人の優しさを罪にする共謀罪(2) 共謀罪の対象となる犯罪は277も
共謀とは、話し合い、相談することです。法案では277の犯罪について「共謀」すると、罪になります。277の犯罪については実行しなくても罪になる。表を見てください。これをみると、テロに薬物、人身売買、資金源などがリストアップしてあり、こういう犯罪ならいいのでは」と思ってしまいます。まあ、277は全て犯罪ですので当然かも知れません。しかし、その共謀となると様子が変わります。
277の犯罪のなかに「森林窃盗の贓物(ぞうぶつ)の収受」(森林法201条)というのがあります。贓物とは盗品のことです。民進党の山尾志桜里議員が、4月19日の衆院法務委員会で「キノコとか竹とか、山の幸を無許可で採っても、テロの資金源だから共謀罪という話があった。海産物、海の幸はなぜ入っていないのか」という質問をしました。
維新の議員が「キノコの話、竹の話は枝葉末節」と言ったそうですが、枝葉末節どころか肝心なポイントです。もし、「テロの資金源」になりうるものを盗む相談をしたことが罪になるというのなら、海の幸だって同じです。太田川のしじみには漁業権が設定されています。漁業権は漁業法に基づいていますが、これは277のなかにありません。しじみを盗ることを共謀しても罪にならない。まあ、適当なんですね。
著作権も共謀罪の対象になっています。日本音楽著作権協会(JASRAC)がピアノ教室などの演奏に著作権料を課そうとしていますが、「払うのをやめようか」と相談すれば音楽教室の経営者、教師
、職員は「組織的犯罪集団」とすることができます。「楽譜をコピーしようか」と相談しても共謀罪。池辺晋一郎さんのような、政府にもの申す音楽家はいつでも共謀罪でひっかけられます。「うたごえ」もあぶない。
もう一つ、これも笑い話のようですが、金田勝年法相が「ビールと弁当を持っていたら《花見》、地図と双眼鏡を持っていたら《犯行現場の下見》」と28日の衆院法務委員会で答弁しました。何をもって犯罪の「準備行為」かどうかを見分けるのかについてについてのやりとりです。共産党の藤野保史さんが「双眼鏡を持ってバードウォッチングとか(もある)。まったく区別にならない」と、基準の「いいかげん」を批判しました。
どれも滑稽ですが、これら3つに共通しているのは、「適当」で「いいかげん」だということ。テロ対策としてどんな犯罪を未然に防ぐことが必要かということから出発していない。できるだけ多くの犯罪に対して話し合ったことをもって罪になるようにしたい。
もともと676の犯罪を対象にしていて、なんと過失犯も入っていたんです。「過失」とはやろうとは思っていなかったのに犯してしまったことです。過失致死は、殺そうとは思わなかったけど殺したということでしょう。共謀はありえません。そもそもデタラメなんです。なんでもいいから気に入らないやつを「引っかける」ことが目的だからこういうことになる。
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