●10年前に増税したのに…

政府は消費増税によって、国民年金の「国の負担」を3分の1から2分の1に引き上げ、「財源を安定化」したといいます。

基礎年金の安定化(財布)
いまから10年前の2004年に自公政権が「年金100年安心」と銘打ち、国庫負担を2分の1にすると決めました。

その財源を確保するためといって増税を実施。総額2兆8400億円です(下の表)。

増税で確保していた年金財源001

●税金の二重取り

にもかかわらず、国庫負担は3分の1のまま10年が経ちました。

増税した2兆8400億円のほとんどを年金以外に使ってしまったのです。

毎年3兆円ほどの税収を増税によって得ておきながら、またもや「2分の1にする」といって増税する。

二重取りで、国家によるサギ行為ともいえるもの。あまりにもひどい。

●ゆらぐ国民年金

年金制度は大きな危機に直面しています。

グラフにあるように国民年金の未納者が259万人、未加入者が9万人もいます。

年金未納者

納付率は1980年代から90年代前半まで8割を超えていましたが2001年度から6割台にまで落ち込み、2013年は60.9%です。

未納者が増えているのは、3つの原因があります。

第1に、収入が落ちているからです。厚労省も「滞納者は年収200万円未満の割合が多い」と言っています。

第2に、就労状況。労働者の非正規化がすすみ、臨時・パートの滞納が増えています(全体の3割)。20代の納付率が低いのも特徴的です。

青年の非正規比率は3割を超していることと大いに関係があります。

第3に「消えた年金」問題など行政と年金制度そのものへ不信、不安です。

●低すぎる支給額 さらに下げる

国民年金の平均支給額は月額5万円。5万円未満が全体の半分を占めています。満額支給でも月7万円に届かない。

このわずかな年金のなかから介護保険料などが引かれ、とても生活はなりたちません。

「今は貯金を取り崩してなんとかやっています。近々それができなくなります。どうやって生きていくのか、不安で真っ暗です」(77歳女性)。

そのうえ、昨年10月に1%、今年4月に0.7%を削減しました。来年も削減(全部で2.5%)を予定しており、その後も毎年下げていくのです。

●25年払わないとゼロ

日本は25年以上保険料を払わなければ1円も受け取ることができません。

このような異常に長い加入期間を支給要件にしている国はありません(下の表)。

年金の支給要件002

国連社会権規約委員会が日本政府に対して、「無年金高齢者および低年金者の間で貧困が生じていることを懸念」し、最低保障年金の確立を勧告しました。

最低保障年金とは国の負担でまかなう年金制度であり、すべての国民に健康で文化的な生活を保障するという憲法25条の見地にたったものです。

全日本年金者組合は、

①支給要件は日本在住10年、

②支給額は月額8万円、

③すでに納めた保険料は上乗せする、

④財源は国庫と企業による負担によってまかなう、

という提案をしています。

●消費増税で予算を浮かせる

当たり前のように「社会保障の財源は消費税」だと宣伝されています。

「消費税は全額、社会保障に使われている」と。

しかし、社会保障の財源を消費税に限定する必要性はどこにもありません。

ではなぜ消費税なのか?

社会保障を消費増税によってまかなうと、その分お金が浮くからです。

そのお金を何に使うかは限定されていません。何にでも使えるのです。

実際、何に使ってきたのかは次回。