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2025-03-11

生活環境を守る基準にならない準則条例に反対

3月17日、府中町議会で提案された準則条例に反対しましたが、賛成多数で可決されました。

以下は議事録に基づくものではなく、私の討論原稿原稿によるものです。


第17号議案「府中町工場立地法地域準則条例の制定について」反対の立場から討論いたします。

工場立地法とは

工場立地法は、「工場立地の段階から周辺の生活環境との調和を保つ基盤を整備し、公害の発生をしにくくする体制を整えさせることにより、早い段階での生活環境の保全を図ることを目的とする」*1)とされています。

「周辺の生活環境との調和」「生活環境の保全」のためにこの法律が作られていることは明白です。

工場立地法は、工場敷地の生産施設面積と緑地等面積を規制するものであり、国の準則では、緑地面積は敷地の20%以上、環境施設面積は緑地を含み25%以上となっています。

工場立地法はその一方で、国が定める準則に代えて、地域の実情に応じ、準則を定める条例を都道府県及び市が制定することができるとなっていました。

これまであった広島県の準則ですが、準工業地域の場合は、緑地面積が敷地の15%以上、環境施設面積が緑地を含み20%以上、工業地域の場合は、緑地面積は敷地の10%以上、環境施設面積は緑地を含み15%以上です。準工業地域は5%、工業地域は10%も国より低い基準が設定されていました。

*1)経産省「工場立地法の概要(1)」。その最新版と思われる「工場立地法の概要」では、「工場立地が環境の保全を図りつつ適正に行われるよう、工場立地に関する調査を実施し、準則等を公表し、勧告、命令を行うことで、国民経済の健全な発展と国民の福祉の向上に寄与すること」となっている。経産省に問い合わせたところ、両者に基本的な違いはないという説明であった。

いずれも経産省資料。作成年月日がかかれていなかったが、上は「準則の内容」の主語が「都道府県及び市」で下が「市区町村は」となっているので、上の図が古いものだということが分かる。「工場立地法」の条文にある目的が変わったわけではないが、経産省の立場が「生活環境の保全」よりも「国民経済の発展」という名の企業の利潤追求に重点が置かれていることが分かる。

緑地面積の規制緩和

このたび、当町が制定する準則は、準工業地域の場合は、緑地面積が敷地の10%以上、環境施設面積が緑地を含み15%以上、工業地域の場合は、緑地面積は敷地の5%以上、環境施設面積は緑地を含み10%以上と県の準則よりもさらに低いものになっています。

準工業地域の緑地面積基準は、国の準則が20%以上、県の準則が15%以上、当町の準則が10%以上。工業地域は、国の準則が20%以上、県の準則が10%以上、当町の準則が5%以上です。
国の準則と比べると、準工業地域の緑地面積は半分、工業地域に至っては四分の一です。これでは、工場立地法の目的である「周辺の生活環境との調和」「生活環境の保全」は望むべくもありません。

廿日市市は昨年9月に準則条例を制定しました。「産業用地を有効に活用し、産業振興の推進を図ること」が目的であり、そのために緑地面積率を緩和するとホームページに書いています。経産省のねらいはここにあるわけです。

地方分権の名の下に

今回、提案されている準則条例は、2016年に公布された「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第6次地方分権一括法)」に含まれる「工場立地法の一部改正部分」によるもので、地域準則の制定を都道府県から市町村に事務・権限移譲するという内容です。

そして広島県が昨年(2024年)3月18日に準則条例を廃止し、県内市町が準則条例を定めることになりました。

国から都道府県、そして市町村になるにつれ「規制緩和の割合が強くなる」と経産省の資料に正直に書かれていて驚きました。

緑地面積について、国より低い基準を都道府県に作らせ、今回の市町村への事務・権限移譲では、さらに低い基準を市町村に作らせる。あってないような規制に変えてしまう。

おそらく国際的な批判をかわすためなのでしょうけれども、国は自らの手は汚さず、代わりに地方自治体にやらせるわけです。私は、こういうやり方も許すことができません。

環境保全と調和する産業振興を

環境保全よりも産業振興を優先し、そのために緑地面積の基準を引き下げることは、地球温暖化防止、カーボン・ゼロに逆行するものです。

昨日の中国新聞に「企業や自治体の緑地確保計画を国が認定し、整備費用を財政支援する仕組みがスタートした」という記事*2)が出ていました。

昨年改正された都市緑地法に基づき、国交大臣が定める緑地確保指針に適合しているかを評価・認定するもので、優良緑地確保計画認定制度といいます。

緑地面積が1,000m2以上で、敷地全体の10%以上ということですから、工場立地法の基準とは重ならないわけですが、基本的な考え方は大いに緑を増やしていこうということだと思います。

今回提案されている準則条例と正反対です。

緑を守る、緑を創る、緑を慈しむことを基本理念としている「府中町緑の基本計画」とも相いれません。

また、権限移譲といいながら、県内横並びの基準で、どこが「地域の自主性及び自立性」なのか。どこでも同じなら県の基準でいいではないですか。市町への権限移譲は、規制緩和=基準引き下げの口実でしかありません。

工場の緑地面積を確保し広げることは、産業用地の有効活用や産業振興に逆行するのでしょうか。確かに工場をつくる面積は減りますが、その企業にとっての利益、メリットもあります。

工場の敷地に緑地を設置すると、木陰や樹木による夏の遮熱や冬の保温、ヒートアイランド現象の防止、防塵、騒音の軽減、従業員のストレス解消、景観の向上、企業のイメージアップなどのメリットがあります。

なかでも、工場で特に大きなメリットと考えられているのは遮熱や保温による省エネ効果です。

工場の屋上や壁面に緑地を設置することで、屋根や壁から工場内に伝わる外気を遮断し、冷暖房の負荷を抑えて消費エネルギーを削減できます。

また、周辺の地域の生活環境の保持に寄与する「環境施設」として、①噴水、水流、池その他の修景施設、②屋外運動場、③広場、④屋内運動施設、⑥雨水浸透施設、⑦太陽光発電施設などがあげられており、これらの施設の面積も緑地にプラスされます。

ぜひ、緑化や環境施設設置のメリットについての理解を企業に広げていただきたい。

以上、述べた理由により当準則条例の制定に反対いたします。

*2)「地方市街地 緑化促す」中国新聞2025年3月9日。

 

ふたみ伸吾 ほっとらいん

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