toggle
2025-04-03

南海トラフ巨大地震への備えを ―― 府中町地域防災計画について

以下の原稿は、府中町議会の公式記録ではありません。また、年号については西暦に統一しています。

⇒印刷用PDF

1.大地震と府中町民の避難生活

大地動乱の時代

今年は、6434人が亡くなった阪神・淡路大震災からちょうど30年です。昨年の元日には能登半島地震が起きました。

気象庁のホームページに、1996年から2024年までの、人的な被害があった地震の一覧表が出ていますが、その数は185にのぼります。

被害の大きかった災害については気象庁が名前を付けるのですが、阪神淡路大震災と能登半島地震のあいだに起き、命名された地震は10もあり、そのなかに2011年の東日本大震災(気象庁の命名は東北地方太平洋沖地震)も含まれます。

阪神淡路大震災の起きる前年(1994年)に『大地動乱の時代』という本が出版されました。

阪神淡路大震災後の30年間、全国各地で大地震が起き、まさに「大地動乱の時代」となりました。

南海トラフ巨大地震も、杞憂ではなくなっています。政府の地震調査委員会は南海トラフの巨大地震が今後30年以内に起きる確率について、今年(2025)1月1日時点で改めて計算し、これまでの「70%から80%」を「80%程度」に引き上げ、公表しました。

南海トラフ巨大地震について気象庁は次のように説明しています。

 「南海トラフ巨大地震がひとたび発生すると、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があるほか、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されています。また、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の襲来が想定されています」。

南海トラフ巨大地震だけではない

大きな地震が想定されるのは南海トラフ巨大地震だけではありません。

広島県の「地震被害想定調査報告書(2013年10月)」は、被害想定を行うべき地震として、「既に明らかとなっている断層等を震源とする地震」と「どこでも起こりうる直下の地震」に区分しています。

「既に明らかになっているもの」には、①プレート間の地震:南海トラフ巨大地震、②プレート内の地震」:日向灘及び南西諸島海溝周辺(安芸灘~伊予灘~豊後水道)で起きる地震、③断層によって引き起こされる地殻内の地震として、9つが挙げられ、そのうち、建築物に被害をもたらす震度6弱以上が、「五日市断層」、「己斐-広島西縁断層帯」、「安芸灘断層群(広島湾-岩国沖断層帯)」の3つです。

「どこでも起こりうる直下の地震」というのは、ちょっと変わった規定です。

県の「地震被害想定調査報告書」を読むと、2000 年に起きた鳥取県西部地震のように、活断層が確認されていない地域においても地震は発生しているので、今後どの地域においても直下の地震が発生する可能性は否定できない。だから、県内23 の各市町役場の所在地が震源だと仮定し、それを「どこでも起こりうる直下の地震」》と呼んでいるわけです。

南海トラフ巨大地震のようにプレートによるものか、いくつかの断層によるものか、活断層が確認されていない直下型によるものかは分かりませんが、いずれかが原因となって大きな地震が来る可能性があるわけです。

府中町民の避難生活

府中町は大地震に対して、固有の問題があります。

第1に、地盤が軟弱なところが多く、地震によって液状化が起こる可能性が高いことです。

液状化が起こる可能性が高い地域の面積は約4km2で、町面積の4割弱。市街化区域(5.7 km2)の7割で液状化が起きる可能性があり、県内23市町でワーストワンです。

地盤が液状化すると、重量が軽く基礎が浅い木造住宅は、傾いたり沈む可能性がある。全壊や半壊に至らなくても、住み続けることが難しくなるわけです。鉄筋コンクリートのビルでも倒壊することがある。地下に埋設した下水管やマンホールなどは浮き上がったりする。

ですから、液状化する可能性の低い自治体よりも、府中町は被害が甚大になるわけです。

第2に、府中町の人口集中地区(DID)が町域の約5割、市街化区域の約9割を占め、人口集中地区の人口密度は2020年時点で県内1位の88.1人/haです。

この人口密度の高さと狭隘道路の多さ――幅4.0m未満の道路が町内の道路延長の約3分の1を占めている――が大地震の際に困難をもたらすことになる。ひとたび火災が発生すれば瞬く間に延焼し、避難も難しくなります。

能登半島地震のとき、輪島市朝市通り周辺で発生した大規模火災も住宅密集地でしたが、飛火によって延焼が拡大したこと、倒壊した建物が延焼拡大の要因になった可能性があること、水道管の断水により消火栓が使用できず、倒壊した建物に阻まれ 一部の防火水槽から取水できなかったことなどが、消火活動の妨げになったと報告されています。

第3に、町域が狭いうえに空き地がない。面積約10 km2での小さな町ですが、4割を占める山林を除くと住宅だらけ。約5 km2の市街化区域に5万2千人、2万4千世帯がひしめいていいるわけです。

大地震でおびただしい被災者が出たとき、避難所をどうするのか。仮設住宅をどこにつくるのか。にわかに答えることができない状況にあるわけです。
 
さまざまな要因による大地震が想定されているわけですけれども、南海トラフ巨大地震が起きた場合がもっとも過酷な避難生活になるのではないかと思います。

政府の中央防災会議は、南海トラフ巨大地震が発生した際の被害想定を実施しています(2013年3月公表)。この被害想定によれば、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性があり、それに隣接する周辺の広い地域では震度6強から6弱の強い揺れになると想定されています。

東海、関西、中国、四国、九州という広範囲にわたって被災する。かつてない規模の震災になる可能性があります。道路は寸断され、港も使えなくなるので物資は届かない。近隣自治体は全て被災している。救援、支援はすぐには来れない、遠くからしか来ない、支援の手が行き渡らないかもしれない。

そういう最悪の事態を想定して防災体制を整えていく必要があると思います。

能登半島地震の教訓を対策へ

昨年(2024年)6月、総理大臣を会長とする中央防災会議は、能登半島地震の経験を踏まえ、「防災基本計画」を修正しました。

また、中央防災会議は、「防災基本計画」とは別に、「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について(報告書)」(以下、「能登半島地震報告書」と略記)を昨年11月にまとめています。

この報告書が述べているように「能登半島地震で見られた揺れや津波、火災、液状化等による被害や、交通網の断絶や孤立集落の発生等は日本各地で起こり得るものであり……能登半島地震で直面した課題は将来的には日本全国のどの地域でも直面する可能性があ」ります。

「能登半島地震報告書」は、能登半島地震の経験から多くの課題と教訓を引き出していますが、その全てについて扱うことはできませんので、避難所のあり方に絞って質問いたします。

2.避難所のあり方とスフィア基準

避難所における「生活の質」の向上

2016年、内閣府が、市区町村向けの「避難所運営ガイドライン」を策定しました。

その主たる目的は「避難所の質の向上をめざす」ことであり、その主旨が「はじめに」に書かれていますので紹介します。

阪神・淡路大震災では、約31万人が避難所生活をした。東日本大震災では、岩手、宮城、福島の3県で約41万人、全国合計では約47万人が避難所生活をした。阪神・淡路大震災では避難所閉鎖までに6カ月を要し、東日本大震災では、避難所閉鎖まで岩手県で7カ月、宮城県で9カ月を要した。原発事故で福島県双葉町の住民が避難した埼玉県加須市の避難所の閉鎖は2年9カ月後だった。

ひとたび災害が起こると、避難所は「住まいを失い、地域での生活を失った被災者の拠り所」となり、また「在宅で不自由な暮らしを送る被災者の支援拠点」となる。しかし、東日本大震災では、避難所における「生活の質」には課題が多く、水、食料、トイレ等は不十分で、暖房は限定的であり、狭い空間での生活によって、多くの被災者が体調を崩す恐れと隣り合わせの生活であった。

避難所を開設するだけにとどまらず、その「質の向上」に前向きに取り組むことは、被災者の健康を守り、その後の生活再建への活力を支える基礎となる。発災後に取り組むことは当然であるが、発災前の平時からの庁内横断的な取り組みが欠かせない。

まことにそのとおりだと思います。しかし、ガイドライン策定から8年後に起きた能登半島地震で避難所の「生活の質」の改善は部分的にしか進んでいません。

スフィア基準

そういうなかで、避難所のあり方、生活の「質の向上」について、スフィア基準が注目されていますが、石破茂総理も、スフィア基準の重要性をしばしば説いています。官邸ホームページで確認したところ、総理就任後、3ヶ月の間に、所信表明や記者会見など10の場面で、スフィア基準適用の重要性を強調しています。1つだけ紹介しますと、就任直後、第214国会での所信表明演説では、次のように表明しました。

「被災して大きな悲しみや不安を抱えている方々に手を差し伸べ、温かい食事や安心できる居住環境を提供することが必要です。災害関連死ゼロを実現すべく、避難所の満たすべき基準を定めたスフィア基準も踏まえつつ避難所の在り方を見直し、発災後速やかにトイレ、キッチンカー、ベッド・風呂を配備しうる平時からの官民連携体制を構築します」。

スフィア基準は、1997年にNGOグループと国際赤十字・赤新月運動が開始したスフィアプロジェクトによって策定されました。

スフィアは「災害や紛争の影響を受けた人びとには、尊厳ある生活を営む権利があり、従って、支援を受ける権利がある」ことと「災害や紛争による苦痛を軽減するために、実行可能なあらゆる手段が尽くされなくてはならない」という2つの基本理念に基づいています。

「避難所運営ガイドライン」は、スフィア基準について「被災者にとって『正しい』支援とは被災者が安定した状況で、尊厳をもって生存し、回復するために、あるべき人道対応・実現すべき状況とはどのようなものか。……今後の我が国の「避難所の質の向上」を考えるとき、参考にすべき国際基準となります」と述べています。

3.避難所の具体的な課題

避難生活の疲労やストレス、環境の悪化、医療体制の不備、持病や負傷箇所の悪化、 食料不足による栄養障害によって亡くなることを災害関連死といいます。

能登半島地震でも直接死は228人ですが、災害関連死は今年1月23日現在で 288人です。石川県内の自治体にはさらに230人ほどの遺族から申請が出されていて、今後も増える可能性があります。

地震は天災ですが、災害関連死は人災です。なんとしても防がなければなりません。

災害関連死を防ぐには避難所の環境改善が欠かせません。

スフィアのいう「尊厳ある生活を営む権利」「支援を受ける権利」を保障すること、「災害や紛争による苦痛を軽減するために、実行可能なあらゆる手段が尽す」ことを防災計画の土台にすえることが求められている。

この視点に立ち、「能登半島地震報告書」などを踏まえ、当町の防災計画について6点伺います。

居住空間の確保

第1に、避難所についてです。「能登半島地震報告書」では、避難所の開設の際に、避難所のレイアウトをあらかじめ決めておくことが重要だと述べています。

避難者がそれぞれ避難所内での居場所を定めた後にレイアウト変更することは大きな労力を要することから、避難所の開設後、速やかにパーティションや簡易ベッドの設置、布団、枕、リネン等の配布など居住環境を確保することが重要であり、これらの物資を指定避難所等において備蓄しておく必要がある。

避難所でまず、問題になるのは居住環境の悪さです。丸見えでプライバシーのない空間、床にざこ寝というのが当たり前でした。改善する大前提は1人あたりのスペースを広げることです。

私は、2018年の12月議会で「島根原発事故発生時の府中町の対応について」一般質問しました。島根県は、原発事故を想定した広域避難計画を2016年に公表しましたが、その計画で府中町は、出雲市鳶巣(とびす)地区の520世帯1,600人を受け入れる。1,600人をどこに受け入れるのかと尋ねましたところ、答弁は次のようなものです。

1人あたり通路等共用部面積を含み2㎡換算として算定し、くすのきプラザギャラリー320㎡で160人、大アリーナ1,028㎡で514人、会議室1・2、研修室1・2で合計140㎡に70人、チャイルドルーム17㎡で9人の合計753人、町立体育場体育館970㎡で485人、府中公民館会議室等847㎡で423人の合計1,661人としております。
これは、当町の避難所管理運営マニュアルで定めております1人あたり面積の考え方3.3㎡あたり2人、1人あたり1.65㎡とほぼ同様の面積を確保できる換算値です。

要するに一人畳一枚分のスペースだということです。簡易ベッドを置いたら、通路が確保できない。当然、プライバシーを守ることもできません。スフィアハンドブックの基本指標では、1 人あたり最低3.5m2 の居住スペース――畳2枚分ですね――を確保することを求めています。

そこで伺います。

①当町の避難所管理運営マニュアルの1人あたり面積の基準は改定されたのでしょうか。

危機管理監

現在、避難所の収容人数は、1人あたり2.0㎡に1mの通路を確保した、1人当たり2.5㎡としております。
スフィア基準には達しておりませんが、議員お話の時点と比べますと、避難者の通路スペースを確保し、環境改善を図っております。

二見議員

②当町の「地域防災計画(付属資料)」によりますと、地震の際の指定避難所として府中公民館と町内の小中学校7校があり、その他の避難所として10施設、福祉避難所として7施設があります。基本指標、1 人あたり最低3.5m2を確保すると何人収容できるでしょうか。

危機管理監

地域防災計画の付属資料に記載する8つの「指定避難所」と14の「その他の避難所」について、スフィア基準により計算すると収容人数は2,332人となります。

なお、福祉避難所については、支援が必要な方を対象に2次的に開設していく避難所であるため、この数値に含んでおりません。

今後も、親戚・知人宅や宿泊施設等への分散避難や、他自治体への広域避難なども含め、改善を図ってまいりたいと考えております。

段ボールベッド等の簡易ベッド

二見議員員 

第2に、パーテーションや段ボールベッドの設置です。

「能登半島地震報告書」は、次のように述べています。

寝床の確保という観点からのみならず、利用者側の視点に立って、プライバシーを確保するパーティションや段ボールベッド等の簡易ベッドを迅速に提供し、被災者のQOLを引き上げることを目指し、スフィア基準も十分に踏まえつつ、平時においては、備蓄を推進し、ガイドラインを周知する必要がある。

避難所での雑魚寝による健康被害は、脱水や動かないことによるエコノミークラス症候群、粉塵吸入による咳や気管支炎、生活不活発病、床の振動や硬さからくる不眠症、不眠とストレスによる高血圧などがあげられます。また、これらの健康被害は、避難所への簡易ベッド導入によって改善されることも分かっています。

中央防災会議の「防災基本計画」では、「避難所開設当初からパーティションや段ボールベッド等の簡易ベッドを設置するよう努める」とあり、当町の「地域防災計画(基本編)」においても、指定避難所に整備・充実させるもののリストのなかに簡易ベッドがあります。

そこで伺います。

③現時点での簡易ベッドやパーティションの備蓄数、今後の整備計画はどのようになっているでしょうか。

危機管理監
 
現時点で、簡易ベッドとして、段ボールベッドが92、エアーマット780の合計872あります。

また、パーティションは180基です。

今後の計画に関しましては、後程お答えさせていただきます。

快適なトイレ

二見議員

第3に、「避難所・避難生活はトイレに始まりトイレに終わる」と言われているように、トイレの劣悪な環境を改善し、快適な利用環境を確保することは防災の重要な課題です。

このことを重視した内閣府は2016年、「避難所におけるトレイの確保・管理ガイドライン」を作成(2022年、2024年に改定)して、トイレの確保と管理に関する指針を示しました。

トイレ問題がいかに重要か、本ガイドラインは「はじめに」において、次のように述べています。

ひとたび災害が発生し、水洗トイレが機能しなくなると、排泄物の処理が滞る。そのために、排泄物における細菌により、感染症や害虫の発生が引き起こされる。また、避難所等において、トイレが不衛生であるために不快な思いをする避難者が増え、その上、トイレの使用がためらわれることによって、排泄を我慢することが、水分や食品摂取を控えることにつながり、避難者においては栄養状態の悪化や脱水症状、静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう=エコノミークラス症候群)等の健康被害を引き起こすおそれが生じる。

トイレの課題は、多くの健康被害と衛生環境の悪化をもたらし、同時に不快な思いをする避難者を増やすことになり、人としての尊厳が傷つけられることにもつながる。被災者支援の中で、避難生活におけるトイレの課題は、今まで以上に強い問題意識をもって捉えられるべきである。

阪神淡路大震災では兵庫県内の 9 割以上約130万戸が断水し、全戸完全通水には 約3ヶ月を要しました。神戸市で全避難所に仮設トイレが行き渡ったのは発災後、約2週間が経ってからです。

東日本大震災では、3日以内に仮設トイレが到着した自治体は34%で、1か月以上かかった自治体が14%、もっとも日数を要した自治体は65日、2か月以上もかかりました。

南海トラフ巨大地震が起きた場合、被災地域が広範囲であるため、東日本大震災よりも仮設トイレの到着に時間がかかる可能性もあるわけです。トイレが足りなければ、庭、側溝などあらゆる場所に糞便の山ができるということになりかねません。

ですから、支援待ちにならず、できる限り自前で災害時のトイレを確保する必要があると考えます。

「能登半島地震報告書」では、「仮設トイレについても、自治体での備蓄が十分でなかったほか、外部調達された仮設トイレについても、和便器、照明なし、男女共用、段差など、利便性と安全性に課題があった。洋式化アタッチメントや照明(ランタン)を調達し、支援したが、夜間の使用における心理的な不安の声もあった」と述べられています。

必要なトイレ数

 「ガイドライン」は、市町村に対して、「スフィア基準に沿って、①災害発生当初は、避難者50人当たり1基、②その後、避難が長期化する場合には、20人当たり1基、③女性用と男性用トイレの比率 3:1、④トイレの平均的な使用回数は、1日5回、として備蓄や災害時用トイレの確保計画を作成すること」を求めています。

そこで伺います。

④当町では、仮設トイレを備蓄しているでしょうか。また南海トラフ巨大地震が来たとき、町内に必要な仮設トイレは何基程度だと想定されていますか。

危機管理監

仮設トイレにつきましては、町内小・中学校7校と、揚倉山健康運動公園・空城山公園・くすのきプラザの計10箇所に、合計50基のマンホールトイレを整備しています。

また、必要な仮設トイレの数につきましては、議員のお話にあった、災害発生当初、避難者50人当たり1基、避難が長期化する場合に20人当たり1基として算定すると、府中町で、南海トラフ巨大地震の際に想定されている最大避難者3,595人に対し、災害発生当初は72基、避難が長期化する場合は180基が必要となります。

二見議員

トイレ整備 時間経過による復旧・展開

「ガイドライン」は、時間の経過に応じたトイレの復旧が必要だと述べ、つぎのようなモデルケースを紹介しています。

《発災直後から3日ぐらいまで》

上水道が断水。下水道は施設の点検が終わるまでは使用しない。
既設トイレの個室(便座)で携帯トイレを使用し、簡易トイレ(組立式)も使う。
 発災当初は避難者数が多いので、とにかく便器の数を確保する。
 避難者想定数の3日間は備蓄した便袋を使用した。
 ★使用済みの便袋は、体育館裏の軒下に保管することとした。

《1週間後》

上水道は引き続き断水。下水処理場に被害があったが、マンホールトイレは使用許可がおりる。
近隣市町から、バキューム車数台を確保する。
仮設トイレ(組立式)の利用
 ★汲み取りのタイミングを、設置した仮設トイレの便槽の容量・使用
  人数から換算する。

《2週間後》

 流通が復旧し、仮設トイレが届く。上水道は部分的に復旧したが、この避難所は断水中。広域でのし尿処理体制が確保される。
 ★仮設トイレが確保できたので、携帯トイレの使用数を減らす。
 ★合わせて外灯を設置したが、雨の日に傘がないとトイレに行けないのが不便である。

《1カ月後》

 上水道・下水道の復旧が完了し全面使用可能となる。

もちろん、この通りにいくかどうかは様々な条件によって異なりますが、より快適なものに段階的に進んでいくことが必要でしょう。

「能登半島地震報告書」では、

上下水道が被災した状況において、被災地外からの仮設トイレの搬入が整うまでの期間をつなぐなど、初動対応において有効な携帯トイレ・簡易トイレについては、自治体で必要量が備蓄されていなかったり、使用環境が整っていなかったり、使用方法が認知されていない等の課題がある。
発災直後は、インフラが復旧していない状況でも使用可能な携帯トイレ・簡易トイレを使用。仮設トイレが整うか水道が復旧するまでは、この状態が続くため、必要量を備蓄しておく必要がある(仮にプッシュ型支援で携帯トイレが支援されるとしても、最低3日は要する。

と述べています。

当町の「地域防災計画(基本編)」の「備蓄に関する基本事項」のなかで、食料、飲料水などとともに、携帯トイレと簡易トイレを「備蓄に努める」物資にあげています。

2020年に策定した「府中町備蓄計画」では、「携帯トイレ(便袋・薬剤のセット)」の備蓄は、23,050回分、職員分あわせて26,050回分となっています。

そこで伺います。

⑤携帯トイレ備蓄数の算定の根拠と、計画に基づく現在の備蓄状況を教えて下さい。

危機管理監

2020年6月に策定した府中町備蓄計画における、携帯トイレの備蓄の基本的な考え方は、避難される方の数から、乳幼児や介護が必要な方でおむつを使用される方などを控除して使用人数を見込み、1人1日5回、2日分の使用を想定した合計26,050回分を2025年度までに備蓄することとしており、現時点でこの目標数をすでに確保しております。

二見議員

快適トイレ

「能登半島地震報告書」は、「災害発生時において、仮設トイレを調達する際にできるだけ快適トイレを被災地で活用できるような仕組みづくりを検討し、平時から関係業界との調整を進める必要がある」「仮設トイレについては、国の公共工事において、『快適トイレ』を標準化していくとともに、自治体の公共工事や民間工事も含め活用を促し、災害時に快適トイレの調達が容易にできるような環境整備を図るべきである」と述べています。

「快適トイレ」とは、建設現場を男女ともに働きやすい環境にしていく取り組みの一環として国土交通省が推進しているものです。

「快適トイレに求める機能」として、①洋式便器、②水洗および、し尿処理装置を含む簡易水洗機能、③臭い逆流防止機能、④簡単に開かない施錠機能、⑤照明設備、⑥衣類掛け等のフック、又は荷物の置ける棚 (耐荷重を5kg以上とする)、の6点を求めています。

国土交通省「快適トイレ」の仕様を満たす工夫事例集

 

トイレカー

また、中央防災会議の「防災基本計画」では、

市町村は、指定避難所等の生活環境を確保するため 、必要に応じ、仮設トイレやマンホールトイレを早期に設置するとともに、簡易トイレ、トイレカー、トイレトレーラー等のより快適なトイレの設置に配慮するよう努めるものとする。

とあり、「能登半島地震報告書」は、

トイレカーやトイレトレーラー、トイレコンテナ等のより快適なトイレについて、能登半島地震での有効性を整理しつつ、自治体等において保有することを促すとともに、平時からあらかじめ登録し、データベースを作成する等、被災地のニーズに応じて迅速に提供するための仕組みや、自治体間で連携して相互に派遣し合う仕組みづくりなど、全国どこの避難所でも活用できるようにするための方法について検討し、自治体や関係業界との間で整理する必要がある。

 と述べています。


株式モリタ「能登半島地震被災地におけるトイレを取巻く課題とトイレカーの活用状況について」

現在、トイレカーを所有する自治体は全国で30程度と思われますが、300ほどの自治体が検討に入っているといわれています。

自治体が行う、指定避難所における生活環境改善のためのトイレトレーラー等の整備については、「緊急防災・減災事業債」の対象です。

地方債の充当率100%で、交付税算入率70%ですから町の負担は30%となります。トイレカー・トイレトレーラーは大きさによって1,500万円程度から3,000万円し、決して安くはありませんが、「緊急防災・減災事業債」の対象になっており、災害時の備えとして保有することが必要ではないかと思います。

また、トイレカーを所有している自治体は、他自治体で災害があったときに派遣し、被災自治体の住民から大変喜ばれているようです。

→ NHKニュース 備前市 災害に備え「トイレカー」を導入 市役所でお披露目

→ 南あわじ市 自走式水洗トイレカーについて

 

そこで伺います。

⑥災害に備え、町内に「快適トイレ」を増やし、トイレカーも導入する必要があると思いますが、町としての見解はいかがでしょうか。

危機管理監

「快適トイレ」は快適に使用できる仮設トイレということで、その実現の一つがトイレカーの導入ということになろうかと思いますが、保管や維持管理、平時の活用方法などの課題もあり、当町では、これまでのところ、導入を計画しておりません。

町として、災害時の快適なトイレ環境確保が重要であることは認識しておりますので、自治体間の広域連携による利用や、災害時応援協定の活用も念頭に置きながら、少しでも快適なトイレ環境となるよう努めてまいりたいと考えております。

備蓄のあり方につきましては、能登半島地震時の対応を踏まえ、広島県においては、来年度後半に広島県地震被害想定を見直すとともに、新たな備蓄方針を示す予定と聞いております。

当町といたしましても、来年度以降も、国や広島県の検討結果も踏まえながら、備蓄の充実強化を図ってまいりたいと考えております。

《2回目》

二見議員

スフィアハンドブックの基本指標――1 人あたり最低3.5m2 の居住スペースを確保すると、当町の「指定避難所」8個所と「その他の避難所」14個所には、2,332人しか入りません。

広島県地震被害想定調査報告書では、避難所避難者数は当日と1日後で、南海トラフ巨大地震の場合が3,595人、府中町直下地震で2,087人となっています。

建物被害の想定は、南海トラフ巨大地震の場合、全壊が485棟、半壊が2,040棟、あわせて2,525棟、直下地震では、全壊が656棟で半壊が2,294棟、あわせて2,950棟です。一つの建物に2人暮らしているとして、5,000人、6,000人の避難者が出るでしょう。

能登半島地震で石川県内灘町では、被災した住家のうち4割が半壊以上となり、半壊未満の家でも土地が傾いて住める状況にないケースが多いと言われています。

南海トラフ巨大地震の場合の想定人数3,595人は、少し控えめな数字ではないかと思いますが、その控えめな数字でも千人以上入(はい)れない。

入(い)れないわけにはいかないから、すし詰めにすることになる。これでは基本指標の意味がないわけです。 

実際にどのような地震が来るかは、来てみないと分からないわけですが、これまでの大地震はいずれも想定を超えた事態が起きている。

ですから、避難所として使える施設を増やすことを考えないと、大地震が起きたとき、にっちもさっち行かなくなる。

お金もかかりますし、府中町には活用できる土地も少ないのですが、だからといって備えをしなければ、被害が大きくなります。

ぜひ、避難所の数を増やし、質を高めることを検討していただきたい。

トイレパニックにならないために

トイレパニックという言葉があります。

「能登半島地震では、翌日には《トイレ》が問題になった。これは詳細に言うならば《大便がいたるところに溢れた》という問題である。阪神淡路大震災の際にはこれを《トイレパニック》と呼び、その後も大災害の度にトイレパニックは起こっている。能登半島地震においても、津波から逃げた避難者が1,000人いた避難所では、24時間以内に1,000個の大便が発生した。しかし、トイレの水は流れないため、トイレやその周辺は汚物にまみれ、トイレパニックが起こった」。

阪神淡路大震災から30年も経つのにトイレパニックはなくなっていない。ということは、これから来るであろう南海トラフ巨大地震でもトイレパニックが起きる可能性が大きいわけです。

水洗トイレは「給水設備」と「排水設備」、それらを稼働させる「電力」も必要です。上水道が壊れても下水道が壊れても使えない。

大きな地震があればトイレと下水を繋いでいる配水管も損傷します。 NHKの「あしたが変わるトリセツショー」で排水管が変形すると汚物が逆流する実験をやっていて大変驚きました。

排水管は地下にも通っていますので、地震による被害を受けやすい部分です。ふだん何気なく使っているトイレですが、大地震にきわめて弱い。

2016年の熊本地震で現地の調査をした新妻普宣(ひろのぶ)氏は次のように述べています

「益城町では、下水道の被害が結構大変だったので、水が出始めた後でもなかなか水が流せない状況が続いていました。そこで印象的だったのが、耐震化していて避難する必要がない自宅にいる方も、トイレが使えないために、わざわざ避難所までトイレを使いに来ていたことです。雨でも、風でも、暑くても、わざわざ遠くの避難所のトイレに来ていましたが、トイレに行きたくなれば、夜でも避難所まで行かないといけないのは大変なことです」。

トイレによる健康被害

断水や排水管の破損などによって、多くの水洗トイレが使えなくなるなると、水が流れないトイレで用を足してしまい、汚物が溜まる。汚水・し尿処理が停滞し、衛生状態が悪化する。
 

このようなトイレパニックは、さらに健康被害の段階に進みます。

そうなると、トイレの使用を敬遠した被災者が飲食を控えるようになり、エコノミークラス症候群などの体調不良に陥り、最悪の場合「関連死」に至る。こういう健康被害の連鎖となるわけです。

トイレパニック、健康被害、災害関連死が起きないようにすることは防災にとって極めて重要な課題です。

当町の市街化区域内の下水道整備率は97.2%で、水洗トイレを使っているご家庭は、人口でいいますと約96%です。

大変素晴らしいのですが、下水道施設が壊れると水洗トイレは使えなくなる。

現在、町内の下水管の6割はまだ耐震化されていません。町内10個所、合計50基のマンホールトイレが使えないことも想定しておく必要があります。 

公園のトイレも下水管が壊れれば使えませんが、携帯トイレを装着することによって、非常用のトイレになります。

そこで伺います。

⑦町内にある公園のトイレですが、多目的トイレを除き、男女別のトイレのほとんどが和式です。洋式であれば災害時に携帯トイレを付けて使うことができます。

防災の観点からも公園内のトイレの洋式化を進めるべきだと考えますが、町の考えをお聞かせください。

危機管理課長

公園のトイレの現状ですが、55箇所の公園のうち、31箇所にトイレ(大便器)があり、そのうち25箇所は洋式トイレが使用できる状況となっています。

公園内のトイレが洋式であれば、備蓄している携帯トイレを使用しやすいというメリットがあることは、その通りだと思いますので、今後改修が必要となる場合は洋式化が図れるよう、関係部署と連携を図っていきます。

携帯トイレの家庭備蓄

二見議員

もう一つ、携帯トイレの備蓄について伺います。

携帯トイレとは、便器に設置して使用する袋式のトイレです。袋の中に排泄し、吸収シートや凝固剤で大小便を吸収・凝固させます。

一般的に人は1日5回、排せつするとされています。そこから「トリセツショー」では、「1人あたり最低15回分(3日分)を備えてください」と言ってました。経産省は「1人あたり35回分(7日分)の災害時トイレの備蓄が必要だとしています。

南海トラフ巨大地震の場合、被災地域が広く支援物資がすぐには届かない可能性が高い。上下水道や排水管の復旧にも時間がかかります。ですから、最低でも1週間分の備蓄が必要だと思います。

5万人分だと175万セットが必要ですが、これを町が備蓄することは現実的ではありません。置くところもない。だから携帯トイレは、各家庭で備蓄するのが一番です。

現状はどうかというと、「トリセツショー」の番組調査では備蓄している家庭はわずか6%。一般社団法人日本トイレ協会のアンケート調査では、22.2%(2023年)です。8割のご家庭が携帯トイレを備蓄していない。私も、先日あわてて買ったばかりです。

一人当たりの災害用トイレの備蓄回数は、「0~4回分」が36.9%、「5~9回分」が16.2%で10回分未満が50%を超え、実際に災害が起こったら全く足りません。

備蓄していない理由で最も多いのは「とくに理由がない」で、44.5%です。災害が起きたらトイレに困るとは全く考えていない人が多いわけです。

そこで伺います。

⑧震災が起き、トイレが使えなくなった場合、携帯トイレがあればしばらくの間はしのぐことができます。

いま述べたように町民5万2千人分の携帯トイレを町が備蓄することは現実的ではない。やはり家庭で備蓄してもらう必要があります。府中町備蓄計画においても「携帯トイレは各家庭で最低3日分備えておく」となっていますが、備蓄している家庭は少ないのが現状です。

東京都多摩市や新宿区では、携帯トイレと防災ハンドブックを全戸配布したそうです。

携帯トイレ普及の手立てについて町の考えをお聞かせください。

 → 東京都多摩市 携帯トイレ・防災ハンドブックを全戸配布します!

 → 東京都新宿区 携帯トイレ等防災用品を区内全世帯に配布

 

危機管理課長 

備蓄計画では、避難者が最大となる南海トラフ巨大地震を想定し、携帯トイレを備蓄していくこととしております。

大規模な災害で、下水道が使用できなくなれば、避難が必要なくても自宅のトイレが使用できず、携帯トイレなどが必要となり、備蓄している数では不足する場合も想定されます。

そのため、各家庭における携帯トイレをはじめとする備蓄が進むことは大変重要と考えており、地域や学校での防災出前講座において周知を図っているところです。

出前講座では、携帯トイレの実物を直接手に取っていただき、使用方法なども説明しています。学校では、防災や備蓄の大切さを家庭でも話し合い、学んでいただく機会となるよう話しています。

引き続き、広報やホームページをはじめ、地域や学校に出向いて行う防災出前講座において積極的に周知に努め、地域住民の更なる防災意識の向上と、家庭における備蓄が一層進むよう取り組みます。

《3回目》

二見議員

公園のトイレですが、今後改修が必要となる場合は洋式化が図れるよう関係部署と連携していくという答弁でした。

南海トラフ巨大地震に備えて必要な手を打つ。これが改修が必要な理由にならないのでしょうか。

町内にある55か所の公園のうち、31か所にトイレ(大便器)があり、そのうち25か所は洋式トイレが使えるとのことですが、ほとんどのところが多目的トイレだけなんですね。

男女別のトイレは和式です。公園の和式トイレを洋式化しておけば、災害時には携帯トイレを装着することによって男性用が13、女性用が19使えるトイレが増えます。

トイレの標準仕様も、多目的トイレ、男性用、女性用があり、洋式とすべきではないでしょうか。

ぜひ検討して計画的に洋式化を図っていただきたい。

携帯トイレの家庭備蓄については、広報やホームページ、地域や学校に出向いて行う防災出前講座において積極的に周知に努めていくとのことでした。

能登半島地震から1年、東日本大震災から14年、阪神淡路大震災から30年が経ちましたが、避難生活のあり方はなかなか改善しません。

トイレの問題は本当に深刻です。美しい府中町のまちを汚物だらけのまちにはしたくありません。

まさか、自分の所ではそんな大きな地震、災害は来ないだろう。地震が来てもなんとかなるだろう。私自身もついついそう思ってしまう。

3月11日、岩手県大槌町にある小学校の副校長されていた方が14年前に撮影した映像がNHKの番組で紹介されていました。

「あまりの事態に現実感がなく、映画のようだった。助かったのは幸運だったと思う。児童が全員無事でよかったが、災害はいつ起こるか予想できない。人ごとだと思わず、想定外にも備えるという気持ちを持ってほしい」と語っていました。

「災害は想定を超えてやってくる」

忘れてはならない言葉だと思います。

以上で質問を終わります。

ふたみ伸吾 ほっとらいん

ふたみ伸吾にメッセージを送る

生活相談、町政への要望、ふたみ伸吾への激励など、メッセージをこころよりお待ちしています。

     

    関連記事

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

    PAGE TOP