貧困 家族 おかあちゃん 映画「ナイトフラワー」を観て

この映画が映し出すのは、日本社会の「貧困」です。
貧困を描いた映画に、朝ドラ「ばけばけ」で松江随一の名家に生まれた役を演じた北川景子、「虎に翼」で寅ちゃんの親友で義理の姉を演じ、2027年前期の朝ドラ『巡るスワン』の主役である森田望智という、名優二人が主演していることにまず驚きます。
貧困社会を描いた映画に出ることを決意しただけで賞賛に値すると思いました。
また、日本の貧困がそれだけ当たり前になっているということもあるのでしょう。
借金取りに追われ、二人の子どもを抱えて東京へ逃げてきた夏希(北川景子)は、地球儀の製造、ラブホテルの清掃、クラブのホステスなどの仕事を掛け持ちして働きますが、借金は減らず、食べることにも困る暮らしです。
ひょんなことから、夏希はドラッグの密売現場に遭遇し、そこからドラッグの売人になるのですが、彼女を手助けしたのが、格闘家・多摩恵(森田望智)です。彼女も格闘技だけでは食べていけず、夜は風俗で働いています。
(森田望智は、半年間、格闘技の練習をし、体重を7キロ増やしたといいます。試合はものすごい迫力です)。
ドラッグの売人をして夏希と多摩恵の暮らしはよくなるのですが、それでも次々不幸が舞い込んでくる。いったん貧困に陥れば、努力しても努力しても穴に落ち込んでいく「アリ地獄」のような日本社会の姿があります。
夏希の願いはただ一つ。二人の子どもの幸せです。「子どもたちに未来を見せてあげたい」。
この映画のキーワードは貧困、家族、そして「おかあちゃん」です。
麻薬密売の元締め(渋谷龍太)から、「おかあちゃん」という言葉が何度も発せられます。
密売に関わる人たちには、家族がいても家族でない、母がいても母でない悲しい過去があるのです
ラストはちょっと意外ですが、リアリティのあるラストではあまりにも悲しい。
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貧困に苦しむ人にとって生活保護は手の届きにくいところにあります。
夏希は、役所に児童手当の前借りの相談に行きますが、生活保護を申請することは全く考えていないようでした。
生活が苦しくなったら生活保護を受けることが当たり前の世の中だったら、この「ナイトフラワー」は別の展開か、そもそも創られなかったのかもしれません。












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