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2023-04-21

2023年度 府中町一般会計予算に対する討論

第5号議案「令和5(2023)年度府中町一般会計予算」に賛成の立場から討論をおこないます。

1.交付税が少ない府中町

まず歳入です。

府中町は広島県内で財政力が高い自治体だと思われています。

「住民からの税収が多い」という意味ならば確かにそのとおりで、町税が一般会計に占める割合は県内9町で最も多く43.5%です。しかし、そのことは「府中町政が使えるお金が多い」ということを意味しません。

一般会計決算を住民1人当たりで割ってみました。新型コロナの影響を受けていない2019年度の数字です。府中町33万円、海田町40万円、熊野町43万円、坂町83万円、安芸太田町135万円、北広島町88万円、大崎上島町97万円、世羅町84万円、神石高原町144万円です。

このように住民1人当たりでいいますと、9町のなかで使えるお金がもっとも少ないのが府中町です。

どうしてこういうことになるかというと、地方交付税が少ない。交付税も住民一人当たりで計算しますと府中町3万円、海田町5万円、熊野町11万円、坂町10万円、安芸太田町71万円、北広島町34万円、大崎上島町32万円、世羅町32万円、神石高原町62万円です。

●必要な制度ではあるが

「地方交付税は、地方公共団体間の財源の不均衡を調整し、どの地域に住む国民にも一定の行政サービスを提供できるよう財源を保障するためのもので、地方の固有財源」と総務省が説明している通り、必要な制度です。

基準財政需要額から基準財政収入額を引いたものが財源不足額とされ、交付税措置されます。基準財政需要額は、道路橋りょう費や公園費、生活保護費、徴税費などの項目(単位費用)に人口や面積(測定単位)など掛け、さらにそれを補正して算定します。

当町は狭いので、面積や道路の長さが「測定単位」となっているものは不利です。もちろん面積も重要な要素で、北広島町は東京23区と同じ面積ですから、人口だけで判断されてもこまるでしょう。

様々な算定項目を計算し、積み上げた結果が基準財政需要額となりますが、先ほど紹介した住民1人当たり交付税の額から分かるように、当町や海田町のような狭くて人口の多い町は他の町に比べ、実際に必要とされる額よりも交付税がずいぶん少ない。

神石高原町の交付税は当町の20倍です。地方交付税制度は必要だと思いますがあまりに差がつきすぎだと思います。

京都府精華町は人口3万6千人、面積25平方キロメートル。当町と同じように人口が多く町域が狭い。1人当たり一般会計予算は34万円、地方交付税は当町よりは多いけれども6万円です。


当町だけでなく狭くて人口の多い町はどこも苦しんでいるようです。町政に必要な財源が確保できるように、交付税のしくみを是正することが必要だと思います。同じような条件の他の町とも力をあわせて国に働きかけて下さい。

 

 2.「ふるさと納税」の問題点

金が他に流れる

昨年末の朝日新聞に、「ふるさと納税赤字、自治体の25%」という記事があり、2021年度、府中町は全国の町村のなかで赤字が2番目に多いと紹介されていました。本来であれば、町の収入となる1億3700万円がよそへ行ってしまったということです。ただし、75%は国から補てんされますので、約3400万円の損失となります。

「ふるさと納税」は、個人が自治体に寄付をすると特産品などの返礼品が受け取れ、寄付した金額の一部が所得税と住民税から控除される制度です。

返礼品は寄付額の3割にあたる額まで認められています。府中町から全国の自治体に出て行った一億3700万円のうち、約4千万円は返礼品として寄付した人のものになります。「さとふる」など

「ふるさと納税」を仲介するサイトに手数料も払わねばなりません。ですから、府中町から消えていった一億3700万円の半分ぐらいしか他の自治体の収入増にならない。税金を使ってギフトを送っているようなもの。まったくばかばかしい仕組みです。

返礼品も、「ブランド牛かエビなどの海の幸がないと寄付が集まらない」といわれています。「ふるなび」というサイトでは今月(2月18日~3月17日)のランキングが出ていました。1位が米、2位と3位がマスカット、4位がホタテで、5位がイチゴです。

海もなく田畑もごくわずかしかない府中町では努力のしようもありません。全く不公平です。
 
高額納税者ほど優遇される

収入が多く、納税額が多いほど得になるということも問題です。

納める税金以上は寄付しても控除されません。控除される上限のめやすは独身あるいは共働きの場合、年収300万円なら2万7千円まで、年収500万円なら6万円まで、年収1千万円なら17万2千円まで、年収4千万円なら128万円までです。

返礼品は年収300万円の人なら8千円程度、年収4千万円の人なら40万円程度の商品が受け取れます。金持ちほど「お得」ということです。

税には「所得の再分配」といって、格差を是正する働きがあります。しかし、「ふるさと納税」は、所得の多い人ほど優遇され、税のあり方を歪めるものです。

振り回される自治体

2019年、返礼品は寄付額の「3割以下の地場商品」と改定されました。それまで静岡県小山(おやま)町は、寄付額の4割分のアマゾンギフト券を返礼品とし、全国2位の約252億円を集めました。町の一般会計当初予算の2倍です。

この寄付金で、学校給食無料化、富士山が見える公園の整備、工業団地進出企業への補助金などを実施しました。しかし、制度変更によって寄付は2019年度8億円、2020年度3億円へと減少。

「給食費の完全無料化は保護者に喜ばれているので続けたいが、中止や縮小、代わりに他分野の削減などの議論が起きるかもしれない」と池谷晴一(いけや・せいいち)町長。「ふるさと納税」を原資に積極的な施策を打っても、制度が変わればたちまち収入を失い大変なことになる。

このように「ふるさと納税」は問題が多い制度です。町民のみなさんの払った税金が他に流出せず、町のために使えるように、本来の姿に戻ることを願います。

3.福祉施策の充実

次に歳出です。

「子育てしやすい町」 

子どもの医療費助成の充実については、第15号議案の賛成討論で述べましたので繰り返しませんが、大変良かったと思います。

もう一つ、評価したいのは、保育園の新設です。

2020年度にこんごうさくら保育園(定員120人)ができ、2022年5月1日現在の認可保育所の定数は970人になりました。それでも「潜在的な待機児童数」は159人で前年度より倍増し、保育園の入所を待つ保護者、児童が引き続き存在する状況です。さらに町内には2020年から2021年にかけ、3つの大きなマンションが建設され、保育園を必要とする方が少なくないと思われます。

そういう状況のなか、さらにもう一つの保育園をつくることを決断され、今回、施設整備に対して2億1千万円の補助金がつきました。2024年4月に開園とのことで、待機児童が大幅に減少し、「子育てしやすい町」がさらに前進することを期待します。

介護の負担軽減へ

看護小規模多機能型居宅介助事業所の整備(5千4百万円)も進められます。看護小規模多機能型居宅介助事業とは「訪問看護」と「小規模多機能型居宅介護」を組み合わせたサービスで、「通い」、「泊まり」、「訪問介護」、「訪問看護」サービスを提供するものです。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが厚労省の委託で行った調査によりますと、看護小規模多機能型居宅介助事業の利用者の状態の変化として、「家族の介護負担が軽減し、在宅療養が継続できた」59.7%、「運動機能の改善が図れた」25.6%、「不要な入院を回避できた」22.1%、「在宅療養生活へのスムーズな移行ができた」20.5%、とあります*1)

介護を必要とする方が住み慣れた町で健やかに暮らし、家族の負担が軽減されることになればよいと思います。

*1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「看護小規模多機能型居宅介護および療養通所介護の特性に関する調査研究事業」2018年、147頁。

給食費の一部助成を

2022年度より教育費が約6億円増えています。そのうち、東小の校舎の屋根・外壁の改修、体育館・床の張り替え、中央小の教室、放課後児童クラブ教室の増築が計3億5千5百万円です。

また、今回新たに給食費が公会計化され、小中あわせて2億7千5百万円が計上されています。これまで学校が集め、業社に支払っていた給食費ですが、今年度から町が徴収して支払うことになります。ですから、町の支出が増えるわけではありません。

いま全国で給食費を無償化する自治体が広がっています。当町は冒頭で申しましたように、交付税が少なく、一般会計が180億円程度――令和5年度の予算は190億円ですけれども――で、2億7千5百万円を新たに負担することはとてもできないと思います。財政力のあるなしで、給食の無償化ができたりできなかったりすることはおかしく、国が責任を持って無償化を進めるべきです。

同時に、保護者の負担軽減の観点から無料にすることはできなくても給食費の一部を負担するとか、就学援助の基準を引き上げることはできるのではないでしょうか。 

ちょうど1年前に学校給食について一般質問したときにも同じ提起をしました。そのときの答弁は、「給食費一律一部補助や就学援助の引き上げについては、現時点において考えておりませんが、給食費一律一部補助や就学援助の認定基準については、今後調査していきたいと考えています」というものでした。引き続き、調査・検討をお願いいたします。

以上、問題点や要望も含め、予算についての意見を述べました。

地方交付税制度を改善することが当町の歳出を充実させるために不可欠だということを再度強調して、賛成討論といたします。
 

ふたみ伸吾 ほっとらいん

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