第20号議案 府中町国民健康保険税条例の一部改正に反対
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2024年3月15日、予算特別委員会の審査にもとづき、3月定例会で予算関連議案が可決。私は、国保税条例の改正案に反対しました(他は賛成)。以下は、その討論原稿です(府中町議会の公式記録ではありません)。
都道府県単位化の破綻
「第20号議案 府中町国民健康保険税条例の一部改正について」反対の立場から討論します。
今回の「改正」は国保の県単位化に伴うものです。これまで2024年度に県内全市町において保険料水準の準統一をはかり、27年度には完全統一する――「同じ所得水準・世帯構成であれば、県内どこに住んでいても同じ保険税」にするということで進んで来ました。
県が2023年度に示した24年度の標準保険税率は、所得割11.87%、資産割ゼロ、均等割52,268円、平等割32,124円でした。
それが23年12月に提示された税率では、所得割13.38%、資産割ゼロ、均等割58,689円、平等割35,926円、一人あたりの保険税収入必要額は対前年度比17,666円増え、155,371円となりました。
府中町に限らず、県内市町からこれではとても負担できないという声があがり、24年度での準統一化はとりやめになりました。
県のホームページは県単位化について次のように説明しています。
市町村で運営している国民健康保険は①「年齢構成が高く医療費水準が高い」②「所得水準が低く保険料(税)の負担が重い」③「財政基盤が弱く、制度運営が困難な市町村もある」という構造的な課題があることから、国民皆保険を将来にわたって守り続けるため、都道府県と市町村で共同運営することになりました。
2024年度の1人当たり保険料収納必要額が想定以上に大きかったために、「改めて方針を整理」することになった。
一言でいえば保険料水準の統一は破綻したということです。
全員協議会で配布された資料では、見送りの原因として、①診療費が増えたこと、②前期高齢者被保険者が減り、国からの交付金が減ったこと、③県決算剰余金による税率引き下げ財源の減少、が挙げられていますが、この3つが今後改善する見通しはないと考えます。
同じく全員協議会の資料にある「令和6年度以降の保険料率の方針」ですが、「各市町の実態に応じて国保特別会計決算剰余金や財政調整基金による引き下げを実施した方が、被保険者の急激な負担増を緩和できると県は考え…」とあります。
市町がカネを出して解決しなさいというのでは、国保を県単位化する意味がどこにあるのか分かりません。
そもそも、県単位化によって、「年齢構成が高く医療費水準が高い」問題や「所得水準が低く保険税の負担が重い」という問題は、なんら解決しません。高齢化社会が進み、医療水準も引き続き高くなります。
まだ踏み出していない都府県も
国保の都道府県単位化は国の方針ですが、都道府県国保運営方針に「国保統一」とはっきり書いているのは大阪府だけです。広島県は、2024年度までに「保険料水準の統一を目指し」と、やや控えめな書き方で、奈良県、沖縄県、北海道も同様です。
和歌山県、佐賀県は27年度までに検討とあり、その他の都府県の方針には検討時期も書かれていません。まだ、国保は市区町村の手にある。
ですから、お隣の岡山県早島町は、2020年度から国の制度とは別に国保に加入する18歳以下のこどもの均等割額の2分の1を減免しています。
「相互扶助」化する国民健康保険
国民健康保険法第1条に「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」とあるように、国民健康保険は社会保障の一環です。
資本主義社会は自助を基本原理としていますが、それだけでは「格差と貧困」が拡がり、社会が不安定になる。それを是正するために20世紀に入って社会保障、すなわち国が責任を持って国民の暮らしを支える制度が誕生しました。
しかし、近年では「社会保障制度の基本は保険料による支え合い」(財務省ホームページ)といったように「相互扶助」「助け合い」が強調され、国の責任は後退しています。
1984年までは「かかった医療費の45%」が国庫負担となっていましたが、現在では市町村国民健康保険の総収入に占める国庫負担の割合は3割以下に減っています。
県単位化によって現在では国庫負担(国庫支出金)が県費に含まれているため、当町に対する国庫支出金の額を確認することができませんが、2017年度予算ではかかった医療費(=保険給付費)が36億円で、国庫支出金10億円です。国の負担割合は28%、まさに3割以下です。
国の負担割合が減った分、被保険者の負担が増えたのです。
国保加入者の変化
加入者(世帯主)の職業も変化しています。1965年度は、農林水産業と自営業が7割近くでしたが、2021年度では、2割もいません。
無職が4割でそのほとんどが年金生活者でしょう。企業で働いている人が3割ですが、正社員は「協会けんぽ」などの健康保険に入っていますので、国保加入者はパートタイム労働者など非正規の人が多い。
かつては農家や自営業者など収入のある人が多かったが、現在では年金生活者や非正規労働者など収入の少ない人が多くなっています。
2022年10月から短時間労働者(パートタイム労働者)の健康保険適用が拡大されました。 1週の所定労働時間が20時間以上、月額8万8千円以上、継続して1年以上使用される見込みの労働者が対象で、24年10月からは、短時間労働者を除いて常時50人以上被保険者がいる事業所が適用されます。
その分、国保加入者は減りますので、無職の比率がさらに高くなるでしょう。
広島県の21年9月末現在の、市町村国保の年齢階層別被保険者数は70歳以上75歳未満が169,902人、65歳以上70歳未満が100,226人で併せて270,128人、被保険者合計526,173人の51%、過半数が高齢者です。
2023年、「団塊の世代」約600万人の7割が75歳以上となり、2025には全員が75歳以上で国保から後期高齢者医療に移行します。被保険者は大幅に減り、1人あたり医療費は下がるものの、国保税で徴収している後期高齢者支援金や介護納付金は増えることになるでしょう。
負担は増えるばかり
後期高齢者医療制度が開始された2008年、国保の被保険者は3,597万人でしたが20年には678万人も減って2,919万人です。被保険者は減るけれども、医療費はそれほど減らない。
そして、被保険者の多数が無職となるなかで、国保を「保険料による支え合い」「共助」中心にやれば
どうなるのか、待っているのは耐えがたい負担増です。
かつて全国知事会が、国保料(税)を「協会けんぽ」並みに引き下げるために「1兆円の公費負担増」を政府に要望しました(2014年)。
高い国保税が半分になります。しかし、政府はこれまでも公費負担を増やすことはせず、今後もやるつもりがありません。
県も国保税引き下げのために、繰り入れをするつもりはないようです。これでは国保税が上がるばかりでしょう。
国保税の滞納世帯は徐々に減っていますが、21年で11.9%、1割以上です。高すぎて払えないという人も相当いるでしょう。今後、国保税が高くなっていけば、滞納世帯が増えていく可能性があります。
私は2017年の3月議会、6月議会で、国民健康保険制度について取り上げ、県単位化で保険税がさらに上がることについて危惧の念を表明しましたが、その通りとなりました。
今後、さらに国保税が上がってゆくことが予想され、県単位化のもとでは町として軽減策を講じることができなくなります。
県単位化について、先送りではなく、いったん白紙に戻し、府中町の国保はいかにあるべきか、検討すべきです。
今回の「府中町国民健康保険税条例の一部改正」案は、保険税率の急激な上昇を抑えているものの、県単位化を前提としたものであり、以上述べた理由から反対いたします。
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