳出も同額ですので、町財政への影響はありません。
地方交付税と事実上の交付税である臨時財政対策債の合計は、令和元年度は16億円、令和2年度19億円でしたが2021年度は29億円となり、10億円増えています*4)

また、当町には7億円余りの過誤納金*5)があり、減収補てん債によって還付する予定でした。減収補てん債は、当初見込んだ税収額から大幅に減少した分を補うために発行するものですが、地方交付税によって措置されるのは75%で、残りの2億円近くは町の負担となります。そのことを避けるために普通交付税と交付金等の増額分6億5千万円で措置したとのことです。

実質収支が2020年度に続き3億円の黒字になりましたが、町の財政状況は堅実ではあるものの、ゆとりがあるとはいえない状況です。

*4)7億円増えた地方交付税のうち4億円は、国が過去最高の税収を背景に地方交付税を増額し「臨時経済対策費」と「臨時財政対策債償還基金費」として追加交付(2021年度限定)されたもの。
*5)納付した後に、減額の変更(申告、減免、更正など)があったことにより納め過ぎとなった税金(過納金)や、二重に納付するなど誤って納めた税金(誤納金)のことをいう。これらの過誤納金は返金(還付)する。

 

2.歳出の評価と要望

つぎに歳出です。2018年度、2019年度に170億円台だった歳出は、2020年度224億円、2021年度214億円になりました。2020年度は、定額給付金52億円がほぼ増加分に相当しています。2021年度も、新型コロナワクチン接種、子育て世帯への臨時特別給付金、住民税非課税世帯臨時特別給付金など、国の新型コロナ感染症に対する施策が約18億円となっています(全額国費)。

3億円近い「新型コロナ感染症対応地方創生臨時交付金」によって、町独自の感染症対策や支援事業が実施されました。

歳出総額は前年度と比べると10億円ほど減りましたが、コロナ前との比較では40億円多くなっています。

具体的な個々の事業について8点ほど指摘します。

①会計年度任用職員の期末手当

まず、一般質問でも取り上げましたが、会計年度任用職員への期末手当支給です。財務部次長の説明でも、交付税の包括算定経費が約9千万円増え、そこには会計年度任用職員の期末手当の支給月数に要する経費が含まれているとのことでした。当町の財政が決して潤沢ではないことは先ほど述べましたが、それでも3億円の黒字であり、しかもこうやって交付税が措置されているわけですから、払うべきものはきちっと支払っていただきたいと思います。

②正規職員の増員

つぎに正規職員の増員です。どこの職場も余裕はありませんが、とりわけ福祉保健部が大変です。権限移譲でたくさんの仕事が県からやってきたわけですが、その上にコロナ対応がのしかかっています。

コロナワクチン接種に関する仕事、さまざまな給付金事業――国の施策としては生活困窮者自立支援金、住民税非課税世帯等臨時特別給付金、子育て世帯への臨時特別給付金、子育て世帯生活支援特別給付金、それに加えて町独自の妊婦特別定額給付金、若者応援金――これら全てを福祉保健部が担っているわけです。

他の部署からの応援を受けているようですが、送り出している方も綱渡りだと聞いています。今年度、中途採用もするそうですが、計画的に人員増をはかり、退職者が減るようにしていただきたい。

③救急体制の強化

第3に、救急体制の強化です。2018年度に導入された救急画像伝送システム――現在3台に配備――の活用をはかるなど救急体制の充実・強化が図られました。
救急画像伝送システムは、救急患者の容態や負傷状況、心電図等のデータを医師がリアルタイムで確認し、受け入れ体制の確保や救急隊の応急処置に対する指示、指導、助言ができ、現在、5つの医療機関(広島市民病院、安佐市民病院、広島大学病院、県立広島病院、広島ハートセンター)に繋がっています。
また、保存された画像を研修などで活用し、知識・技術の向上につなげることも導入の目的となっています。

高規格救急自動車も2021年度に更新されました。高規格救急自動車は、AED (自動体外式除細動器)など高度救命処置用資機材を備え、車内において救急救命士が活動しやすい室内空間を確保することにより傷病者の状態をより適切に把握でき、高度な救命処置を施すことができる車両です。

救急画像伝送システム、高規格救急自動車ともに救命率の向上につながるものとして評価できます。

④母子保健電子カルテ

第4に母子保健電子カルテです。母子保健における妊産婦・乳幼児健診や相談記録等の情報を、紙カルテから電子カルテでの管理に移行し、タブレットによって面談・情報管理するようにしました。

保健師の業務逼迫やカルテ運搬の負担と紛失リスクをなくすことなどが電子カルテ導入の動機となっており、導入後の効果として、町の資料には以下の3点があげられています。

 (1)保健師による相談業務の時間が確保され、切れ目のない相談支援の充実が図られた。  
 (2)パスワードと顔認証によるセキュリティ対策が講じられ、データをグラウト管理することにより、妊婦・乳幼児健康相談などでカルテ情報を安全に持ち出すことができるようになった。さらに、電子化されたカルテの保管場所がいらなくなり、自然災害等によるデータ消失も防ぐことができるようになった。 
 (3)保護者のスマホからオンライン申請ができるようになり、利便性が向上した。

⑤妊婦特別定額給付金と若者応援金

第5に、妊婦特別定額給付金と若者応援金です。いずれも町独自の施策として実施されています。「妊婦特別定額給付金」はコロナ禍のなかでも穏やかに過ごし、安心して出産を迎えられるよう、妊婦1人当たり5万円、708人(3540万円)に支給されました。

「若者応援金」は、令和2年度の「学びの継続支援給付金」を拡充させたものです。「学びの継続支援給付金」は、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、学生生活の維持が難しくなっている学生*6)1人につき3万円を支給しました。予算は148人を見込んで446万円でしたが、申請は50人・支出額150万円にとどまりました。

支給要件が国の「学生支援緊急給付金」と連動していたため、せっかくの独自施策が2021年度に継続せず、私は昨年度の討論で「この給付金事業を継続できるよう手立てを考えてほしい」と発言しました。

それが、2021年度12月議会の補正予算で「若者応援金」という形で復活し、拡充されました。学生だけでなく、雇用、収入、生活、精神面などで新型コロナの影響を受けている19歳、20歳の若者に対して「未来へはばたく若者応援金」として1人3万円を支給するものです。支給件数は970件で、「学びの継続支援給付金」の20倍近く増えました。

大変よかったと思います。

*6)大学・大学院・短大・高専・専門学校に通う学生。

⑥子どもの医療費 所得制限の撤廃を

6番目に、子どもの医療費助成の拡充ですが、これまでも入院だけでなく通院も中学校卒業まで助成すべきだと発言してきました。 全国では中学校卒業まで一部負担金なし、所得制限なしが標準です。所得制限について、先日メールをいただきました。

「8月から所得制限にひっかかり、子どもの医療費助成が受けられなくなりました。このお知らせが自宅に届き、なんだか、『お金がほどほどにあるのだから、自分で勝手に育てれば』と言われているような気持ちになり、悲しい気持ちになりました」というものです。

社会保障は、所得に応じて課税し、公平・無差別平等に給付することが原則です。しかし、日本では所得に応じて給付を減らすことが当たり前であるかのようになっています。所得に応じて税負担しているのに給付が制限されては「悲しい気持ち」になるのも当然です。

岡山県で所得制限のある市町村は一つもありません。広島県内でも7市町が所得制限なし。部分的に所得制限をなくしているのが4町です。府中町も「所得制限なし、一部負担金なし、入通院とも中学校卒業まで」助成すべきです。

⑦公民館・歴史民俗資料館

7番目です。今年4月、歴史民俗資料館、消防団第1分団詰所を兼ね備えた複合施設として府中公民館がリニューアルオープンしました。建築費用は12億円でその大部分が町債によって賄われています。10億円の借金が増えたわけですが、令和6年度までは利子だけを払い、令和7年度から元利の返済が始まります。10億円は大きな額ではありますが1年約6000万円の20年払いで、返済に問題はないとのことでした。

歴史民俗資料館の入館者は4月から8月までの平均で、府中町の自然と歴史を扱った3階が約3000人、暮らしと文化を扱った2階が約2000人でした。好調な滑り出しではないでしょうか。8月27日に開催された下岡田官衙(しもおかだかんが)遺跡のシンポジウムに私も参加しましたが、参加者も多く、官衙や駅家(うまや)がどういうものなのかがよく分かる、大変充実した内容だったと思います。
 

⑧校舎へのエレベーター設置

最後になりますが、府中東小学校校舎にエレベーターが設置されました。2021年4月から障害をもつ児童が入学し、その「児童がより負担の少ない学校生活が過ごせるように」ということで設置にいたったわけです。大変よいことだと思いますし、いつエレベーターを必要とする児童・生徒が入学してきてもよいように、順次設置していく必要があります。

障害のない児童・生徒でも、足を骨折することがあります。3階、4階まで階段で登るのは大変です。また東小に設置されたエレベーターのようにストレッチャー対応であれば、救急搬送のときも使えます。

予算もかかりますが、障害をもつ児童・生徒の入学を待つのではなく、エレベーター設置による学校のバリアフリー化を進めていただきたい。

以上の点に留意し、今後の予算編成や行財政執行に生かしていただくことを要望し、賛成討論といたします。

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