あまりにも杜撰な島根原発「広域避難計画」

島根県は、中国電力島根原発の事故を想定した広域避難計画を2016年3月に公表。島根原発から30キロ圏内の松江、出雲、安来、雲南4市の約39万人の避難先を、島根県内と広島、岡山両県の61市町村に設定。広島県の受け入れは松江市、出雲市、雲南市から17万1370人です。離島である大崎上島を除く22市町が受け入れます。府中町は原発事故のさい出雲市鳶巣地区550世帯1600人を受け入れる予定です。

1600人を3つの施設で受け入れることなど可能なのか――というところから出発した今回の質問。なんと1人あたり通路等共用部面積を含み2㎡換算、畳1枚分でしかありません。

最大の驚きは、「当該広域避難は、災害対策基本法第86条の9に基づく「広域一時滞在」とするため、避難者の受け入れ期間は最長6ヶ月を想定しております。島根県、出雲市の見解では、半年の期間で仮設住宅の建築が可能と判断されております。なお、町での仮設住宅の建築は想定しておりません」という答弁です。

39万人も移動させる避難が、わずか半年で終了する。半年間は体育館などですし詰め状態。半年経ったら、放射能の立ちこめる30キロ圏内に仮設住宅をたて、そこへ帰るという計画なのです。

長いですが、最後までお読みいただければ幸いです。

印刷用PDFはここをクリック


(島根原発)

島根原発事故発生時の府中町の対応について

2018年12月18日 府中町議会第5回定例会 一般質問

二見伸吾

はじめに

発言通告にありますように5問を予定しておりましたが、今回は30㎞圏内の強制避難地域における避難問題に絞ることにし、5番目の質問、「母子避難や一人暮らしの老人への特段の配慮」についてはいずれの機会に改めて質問したいと思います。

では、島根原発事故発生時の府中町の対応についてお伺いします

島根県は、中国電力島根原発の事故を想定した広域避難計画(「原子力災害に備えた島根県広域避難計画」)を2016(平成28)年3月に公表しました。

島根原発から30キロ圏内の松江、出雲、安来、雲南4市の約39万人の避難先を、島根県内と広島、岡山両県の61市町村に設定。このうち広島、岡山は49市町村に約27万人が避難する想定となっています。広島県の受け入れは松江市、出雲市、雲南市から17万1370人です。離島である大崎上島を除く22市町が受け入れます。

広島市が4万7600人(27.8%。県全体の受入数に対する比率。以下同じ)、福山市が2万2600人(13.2%)、呉市が1万8250人(10.6%)。安芸郡4町は、海田町700人(0.4%)、熊野町1350人(0.8%)、坂町1600人(0.9%)、府中町1600人(0.9%)です。

「避難先となる自治体からは避難受け入れの了解をいただいた」と計画には書かれており、府中町は、出雲市鳶巣(とびす)地区にお住まいの520世帯1600人の方々を受け入れるということも決まっております。

原発事故はあってはならないことですが、東京電力福島第一原発事故(以下、福島原発事故)が示すように、事実起こったことであり、今後も起こりうる。だからこそ広域避難計画も策定されたわけです。

不幸にして事故が起きた場合、私たちは出雲市から避難されてくる1600人の鳶巣の方々を受け入れ、安心して避難生活を送ってもらい、生活再建の手助けをする責任があります。

1.島根原発と避難計画

島根原子力発電所は、島根県松江市鹿島町にあります。かつては「日本で一番都道府県庁所在地に近い原発」と言われていましたが、2005年に鹿島町が松江市と合併し、県庁所在地に立地する唯一の原子力発電所となりました。半径10㎞内に県庁、松江市役所、島根大学、原子力防災センターなど中枢施設を抱えています。ちなみに島根原発と府中町との距離は135㎞です。

島根原発の概要ですが、1号機は沸騰水型で出力46万kw、1974年3月に運転を開始し2015年4月に廃炉になりました。

2号機も沸騰水型炉で出力約82万kw、1989年2月に運転開始。プルトニウムを使ったプルサーマル発電開始を予定。福島原発事故後の2012年1月に停止して約7年が経ちます。

3号機は、浜岡原発5号機などと同じ改良沸騰水型炉で出力137万3千kw、2012年3月に運転開始を予定していましたがまだ稼働しておりません。今年8月に新たに運転適合審査申請を行いましたが、規制委員会から、申請書の不備を厳しく指摘され、審査が休止しています。

ですから、現在、島根原発は1台も稼働しておらず、今年の猛暑でも電力供給に不足はありませんでした。原発はいらないということです。しかし、中国電力は2号機の再稼働と3号機運転開始を実施しようとしてます。

原発事故が起きたさいの避難区域は、東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「福島原発事故」)の前は、原子力発電所から8~10km圏としていました。福島原発事故では、この範囲を超えて避難することが必要になり、さらに放射性物質の影響が広範囲におよび、住民避難が長期化するなど従来の原子力防災体制では十分対応できない状況となりました。

そこから、原子力規制委員会は原子力災害対策指針を策定し、避難区域を30km圏に拡大しました。これに伴い、原発事故に係る地域防災計画や避難計画も30km圏の範囲について策定することになったわけです。

30㎞より外であれば安全ということではありませんが、国としては避難区域を30km圏内と定めたわけです。それに従って広域避難計画は作られました。

39万人が自家用車あるいはバスで避難することになります。渋滞を緩和させるために乗り合わせが原則とのことですが、混乱は避けられないでしょう。

出雲市鳶巣地区から府中町まで通常であれば3時間以内に着きます。果たして鳶巣地区の方がぶじ府中町までたどり着けるのかについても甚だ心配であります。

しかし、ここでは府中町に鳶巣地区1600人の方が府中町に到着し避難したという前提で質問いたします。

まず、受け入れ計画の策定についてです。

内閣府は2016(平成28)年3月に「原子力災害発生時における避難者の受入れに係る指針」を作成し、「受入市町村は、原子力災害発生時等の避難者の避難生活支援に関する具体的な手順等について、あらかじめ検討し、マニュアル等の中で定めておくことが必要である。また、受入市町村は、平時から、要員の研修、各種調査等の実施、訓練の実施、避難先施設での物資等の備蓄について検討し、避難元市町村と協議することが重要である」と書かれています。

そこでお尋ねします。

①9月20日付山陰中央新報は「広島、岡山両県の49市町村のうち、8割の自治体が受け入れ計画の策定に未着手である」と書いていますが、受け入れ計画の策定は府中町ではどうなっているでしょうか。

また、②受け入れについていつどこでどのような論議があったのでしょうか。人数を1600人としたのはどのような理由にもとづくものでしょうか。

生活環境部長

議員ご指摘のとおり、原発事故はあってはならないことではございますが、島根原発事故が万が一発生した場合、島根県と広島県による県間防災協定に基づき、避難者の受け入れ要請に応じているものでございます。

これは、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による東京電力㈱福島第一発電所での原子力災害を踏まえ、広域避難については、あらかじめ避難先を定めておくことが重要であるとのことから、島根県が広域避難を広島県に要請、広島県から島根県の方に本県受け入れ市町が被災しておらず、受け入れが可能であることを条件として、平成24年11月15日付で了解され、当町も広域避難の受け入れを行うこととしたものです。

では、まず、1つ目のご質問、受け入れ計画の策定状況についてですが、現段階では受け入れ計画は策定しておりません。これは、避難者に対して、通常の災害発生時の避難と同じ対応を行うこととしていること、また、広域避難の手法等については島根県や出雲市が策定している広域避難計画、出雲市策定のガイドブックにおいて規定されているためです。

町としては、「原子力災害に備えた島根県からの避難者受け入れに係る府中町における計画等策定指針」は作成しており、今後、島根県、出雲市と協議調整し、必要に応じて作成は検討してまいりたいと考えております。

続いて2つ目のご質問、受け入れ人数1,600人の理由について、でございますが、島根県においては、東京電力㈱福島第一発電所での原子力災害の教訓から、地域コミュニティを維持するという観点から地区単位で避難先を選定されております。

府中町では「出雲市 鳶巣(とびす)地区」の住民、約1,600人の皆様の受け入れとなっております。

 

2.避難の受け入れについて

つぎに避難の受け入れについてです。

島根県作成の広域避難計画では「円滑な避難受け入れに当たって検討すべき事項」として次のようなものが挙げられています。

○正確な情報の伝達、食料・飲料水等の配布
○避難先に収容されている避難住民に係る情報の早期把握
○避難住民が相互に助け合う自治的な組織が主体的に運営する体制への早期移行
○良好な生活環境を確保すること(健康状態、トイレ、ごみ処理等の状況把握と対策)
○男女のニーズの違いへの配慮、特に女性や子育てに配慮した運営
○外国人への配慮
○家庭動物のためのスペースの確保 等

先日、NHKのニュースで報じられたのですが、医師や災害の専門家で作る避難所・避難生活学会が国や自治体などに対して、避難所の環境の抜本的な改善を求める提言をまとめたそうです。
NHKニュースは次のように伝えています。

「近年、災害時の避難生活による体調の悪化などで亡くなる《災害関連死》が問題になっていますが、提言では、関連死の主な原因は、不便で不潔なトイレや冷たい食事、床での雑魚寝などといった避難所の環境にあるとしています。こうした状況を改善するため、避難所では快適で十分な数のトイレや温かい食事、それに簡易ベッドを提供することを標準とすべきで、そのためにはトイレ・キッチン・ベッド=《TKB》の準備をふだんから進める必要がある」

●トイレ…数が不足していたり汚いと、水や食事を控える人が増え、健康上のリスクを高める。快適で十分な数のトイレを導入することが必要。
●キッチン…パンやお握り、弁当など、冷たくて栄養の偏った食事によって被災者が体調を崩し、精神的にも負担になる。温かく、栄養のとれる食事が必要。
●ベッド…床から舞うほこりを吸い込みにくくし、衛生的な環境を保てる。床から伝わる冷たさを防いだり、腰掛けることもできる。段ボールベッドなどの簡易的なベッドが必要。
(「NHK NEWS WEB」2018年12月9日)

そこでお尋ねします。

③避難受け入れ先はくすのきプラザ、府中公民館、町立体育館となっているが、1600人も収容することができるのでしょうか。一人あたり面積はいくらぐらいになりますか。十分なトイレの数、温かい食事、簡易ベッドが必要になりますが、どのような対策を考えていますでしょうか。

生活環境部長

3番目のご質問、まず1,600人が収容できるのかについてですが、1人あたり通路等共用部面積を含み2㎡換算として算定し、くすのきプラザギャラリー320㎡で160人、大アリーナ1,028㎡で514人、会議室1・2、研修室1・2で合計140㎡に70人、チャイルドルーム17㎡で9人の合計753人、町立体育場体育館970㎡で485人、府中公民館会議室等847㎡で423人の合計1,661人としております。

これは、当町の避難所管理運営マニュアルで定めております1人あたり面積の考え方3.3㎡あたり2人、1人あたり1.65㎡とほぼ同様の面積を確保できる換算値でございます。
また要援護者につきましては、くすのきプラザ小アリーナでの受け入れを考えており、121㎡で24人、福寿館178㎡で36人の合計60人を受け入れ可能としております。
なお、要援護者につきましては、要援護者おひとりおひとりでご事情も異なることから、必要な面積も異なってまいります。そうしたことも考慮し、1人あたり概ね5㎡換算し、受け入れ人数として定めております。

このように、想定された約1,600人の受け入れについては、可能と判断しております。

しかし、議員ご指摘のとおり、避難者数や期間等に応じ、プライバシーの確保やトイレ、食事、簡易ベッドといった生活基盤など様々な課題が生じてくる恐れがあります。町としましては、1つ目のご質問の回答でも答弁させていただきましたが、広域避難者に対して、通常の災害発生時の避難と同じ対応を行うこととしていることしておりますが、島根県、出雲市、広島県と協議しながら、広域避難者に寄り添った適正な対応に努めたいと考えております。

 

3.仮設住宅の設置

自然災害、例えば熊本地震の際に避難所生活は最長で7か月も続きました。原発事故の場合は、自然災害と違い戻ることができません。

地震・津波による避難者も含め、福島県から県外への避難者は平成30年11月現在で3万3147人(復興庁調査)となっています。「自主避難者」を含めるとさらに多いでしょう。避難者数のピークは事故から1年後、4月の6万2736人です。半年を過ぎて避難者はなお増え続けているのです。

避難所での生活をできるだけ短期間で終わらせるために必要なのは応急仮設住宅の建設です。

内閣府のつくった「応急仮設住宅の概要」には次のように書かれています。

「災害救助法は、非常災害に際して、応急的に必要な救助を行い災害にかかった者の保護の徹底と社会の秩序の保全を図ることを目的としている。災害のため住家が滅失した被災者は、応急的に避難所に避難することとなるが、避難所は、災害直後における混乱時に避難しなければならない者を、一時的に受け入れるためのものであるから、その期間も短期間に限定されるので、これら住家が滅失した被災者のうち、自らの資力では住宅を確保することができない者に対し、簡単な住宅を仮設し一時的な居住の安定を図るものである」

応急仮設住宅は災害発生の日から20日以内に着工することになっています。

供与期間は建築工事完了から2年以内と極めて短い。仮設住宅はプレハブが多く、音が漏れるなどさまざまな問題があります。

今年7月の豪雨災害では、広島県は、呉市、坂町、三原市に応急仮設住宅を整備しましたが、三原市に整備する応急仮設住宅については、全木協(一般社団法人全国木造建設事業協会)の広島県支部である全木協広島県協会が木造で整備しました。8月2日から工事が始まり、8月31日に広島県に引き渡されました。その後、9月3日から入居が始まっているそうですので、木造でもわずか1か月でできます。

応急仮設であっても、長期間住み続けることのできるものを作ることは原発避難の場合は極めて重要だと思います。

東日本大震災の応急仮設住宅建設は、談話室、集会所、造成費、追加工事を含む建設コストの1戸あたりの平均で、岩手県が617万円、宮城県が713万円、福島県が689万円となっており、これだけのお金をかけるのですから、「応急仮設」とはいえども長らく住めるもの、県が三原市に作った木造応急仮設のようなものを造るべきです。

この応急仮設住宅が鳶巣地区からの520世帯分必要になるわけです。そこで伺います。

④原発事故の場合は自然災害以上に避難生活が長期化します。すみやかに仮設住宅への入居できるようにしなければなりません。仮設住宅はどこにつくるのでしょうか。

生活環境部長
4番目のご質問、長期化、仮設住宅についてですが、当該広域避難は、災害対策基本法第86条の9(※)に基づく「広域一時滞在」とするため、避難者の受け入れ期間は最長6ヶ月を想定しております。島根県、出雲市の見解では、半年の期間で仮設住宅の建築が可能と判断されております。なお、町での仮設住宅の建築は想定しておりません。

(※)第86条の9 前条第一項に規定する場合(市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、被災住民の生命若しくは身体を災害から保護し、又は居住の場所を確保することが困難な場合)において、市町村長は、都道府県知事と協議を行い、被災住民について他の都道府県の区域における一時的な滞在(以下「都道府県外広域一時滞在」という。)の必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、当該他の都道府県の知事と当該被災住民の受入れについて協議することを求めることができる。

《第2回目の質問》

ただいまの答弁を伺って大変驚きました。

3つの施設で1600人どうやって受け入れるのか不安に思っていましたが、「一人あたり通路等共用部面積を含み2㎡換算で算定」しているとのこと。これは1m×2mですから畳一枚よりちょっと大きいだけ。しかも通路など共用部面積も含めてのことですから実際にはもっと狭いわけです。横になることすらままならないでしょう。簡易ベッドの標準的なサイズは1900㎜×900㎜。これを敷き詰めたら通路すら確保できない。プライバシーを守ることもできません。

これでどうやって「広域避難者に寄り添った適正な対応」ができるのでしょうか。まさに机上の空論です。

さらに驚いたのは、今回の避難計画は。災害対策基本法第86条の9に基づく「広域一時滞在」であって「避難者の受け入れ期間は最長6か月を想定」したもの。仮設住宅建設について、島根県、出雲市が、半年の期間で可能だと言っているということです。

「島根県広域避難計画」「出雲市広域避難計画」には、原発事故が起きた際の避難が、災害対策基本法台86条9の「都道府県外広域一時滞在」にあたり、その期限が半年であるというようなことは一言も書いてありません。しかし、受入れ先の自治体にはそのように伝えている。この広域避難計画は、原発再稼働のために作られたと言われています。万が一事故が起きても、きちんとした受け入れ先がある、だから大丈夫だと思ってもらうことが狙いだと。しかし、実際にはわずか半年の一時滞在にすぎない。「広域避難計画」は島根県民、出雲市民をペテンにかけるようなものです。

東京電力福島第一原発と同じような事故が起きれば、島根原発から30㎞圏内のほとんどが帰宅困難地域になるでしょう。帰りたくても帰れません。

おそらく松江市の方も出雲市の方も、原発避難がわずか半年の「一時滞在」であり、半年後には、放射能が残留する松江市や出雲市へ戻り、仮設住宅に住むことになるなどとは夢にも思っていないでしょう。事故が起きても広島県や岡山県の市町村が受け入れてくれ、そこで生活再建ができると考えているはずです。

「広域避難計画」は国の指示で島根県や出雲市などが作ったものであり、避難が一時滞在であることは府中町の責任ではありません。しかし、半年過ぎたからあとは知りませんということにはならないでしょう。

改めてお尋ねします。

福島原発と同様の過酷事故が起きても、半年後には島根県出雲市に帰ることができる、仮設住宅を造り、そこで安心して暮らすことができるとお考えですか。

 

生活環境部長

まず、1600人の受け入れですが、3つの施設を可能としておりますが、答弁でも申しましたとおり、通常の災害発生時の避難と同じ対応を行うこととしており、当町の避難所管理運営マニュアルで定めております1人あたり面積の考え方3.3㎡あたり2人、1人あたり1.65㎡とほぼ同様の面積を確保できる換算値として報告し、計画策定されているわけでございますが、避難期間、避難者数などの状況に応じ、場合によっては、他の公共施設の活用も検討することを考えております。

ご質問されております「出雲市に帰ることができる、仮設住宅を造り、そこで安心して暮らすことができるとお考えですか」についてでございますが「原子力災害に備えた島根県広域避難計画」第4章住民(一般)の避難体制で、「避難が長期化すると見込まれる場合、国、島根県、関係4市(松江市、出雲市、安来市、雲南市)は、避難住民が避難先から賃貸住宅、仮設住宅等へできるだけ早期に移転できるようにする」とされ、また、「国、島根県、関係4市等が連携をとりながら早期に調整を進め、避難後概ね6ヶ月以内に移転を完了させる」と定められております。

出雲市においても「原子力災害に備えた出雲市広域避難計画」に同様の定めがございます。

仮設住宅の建設については、島根県、出雲市が主導で行うもので、また、町域での建設可能な場所を確保しているわけではございませんが、町としましても、広域で考えるべき案件と認識しており、国、県、関係市町村と連携一調整を進め、避難された方に必要な措置を講じてまいりたいと考えております。

《第3回目の質問》

うまく、躱(かわ)されました。帰れるとも帰れないともお答えにならなかった。

「福島原発と同様の過酷事故が起きても、半年後には島根県出雲市に帰ることができる」と言えば、事実と異なり、大問題になる。「帰ることができない」と答えれば立場上困るわけです。原発事故から半年後に出雲市に戻るなどということは狂気の沙汰としか言いようがありません。

確かに部長が仰るように「原子力災害に備えた島根県広域避難計画」には「避難住民が避難先から賃貸住宅、仮設住宅等へできるだけ早期に移転できるようにする」「国、島根県、関係4市等が連携をとりながら早期に調整を進め、避難後概ね6ヶ月以内に移転を完了させる」(16ページ)と書いてありますが、賃貸住宅、仮設住宅等がどこへ建てられるのか、どこへ移転するのかということは書いていない。

まさか6ヶ月後の移転先が放射能の残留する島根県の関係4市――松江市、出雲市、安来市、雲南市――だとは誰も思っていないでしょう。放射能に汚染されていない安全なところへ避難し、そこで賃貸住宅や仮設住宅に住むことができると当然思っているはずです。

自然災害なら一時退避して元のところに帰るのは当たり前のことです。しかし、原発事故は違います。戻ることができない。それなのに半年で戻る前提で計画が作られていることに大変驚きましました。

また、島根県や出雲市の作った「広域避難計画」が、地震や豪雨災害など自然災害にあったときに適用される災害対策基本法に基づくものだということにも大きな衝撃を受けています。
「原子力災害に備えた広域避難計画」。そもそも原発事故のことを「原子力災害」と呼び、あたかも自然災害と同じであるかのように装い、自然災害のためにつくられた災害対策基本法を原発事故に適用することは誤りだということを指摘しておきたいと思います。

さて、ここまで、わが町府中町が原発事故が起きても安全な避難するにふさわしい場所だという前提で質問してきました。しかし、この点についても検討されなければなりません。
先ほども申しましたように、島根原発と府中町の距離は135㎞です。

茨城県水戸市は福島第一原発から127㎞で、2011年3月15日の時点で、セシウム134とセシウム137は400ベクレル以上を示しています(※)。栃木県宇都宮市は距離140㎞ですが、同じく200ベクレル以上です。子どもの健康被害があらわれるのは50ベクレルと言われています。135㎞という距離は決して安全ではないのです。(みんなのデータサイト編『放射能測定マップ+読み解き集』)

※「東日本土壌ベクレルプロジェクト」が2014年から2017年までの3年をかけて採取した土壌のセシウム134+セシウム137を分析し、その合算値を事故直後(2011年3月15日)の値に補正計算したもの。

長年、瀬戸内海の環境汚染問題に取り組んできた湯浅一郎氏は、島根原発で福島のような事故が起きたらどのようなことになるのか、次のように述べています。

「事故時の気象条件に対応して、山間部などに沿って高濃度の汚染地帯ができる。一旦、落ち着いた分布も、雨に溶け、風により輸送されることで、その分布は変化する。その過程で、河川や湖沼を汚染しつつ、最終的には海に流入する。アユ、ヤマメ、イワナ、ウグイ、ウナギなど内水面漁業の出荷停止や操業自粛は、島根県、鳥取県をはじめ広島県、岡山県など中四国、関西、九州の広域に及ぶ可能性が大きい。例えば中国山脈にそって東西に高濃度の地帯ができれば、雨に溶け、風に運ばれて、結果として日本海、瀬戸内海が汚染される。水源地が汚染されれば、市民の飲み水が危機に瀕する。これらは、ひとえに事故発生時の気象条件に左右される。(湯浅一郎『原発再稼働と海』緑風出版、105ページ)

私たちが飲んでいるのは太田川の水です。島根原発事故が起きれば中国山地は間違いなく放射能によって汚染されます。そこから私たちの飲む水はやってくるのです。そして放射能を帯びた水は瀬戸内海へと注ぎ込みます。

瀬戸内海は閉鎖性海域ですので、いったん汚染されれば外海へはなかなか出て行きません。瀬戸内の魚も牡蠣もたべることができなくなるでしょう。島根原発が事故を起こせば府中町も決して安全ではない。

瀬戸内海の向こう、愛媛県の伊方町には伊方原発があり、3号機が10月27日再稼働しました。伊方原発との距離は102㎞、遮るものはありません。伊方原発で事故が起きればひとたまりもないでしょう。

自然災害は被害を小さくすることはできても、地震や豪雨をなくすことはできません。しかし、原発は違います。島根原発は2012年1月に2号機が停止して約7年が経ちますが、その間、電力供給が逼迫したことは一度もありません。しかも電力需要は年々減っています。

原発がなければ原発事故も起きず、避難計画も不要です。避難などしなくていいように原発を廃炉にしなければなりません。

府中町は全国に先がけ、1982年3月25日に町と町議会が非核町宣言をいたしました。

「原爆によって広島市とともに世界で最初に凄惨な被害を被った府中町は、戦争放棄の日本国憲法の原理に基づき、恒久の平和を念願し、全世界の国民が平和に共存することを望むものである。全人類が絶滅の危機に立たされている現在、非核三原則の堅持とともに、あらゆる国の核兵器の使用に反対し、安全で住みよい街づくり実現のため、ここに全住民と共に府中町を《非核地域》とすることを宣言する」

この当時は、非核の「核」は核兵器を意味していたと思います。

しかし今日、安全で住みよい街づくりを実現するためには、核兵器の使用とともに核発電すなわち原子力発電をなくすことが必要です。それが2011年3月11日に起きた東京電力福島第一原発事故の最大の教訓だと思います。

最後に町長にお尋ねします。

安全で住みよい府中町にするためには、原発をなくし、廃炉にすることが必要ではないでしょうか。中国電力や国に対して島根原発第2号機の再稼働と第3号機の運転開始の中止、両機の廃炉を町として要請するおつもりはございませんか。

以上で私の質問を終わります。

町長 中国電力にそういうことを求めるつもりはありません(と、にべもない返事であった)。


広域避難計画の存在を教えていただいた「さよなら原発ヒロシマの会」事務局長・広島大名誉教授の滝史郎さん、
避難者の手記、資料を提供していただいた、福島県郡山市から北海道東川町に避難している鈴木哉美さん、
千葉県から岡山県倉敷市に避難している小野尾孝子さん、
島根原発の現状についての資料を提供して下さった北村めぐみさん

に感謝致します。

《参考文献》

立石雅昭・にいがた自治体研究所編『原発再稼働と自治体』自治体研究社、2018年
湯浅一郎『原発再稼働と海』緑風出版、2018年
山本薫子ほか『原発避難者の声を聞く』岩波ブックレット、2015年
森松明希子『母子避難、心の軌跡』かもがわ出版、2013年
みんなのデータサイト編『放射能測定マップ+読み解き集』みんなのデータサイト出版、2018年
長谷川公一・山本薫子編『原発震災と非難』有斐閣、2017年
松井克浩『故郷喪失と再生への時間』東信堂、2017年
東日本避難者の会『3.11避難者の声』2017年
吉田千亜『ルポ母子避難』岩波新書、2016年
子ども未来・愛ネットワーク編『福島から岡山へ』2016年
「2018ひろしま避難者の会「アスチカ」会員情報のまとめとアンケート」
新潟県「福島第一原発事故による避難生活に関する総合的調査のポイント」2018年
東日本大震災避難者の会 みちのく会「あの日…そして今 311・北海道に避難した者たちの手記」vol.3、2014年

2018-12-18 | Posted in 府中町議会No Comments » 

関連記事

Comment





Comment