今をどのようにとらえ、どのように変えようとしているのか(1) 

日本共産党府中町支部で2月から始めた「綱領」学習会のレジュメです。

はじめに

日本共産党のめざしていることは…

「真に平等で自由な人間関係からなる共同社会」に日本社会を発展させること

「各人の自由な発展が万人の自由な発展の条件であるような協同社会」(『共産党宣言』)

「日本共産党の立党の精神は、つねに、①日本の当面する現実の苦難の軽減と②国民の生命と安全の擁護、③新しい合理的な日本の建設、④世界平和の擁護という課題の実現のために献身するということ」(「日本共産党第12回大会・宮本委員長あいさつ」『前衛』1973年1月臨時増刊、25ページ)

日本社会の現状から出発し、この社会がどんな発展段階をへて、またどんな道すじに沿って前進するのか、日本共産党は、未来社会の道をどのように切り開いていくのか

その道を明らかにしたのが「綱領」(Manifesto , program)

社会をどのように変えるのかのプログラム

日本共産党は、国民を苦しめ、私たちの願いの実現をさまたげているものを、①理性と科学の力で分析し、②国民多数の意思、国民多数の共同の力でそれをとりのぞき、階段を一歩一歩のぼるように、段階的に社会進歩をすすめようとしている

従来の考え方 資本主義社会の変革は社会主義革命

社会主義革命は「暴力」によって実現 「鉄砲から政権が生まれる」

「共産主義者は、従来のすべての社会秩序を暴力的に転覆せずには彼らの目的を達成できないことを、公然と宣言する」(マルクス『共産党宣言』)

「ブルジョア国家がプロレタリア国家(プロレタリアートの独裁)と交代するのは、『死滅』の道を通じてでは不可能であり、それは、通例、暴力革命によってのみ可能である」(レーニン『国家と革命』)

戦後の綱領採択時(1961年)当面する革命は社会主義革命とする立場の人もたくさんいた。

日本共産党の立場 当面する革命は民主主義革命
→資本主義の枠内での変革+民主主義をより徹底する

「議会の多数を得ての革命」

→暴力革命の否定+社会の段階的発展(国民の合意)

綱領の3つのポイント

①当面する日本の変革を、独立の任務を含む民主主義革命と規定
②多数者革命の路線にもとづき、日本の社会のどんな変革も、議会の安定多数を得て実現する
③社会発展の全過程で、統一戦線と連合政府の立場を貫いている

1.戦前の日本社会と日本共産党

戦前の歴史は、日本共産党の活動にとって原点

現在の情勢、現在の党の任務を理解するうえで欠くことのできないもの

(一)日本共産党は、わが国の進歩と変革の伝統を受けつぎ、日本と世界の人民の解放闘争の高まりのなかで、一九二二年七月一五日、科学的社会主義を理論的な基礎とする政党として、創立された。
当時の日本は、①世界の主要な独占資本主義国の一つになってはいたが、国を統治する全権限を天皇が握る専制政治(②絶対主義的天皇制)がしかれ、国民から権利と自由を奪うとともに、農村では重い小作料で耕作農民をしめつける③半封建的な地主制度が支配し、独占資本主義も労働者の無権利と過酷な搾取を特徴としていた。この体制のもと、日本は、アジアで唯一の帝国主義国として、アジア諸国にたいする侵略と戦争の道を進んでいた。
党は、この状況を打破して、まず平和で民主的な日本をつくりあげる民主主義革命を実現することを当面の任務とし、ついで社会主義革命に進むという方針のもとに活動した。

(二) 略

(三)日本帝国主義は、一九三一年、中国の東北部への侵略戦争を、一九三七年には中国への全面侵略戦争を開始して、第二次世界大戦に道を開く最初の侵略国家となった。一九四〇年、ヨーロッパにおけるドイツ、イタリアのファシズム国家と軍事同盟を結成し、一九四一年には、中国侵略の戦争をアジア・太平洋全域に拡大して、第二次世界大戦の推進者となった。

帝国主義戦争と天皇制権力の暴圧によって、国民は苦難を強いられた。党の活動には重大な困難があり、つまずきも起こったが、多くの日本共産党員は、迫害や投獄に屈することなく、さまざまな裏切りともたたかい、党の旗を守って活動した。このたたかいで少なからぬ党員が弾圧のため生命を奪われた。

他のすべての政党が侵略と戦争、反動の流れに合流するなかで、日本共産党が平和と民主主義の旗を掲げて不屈にたたかい続けたことは、日本の平和と民主主義の事業にとって不滅の意義をもった。

侵略戦争は、二千万人をこえるアジア諸国民と三百万人をこえる日本国民の生命を奪った。この戦争のなかで、沖縄は地上戦の戦場となり、日本本土も全土にわたる空襲で多くの地方が焦土となった。一九四五年八月には、アメリカ軍によって広島、長崎に世界最初の原爆が投下され、その犠牲者は二十数万人にのぼり(同年末までの人数)、日本国民は、核兵器の惨害をその歴史に刻み込んだ被爆国民となった。

ファシズムと軍国主義の日独伊三国同盟が世界的に敗退するなかで、一九四五年八月、日本帝国主義は敗北し、日本政府はポツダム宣言を受諾した。反ファッショ連合国によるこの宣言は、軍国主義の除去と民主主義の確立を基本的な内容としたもので、日本の国民が進むべき道は、平和で民主的な日本の実現にこそあることを示した。これは、党が不屈に掲げてきた方針が基本的に正しかったことを、証明したものであった。

2.戦後社会の特徴

(四)第二次世界大戦後の日本では、いくつかの大きな変化が起こった。

第一は、日本が、独立国としての地位を失い、アメリカへの事実上の従属国の立場になったことである。

敗戦後の日本は、反ファッショ連合国を代表するという名目で、アメリカ軍の占領下におかれた。アメリカは、その占領支配をやがて自分の単独支配に変え、さらに一九五一年に締結されたサンフランシスコ平和条約と日米安保条約では、沖縄の占領支配を継続するとともに、日本本土においても、占領下に各地につくった米軍基地の主要部分を存続させ、アメリカの世界戦略の半永久的な前線基地という役割を日本に押しつけた。日米安保条約は、一九六〇年に改定されたが、それは、日本の従属的な地位を改善するどころか、基地貸与条約という性格にくわえ、有事のさいに米軍と共同して戦う日米共同作戦条項や日米経済協力の条項などを新しい柱として盛り込み、日本をアメリカの戦争にまきこむ対米従属的な軍事同盟条約に改悪・強化したものであった。

二は、日本の政治制度における、天皇絶対の専制政治から、主権在民を原則とする民主政治への変化である。

この変化を代表したのは、一九四七年に施行された日本国憲法である。この憲法は、主権在民、戦争の放棄、国民の基本的人権、国権の最高機関としての国会の地位、地方自治など、民主政治の柱となる一連の民主的平和的な条項を定めた。形を変えて天皇制の存続を認めた天皇条項は、民主主義の徹底に逆行する弱点を残したものだったが、そこでも、天皇は「国政に関する権能を有しない」ことなどの制限条項が明記された。
この変化によって、日本の政治史上はじめて、国民の多数の意思にもとづき、国会を通じて、社会の進歩と変革を進めるという道すじが、制度面で準備されることになった。

第三は、戦前、天皇制の専制政治とともに、日本社会の半封建的な性格の根深い根源となっていた半封建的な地主制度が、農地改革によって、基本的に解体されたことである。

このことは、日本独占資本主義に、その発展のより近代的な条件を与え、戦後の急成長を促進する要因の一つとなった。
日本は、これらの条件のもとで、世界の独占資本主義国の一つとして、大きな経済的発展をとげた。しかし、経済的な高成長にもかかわらず、アメリカにたいする従属的な同盟という対米関係の基本は変わらなかった。

(五)わが国は、高度に発達した資本主義国でありながら、国土や軍事などの重要な部分をアメリカに握られた事実上の従属国となっている。

わが国には、戦争直後の全面占領の時期につくられたアメリカ軍事基地の大きな部分が、半世紀を経ていまだに全国に配備され続けている。なかでも、敗戦直後に日本本土から切り離されて米軍の占領下におかれ、サンフランシスコ平和条約でも占領支配の継続が規定された沖縄は、アジア最大の軍事基地とされている。沖縄県民を先頭にした国民的なたたかいのなかで、一九七二年、施政権返還がかちとられたが、米軍基地の実態は基本的に変わらず、沖縄県民は、米軍基地のただなかでの生活を余儀なくされている。アメリカ軍は、わが国の領空、領海をほしいままに踏みにじっており、広島、長崎、ビキニと、国民が三たび核兵器の犠牲とされた日本に、国民に隠して核兵器持ち込みの「核密約」さえ押しつけている。

日本の自衛隊は、事実上アメリカ軍の掌握と指揮のもとにおかれており、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている。

アメリカは、日本の軍事や外交に、依然として重要な支配力をもち、経済面でもつねに大きな発言権を行使している。日本の政府代表は、国連その他国際政治の舞台で、しばしばアメリカ政府の代弁者の役割を果たしている。

日本とアメリカとの関係は、対等・平等の同盟関係では決してない。日本の現状は、発達した資本主義諸国のあいだではもちろん、植民地支配が過去のものとなった今日の世界の国際関係のなかで、きわめて異常な国家的な対米従属の状態にある。アメリカの対日支配は、明らかに、アメリカの世界戦略とアメリカ独占資本主義の利益のために、日本の主権と独立を踏みにじる帝国主義的な性格のものである。

 

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