この本から始めてみませんか 『子どもの本でジェンダーレッスン』
『子どもの本でジェンダーレッスン』かもがわ出版
藤木直実 編著/吉良智子・神保和子・中西恭子・宮下美砂子 著
視座を示す扉
本書は、子どもに本を手渡す立場にある大人を主な対象に編まれています。「〝ジェンダー〟って気になるけどよく分からない」という人にもお勧めです。
ブックガイドⅠは、「装いの力」「プリンセスたちの挑戦」など8つのカテゴリー(章)に分けて、絵本、児童書、まんがを取り上げています。
視座を示す章の扉が肝心。扉を飛ばすことなく、熟読玩味して下さい。あとは順を追って読むもよし、気になるカテゴリー、タイトルで選んで読むもよし。
見開き2ページで本が紹介されていますのでサクッと読めます。
子どもの本だけではありません。ブックガイドⅡでは、中学生以上向けや大人向けの読み物、小説・エッセイ・まんがを35点も紹介しています。
ジェンダーに取り組む拠点
本書の特徴の1つは充実した索引です。巻末の作品名と人名の索引に加え、用語集も索引として使えます。索引を活用し、相互に関連づけて理解を深めることができるでしょう。
2つめは、ブックガイドⅠの上段にある欄外情報です。キーワード、参考文献・サイト、テレビドラマ・映画化などの情報が掲載されていて、本の世界をさらに広げる手がかりを提供しています。
3つめは用語集。気になる用語を見つけて、それに関するブックガイドを読むというのもありですね。
至れり尽くせりで、ジェンダーに取り組む拠点となる本です。
物語と社会のしくみ・権力構造
ジェンダーや多様性をテーマとし、「男らしさ/女らしさよりも自分らしさを大切にしよう」と呼びかける作品が増えていることを、編者の藤木直実さんは評価しつつ、「自分らしさ」の後ろにある社会のしくみや権力構造を見逃すと自己責任論や新自由主義の落とし穴にはまってしまうと警告します。
だからこそ、社会のしくみや構造に目を向け、変えようとする力を育てる「物語」、子どもたちを見守り導く大人たちを勇気づける「物語」が生まれ、広く行き渡ることが求められているのだと言います。
この提起を受け止めた新しい「物語」が創造されることを期待したい。
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