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2019-09-12

副食費(副食材料費)有料化に道理はあるのか

10月1日から始まる保育料の「無償化」。無償化といいながら、これまで保育料のなかに含まれていた副食費が保護者負担(月4500円)となります。

以下は、私の一般質問(2019年9月議会)から有料化にいかに道理がないか、批判した部分を掲載いたします。


 

副食費有料化の理由を、「幼児教育・保育の無償化の実施に伴う食材料費の取扱いについて」(内閣府「幼児教育・保育の無償化に関する都道府県説明会」(2019年5月30日)配付資料23)は、次のように述べています。

「①これまで保護者が負担してきた経緯のほか、②在宅で子育てをする場合でも生じる費用であること、③授業料が無償化されている義務教育の学校給食や④他の社会保障分野の食事も自己負担されていることを踏まえ、主食費・副食費ともに、保護者から徴収可能な費目に位置付けるとともに、事前に保護者に説明し同意を得ることとする」〔丸数字は二見〕。

一見もっともらしい説明ですが、いずれも道理がなく誤っています。

まず第一に、副食材料費を「保護者が負担」してきた事実はありません。

第二に、家で子育てしている場合でも昼飯代はかかっているということですけれども、給食は保育の一環であり、「保育所保育指針」にも「食育の推進」として位置づけられています。そこには「保育所における食育は、健康な生活の基本としての《食を営む力》の育成に向け、その基礎を培うことを目標とすること」と書かれています。

厚労省の作った指針の解説には次のようにあります。

「各保育所は、保育の内容の一環として食育を位置付け、……健康な生活の基本として食を営む力の育成に向けて、その基礎を培うために、各保育所において創意工夫を行いながら食育を推進していくことが求められる」

単にご飯を食べさせればいいという問題ではない。家でもご飯は食べているからというのは大変、次元の低い論議であります。

四番目の社会保障分野についても同じです。病院であればその給食は治療の一環であり、医療給付の対象となるべきものです。厚生省自身がかつては給食を「医療の重要な一部」「治癒あるいは病気回復の促進を図る」と位置づけ、公的保険による「療養給付」を行っていました。

ところが1994年に給食を給付から外し、患者に負担を求める改悪がなされました。1日3食600円からスタートして760円(1996年~)、780円(2000年~)、1080円(2016年~)と増え、現在は1380円(2018年~)と導入時の2倍以上になっています。自分たちが制度を後退させてきたものを他の制度を改悪する理由にするなどもってのほかです。

三番目の「授業料が無償化されている義務教育の学校給食」が有料だからという理由はどうでしょうか。この点については1951年、今から70年近く前、敗戦から6年後になされた国会の論議を紹介したい。

参議院・文部委員会で、「義務教育の無償をどの程度まで果すべきものだと考えているのか」という質問(1951年3月19日、共産党・岩間正男議員)に対して、辻田力(ちから)・文部省初等中等教育局長は、「憲法に定められている義務教育の無償をできるだけ早く広範囲に実現したいということは、政府としての根本的な考え方」だとはっきり述べました。

現在は授業料だけが無償の対象だが「そのほかに教科書とそれから学用品、学校給食費、さらには交通費も将来的には無償にしたい」と辻田局長は言っているんです。いまはまだ国力――財政力ですね――が足りないのでできないが、将来的には広範囲に無償化したいと答弁したのです。

ついでながら申しますと、このとき後に文部大臣になる内藤誉三郞(たかさぶろう)初等中等教育局庶務課長は、辻田局長の答弁を補足して「学用品の内容は相当広範囲なものでございまして、その中には鉛筆、ノート、クレヨン、用紙そのほかに定規、コンパスというふうな学校で使うところの教材は全部網羅している」と述べています。

鉛筆から定規、コンパスにいたるまでと、一つひとつ具体的に列挙している。教育にかかわる費用を広範囲にわたって無償化する強い意志が伝わってきます。「義務教育は、これを無償とする」という憲法26条の規定を当時の文部省は誠実に実行しようとしていた、ということも分かります。

その後日本は奇跡的とも言われる高度経済成長を達成し、「経済大国」とまで呼ばれるようになりました。しかし残念ながら、これらの答弁は実現することなく今日に至っています。

日本国憲法に基づく「無償化」、政府自らが授業料以外も広範囲に無償化したいと答弁したことを実行せず、サボタージュしてきたことを保育園の副食費有料化の理由にする。これも恥ずかしいことだと思います。

このように厚労省が副食費有料化の理由に挙げている四点はいずれも道理がありません。

ふたみ伸吾 ほっとらいん

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