「選挙に行こう!」 第1章 選挙とは何か

③国民を選挙から遠ざけてきた公職選挙法

投票率が低い3つめの要因は、公職選挙法です。今日も選挙期間中ですが、全く静か。選挙をやっていると分かるのは、ポスターの貼ってある掲示板、そしてテレビ番組ぐらいでしょうか。

政治学者の杣(そま)正夫さんが「選挙運動の言論表現の自由制限は自由諸国に類例を見ない独特の制度の事例を提供している」「欧米諸国の選挙制度には、選挙における言論表現手段を制限できるという発想が全く認められない」(「選挙運動の文書図画制限規定と憲法原則」)と書いています。

日本の選挙はほんとうに制限が多いのです。あれもダメこれもダメの「べからず選挙」と言われています。選挙期間中、候補者以外は拡声器が使えません。政治のありようについて訴えるときなのに訴えることができない。

選挙期間中に候補者の名前・写真の入ったビラは配れません。誰を議員にするのかを選ぶのに候補者の名前と写真が使えないんです。

だから最近はシルエットを入れたビラがあちこちで作られているようです。公選法にひっかかるのではないかという意見もありますが、そもそも写真が使えないということがおかしいのではないでしょうか。

 

 

変なのに、宣伝カーは走っているとき「連呼」しかできない、というのがあります。

「ふたみ、ふたみをよろしくお願いします」というやつですね。

共産党の場合は適宜、政策を織り込んでいますが、公選法どおりだと名前の連呼しかできないのです4)


*4)公職選挙法の第141条の3で、「選挙運動のために使用される自動車の上においては、選挙運動をすることができない」とした上で、2つの例外をあげている。
①自動車の上において選挙運動のための「連呼行為」をすること。②停止した自動車の上において、選挙運動のために演説すること。

お祭りのような楽しい選挙

ヨーロッパでもアメリカでも選挙はお祭りのように楽しいものです。

ハフポストにそのものずばり、「日本とは違う、なぜノルウェー選挙運動は《祭り》のように楽しい?」(鐙麻樹・あぶみあさき*5))という記事がでていました。

現在(2015年9月)、ノルウェーは14日の統一地方選挙の開票日に向けて、各政党の選挙運動が大きな盛り上がりを見せている。選挙期間中といえば、日本では選挙カーでの連呼行為や、候補者の街頭演説、張り出されているポスターや、配布されるビラの印象が強いが、ノルウェーでは異なる活動が多い。驚くことに、戸別訪問や飲食物の提供、子どもを巻き込んだ活動など、日本では禁止されているであろう選挙運動が目立つ。

 

写真もあぶみさんのハフポストの記事のものです。市民が集う場所にカラフルでかわいいデザインの選挙小屋やスタンドが並び、これが政党と市民がコミュニケーションするための効果的な場となっているのだといいます。

日本以外の国では選挙活動に制限があまりなく、自由に楽しみながらできるのです。日本の選挙は全く面白くありません。できることがほとんどないからです。

このように投票率が低い、下がるというのは自然にそうなったのではなく、小選挙区制、政治教育、公選法による「べからず選挙」という3点セットによるものなのです。

よく、「国民の意識が低い」「政治に関する関心がない」と言われますが、自民党が自分たちの政権を維持するために、国民が選挙や政治に関心を持たないよう、批判的な目で見ないように妨害していたんですね。

東京五輪・パラリンピック組織委員会会長だった森喜朗氏は「失言」で有名ですが、総理のとき(2000年)、総選挙の遊説中、記者会見で「(無党派層は)寝てしまってくれればいい」と言い放ちました。自民党政治に批判的な人は選挙に行くな、政治や選挙に関心をもつな。これが彼らの本音です。
 
しかし、この3つ妨害を乗り越えて、選挙に行かない人たちが行くようにならないと、いつまでも悪政から逃れることはできません。だから「選挙に行こう!」という呼びかけが大切です。

次は、自民党政権(自公政権)によって続いてきた社会保障・医療の改悪についてお話します。


*5)著書に『北欧の幸せな社会のつくり方』かもがわ出版、2020年、がある。

 

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