●高すぎて払えず、死亡も

国保減額

国民健康保険は400万人の保険料が軽減されると政府はいいます(上の図)。

「いいことですね」と手放しで評価できるでしょうか?

国保料に対して「なんでこんなに高いの?」「とてもじゃないが払えない」と悲鳴が全国からあがっています。

国保加入の2割、約400万世帯が保険料が払えません。

無保険になり、医療機関にかかることができず死亡する事件も起きています。

全日本民医連は毎年、「経済的事由による手遅れ死亡調査」をしていますが、2013年は56人。

そのうち、32人(約6割)が保険料が高くて払えず無保険でした。他の医療機関を含めた無保険による手遅れ死亡は、はるかに多いことでしょう。

●国保+年金+税金=収入の3割

いまから30年前の1984年、一人あたり保険料は3.9万円でしたが、今(2011年)では8.2万円です(いずれも全国平均)。

国保料はだいたい収入の1割で、税金と年金を合わせると3割といわれています。

年収200万円なら60万円。家賃が仮に4万円とすれば年間48万円。それらを引くと残りは100万円以下になってしまいます。

●減らし続けた国庫負担

なぜ、国保料は払えないほど高くなったのでしょうか。それは、政府が国保に対する支出(国庫負担)を減らし続けたからです。

1984年の国民健康保険法「改正」で医療費(窓口負担を含む)の45%だった国庫負担率を38.5%に引き下げ、現在は32%ほどです。

もし、2013年に国が45%を負担していれば、その額は5兆2300億円。

実際の国の負担は3兆6000億円ですから、1兆6300億円も安上がりになりました。ここ5年の合計だけで実に7兆5000億円(下の表)。

国保・国庫負担(89なし)

さて、「400万人が軽減されます」という今回の軽減措置ですが、政府はどれだけお金を使ったのでしょう。棒グラフにあるように612億円で、国庫負担率を15%近く減らして浮いた1兆6300億円のわずか、3.8%にすぎません。

軽減・国庫負担比較

 

●国庫負担をもとに戻す

国保は、公的な保険であり、国が責任を持って運営すべきものです。

しかし、この間、一貫して国の責任を軽減してきました。そんななかで厚労省自身が、「国保の構造的問題」と呼ぶ事態が生まれています。

加入者の所得水準が低いこと、保険料負担が重いこと、滞納者の多いことなどで、国保そのものが成り立たない危機にあるのです。

危機を乗り越えるためにしなければならないのは国庫負担を1984年の水準(医療費総額の45%)に戻すことです。

それをせず、浮いた分のわずか3.8%の軽減措置で「社会保障がよくなる」などとよく言えたものです。