「国旗」に反対するものは「非国民」だと副議長


(日の丸のない議場。後ろに座っているのは議長です)

12月議会最終日の今日、18日に「府中町議会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議(案)」が出されました。
この議案に対して、山口こうじ議員(無所属)から、「全く論議のないまま決すること、拙速は避けるべき。次の定例会まで議会運営委員会に付託の上、慎重に審議を」という動議が出されました。

山口議員の動議

口頭により動議を提案します。本案についてですが、議会運営委員会に付託し、慎重審議すべきです。

過去の議事録を読み直したところ平成17年から19年にかけて府中町議会は議会運営委員会、全員協議会、そして本会議で論議を積み重ねてきました。全員協議会では議員一人ひとりが国旗について時間をかけて慎重に検討しました。

その議論を踏まえ、議会運営委員会は、「府中町議会本会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議」を否決致しました。加島議運委員長は否決に至った経緯を平成19年3月議会で次のように報告しております。

「全員協議会でも多くの議員から全会一致が望ましく、いいのではないか、また申し合わせ等による方法で対応すべき問題であると、全員の理解のもとに実施すべきものとの意見がありました。よって、決議という手段、多数決で決めることには問題が少々あるんではないんかと、また決して国旗を否定するものではない、慎重的意見が大半を占める中、この件で議会運営に支障が生じることがあってはならない、現状維持が望ましい、そしてもう一点は、町民の中にも日の丸に賛成しかねる人もおられる、強引に議会が掲揚すべきではないと思う、そういったいろんなご意見があったことを報告をさせていただきます」

本会議でも賛成、反対の討論がありましたが、採決の結果、原案に対して賛成少数で、国旗の掲揚は否決されました。

このように平成17年から19年にかけて丁寧な論議をつみかさ、その結果、国旗の掲揚に賛成の方も含めて、慎重に検討しよう、強制にならないようにしよう、議会運営に支障が生じないようにしようという結論に至ったわけです。

あれから10年が経ち、議会の構成員も半数以上変わりました。にもかかわらず、慎重審議の上否決されたものが、新たに議論する場を設けることもなく唐突に議案として出されました。

論議もせず、多数決で決めようというのは、これまでの論議を大切にしてきた府中町議会の歴史と伝統の否定ではないでしょうか。

全く意見を出し合うことのないまま、急いで多数決でことを決することは避けるべきだと思います。次の定例会まで議会運営委員会に付託の上、慎重に審議すべきと思いますので、どうぞみなさん、よろしくご理解のほどお願いしたいと思います。

 

これに対して、国旗掲揚推進派の議員(副議長)が動議を出し、山口議員を誹謗中傷しました。

「一つにまとまることはありえない。全会一致などというのはおかしい。議運には一部のメンバーしかいない。チャーチルは国民が反対してもヒットラーとたたかった」ほか、支離滅裂。

私は「議事進行」(※)と声を上げ、「山口議員は慎重審議をと言っているのであって、全会一致で決めなければならないとは言っていない。言っていないことで批判するのはおかしい」

「議運への付託というのは全員協議会での論議も当然含まれている」と反論。

「議事進行」…議事進行上の問題について、議長に対し、質疑、注意、あるいは希望を述べるための発言のこと。この発言は、議長に対する発言であるため、動議とは異なり賛成者を必要としない。また、議決対象にもならない。

論議はヒートアップしていきます。

すると副議長は「国旗を否定する者は非国民だ」と言ったのです。

これに対しても「議事進行」で、猛烈に抗議し、取り消すよう求めました。

さすがにこれはまずかったと思ったのか、言い過ぎであったと認めました。

しかし、語るに落ちるとはこのこと。国旗への忠誠を求め、それを拒む者は非国民のレッテルを貼る。許しがたいことです。

山口議員の出した動議は共産党2人、山口議員を含め無所属議員3人の計5人が賛成。残念ながら賛成少数で否決されました。

その後、反対・賛成の討論を経て、「国旗及び町旗掲揚に関する決議(案)」は採決され、賛成多数(議長を除く出席議員15人中、賛成10人、反対5人)で可決されました。

国旗掲揚に反対ではないが、議論なしの拙速な決め方に反対だという議員が共産党以外に3人もいたことに感激。立場をこえて、審議を尽くす民主的な議会運営になるように今後も協力・共同をすすめていきたい。

以下は、私の反対討論と梶川三樹夫議員の賛成討論です。

 


二見伸吾 反対討論

 

議員提出議案 「府中町議会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議(案)」に反対の立場から討論します。

まず初めに、議場に府中町町旗掲示することには異議がないことを申し上げます。

問題は国旗の掲示であり、5つの問題点があります。

第一に、地方自治法に照らして問題がある。

地方自治法第1条の2は、地方自治体の役割について「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」と述べています。

「国民」ではなく、「住民の福祉」の増進が地方自治体の役割なのです。

国民と住民は同じではありません。住民には日本国籍を持たない人たちも含まれます。

ですから、決議(案)の述べている「日本国民としての自覚と誇り」を求めるのは、そもそも自治体のあり方としておかしい。

9月19日、法務省は、日本に在留する外国人が今年6月末時点で263万7251人(速報値)で、統計を取り始めた1959年以降、最も多かったと発表しました。総務省によると7月1日現在の日本の総人口は約1億2659万人で、在留外国人数はこの約2%にあたります。(「朝日」2018年9月19日)。府中町でも外国籍の町民は663人、町民の1.3%が外国人なのです。

議場は地方自治法の求める「住民の福祉の増進」のために、町政が何をなすべきかを論議する場です。

今申しましたように住民には当然、外国人も含まれます。12月8日、出入国管理法「改定」案が成立いたしました。在留資格を新設して外国人労働者の受け入れを拡大することが目的です。5年目までの累計で最大34万5150人を日本に呼び込むのだそうです。今後さらに町内に住む外国人は増えることになるでしょう。

国旗=日の丸については、日本人のなかにも様々な受け止めがある。ましてや、かつて日本が戦争をしかけ、侵略した国々の人たちも日本に在留し、今後さらに増えていくわけです。このことをよく考える必要があります。

外国人の方には選挙権・被選挙権はありませんが、住民すなわち府中町民です。私たち町議会議員は日本国民でない外国人を含めた府中町民の代表なのです。
このことを踏まえたとき、「国民として自覚と誇りを持て」と議場に国旗を掲示することは、地方自治法のめざす方向に反するものであることは明白です。

決議(案)は日章旗=日の丸が慣習として定着しているとを述べていますが、いま国民の祝日――かつて旗日とも言っていましたが――国民の祝日に日の丸を掲げている家がどれだけあるでしょうか。子どもの頃はまだあったように記憶していますが、今はほとんど見ることがない。定着などとんでもありません。

第二に、過去に国旗、日の丸が戦争で果たした役割です。

1945年に終わったアジア太平洋戦争において日の丸は戦争のシンボルでした。そのことは戦中に使われた修身の教科書に明確に述べられています。例えば国民学校3年生用の『初等科修身一』(1942年)には次のように書かれています。

「敵軍を追ひはらって、せんりゃうしたところに、まっ先に高く立てるのは、やはり日の丸の旗です。兵士たちは、この旗の下に集まって、聲をかぎりに、『ばんざい。』をさけびます」

侵略の先頭に日の丸があり、そのことを小学生にも教え、子どもたちを軍国主義に導く役割も果たしたわけです。

日本人はアジアで2000万を超える人々を殺しました。南京大虐殺の死者は30万人と言われています。

「虐殺は、大規模なものから1人~2人の単位まで、南京周辺のあらゆる場所で行なわれ、日本兵に見つかった婦女子は片端から強姦を受けた。最も普通の殺し方は小銃による銃殺と銃剣による刺殺である。大勢を殺すときは、まず隊列を作らせて、手近な殺人予定地まで歩かせる。着き次第、まとめて機関銃で皆殺しにする。生存者がないかどうかを銃剣で刺してテストしたのち、死体を積み上げて石油をかけ、焼いてしまう」(本多勝一『中国の村』朝日文庫)

こういうことを中国だけでなくアジア全土でやりました。従軍慰安婦、中国人や朝鮮半島(韓半島)の人々を徴用工として賃金も払わず、暴力を振るって働かせた。日の丸はこういう戦争と一体のものです。

第三に、国旗・国歌は強制はしないというのが政府の立場です。 

「国旗及び国歌に関する法律」制定当時の内閣総理大臣は小渕恵三氏です。1999年(平成11年)6月29日の衆議院本会議において、次のように答弁しています。

「政府といたしましては、国旗・国歌の法制化に当たり、国旗の掲揚に関し義務づけなどを行うことは考えておりません。したがって、現行の運用に変更が生ずることにはならないと考えております」。

この立場は現在の政府でも引き継がれています。内閣府のホームページをみますと「内閣総理大臣の談話(平成11年8月9日)」が載っており、「今回の法制化は、国旗と国歌に関し、国民の皆様方に新たに義務を課すものではありません」とあります。

しかし、議場正面に国旗を掲示するとどうなるのか。現在、議場では、まず議長に向かって礼をし、その後、同僚議員のみなさんに向かって礼をしています。国旗を掲げると議長の後ろにある国旗に礼をすることが事実上強要されます。私は日の丸、現在の国旗が戦争中に果たした役割を考えるとき、日の丸に向かって礼をすることはできません。国旗に対して特段の感情を持たない人はいいでしょう。

しかし、私は違います。議会の代表である議長に対しては失礼のないようにしたい。しかし、議長に対して礼をすると国旗・日の丸に対しても礼をすることになる。礼をしてもしなくても私は質問に立つたびに苦痛を感じます。これは憲法の定める「思想及び良心の自由」を侵すものであります。

第四に、第二次世界大戦後の日本の国のありようです。

日の丸にまつわる問題は、「過去のものとして反省したのだからもういいではないか」という意見もあります。

しかし果たしてそうでしょうか。今の日本はどうか。南京虐殺も従軍慰安婦もなかった。安倍総理は、徴用工問題は解決済みで、「今回の裁判の原告は(徴用でなく)全部『募集』に応じたため、『朝鮮半島出身労働者問題』と言いたい」と言う。過去、日本がやってきたことをなかったかのように否定する。

先ほど申しました外国からの移民、外国人労働者の扱いは酷いものであります。最低賃金すら払われない、残業代は300円、暴行・セクハラ、過酷な仕打ちに耐えかね、身を守るために緊急避難せざるを得なかった人たちを高い賃金を求めての「失踪」という。法務省は今月〈12月)13日、外国人技能実習生が2010~17年の8年間で174人が「溺死」「自殺」「凍死」などで死亡したと明らかにしました。まさに現代の徴用工です。

戦前・戦中で犯した過ちに対して反省するどころか、開き直り、同じ過ちを繰り返しています。

2015年、安倍政権のもとで、アメリカ軍が起こす戦争に自衛隊が参戦し武力を行使することを可能にした安保法制=戦争法が成立しました。そのもとで、航空母艦、空母のことを「多用途運用護衛艦」と言い換え、アメリカとともに海外で戦争する準備をすすめています。戦闘機を積むのに空母ではないとごまかす

今年1月4日の年頭会見で安倍総理は「今年こそ、憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、国民的な議論を一層深めていく」と主張しました。実際には年内には何もできなかったわけですが、憲法を変え、戦争のできる国へ変えようとしている。

医療制度や福祉はどんどん悪くなり格差と貧困が広がっています。東京電力福島第一原発事故で避難している人たちは満足な補償も受けていない。7年も経つのに生活再建のめどの立たない人がたくさんいる。沖縄の人たちがどんなに辺野古基地建設に反対しても、平気で無視して美しい海に土砂を投入する。

こういう日本で、「日本国民としての自覚と誇り」を持て、国旗を敬え、議場にも掲示しろ、というのでしょうか。

大切なのは「日本国民としての誇り」が持てるような日本にすることです。

戦争のないもとで、誰もが健康で文化的な暮らしができ、自由で平和な日本をつくることではないでしょうか。「自国のことのみに専念」するのではなく、世界にある貧困をなくし、武力ではなく、対話の力で平和をつくるために力を尽くす日本。そういう日本をつくる方向で努力をしていけば、自ずと「日本国民としての自覚と誇り」という感情が生まれ、広がっていくでしょう。旗の問題ではない。

最後に 府中町議会の歴史と伝統に対してです。

府中町はこれまで日の丸=国旗を議場に掲示してきませんでした。それで何か問題があったでしょうか。議論が深まらないとか、どうしても真剣になれないとか。そんなことはなかったはずです。

今から10年ほど前、2005年から2007年にかけて町議会で国旗の掲示について論議がありました。当時の議事録を読み、その真摯な討論に感激しました。国旗の掲示に反対ではないが、十分に審議すべきである、いろいろな意見があるなかでそれを封じ込める形で決めるべきでない。こういう意見が多数でした。

慎重審議という結論になった1回目の全員協議会のあと、突如本会議に、今回と同じような議案が今回と同じやり方で出されました。そのとき、お亡くなりになった加島議員が「十分お互いに意見を交わしながら検討の時間を持とう」というのが全員協議会での結論であり、議運への付託をすべきという動議を出し、議案提出者を含め議員全員がこの動議に賛成したわけであります。

そして再び全員協議会を開いて論議し、それを受けて議会運営委員会が開かれました。議運は、「府中町議会本会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議」を否決。2007年3月議会で採決の結果、原案に対して賛成少数で、国旗の掲示は否決されました。

このように、重大な問題について軽々に結論を出さず、熟議するというのが府中町議会の歴史であり、よき伝統であります。

今回の提案はこの歴史と伝統を踏みにじるものであります。

以上、5点を申し述べまして、本議案に対する反対討論といたします。


梶川三樹夫議員 賛成討論

平成11年8月9日に成立した「国旗及び国歌に関する法律」によって、これまで慣習法として定着してきた我が国の国旗「日の丸」、国歌「君が代」が改めて法制化されました。

現在、我が日本国の国旗「日の丸」は国民に親しまれ、定着しており世界各国からも、広く認められているところです。自分の国の国旗を敬愛し、誇りに思うことは、世界各国の国民にとっても共通した感情であり、日本国民もまた同様であります。

このような認識に立ち、我が国、我が県、そして本町の永遠の繁栄と恒久の平和を切に願い、憲法に基づく民主主義実現の厳粛な議場に国旗を掲揚することは、極めて自然なことと考えます。

本町においても、町の施設には国旗が掲揚され、小中学校の入学式、卒業式での国旗掲揚率は100%です。

広島県内の23市町の調査でも、議場に国旗、市町旗が掲揚されてないのは府中町と大崎上島町のみになりました。その大崎上島町も来年度には、議場に国旗、町旗を掲げる予定と聞いております。

戦後73年を過ぎた現在、先に述べた理由からも、我が国の国旗を議場に掲揚してはいけないといった結論には至らず本議案については、賛成をいたします。

「非国民」は失礼に当たらないと西議員

実録 「国旗掲揚」慎重審議を求める動議をめぐるやりとり 

国旗掲揚をめぐる府中町議会での論議の経過 2005-2007

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