「こわしてはいけない ~無言館をうたう」

7月15日(土)、広島合唱団の演奏会をききました。以下はその感想。

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オープニングは「We shall overcome」と「絆」。人びとの連帯とたたかいによって未来をきりひらく。ああ、これが今回の演奏会全体のモチーフなのだと思った。第1部は「見上げてごらん夜の星を」から始まり、折り返しがボブディランの「For ever young はじまりの日」(アーサー・ビナード訳)。時代に「流されることなく 流れをつくりますように」とうたい、締めは「クナリオミョン」(その日が来れば)で、新たな「その日」が来ることを予感させる。

第2部、そして演奏会全体のかなめは、「こわしてはいけない ~無言館をうたう」(窪島誠一郎/詩・池辺晋一郎/曲)だ。窪島さんの話もとてもよかった。窪島さんがつけたもともとのタイトルは「こわれそうなもの」であった。「こわれそうなものをこわさない」という意思を強く示したい。池辺さんからの提案で改められたという。

「こわれそうなもの」と「こわしてはいけない」は表裏一体である。壊してはいけないものは、壊れそうなものなのだから。「無言館」に並ぶ戦没画学生たちの絵から伝わる「もっともっと描きたかった」という思い。戦争によって脆(もろ)くはかなく、その思いは砕け散った。「普通の暮らし」もまた脆く「こわれやすい」ものであることは、原発事故などが証明している。そして「こわれやすいもの」とは大切なものでもある。

「私たち日本人が戦後長きにわたって、国民ぜんぶの力によって耕し続けてきた『平和憲法』を絶対に手放してはいけない、こわしてはいけない」、その思いを窪島さんは歌詞に込めた。

この組曲を歌うのは簡単ではない。公募型の「無言館をうたう合唱団」をつくり、この難曲にいどみ、厚みのある合唱を聴かせてくれた。合唱を支えた繊細で力強いピアノ伴奏、合唱を指導し当日にこぎ着けた指揮者もまた素晴らしかった。

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