GIGAスクール構想と府中町の児童生徒の学習保障 2020年6月議会 一般質問
もくじ
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1.GIGAスクール構想とは
>今回の補正予算で、府中町の全児童生徒約4000人分のタブレット端末を購入することになりました。補正予算の3分の1も使って端末を購入することの是非については、予算審議のなかで発言しました。
タブレット端末の全児童生徒1人1台端末の購入はGIGAスクール構想の柱です。このGIGAスクール構想と府中町の児童生徒の学習保障について質問致します。
GIGAは、Global and Innovation Gateway for Allの頭文字G、I、G、Aを取ったもので、全ての児童生徒のための世界と技術革新の入口という意味です。
GIGAスクール構想は、児童生徒向けの1人1台端末導入と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するための事業で昨年12月の令和元年度補正予算において、その整備のための経費が盛り込まれました。
萩生田光一文部科学大臣は2019年12月19日、「子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育 ICT 環境の実現に向けて~令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境~」という「文部科学大臣メッセージ」を発表し、そこには次のように書かれています。
「Society 5.0 時代に生きる子供たちにとって、PC 端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテム(必需品)です。今や、仕事でも家庭でも、社会のあらゆる場所で ICT の活用が日常のものとなっています。
社会を生き抜く力を育み、子供たちの可能性を広げる場所である学校が、時代に取り残され、世界からも遅れたままではいられません。1人1台端末環境は、もはや令和の時代における学校の「スタンダード」であり、特別なことではありません。
「マストアイテム」「スタンダード」と断言し、子どもたちの成長と教育にとって、PC・タブレット端末がなぜ、どのように必要なのかの検討・説明がないのが特徴であります。子どもがよく言う「みんな持っているから買って」となんら変わりません。
当初、このタブレット購入は2018年度から22年度にかけて5カ年で整備する予定でした。文科省の予算措置は19年度補正、20年度補正合わせて約3000億円。これで端末1台当たり上限45,000円、児童生徒数の3分の2に相当する額を助成する。
残りの3分の1は5年かけて地方財政措置として自治体に交付する。19年度には小学校5年生、6年生と中学校1年生、20年度は中学校2年生、3年生、21年度は小学校3年生、4年生、22年度は小学校1年生、2年生と順次整備していくという計画です。
ところが、文科省は「新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、休業が長期化し、教育課程の実施に支障が生じ」たことを理由として、「1人1台端末」を今年度中に実現させるよう前倒ししました。小学校1年生から中学校3年生まで遠隔授業ができるようにするためだそうです。
2.1人1台端末を急ぐ必要があるのか
■タブレット一気買いに走る文科省
コロナによる休校措置を機に、文科省はタブレット端末の一斉導入へ前のめりになりました。5月11日に「学校の情報環境整備に関する説明会」が全国の教育委員会開催され、GIGAスクール構想の事実上の責任者である高谷浩樹・文科省初等中等教育局情報教育・外国語教育課長が次のように発言しています。
「今は前代未聞の非常時です。緊急時です。これまで多分、もちろん、忌まわしい東日本大震災とか色々ございましたが、日本全体で、これだけ、いつ何が起こるかわからない、まさにあれに匹敵するような、そして、西日本の方にとってはむしろ前代未聞なのかもしれません。非常時緊急時。なのに、危機感がない方、危機感のない自治体が多いです」
「世の中が、ところが、変わりました。ギガスクール構想、それから新型コロナウイルスへの感染症対策で世の中変わりました。ICTを使おうとしない自治体さんにこれからは説明責任が生じてきます。全国の地元の自治体のお子さん方に、なぜ使わないのかと言う説明責任が生じるんだと言うことをですね、ぜひご理解をいただいて進めていただくという必要があります」
「ICT環境、なんでこんなコロナの時にこんなにやらなかったのって。 ハッキリ言って、今の一般社会から見たら、教育のICT環境って物凄い遅れてます。皆さんもぜひおかしいんだ、今が間違ってんだ、と言うことをご理解頂いて、対応して下さい。やろうとしないということが一番子供に対して罪だと、私は思います」
この説明会はYoutubeにアップされており、私も観ましたが、「危機感のない自治体が多い」と決めつけ、「この非常時にさえICTを使わないのはなぜ?」と脅し、購入を煽る、ちょっと観ていて異常な感じがしました。
広島県の平川教育長も「できない理由を並び立てず『できるとしたら』と質問を変える」と前のめりになっています。
端末整備についての予算措置は「次年度以降は想定していない」と文科省は質問に答えています。タブレット購入費用の3分の2の補助は今年度買わなければ、もうない。となれば今年度、とにかく買っておこうということにならざるをえない。市町村負担の3分の1は、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を使っていいということにもなった。
財政措置という点からも今年度の購入を迫られた。そして府中町も今回の補正予算で、一般財源から1億1285万円を支出して購入を決めたわけです。
■タブレット端末は「学びの保障」となるか
文科省は「今買え、それ買え」と煽っているわけですが、タブレット端末を小学校1年生から中学校3年生まで全員分を一度に揃えることが本当に必要なのか、浮き足立たず冷静に考えることが必要ではないでしょうか。
今まで説明しましたように、タブレット端末を小中学生全員分を一気に買うという措置は「コロナ対策」「休校措置」対策として進められており、文科省の作った資料には次のように書かれています。
「1人1台端末」の早期実現や、家庭でも繋がる通信環境の整備など、「GIGAスクール構想」におけるハード・ソフト・人材を一体とした整備を加速することで、災害や感染症の発生等による学校の臨時休業等の緊急時においても、ICTの活用により全ての子供たちの学びを保障できる環境を早急に実現。
しかし、本当に「1人1台端末」「ICTの活用」によって子供たちの学びが保障できるのでしょうか。
3.全国一斉休校は必要なかった
まず、前提から伺いたいと思います。コロナの2波、3波が来たときにも今回のように長期にわたる休校措置をとることが現実的かどうかということですが、そもそも、今回の休校措置が本当に必要だったのでしょうか。
この休校措置は、2月27日、安倍総理が新型コロナ感染拡大を抑制する目的で要請したものです。しかし、「専門家に聞かずに決断した」と安倍総理自身が国会で答弁(3月2日)したように、なんら科学的、医学的知見に基づいたものではありません。にもかかわらず3か月も子どもたちから学校を奪ったのです。
■日本小児科学会の医学的知見
日本小児科学会は、子どもの新型コロナウイルス感染症に関する医学的知見の現状を5月20日に発表しています。その結論の一つは、学校や保育施設の閉鎖は流行を防ぐ効果に乏しいということです。
新型コロナは、インフルエンザとは違い、子どもの感染例が少なく重症化もまれです。北九州市の小学校でクラスターが発生し、新たに小中学生6人の感染が判明しましたが、症状が出ていないか出ても軽い。学校や保育現場で子どもが感染源となったクラスターの報告は、国内外を通じてほとんどありません。
新型コロナ流行に学校閉鎖がどの程度有効であるのかについて、いくつかの研究報告がだされていますが、学校閉鎖は、その他の措置と比べて効果は少なく、学校閉鎖によって新型コロナによる死亡者はほとんど減らないのです。
一方、お医者さんや看護師さんなど医療従事者が子どもの世話のために仕事を休まざるを得ないので、医療体制が弱まり新型コロナ死亡数が増え、結果として学校閉鎖は 新型コロナ死亡者をむしろ増やしていると推定されています。
効果が乏しい上に、大きな問題があります。それは、学校などの施設の閉鎖が子どもの心とからだを脅かしているということです。
学校閉鎖は、子どもたちの教育の機会を奪うとともに、屋外活動や社会的交流を減らします。そのことが、子どもたちに様々な問題を引き起こしています。
仕事や外出の制限のために親子とも自宅に引きこもるようになって、ストレスが高まることから家庭内暴力や子ども虐待のリスクが増えています。
そこで質問です。
このように、子どもに関する限り、新型コロナが直接もたらす影響よりも 新型コロナに関連しての健康被害の方がはるかに大きいのです。
①いま紹介した「日本小児科学会の医学的知見の現状(2020年5月20日)」について、どのようにお考えですか?
②今後、第2波、第3波が来ることが予想されます。しかし安易に休校するのではなく、子どもや保護者に及ぼす影響を総合的に検討し、慎重に判断すべきです。また、休校措置は一斉にではなく、感染拡大の状況を踏まえて個別に判断すべきだと考えますが、町としての見解をお聞かせください。
◆教育部長 日本小児学会の見解もありますが、町教育委員会としては、文部科学省から令和2年6月5日付け通知された、「新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドライン」の臨時休業を実施する場合の考え方に基づき、臨時休業を判断いたします。
このなかで、学校で児童生徒や教職員の感染が確認された場合においては、濃厚接触者が保健所により特定されるまでの間、学校の全部または一部の休業を実施します。
なお、学校の臨時休業を行う際においても、地域の感染状況に応じ、分散登校を行うことにより、感染リスクを可能な限り低減しつつ、学校教育活動を継続することが重要とされており、このことに留意しながら対応するよう考えています。
4.タブレットがあっても…
■タブレットは手に入るのか
タブレット端末の一斉導入は、「災害や感染症の発生等による学校の臨時休業等の緊急時において全ての子供たちの学びを保障」することがその理由となっています。
日本の児童生徒は2018年の学校基本調査によると約950万人です。すでに導入済みの学校もありますので全てではないにしても、一気に数百万台のタブレット端末が必要になります。国内のパソコン市場は2018年度実績で1183万台(MM総研調べ)です。国内市場に匹敵するだけの需要が突如生まれたわけです。それだけ大量のタブレットを年度内に調達することが果たして可能なのでしょうか。
先ほど紹介した文科省の「学校の情報環境整備に関する説明会」で高谷氏はメーカーとの調整があるので需給調査――要するに何台買うのかということだと思いますが――をして早く文科省に提出せよと言いつつ、予定通りに「行き渡るか微妙」だと言っています。
文科省はタブレットを使って休業時の学びの保障をするのだと言いますが、なければ話になりません。
そこで伺います。
③新型コロナの第2波はいつ来るか分かりませんが、早ければ秋と言われています。タブレット端末の入手はいつ頃になる見込みでしょうか。
◆教育部長 全ての児童生徒のタブレットを整備するとなると、年度内に整備できればという現状です。可能な限り、速やかに手配できるように努力いたします。
■タブレットを使った教材はどうするのか
タブレット端末を使った遠隔事業についてお伺いします。
仮にタブレットが早期に入手できたとしても、問題はその先にあります。高谷氏は「ICT、オンライン学習は学びの保障に大いに役立つ」と述べています。役立たないとは言いませんが、役立たせるためにはいくつものハードルがあると思われます。端末さえ買えば「学びが保障」できるとするのはあまりにも安易です。
まず、教材とその準備です。オンライン学習をさせるには、そのための教材がいります。いま学校現場は、休校期間中の授業をどう取り戻すのかに必死です。夏休みも短くなる。普段の授業にも追われ、そのうえ、タブレットを使った遠隔授業を準備する時間などあるのでしょうか。
それとも、教師によるよる手づくりは諦めて、「民間の教育コンテンツ」――民間事業者が売り込んでくるものを購入するのでしょうか。
いま、大手進学塾が、精鋭講師陣が贈る「分かりやすくて楽しい授業」を看板に売り込みをかけています。現在はお試し期間で受講料は無料ですが、いつまでも無料でやるわけではないでしょう。こういうもの利用せざるを得なくなるのではないでしょうか。算数・数学・英語について、児童・生徒の理解度に応じて復習問題を反復するというAIドリルもすでに作られているようです。
そこで伺います。
④今年度ないし次年度に休校せざるをえなくなった場合、遠隔授業をすることは本当に可能なのでしょうか。「民間の教育コンテンツ」についてはどのようにお考えでしょうか。
◆教育部長 遠隔授業、いわゆるオンライン授業を実施するためには、本定例会で補正計上している端末は、必要不可欠なもので、さらに昨年度補正した高速大容量の通信ネットワークの再構築も必要となります。それ以外にも外部のインターネット回線の強化や大型提示装置等と必要になります。
これらの機器等が整備完了されるまでは、オンライン授業ではなく、現状で可能なオンライン学習としてeライブラリの活用や各学校の教員による授業配信や広島県が推奨しているGスイートの活用で、学習課題の配布等を実施していきたいと考えています。
また、「民間の教育コンテンツ」については、現時点では検討しておりません。5月の臨時休業中に実施した授業動画配信を見る限り、やはり、担任等が教科書に準拠した内容で教えるということが児童生徒にも安心感や繋がりを持たせることに効果があったものと考えております。
■子どもたちにとってどうなのか
最後です。タブレット端末による遠隔授業は、子どもたちにとってどうなのかという問題です。
高谷氏は「やろうとしないということが一番子供に対して罪」だといいますが、果たしてそうでしょうか。
ZOOMなどを使ったリモート会議は、通常の会議より疲れると聞きました。同じ空間ではなく、画面だけを見つめていることが疲労度を増すのだと思いました。1時間、2時間の会議で、大人の場合でもそうなんです。小学生や中学生が4時間とか6時間とかをタブレット端末を使って授業を受けることは、負担が重い。
そもそも小学校の低学年、あるいは中学年で果たしてタブレット授業は成立するのか、はなはだ疑問です。
タブレット端末との付き合い方という問題もあります。
(6月)22日の「中国新聞」は、「ゲーム人口は増加し、最近では新型コロナウイルス感染症による外出自粛や休校の影響もあり、未成年者を中心にゲーム依存の深刻化が懸念されている」「高額な課金に関する内容や《子どもがゲームをやめられない》など依存症が疑われるものも多い」と伝えています。
すでにタブレット端末が導入され、授業で使われている私立中学校では、授業中に別のサイト見てたり、ゲームしている生徒が増えたと聞いています。遠隔授業ならなおさらです。
家庭環境もさまざまです。専用の個室があって集中できる環境がある児童生徒もいれば、そうでない児童生徒もいる。この緊急時に四の五のいうなと文科省に叱られるかもしれませんが、やはり家庭間格差の問題を無視するわけにはいきません。
遠隔授業で十分ついていける児童生徒もいれば、そうでない児童生徒もいる。そこでの格差も開きやすい。
そこで質問です。
⑤タブレット端末による遠隔授業は、生徒の健康被害やゲーム依存症を引き起こす可能性、家庭環境の違いによる格差などの問題点があります。「コロナが来るから」というようなことではなく、児童生徒への影響を考え、必要な時間をかけてICT教育を進めていけばよいと考えますが、町の見解を聞かせてください。
◆教育部長 家庭学習を課す際や学習状況の把握を行う際には、ICTを最大限に活用して遠隔で対応することが極めて効果的であることを踏まえれば、町教育委員会としては、一刻も早く児童生徒のICT環境を整えることは必要と考えます。
また、ICT教育を推進する上では、端末機器等の整備といった「ハード面」他、デジタル教科書・教材の活用といった「ソフト面」や、教職員のICT活用指導力の向上といった「指導体制面」など三つの柱を一体となった取組が必要と考えます。
今後は、児童生徒の影響を踏まえ、ICTの基本的な操作、情報の収集や情報モラル等必要な教育も並行しながらICTを活用した教育の充実を図っていきたいと考えております。
《第2回目》
■専門家は一斉休校に反対
小児科学会の見解についてはお答えにならなかったわけですが、「学校や保育施設の閉鎖は流行を防ぐ効果に乏しい」という指摘は重要な指針となるものです。過去に向かっていえば、3カ月にもわたる休校措置は不要だったということであり未来に向かっては、長期にわたる休校はよほどのことがないかぎり止めようということです。
厚労省の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議も、4月1日の「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」で、「現時点の知見では、 子どもは地域において感染拡大の役割をほとんど果たしてはいないと考えられている。したがって、 学校については、地域や生活圏ごとのまん延の状況を踏まえていくことが重要である」と全国一斉の休校に対して慎重な判断を求めていたわけです。
この提言を紹介しながら和田耕治・国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授は「子どもたちにとって学校は、とても大切な場所です。感染対策を十分に行うことは当然ですが、できるだけ学校を続けるという方向性を捨てないでほしかった。感染拡大が起きた場合の責任から逃れたい、と安易に休校という選択肢が取られることを危惧しています」と言っています(「新型コロナウイルスとどう向き合っていくのか」『月間高校教育』2020年6月号、学事出版)。
また、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員で東京大学医科学研究所教授の武藤香織氏は次のように述べています。
「専門家会議では、感染症の流行の観点からしか助言ができません。この感染症が子どもで重症化しやすかったり、死亡率が高かったりしているという根拠が出てきていないので、専門家会議としては、当初から、学校の休校はできる限り最小にしていただきたいと考えてきました」(「新型コロナウイルスに学校はどう対応していけばよいのか」同上)。厚労省に設けられた専門家会議は、学校の一斉休校に早くから反対していたわけです。
■「全国一斉休校を極力避ける」が政府の方針
ご紹介になったように、6月5日付の文科省のガイドラインでも「学校の全部または一部の休業」は、「学校で児童生徒や教職員の感染が確認された場合」です。今回の3カ月にわたる全国一斉休校が専門家の知見から離れた不要な措置だったことを事実上認めたに等しい。
安倍総理もまた6月2日に、首相官邸で面会した柴山昌彦前文部科学大臣に「なるべく全国的な休校措置を取る必要がないような形での取り扱いも可能ではないか」と伝え、新型コロナウイルス感染の第2波、第3波が発生した場合、再度の全国一斉休校を極力避ける考えを明らかにした、とマスコミは伝えています。
以上のことから分かるように、3か月にわたる一斉休校は適切ではなく、今後、安倍総理も言うように「全国一斉休校を極力避ける」ということになったわけです。
全国一斉休校がないわけですから、日本全国の児童生徒950万人の全てに緊急措置としてタブレット端末を慌てて持たせる必要もない。もし、どこかの地域で休校措置が必要で、タブレット端末がどうしても必要ならばそこへ投入すればいいだけです。
■オンライン授業のハードル
タブレット端末は今年度中に買えというのが文科省の方針ですが、契約はしても今年度中に手に入る保証はない。1回目の質問で明らかにしたように短期間に950万台ものタブレットを揃えることは到底無理な話です。第2波、第3波が今年度中に来た場合、ほぼ間に合わない。来年でも間に合うかどうか。忘れた頃に届くアベノマスクのようなものです。ですから、やはり急ぐ必要はない。
では、コロナの波が来たときに、幸運にもタブレット端末が入手できたら、休校時の「学びの保障」はできるのか。答弁でもオンライン授業に必要な機器が整備されないとできないということでした。
紹介されたeライブラリというのは「学校で利用しているドリル教材をご家庭のパソコン・タブレット・スマートフォンから無料で利用できる」というものです。私も小学生のときに紙のではありますがドリルやりました。同僚議員の皆さん、職員のみなさんのドリルを使ったと思います。計算、文章題、漢字などを繰り返しすることによって知識を定着させようとするものですが、継続してやるのは、なかなか忍耐力のいる学習です。すぐ飽きてしまう。正直言って私は嫌いでした。
また、「G Suite for Education」は、教育機関向けに作られたGoogleのアプリセットで、メールソフトやウインドウズでいう、ワード、エクセル、パワーポイントといったアプリが入っているわけです。オンライン授業の前提ではあっても、アプリセットが事業の代わりになるわけではありません。答弁にあったように休校時に「学習課題の配布」ができるぐらいです。
■教員の負担が重くなる
オンライン授業の準備はとても大変だと聞きました。準備と事後処理に、対面授業の3倍から5倍の時間がかかるというんです。今でさえ過労死ライン超えの先生方がオンライン授業に取り組むとなれば、実際の過労死が起きる。
大学で教えている友人は次のように言っています。
「学習効果を上げるためには、メディア特性に向いた内容に授業を設計し直す必要があり、そのためにはソフトやアプリについての勉強や情報収集も必須、学習者に対しては対面授業以上にきめ細やかなフォローが必要となります。通信環境が悪くてオンラインから離脱する者も必ず出るので、授業内容を録画してアップすることも必須です。その処理には、パソコンの性能によっては、1コマの授業につき数時間を要する」。
■「学びの保障」は困難
ですから、多くの保護者が期待しているような学校の授業に代わるものをつくることは、タブレットがあればなんとかなるというようなことではないのです。現状では、教えるべきこと、学ぶべきことのほんの一部を補うことしかできません。これが実情なのです。
にもかかわらず、「休校時の学びの保障」を看板に掲げ、予算で縛りをかけたうえで、「感染症対策で世の中が変わった」「やろうとしないことが一番子供に対して罪」と脅して、全国の自治体、教育委員会をタブレット端末購入に追いこんだわけです。
そもそも一斉休校の必要もなかったし、今後はできるだけ避けるという方向になっている。タブレットはすぐには手に入らない、タブレットが入っても使えるかどうかわからない。
おそらく小学生は、高学年でないとタブレット端末を使って何かをすることは難しい。小学校1、2年生はゲームぐらいは出来るかもしれませんが、タブレットを使って学習することは至難の業。にもかかわらず全児童、全生徒一人に一台を一気に揃えるというのは壮大な無駄遣いになります。
■少人数学級と教員増を
今求められているのは、機械より人です。
3か月の空白をできるだけ埋めるためには、一人ひとりの児童生徒に丁寧に教えること、学習が遅れた子どもへの個別の手立てをとることです。遅れを取り戻そうとするばかりに、土曜授業、夏休みの短縮、学校行事の大幅削減、7時間事業などによって授業時間を確保するようなやり方では、子どもたちに新たなストレスをもたらし、子どもの成長をゆがめ、学力格差をさらに広げることにもなりかねません。
町内の小中学校のクラス別児童生徒数の一覧を教育委員会からいただきました。小学校では中央小学校の4学年3クラス中、2クラスが40人、もう1クラスは39人。南小の4学年も1クラスが38人、2クラスが37人。ギリギリいっぱい。他の学年・学校はだいたい35人以内に収まっているようです。中学校は府中中、緑ヶ丘中ともに40人近い学級がほとんどです。
子どもへの手厚く柔軟な教育のためにも、感染症対策のためにも、学校の教職員やスタッフを思い切って増やし、20人程度の授業などができるようにすべきです。
政府も第2次補正予算案で教員増を盛り込みましたが、その規模は3100人(高校はなし)とあまりに小さい。3100人では、全国の小中学校の10校に1人しか教員が配置されず、焼け石に水です。府中町は小中あわせて7校ですから1人も増えない可能性が大です。
日本教育学会は、平均1校当たり小学校3人、中学校3人、高校2人の教員を加配する10万人の教員増を提案しています(「9月入学よりも、いま本当に必要な取り組みを―より質の高い教育を目指す改革へ―」5月22日)。
最後の質問です。私はタブレット――機械より先に少人数学級およびそのための教員増こそが求められていると考えます。これまでも2016年12月議会の一般質問「子どもが安心して過ごせる環境づくり」や2019年3月議会での一般質問「教員の長時間労働・多忙化とその是正」において少人数学級の拡大、教員増が必要だと主張してきました。
コロナ災害とも言うべき状況のなかで、3カ月にもわたる休校措置がとられ、学習面での遅れとともに、子どもたちはかつてないストレスと不安をためこんでいます。先生方、学校現場は今まで以上に大変になっています。今こそ少人数学級、教員増を進めるべきときではないでしょうか。
そこで伺います。町は、少人数学級と教員増についてどのような認識をお持ちでしょうか。ご答弁願います。
◆学校教育課長 現在は、県の基準に基づき、小学校1年生、2年生は35人、小学3年生以上は40人で学級編制を行っているところです。少人数学級は、児童生徒一人ひとりの状況をより丁寧に把握することができ、個々のつまずきなとに対する指導がより丁寧に適切に実施できる効果があるものと認識しております。
さらに、この度のコロナウイルス感染症対策で「身体的距離の確保」をする上でも、有効であると考えています。
そのため教育委員会としても、教員を増やしていただきたいという思いは、強く持っておりますが、少人数学級の拡大(県費負担の教員増)については、これまでも申し上げておりますが、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(いわゆる標準法)」にもとづく県の基準による措置なしに実施することは困難であり、国が責任をもって標準法の改正を行い、進めていくべきものであると考えております。
教育委員会としては、小中学校全学年35人以下学級の早期実現を、全国町村教育長会を通じて、文部科学省へ要望しておるところです。また、広島県町村会を通じて、県に対しても、毎年、県予算並びに施策に関する要望として標準法改正による35人学級の導入を要望しており、今年度についても、5月に行っております。
なお、教職員の増とはなりませんが、本定例会で議決していただいた補正では、国の学習保障に必要な人的支援の制度を活用し、学習指導員等として会計年度任用職員(非常勤講師)を約2,880時間程度追加配置できる予算を計上しております。
学習指導員等の予算は、例年より1.6倍(9,896千円→15,893千円)となっており、今後も教育委員会としては、このような国の制度を積極的に活用し、教職員の負担軽減にも努めてまいります。
《第3回目》
国と県に対し、教員増・少人数学級を求める努力を町や教育委員会が努力をされてきたことはよく知っております。しかし、これまで以上に頑張っていただきたい。そのことを強く要望いたします。
今回は、一斉休校および、休校措置を想定したタブレット端末の一斉購入の問題に絞って質問致しました。大元である「GIGAスクール構想」そのものについての検討は改めて行いたいと考えております。
以上で質問を終わります。
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