国民健康保険の県統一化について 2017年6月議会 一般質問

 

来年4月から国保料は県内で統一化する方向で動いています。

これに伴い、各市町の保険料(税)が大幅に上がる可能性があります。

この問題を6月議会で取り上げました。

 

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都道府県単位化のねらいと問題点

ふたみ議員 広島県は5月19日に国保運営方針素案を発表し、二つの試算を示しました。
一つは「一人あたり保険税収納必要額」です。「一人当たり保険税収納必要額」とは、市町が本来集めるべき保険料総額を被保険者数で割った数です。

府中町の場合、平成29年の数値にもとづく新制度後の必要額は平成28年度より2.1%の増、13万4301円ということになっています。

県の説明によりますと「平成29年度に新制度が適用されたものと仮定し、統一保険料率とするために、納付金基礎額が保険料収納必要総額に等しくなるよう公費や経費等を調整するとともに、市町毎の医療費水準は反映せず、市町毎の所得水準、被保険者数、世帯数に応じて按分を行っている」とのことです。また、「現時点で未確定の公費(1700億円)等は算入しないことから、実際の保険料負担を直接示すものではない」と追加公費があれば下がる可能性があるとも述べています。

もう一つは、40歳の夫婦子どもなし、給与収入360万円、配偶者所得なしとした場合をモデルケースとした推計です。このモデルケースの場合、府中町では、現状(平成28年度)の保険税は年間32万1800円ですが、平成29年度数値に基づく試算は、37万8362円となり、5万6532円、率にして約18%も増えるということになっています。

条件によって保険料の実際にばらつきがあるとしても、2%と18%ではあまりにも差があります。そこで伺います。両推計とも追加公費1700億円を算入しないという同一条件での試算です。「一人あたり保険料収納必要額」とモデルケースによる保険税額の増加率がなぜこのように開きがあるのでしょうか。

資産割がなくなり所得割が増える

福祉保健部長 広島県が5月19日に発表されました2つの試算については、国の追加公費が算入されておらす、実際の費用負担を直接的に示すものではありません。また、試算に用いたデータも平成28年度のデータとなっております。

国保の県単位化後の保険税は、所得割、均等割、平等割の3方式により課税される予定です。府中町は、所得割、均等割、平等割、資産割の4方式で課税しておりますので、県単位化により、資産割を廃止することになります。

資産割の廃止に伴い減ることとなる額は、所得顔に上乗せすることになります。今回のモデルケースのように今まで資産割がかかっていなかった世帯は所得割の上乗せ分かそのまま保険税の増加の要因となってしまいます。

一方、今回の試算で示されました標準保険料率で保険税が下がる世帯としましては、今までかかっていた資産割の額が、今回上乗せされる所得割の額以上の世帯ということになります。

具体的には、固定資産税が年間92,000円かかっている世帯、これは、国保加入世帯で固定資産税がかかっている約3400世帯の平均でございますが、その世帯の保険料で算定してみますと、一人世帯で約112万円、2人世帯で、約96万円以下の所得の場合は減額になる結果が出ております。

国保の世帯の約50%は所得が100万円以下でございます。今回の試算の開きは、そのような影響がでたものと思われます。

ふたみ議員 「今まで資産割がなかった世帯は保険税が増える可能性がある」ことを認めたものといえます。町全体では2.1%増であっても、このモデルケースのように大幅に増える世帯もあるということです。

国保負担増は「生きる権利」を脅かす

ふたみ議員 つぎに、国保の負担と「生きる権利」のかかわりについて質問いたします。

府中町は平成25年度に保険税率を引き上げました。一人あたり保険税額で、9万4392円(平成24年)から、10万1426円(平成27年)へと約7千円も上がりました。所得300万円、40歳以上の夫婦、16歳以下の子ども2人で試算(資産割を含まず)すると、6万円近い増になっています。

国保加入者は所得のない人が全体の四分の一近くを占め、加入者一人当たりの平均所得は健保組合が198万円なのに対して83万円と半分以下です。にもかかわらず、所得に占める保険料の割合は健保が5%なのに国保は10%と2倍になっています(厚労省保険局「国民健康保険・後期高齢者医療における保険料(税)軽減について」平成25年10月23日)。

「所得は半分なのに負担は2倍」というのが実態です。国保税以外の税金や年金の掛金など、あわせると家計の約3割を占めると言われており家計を圧迫しています。

日本国憲法第25条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と述べ、第2項で「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と地方自治体を含む国の責任をうたっています。

国保だけに問題があるわけではありませんが、高すぎる国保税(税)が国民、町民の暮らしを苦しくさせていることも事実です。この間、国保を含む社会保障が向上し、増進されたということはできない。医療、児童福祉、高齢者福祉、障害者福祉においても制度は後退に次ぐ後退です。そこで質問いたします。

国保において、もうこれ以上の負担を強いることは憲法25条にうたわれている生存権を脅かすことになると思いますが、どのようにお考えですか。

福祉保健部長 平成25年度に保険税率の引き上げた改定率は、9.1%でございました。その後現在まで引き上げは行っておりませんが、平成24年度と平成27年度の保険税額をモデルケースで比較いたしますと、議員のお示しのとおりとなっております。

生存権につきましては、他の福祉制度等を含め総合的に保障するものであり、これのみをもって「生存権を脅かす」ものではないと考えております。

ふたみ議員 もちろん、国保だけが町民の暮らしを脅かしているわけではありません。

年金暮らしの人、ワーキングプアと呼ばれる人たちにとって、さまざまな負担が「健康で文化的な暮らし」を難しくしていることは先に述べたとおりです。重くのしかかる負担の一つとして国保があり、人間らしく生きる権利を脅かしていることを重ねて強調しておきたいと思います。

負担増を伴う県統一化に反対すべき

第3に、県統一化についての町の見解を伺います。

今回、県が発表した二つの試算に予定されている国費1700億円を算入していません。町長が常任委員会で述べたように、この拡充分が府中町に充当されれば単位化後の保険料は下がるかもしれません。と同時に「国の財政支援の内容が不透明」であり、1700億円をどのように配分するのか、均等なのか傾斜配分なのかについても決まっていない。不透明なことが多く、「府中町の保険料が上がるか下がるか論じるには時期尚早」という町長の報告も分からなくはありません。

しかし、国から確定計数が提示され、本算定をするのは今年の12月で、平成30年の1月~3月にかけて当初予算を組み、県から市町への納付金額が通知されるというスケジュールです。納付金額が決まってからスタートまでわずかな時間しかありません。

「激変緩和措置」が予定されているということは、激変--要するに保険税(料)が大きく上がることが予定されているからだと思います。府中町の場合には、試算の保険料収納必要額でいえば、若干の値上げあるいは値下げということでしょう。同じように、減るか増えても2~3%台という市町もあります。しかし、10%以上増えると試算された市町が5つ、20%以上増えるのが5つ、あわせて10市町です。

県全体として、けっしてよくならないと思います。

国費は1700億円追加されれば、すでに投入されているものとあわせて3400億円になります。市町村による法定外繰入の合計は約3900億円です。国は、自治体による法定外の一般会計からの繰入を6年かけて解消する方針です。3400億円の投入では500億円足りない。法定外繰入をやめてしまえば、国保税は上がるか、よくて高止まりです。負担軽減の道ははるかかなたになるでしょう。

そこで質問です。

このような負担増を伴う統一化に反対すべきだと思いますが、いかがですか。

福祉保健部長 現行の国保制度は、財政基盤が弱く、多額の穴埋めを法定外の一般会計からの繰り入れによって行わざるを得ないなどの問題を抱え、市町村のみの運営が困難となっております。今回の国保の県単位化は、市町を超えた大きな器の中で公平な負担をする制度に変えていくものです。

国の財政措置は拡充され、県全体で考えますと被保険者の負担を増やすものではございません。国民皆保険制度を持続的に運営するためには、どうしても必要なものだと考えております。

ふたみ議員 「国の財政措置は拡充され、県全体で考えますと被保険者の負担を増やすもの」ではない、と答弁されました。国の財政措置も確定されたものではありませんし、仮に財政的な手当があっても、負担が増えないとされるのは、あくまで「県全体」のことであり、町民一人ひとりの負担が増えないことを担保するものではないことは第1点目の質問と答弁からも明らかです。

第4として、町民の負担増を求めない措置を国や県に求めるつもりはありませんか。

福祉保健部長 国や県への措置の要望については、今までも行ってまいりました。今回の改正は、国の公費が追加されますので、さらなる措置の要望は、この改正により県の単位化か行われた後の状況を踏まえて検討してまいりたいと考えております。

減免を広げ負担軽減を

ふたみ議員 第5に、法定減免について伺います。

今回、法定軽減による国保税軽減措置が「拡充」されることになりますが、当町の場合、5割軽減で10世帯、2割軽減で18世帯に広がったにすぎません。

今回の軽減措置の拡充によって軽減世帯はどのようになったでしょうか。対象をさらに広げることが必要だと思いますが、どのようにお考えですか。

第6に、条例減免について伺います。

担当課に伺ったところ、現在の条例減免の対象は、①生活保護世帯、②会社の倒産・解雇・雇い止めなど非自発的失業者、③少年院・刑務所その他これに準ずる施設に収容または拘禁された場合、④災害にあった場合、⑤被用者保険の旧被扶養者だった人の5つだそうです。
他の自治体では、所得激減減免、低所得減免、障がい者減免、母子世帯減免、一人親減免、高齢者減免、借金減免など多種多様な減免制度があります。

町独自でできる条例減免の拡充をする考えはないですか。また、他の市町では、減免制度について利用しやすいよう、ホームページなどで制度をまとめて紹介しています。府中町のホームページを検索すると、現在ある5つの条例減免のうち、出てくるのは非自発的失業者に対する軽減のみです。ぜひ改善を希望するものです。

福祉保健部長 5点目と6点目は併せてご笞弁させていただきます。

今回の軽減措置の拡充で、5割軽減が788世帯、2割軽減が723世帯、これに了割軽減の1、541世帯を合計すると3、052世帯が軽減世帯となり、この数は、国保世帯の48.9%にあたります。国保世帯の約半分は軽減世帯ということでございます。また、減免世帯は、平成28年度は63件でごさいました。

国の基準以上の軽減や減免により減額となった保険料の財源は、一般会計の法定外繰入や保険税率の引き上げによって賄われることになります。一般会計の繰入は国保被保険者以外の方の税金まで国保に充てることになり、また、保険税率の引き上げは、軽減や減免を受けなかった方の保険税の上昇につながり、負担の公平性の観点からも慎重に検討する必要があるものでございます。

現在の軽減や減免の基準は、妥当なものと判断しており、今のところ改正の予定はございません。また、統一保険料をめざしている中で、町独自の軽減措置を行うことは、適切ではないと考えております。ホームページについては指摘されたように改善したいと思います。

健保などとの違いを無視して「負担の公平性」を語ることは許されない

ふたみ議員 「一般会計の繰入は国保被保険者以外の方の税金まで国保に充てることになる」と答弁されました。たしかに町民の中には、国保以外に健康保険や公務員共済組合に加入している人、世帯があります。しかし、健保や共済にあって国保にないのが事業主負担です。

そのことが国保保険税(料)が高い要因の一つであり、しかも国の負担はどんどん減らされ、加入者の負担は増え続けてきたわけです。そういう、そもそもの違いを無視して、一般会計による国保の負担軽減が、それ以外の人たちの負担を増やしているという答弁は「住民の福祉の増進」こそ地方自治体の役割だとする地方自治法の精神に反するものではないでしょうか。

「軽減や減免を受けなかった人の保険税の上昇につながり、負担の公平性の観点からも慎重に」という答弁も同様です。困っている人に手をさしのべることが不公平につながるというのであれば、福祉施策を進めることはできません。そもそも、あらゆる行政施策が個々に対するあるいはある一定部分に対してのものであり、総合的な施策によって行政の公共性はなりたっている。一つの施策が全ての町民をカバーすることなどあろうはずがないからです。

以上のことを申し述べまして、次の質問に移ります。

大腸がん検診を受けやすく

前回、3月議会の一般質問で、「大阪府箕面市のように、健康診断とがん検診を無料にし、町民の受診率を高め、医療費を下げる考えはないか」とお伺いし、「全住民の無料化については、今後の検討課題」という答弁をいただきました。

既に決まっていたようですけれども、私の提案とはまったく反対に大腸がん検診の自己負担が今年の4月から200円から400円へと2倍になりました。 昨年度まで春の2ヶ月と秋の3ヶ月間、福寿館と南交流センターの2か所に採便容器を提出すれば、検診が受けられましたが、この制度が廃止され、集団検診(春・秋)と個別検診(マツダ病院検診センター)での実施ということになっています。

健康推進課の説明によると、これまでの検査委託先から《問診があることが原則》ということで、断られた」ということでした。当該検査機関に電話して確認すると、厚労省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に「大腸がん検診の検診項目は問診及び便潜血検査とする」とあり、問診について「現在の症状、既往歴、家族歴及び過去の検診の受診状況を聴取する」となっている。医師による聴取がないとだめなので従前通りとならない、ということでした。

疑問に思いましたので、厚労省の担当課(がん対策・健康推進課)に確認したところ、聴取は「問診票への記載でかまわない」。「医師の聴取は?」と尋ねると「医師とは書いていない」という明快な回答を得ました。検査機関の職員が「指針」をいわば「深読み」したことに原因があり、担当課に罪はないのですが、がん検診受診率に大きな影響をあたえることが予想され、慎重に対応してほしかったと思います。厚労省の見解を担当課と検査機関に伝え、善処するように要望しましたが、その後どのように検討されましたでしょうか。

福祉保健部長 大腸がん検診の実施方法の変更については、従前の検診委託先より医師が不在となり受託困難となった旨申し出があったため、検討した結果、今年度は、その他のがん検診等の集団検診の日程に持参していただく方法と、個別検診として医療機関に持参していただく方法で行うこととし、実施しております。

大腸がん検診に医師の介在が必要かどうかという点については、議員ご指摘のとおり、国からの「がん検診実施のための指針」等には明記されておりませんが、今年度の委託先を検討する際に、単に便潜血検査が陽性か陰性かのみではなく、問診等の内容から総合的に判断して検査結果とするには医師による判断が必要であると考え、これらのことを含めて検査を実施できる医療機関等に今年度は委託しております。

今後については、これからの受診動向等をふまえ、また実施方法についても研究して、よりよい実施方法について検討してまいりたいと考えております。

ふたみ議員 大腸がん検診ですが、まず便潜血検査をし、そのうえで異常が見つかれば医療機関を受診をすればいいわけで、医師による受診を義務づけて間口を狭くする必要はありません。今後については検討するということですのでぜひ再検討していただきたい。

箕面市に職員を研修に出す

同じく3月議会で「健康診断やがん検診の無料化の実情やその効果を把握するために、町職員を箕面市へ研修にだすことを検討していただきたい」という質問に対して「町民の健康推進にかかることであり、前向きに検討する」との答弁でしたが、検討は進んだでしょうか。

福祉保健部長 町職員を箕面市に研修に出すことについてですが、今年度中の早い時期に、国民健康保険及び検診の担当職員を、箕面市に研修に行くように現在、調整しております。まずは、箕面市の実情と効果について、現地でしっかりと勉強させていただき、その上で、町としての施策について、しっかり検討してまいりたいと考えております。

ふたみ議員 箕面市への研修が実現するという答弁、たいへんうれしく思います。

ぜひ箕面市の経験を府中町に活かして欲しいと思います。

国保の県統一化について、まだ不透明な部分が確かにあります。府中町の国保加入者の負担が増えないよう、事態の進展にそった負担軽減の努力を求めて、質問を終わります。

 

6月議会 二見伸吾一般質問「国保の県統一化について」

 

3月議会での一般質問「国民健康保険をどうする?」も併せてお読みいただければ幸いです。

 

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