本当に100戸でいいんですか? 町営住宅

町営住宅の建設について

2017年9月12日 第4回定例会 一般質問 7番 二見伸吾

町営住宅の建設について質問いたします。

 

少なすぎる町営住宅

町民のみなさんから「町営住宅に入りたい」「町営住宅が少ない」「なんとかならないのか」という声が寄せられています。

年金暮らしのご夫婦からお話を伺いました。現在は賃貸住宅に暮らしています。老朽化したので修理をしてほしいと家主に言ったら、「家賃を上げると言われたが、どうしたらいいのか」という相談です。話しているうちに夫婦げんかになってしまいました。奥さんは「(府中町の)町営住宅には空きがないので広島市に引っ越して市営住宅に入居したい」といい、ご主人の方は「生まれ育った府中町にずっと住み続けたい」という。結局、最小限の補修を家主に依頼して、住み続けるということになったようです。

このような夫婦げんかの原因になっている町営住宅の現状はどうなっているでしょうか。

町営住宅数は現在119戸で、内訳は山田ブロック住宅が24戸、五反田住宅16戸、鶴江ブロック住宅20戸、青崎東住宅が36戸、桃山住宅が3戸、新たにできた本町住宅が20戸です。入居されている方はすべてあわせて103世帯。しかし、山田ブロック、五反田、鶴江ブロック、桃山は老朽化により募集停止しています。ということは現時点で入居可能性があるのは青崎東と本町をあわせた56戸にすぎません。両方とも全戸入居済みですので、空きはゼロということになります。これでは入れるわけがありません。

 

公営住宅数 県内で最下位

県内の他市町はどうなのか、公営住宅数を比較する表をつくってみましたが、一言でいって愕然といたしました。

ダントツの最下位です。府中町の町営住宅戸数は人口の0.2%、世帯数の0.5%にすぎません。県内平均は、人口比で1.7%、世帯数比で4%です。下から2番目の東広島市でさえ、人口比0.7%、世帯数比1.6%で、府中町の3倍以上です。

安芸郡4町はどうか。海田町は町営住宅164戸、県営住宅278戸、熊野町は町営住宅は68戸ですが県営住宅が692戸あります。坂町は町営住宅110戸で県営住宅が224戸です。

人口、世帯数が違いますので、もし府中町と同じ世帯数だったら、いくつあることになるのか。府中町と同じ世帯数(2万1千世帯)に揃えると、町営住宅は海田町並みで283戸、熊野町並みで152戸、坂町並みで453戸あることになります。県営住宅をあわせると海田町762戸、熊野町1701戸、坂町1374戸です。府中町は県営住宅もありません。府中町の世帯数に換算した県内市町の平均は1100戸台です。あと1000戸も他市町より公営住宅が少ないのです。

 

高い借家率と高齢化社会

府中町は、広島市や東広島市、海田町とともに県内で借家率が高く、4割を超えています。

 

そして、借家住まいの高齢者もまた増える傾向にあります。1990(平成2)年から2015(平成27)年の四半世紀に、民間借家に住む65歳以上世帯は563世帯から1504世帯へと3倍近くになり、人口でみた2015年の高齢化率は23.1%です(国勢調査)。


今後も65歳以上の高齢者は増え続け、2030年には約1万4千人と2010年に比べて4割も増えると「府中町人口ビジョン」は予測しています。

 

家賃はどうか。「府中町住宅マスタープラン」によると、6万円~8万円が最も多く31.8%、ついで4万円~6万円が30.3%、3番目が2万円~4万円で18%、4番目が8万円~10万円で15%となっています。府中町平均は5万7124円で、県平均の4万7269円より1万円ほど高い。

高齢化が進む、借家家賃が相対的に高い。

そして、これは日本全体のことですけれども高齢者の暮らしを支える年金の水準が極めて低い。

厚労省の「年金制度基礎調査」によると、老齢年金受給者(有効回答1万3495人)のうち、200万円未満は男性の55%、女性の91.2%、150万円未満は男性の40.4%、女性の91.7%を占めます。

非正規雇用を中心にワーキングプア(働く貧困層)が増えており、厚生年金であっても賃金が安ければ受給できる額も低くなります。年金制度そのものが、改悪につぐ改悪で支給額が減らされる傾向にあります。

生活保護受給世帯も1992(平成4)年から2015(平成27)年の23年間で約60万世帯から約160万世帯へと約3倍に膨れあがっています。ここには働く貧困層の広がりとともに高齢化に伴う所得減があります。

そういうなかで、民間住宅の家賃を払い続けることができない人たちが出てくるのは当然です。家賃が払えなければ、借家は出て行かざるを得ない。住宅難民になりかねません。

そこで伺います。

①府中町の町営住宅数はきわめて遅れた状態であり、町内の借家比率が高いことから住宅難民が広がる可能性があると思われますが、町はどう考えていますか。その認識をお聞かせ下さい。

②第2に、府中町は、なぜ全県的な水準よりはるかに遅れているのか。その原因はどこにあると考えていますか。


 ▼建設部長答弁

住宅難民とは住宅に困窮されている方を示されていると思いますが、住宅に困窮される方の将来の見込みにつきましては、具体的に示されたものがありません。国土交通省では、生活困窮者が今後増加する可能性があるとの見解を示しておりますので、住宅に困窮される方も増加する可能性は否定できないと考えています。

本町では、住宅に困窮されている方への対応につきまして、府中町住宅マスタープランで方向性を示しております。

本マスタープランは、少子高齢化や人口減少などの社会経済情勢が大きく変化する中で、住まいづくり及び住環境の向上を目的として、
本町の住宅環境の課題整理を行い、住宅環境の改善にかかる方向性と重点的に進める住宅施策を定めたものでございます。

この中で、「低額所得者、被災者、高齢者、障害者等の住宅に困窮されている方に対する居住場所の確保」につきましては、相談者の住まいの不安解消に向け多様化したニーズや問題に対応できる相談・支援体制を整えることとしております。

具体的には、民間および広域的な行政間の連携を強化するため、広島県居住支援協議会の活用等により、住宅セーフティネットの構築を図るとともに、公営住宅や民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に関する情報の提供等を行うことにより、相談者の住まいの不安軽減を図るなど、町営住宅整備といったハード面のみならず、ソフト面でのさまざまな制度の活用・情報提供で支援を行ってまいりたいと考えています。

この「広島県居住支援協議会」とは、県内全ての市町と不動産関係団体などで構成されており、各市町では住宅部局と福祉部局で構成された部局横断的な体制となっています。

第2の質問についてですが、議員ご指摘のとおり、人口に対する町営住宅の供給戸数は、他の市町と比べますと、低い率となっております。次の第3のご質問にも関係してまいりますが、先ほどご説明いたしましたように、本町におきましては、住宅の需要と供給のバランスが取れており、他の市町に比べましても、民間活力が非常に活発に動いておりますので、供給戸数につきましては、従前より整備されていた町営住宅供給規模の維持を目標としております。

しかしながら、入居者募集が可能な町営住宅は、現在56戸であり、従前より整備されていた供給規模の100戸に届いておりません。

その原因といたしまして、本町では、従前より公共下水道整備事業一向洋駅周辺区画整理事業・学校の耐震化事業といった三大事業のほか、街路整備、くすのきプラザや南北交流センターの施設整備などの大型事業を展開しており、より多くの町民の利便性が高まる効果の高い事業が優先して実施されてきたことによるものと考えています。

そのような中でも、府中町町営住宅長寿命化計画に基づき、実施計画に計上し、計画的且つ着実に「本町住宅の整備」を実施してまいりました。

今後も、老朽化により入居者募集が可能な町営住宅が減少することを抑制し、従前の規模を確保するため、努力をしていきたいと考えています。

 

町の計画は?

では、こういう極めて遅れた状況に対して町はどのような計画を持っているのか。伺いましたところ、現在の青崎住宅(36戸)と本町住宅(20戸)に加えて新たに44戸を建設し、古いところは壊して全部で100戸にするということでした。全く増えない。増えるどころか、減らすというのです。

『府中町第4次総合計画』において「公営住宅を適切に配置することにより、住宅困窮者の住みよい環境づくりを進めます」(69ページ)とあります。

また、「住宅マスタープラン」における基本理念は「ずっと住まいのオアシス」だそうです。公営住宅については「公営住宅の効率的・効果的な供給、耐用年限超過住宅の建替えの推進、改修改善」とありますが、目標指標に掲げているのはバリアフリー化率の向上だけです。

今まで申し述べましたように、老人人口ならびに世帯数の増加、借家率の高さ、年金額の低さによる高齢低所得世帯の増加が予想されるなか、公営住宅をせめて他市町並みに建設することなくして「住宅困窮者の住みよい環境づくり」はできず、これでは「ずっと住み」続けることもできない。「よそへ引っ越す」府中町になってしまいます。

そこで質問です。

③全県から遅れているにもかかわらず、増やす計画がない。これでは町民のみなさんの要望に応えられないと思いますが、町としてどのように考えていますか。

 

建設部長答弁

供給戸数につきましては、先ほどご説明させていただいたとおりです。

町民の皆様の要望に対しましては、第1のご質問で答弁させていただきましたとおり、相談者の住まいの不安軽減を図るなど、ハード面のみならず、さまざまな制度の活用・情報提供で支援を行ってまいりたいと考えています。

なお、町営住宅に関連する公的な賃貸住宅といたしまして、「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」が町内では57戸ございます。(グリーンヒルズ47戸、府中福寿園10戸)

このサービス付き高齢者向け賃貸住宅は、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」、いわゆる高齢者すまい法に基づき、高齢者向けの各種サービスを提供している民間住宅でございます。

このサービス付き高齢者向け賃貸住宅は、整備補助・固定資産税減免措置などの公的給付を受けていることから、「公的な賃貸住宅」と考えており、住宅に困窮されている高齢者への新たな対応として、その動向も注視し、情報提供を行ってまいりたいと考えています。

日本における公営住宅

戦後日本における住宅政策の中心は「持ち家政策」でした。年功序列賃金のもと、年々上がり続ける賃金を前提にして住宅金融公庫(現、住宅金融支援機構)などでローンを組み、生命保険に入って、それぞれの自己責任で家を建て住む。

そこに至らない所得層は日本住宅公団(現、都市再生機構)によって造られた公団住宅に住む。

そして、低所得者向けの住宅として公営住宅を建設する。このように日本の住宅政策は階層に応じて公庫、公団、公営が対応していくことになりました。公営住宅は、低所得者対策、貧困対策として位置づけられてきたわけです。

日本では住宅は個人責任であり、公営住宅は貧困な人たちにだけ提供されるものだという考えが根強くあり、公営住宅を軽視する根拠の一つになっています。その結果として、日本全体で公団住宅も含め、全住宅に占める公営住宅はわずか7%、公団を除くと4%です。府中町はさらにその十分の一で0.4%にすぎません。

しかしヨーロッパ諸国は違います。イギリスは1945年から78年までに造られた住宅の58.6%が公営住宅でした。3LDKが半数以上、家賃は収入の6分の一以下、失業などで収入が減ると家賃が大幅に減額され、失業保険が入るので路頭に迷うことがない。しかし、1979年にサッチャー政権が誕生すると公営住宅制度を解体し、既存の公営住宅を居住者に売りました。その結果、1978年に全住宅の32%を占めた公営住宅は94年には18.8%にまで低下したのです。
しかし、それでもなお日本の3倍の公営住宅がある。ドイツは15%、フランスは14.5%、スウェーデンは22%、オランダは4割が公営住宅です。

日本のあり方はけっして普通ではないということを強調したいと思います。平成18年に制定された「住生活基本法」によって、日本の住宅政策は「量から質へ」、住宅の建設よりも、空き屋活用の促進、民間賃貸住宅を活用した住宅セーフティーネットの構築へとシフトしつつあります。

空き屋や民間賃貸住宅を活用することを否定はしませんが、日本の公営住宅は決して多くない、府中町はさらに少ないのですから、「量から質へ」ではなく、「量とともに質を」をめざすべきだと思います。

公営住宅の果たす役割

生きていくうえで不可欠な「衣」「食」「住」のうち、とりわけ住まいは暮らし、憲法の保障する「健康で文化的な暮らし」の土台です。

孟子は「居は気を移し、養は体を移す、大なるかな居や」、「住居の状態は精神を左右する、食物はからだを左右する、住居の力は偉大だ」と言いました。北欧では「福祉は住居に始まり住居におわる」というそうです。

だいぶ以前から、「持ち家政策は限界にきている」と言われてきました。ローン地獄、住宅貧乏などという言葉が聞かれたのは1980年頃です。今では雇用者の三分の一が非正規労働となり、雇用不安にさらされています。住宅ローンを組むことさえできません。

ネットカフェで暮らす「ネットカフェ難民」、そのテレビ番組がつくられたのは今から10年前です。2009年、群馬県にある無届けの高齢者施設「静養ホームたまゆら」で火災が発生。入居者22人のうち15人が東京都墨田区福祉事務所の紹介で入所していて、そのうち6人が犠牲になりました。東京都の調査では、都内の各福祉事務所の生活保護受給者で無届け施設に入所しているものは、911人にのぼります(2009年当時)。

若者も高齢者も住宅の貧困にあえいでいる。このようななかで、良質安価な公営住宅をつくることは、国の役割であり、「住民の福祉の増進を図ることを基本」とする地方自治体の役割ではないでしょうか。

そこで伺います。

④府中町の面積は10平方㎞であり、町営住宅を建てる土地がないというようなことも言われています。町域が狭いことは事実ですが、町内でマンションも戸建て住宅も次々建設されています。土地がないわけではない。町民のみなさんに呼びかけ、適正な価格で提供してもらう方法もあると思いますが、そういうことをするつもりはないでしょうか

建設部長答弁

国土交通省住宅局の統計によりますと、全国的な公営住宅の管理戸数は、平成17年度をピークとして減少傾向にあります。

本町におきましては、これまで答弁させていただきましたように、募集可能な戸数の100戸を早期に確保できますよう、進めてまいりたいと考えております。

小規模で木造の住宅を

府中町は、公営住宅数が極めて少ないことを指摘してきましたが、従来型でない、新しいスタイルの町営住宅をつくることを提案したいと思います。

一つは、木造住宅です。

いま全国に地元の木材を使った公営住宅が広がっています。

山口県美祢市にある来福台県営住宅は、地域住宅交付金事業で、交付金算定対象事業費の45%が助成されています。県内産木材を使い、耐用年数50年程度の木造住宅です。2階建てが7棟、3階建てが3棟。団地全体で72戸で、とても美しい外観です。「2007年地域住宅計画賞 住まいづくり部門奨励賞」を受賞しています。

山口県 来福台県営住宅

現在、全国で木造住宅供給を担う技能者、後継者の不足という問題があり、災害時において住宅再建を図るさいの障害にもなっています。木造公営住宅を計画的に建設することは木造住宅に係る技術力の向上ならびに後継者の養成に資するものです。

もう一つは、小規模な公営住宅です。

岩手県大船渡市の災害公営住宅は4戸1棟(2階建て)、2戸1棟(1階建て)、1戸建て(1階建て)といった小さい規模の公営住宅を造っています。これなら広い土地がなくても造ることができます。従来型の発想にとらわれなければ、町営住宅をつくることは可能です。

戸数の少ない公営住宅であれば地域にとけ込みやすいというメリットもあります。コンクリートではなく、木造で美しく、小規模の町営住宅を町内各地につくる。良質安価な町営住宅が数多くある町は、とても魅力的だと思います。「ひとがきらめき まちが輝く」こと間違いなし、です。

「遅れた者が勝ちになる」という言葉があります。新たな発想で遅れを取り戻し、町の魅力にすることが大切だと思います。

そこで質問です。

⑤木造による公営住宅や小規模な公営住宅について町として検討するつもりはありませんか。

建設部長答弁

議員のご指摘のとおり、地場建築技術の向上・さらには環境共生の視点からも、県産木材での公共施設整備も考えられます。

これにつきましては、今後、公営住宅の計画段階においては、公営住宅法第44条第3項の規定により、国土交通省が告示する公営住宅の耐用年限といたしまして、木造の住宅は30年、耐火構造いわゆる鉄筋コンクリートを用いた住宅は70年とされていますことや、住宅としてサービス提供する継続性を考慮し、イニシャルコストやランニングコストの面からメリット・デメリット、更には整備基準との整合性を整理するなど、木造や小規模な町営住宅の整備についても、総合的に比較検討していきたいと考えています。

 

 

以上が1回目の質問とそれへの答弁です。

2回目の質問は、「町営住宅整備といったハード面のみならず、ソフト面でのさまざまな制度の活用・情報提供で支援」という答弁に対して、ハード(町営住宅整備)は足りていると思うのか、情報提供といっても、他市町の公営住宅の紹介か低家賃の劣悪な住居への転居を勧める以外にないではないか。見直すつもりはないのか」と迫りましたが、「募集可能な戸数の100戸を早期に確保する」という答弁にとどまりました。

3回目の質問は、改めて町長に「本当に100戸でいいのか。見直すつもりはないのか」と問いました。

町長の答弁は「4次総(府中町第4次総合計画)の見直しのなかでしっかり論議していきたい」というものでした。

府中町から住宅困窮者が増えたり、そのゆえに他市町に引っ越さざるをえないような事態にならないよう、引き続き、町営住宅問題を取り上げていきたいと思います。

「本当に100戸でいいんですか?」

《質問を作成する上で参考にした主な文献》
・早川和男『住宅貧乏物語』(岩波新書、1979年)
・同『居住福祉』(岩波新書、1997年)
・同『早川式「居住学」の方法』(三五館、2009年)
・稲葉剛『ハウジングプア』(山吹書店、2009年)

 


傍聴に来ていただいた方の感想を紹介します

お疲れさまでした
議会傍聴させていただきました
入念な調査資料と堂々とした質問に当局も圧倒されていましたね
100戸で良いという答弁は、住宅難民は府中町外に住んで下さいという事ですかね。
住宅費補助制度の用な形で住み続けることができれば良いですね

一般質問お疲れ様でした!
問題点と課題がよくわかりとても興味深かったです。
二見さんの資料を一生懸命読んでメモを取られている議員さんもおられましたよ。
今から仕事にいってきまーす❗️

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