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2022-02-08

交通不便地域をどうやってなくすか 2021年12月議会 一般質問

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以下は発言原稿に基づくもので、正式な議事録によるものではありません。

1.府中町の地域公共交通の現状

府中町における地域公共交通の現状と 交通不便地域対策について質問します。

1-1 「住み続けたい街」

今年11月、大東建託が広島県に住む成人を対象に実施した居住満足度調査において府中町が「住み続けたい街」ランキングの1位となりました*1)

ネットに掲載された記事には「どこ〔へ〕行くにも歩いて行けるので、とても助かっている。スーパー、ドラッグストア、図書館、イオンモールなどすべて車なしでも歩いていける距離にあり、運動にもなって、気に入っている」(40歳女性)、「住みやすい。商業施設が近くて便利。将来子どものことを考えると、子育てに力を入れている地域で安心」(27歳女性)という声が載せられていました。

大東建託のホームページを見ましたところ、中国5県のなかでも「住み続けたい街」で2位(1位は岡山県総社市)、「街の幸福度」が1位、「街に誇りがある」で2位(1位は海田町)、「街に愛着がある」が1位、「街の住みここち」も1位です。

*1)「広島県の「住み続けたい街」ランキング」ITmedia ビジネスオンライン2021年11月04日。

1-2 交通の利便性が高い 

どの調査項目でも1位か2位です。このように上位に選ばれる理由はさまざまあると思いますが、その主たるものの一つに交通の利便性の高さを挙げることができます。

2019年に作成した『府中町地域公共交通網形成計画』(以下『形成計画』と略記)から、地域公共交通の現状をみてみましょう。

鉄道 

まず鉄道です。

府中町民がよく利用している駅は、向洋駅、天神川駅(いずれもJR山陽本線・呉線)と矢賀駅(JR芸備線)があります。向洋駅および天神川駅では、広島駅方面に1 日123 便の電車が運行し、矢賀駅では、広島駅方面に1 日46 便の電車が運行しています。向洋駅と天神川駅の2017年度の1 日あたりの乗車人員は、1 万人を超えており、広島県内でも利用者の多い駅となっています。

路線バス

つぎに路線バスですが、府中町内には、広島電鉄、広島バス、芸陽バスの3社の民間路線バスが運行しています。広電バスの①温品線、②府中ニュータウン線、③府中山田線、④府中永田線、の4路線。広島バス深川線(矢賀経由)、向洋駅(マツダ本社前)などに停車する8路線*2)。

イオンモールシャトルバス(イオンモール~広島駅新幹線口)も含めますと合計14路線が広島駅、広島バスセンター、広島県庁や広島市役所等にアクセスし、町内のほとんどのところからバスを乗り換えることなく広島市中心部へ行くことができます。

*2)広島電鉄:①広島・熊野線(向洋・海田経由)、広島バス:②宇品線、芸陽バス:③阿戸線、④南幸線、⑤三迫線、⑥畑賀線、⑦広島・瀬野・西条線(中野東七丁目行)、⑧広島・瀬野・西条線(八本松駅行き)

つばきバス

一般路線バスを補完するかたちで「つばきバス」が運行され、町の南北と町内公共施設を結び、ワンコイン(100円)で乗れるコミュニティバスとして、平成15(2003)年10月から運行しています。

今年度、イオンモールを起点とし南エリアから北エリアを回る右回り路線と、北エリアから南エリアを回る左回り路線へとルート変更しました。平日は、右回りが7便・左回りが6便、土・日・祝が、右回り、左回りとも6便運行。近隣の町は土日運休ですが、「つばきバスは土日も運行していて助かる」という声を聞いております。

利用の目的は、約6割が買い物で、ついで医療機関への通院となっています。「つばきバス」の年間利用者数は、運行開始以来順調に増加し、近年は18万人台から19 万人台で推移しています。

タクシー
タクシー会社は町内に3社の事業所*3)がありますが、タクシー事業の経営環境は、大変厳しい状況にあります。全般的な利用減に加え、昨年度から今年度にかけての新型コロナウィルス感染症対策に伴う外出自粛や飲食店等の時間短縮営業等により激減した需要が回復しておらず、深刻な状況にあります。 

*3)ゼイ・アール、つばめ交通、広島第一交通。

以上が、『形成計画』から拾い出し、私なりに整理した町内の公共交通のあらましです。

1-3 公共交通に不満のある地域

府中町は全体として公共交通が発達していて、とりわけ広島市内中心部へのアクセスがよい。交通の利便性が高いと評価できます。

『形成計画』第4章にあります、住民アンケート調査*4)にも、「公共交通の利用しやすさの満足度」は、町全域では約7 割の人が「満足」「どちらかと言えば満足」と回答していることにも、それは表れています。

しかし、不満を抱えている人も当然いるわけです。

このアンケート調査報告においても、「一方で、桜ヶ丘、清水ヶ丘、みくまりといった丘陵団地においては、『不満』『どちらかと言えば不満』と回答した人が50%を超えて」いると把握しています

調査報告は「外出の不便」という項目を立てて、次のように述べています。

桜ヶ丘、清水ヶ丘、みくまりでは、バス停までの距離や高低差があるため、7~8 割の方が公共交通が利用しにくいことで外出に困ることが「よくある」「時々ある」と回答。「よくある」と回答した人のうち約3割が、外出に困ったとき「外出を控える」と回答し、外出機会の減少の原因となっている。

桜ヶ丘、清水ヶ丘、みくまりといった丘陵団地において、「不満」や「外出に困難がある」ことがまとまった数として結果に出たわけですが、山田や柳ヶ丘などの一部地域でも事情は同じだと思います。

私は宮の町に住んでいますが、宮の町も全体としては便利だと思いますけれども、坂がきついところもある。いずれも高低差が外出の障害になっているわけです。
自家用車があれば、さしたる困難はないのでしょうけれども、いつまでも運転し続けるわけにはいきません。

*4)「地域公共交通の利用実態・ニーズ把握」。

1-4 高齢化社会のなかで

近年、高齢者の交通事故がよく報道されます。

先月(11月17日)も、大阪狭山市内のスーパー敷地内で乗用車が歩行者を次々とはねるという事故が起き、容疑者は89歳でした。容疑者と40年来の友人という70代の男性は「早く運転をやめさせればよかった」と悔い、1年ほど前から、お互いに「事故を起こす前に、そろそろ運転をやめないといけない」と話していたと言います*5)

内閣府の令和2年版『交通安全白書』は、高齢運転者の交通事故の状況について特集しています。

2019年の75歳以上及び80歳以上の免許保有者数は、平成21年と比較して、75歳以上は約1.8倍、80歳以上は約1.9倍となっており、ともに増加を続けています。75歳以上人口は、2020年は約1900万人でしたが、2050年代まで増え続け、2400万人台になると推計されています*6)

75歳以上及び80歳以上の高齢運転者による死亡事故件数は,2009年にはそれぞれ422件,180件であったものが,2019年には401件,224件となっています。免許人口10万人当たり死亡事故件数の推移は、過去10年間減少傾向にあります。

75歳以上の高齢運転者による死亡事故は、75歳未満の運転者と比較して、車両単独による事故の割合が高くなっており、具体的には工作物への衝突や道路の外へ出てしまう「路外逸脱」の割合が高いという特徴があります。

また、75歳以上の高齢運転者は、操作ミスによる死亡事故が28%と最も多く、このうちハンドル操作のミスが13.7%。ブレーキとアクセルによる踏み違い事故は、75歳未満が死亡事故全体の0.5%に過ぎないのに対し、75歳以上の高齢運転者は7.0%と高い*7)

現在は高齢運転者による死亡事故が必ずしも多いわけではないのですが、高齢者が増えてゆけば事故も多くなることが予想されます。

*5)「朝日新聞」2021年11月17日付
*6)内閣府『令和3年版高齢社会白書』
*7)踏み間違い事故については、自動車の構造上の問題を指摘する見解もある。

1-5 免許返納をめぐって

高齢化によって、①視力や聴力の低下、②認知機能の低下、③運動機能の衰え、④思い込みが強くなる、といった傾向が強くなり、事故が起きやすくなる。それゆえ、近年免許の自主返納を促す様々な取り組みが進んでいます。

府中町議会でも免許返納についての議論が何度かありました。2016年度の12月議会(第7回定例会)において、免許返納に対して公共交通割引券や地域振興券のようなものを考えたらどうかという繁政秀子議員の質問に対して、坂本雅司生活環境部長が次のように答弁しています。

「免許を返納いたしましても、日々の暮らしの中で買い物へ行ったり、それから病院へ行ったりなど、みずから足を動かして移動しなければなりません。こういった一人ひとりのライフスタイルを助成制度で補助していくということは、一過性、返納時にだけ助成するものでは意味がありません。生活を支える恒常的な制度でなければ意味がないと考えております。

単に事故防止の観点ではなく、府中町におきましては、交通弱者と言われる方、あるいは町の東北部のちょっと不便な場所、そういったところの環境を整えるという意味で、事故防止のみでなく府中町の交通という視点を加えた施策、そのためには運転することにかわる交通アクセスの構築が最優先だと考えております」

佐藤(信治)町長も「今日的な課題としましては、……東北部の団地のその末端部分というんですか、そういう公共交通が行き届いてないところの問題、それからやはり社会的に高齢化しておるということですね、それと地形上の理由、坂が多いというようなところは、やはり今日的課題として、府中町として、もう一つ磨きをかけるためにはそこをどうしたらいいんかということは、今後取り組んでいくべき」だと答弁されています。

町内の一部に公共交通が行き届いていない地域がある。坂の多い丘陵地帯に住んでいる高齢者はなかなか免許と自動車が手放せないのだと思います。

そこで伺います。

①「生活を支える恒常的な制度」が必要であり、「運転することにかわる交通アクセスの構築が最優先」だと5年前に生活環境部長が答弁されており、大変重要な観点です。

この観点は現在も引き継がれていると思いますが、いかがでしょうか。

建設部長

「公共交通」「地域公共交通」は、住民の生活に必要な移動を支える重要な役割があり、府中町として、便利で活力と賑わいにあふれるまちづくりを進めるためには、地域公共交通サービスを恒常的に維持・確保していく必要があることから、府中町地域公共交通網形成計画を策定し、行政、交通事業者、住民が相互に連携を図り、協力しながら望ましい交通体系を構築していくものとしています。

本計画では、地域公共交通の課題の一つとして、「高齢者の利用に配慮した地域公共交通の見直し」が必要であることをあげており、「誰もが『おでかけ』しやすい地域公共交通」の構築に向けて、具体的な施策として「公共交通不便地域における公共交通サービス水準の向上」や「地域ニーズを踏まえた公共交通ネットワークの充実」を図るとともに、「高齢者の外出機会の確保」についても推進していくものとしています。

2.交通権と交通政策基本法

つぎに交通権と交通政策基本法について伺います。

交通政策基本法」は2013年に制定されました。

この交通政策基本法には前史があって、2002年と2006年に民主党と社会民主党が「交通基本法」案を提出しています。2009年に民主党政権ができましたが、三度めの「交通基本法案」は閣議決定の3日後に東日本大震災が起き、同年11月の衆議院解散により廃案。このような困難な過程をへて、第二次安倍政権のもとで「交通基本法」ではなく「交通政策基本法」が成立しました。

「交通政策基本法」は基本法ですので当然ながら交通に関わるさまざまなことが盛り込まれており、そのせいもあってか目的も漠としたものとなっています*8)。したがってなぜ基本法が求められたかを読み取ることが難しい。

*8)第一条 この法律は、交通に関する施策について、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、交通安全対策基本法(昭和四十五年法律第百十号)と相まって、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。

ですから原点である、一番はじめの「交通基本法案」を振り返ってみることが必要です。民主党の細川律夫衆議院議員が次のように趣旨説明しております。

 この間の規制改革によって、交通運輸部門の経済的規制はほぼ撤廃され、交通運輸の分野も多くは市場原理にゆだねられることとなりました。しかし、安全の問題、環境への負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーなど、市場原理では解決できない点も多く、規制が緩和された今、それらを包括した新たな指導原理が求められています。その答えが、私たちが提案いたしました本法案であり、中でも本法案を貫く移動に関する権利の規定であります。生存権と自由権の両面から移動に関する権利を明確にすることによって、利用者の立場に立った施策を進める基礎を築くとともに、縦割り行政の弊害をなくし、総合的、計画的に交通政策を推進し、また環境に十分配慮した交通政策を推進すること、これが本法案を策定した目的であります*9)*

9)第156国会・衆議院国土交通委員会、2003年7月15日

安全の問題、環境への負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーに対応するために国民の移動する権利、交通権とも言いますがこれを保障しようという試みだったわけです。

2010年に開かれた国土交通省第2回交通基本法検討小委員会で配布された資料には「交通基本法制定の意義」について次のように書かれています。

「交通権」保障の問題は、今後のわが国の交通政策の大きな柱になるべきと考える。近年、高齢者・身体障害者の社会参加の推進および高齢化社会の進行に伴うバリアフリー化の一層の推進、規制緩和に伴う地方鉄道・バス等の生活路線廃止に歯止めをかける等、いわゆる「移動制約者」が移動を確保することについての要望が極めて高まりつつあるからである。

移動権あるいは交通権*10)というものは、交通政策基本法ではうたわれておりませんが、高齢者、障害者、妊産婦など交通弱者と呼ばれる人たちが交通機関にきちんとアクセスできるようにしなければならないという考え方は、現在の交通政策基本法にも受け継がれています。

*10)交通権学会は「交通権」について次のように定義している。
 交通権とは「国民の交通する権利」であり、日本国憲法の第22条(居住・移転および職業選択の自由)、第25条(生存権)、第13条(幸福追求権)など関連する人権を集合した新しい人権である。すなわち、現代社会における交通は、通勤・財貨輸送などの生活交通はもちろん、物流・情報など生産関連交通、旅行などの文化的交通、さらに災害救助の交通など広範にわたるため、国民が安心して豊かな生活と人生を享受するためには交通権の保障と行使がかかせない。もちろん交通権の行使には、交通事故や交通公害など他者の権利の侵害を含まないし、長距離通勤などの苦役的移動からの解放も含まれる。

交通政策基本法第17条は次のように述べています。

国は、高齢者、障害者、妊産婦その他の者で日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受けるもの及び乳幼児を同伴する者が日常生活及び社会生活を営むに当たり円滑に移動することができるようにするため、自動車、鉄道車両、船舶及び航空機、旅客施設、道路並びに駐車場に係る構造及び設備の改善の推進その他必要な施策を講ずるものとする。

そこで伺います。

②ここにありますように、交通弱者といわれる人たちに「日常生活及び社会生活を営むに当たり円滑」な移動を保障することが極めて大切だと考えるわけですが、町としてこの「交通政策基本法第17条」についての見解をお聞かせください。

建設部長

地域公共交通網形成計画の目標の一つである「誰もが『おでかけ』しやすい地域公共」は、高齢者だけでなく、その他交通弱者を含めた全ての方を対象として、日常生活において自由に安心して「おでかけ」できることを目指しています。

計画の目標達成には、「交通弱者といわれる方々の円滑な移動」についても大変重要であると考えており、これは、交通政策基本法をはじめとした国の方針に沿ったものであると認識しています。

3.町内の「公共交通不便地域」

『府中町地域公共交通網形成計画』は町内を、①幹線交通充足地域、②地域内交通補完地域、③公共交通不便地域に準ずる地域、④公共交通不便地域、⑤公共交通空白地域、という5つエリア設定をしています。

これらのエリア設定について全国統一の基準はなく、各自治体がそれぞれの地域の特性に応じて設定しているようです。『形成計画』にも紹介されていますが、福岡市の場合は、

・公共交通空白地…バス停・鉄道駅から概ね1km以上離れた地域
・公共交通不便地…バス停から概ね500m以上離れ、鉄道駅から概ね1km以上離れた地域(公共交通空白地を除く)
・公共交通不便地に準ずる地域…次の1、2のいずれかに該当する地域
 ①バス停・鉄道駅との高低差が概ね40m以上の地域
 ②バス停・鉄道駅までの経路について、迂回を要する、一定の勾配がある等、公共交通が不便と考えられる地域であって、地域住民が生活交通の確保に向けた協議会を組織している地域

となっています。

東京都世田谷区では、鉄道駅からの距離が「500メートル」、バス停からの距離が「200メートル」より遠いエリアを「公共交通不便地域」と定義し、神奈川県平塚市は、バス停までの距離325m(徒歩で約5分以内)に含まれない地域を交通空白地域とし、交通空白地域ではないが、バス運行本数の少ない(運行間隔が概ね1時間に1便未満)を地域交通不便地域としています。

利便性の高い自治体ほど「不便」と感じる水準も高いようであります。

そこで質問です。

③当町の5つのエリアはどのように分類したのでしょうか。その基準を教えてください。

建設部長

府中町の地域公共交通のサービス圏域は、JRの利用圏(駅から半径1km以内)と路線バス、つばきバスの利用圏(バス停から半径500m以内)が相互に補完し、市街地をカバーしており、公共交通の利用環境は非常に優れていると思っております。

しかし、地域公共交通網形成計画では、「誰もが『おでかけ』しやすい地域公共交通」を目標とし、その施策として「公共交通不便地域における地域公共交通サービス水準の向上」に取り組んでいくこととしており、本計画の中で、町の地域公共交通ネットワークの現況に応じ、駅やバス停までの距離や高低差、「地域公共交通ハンドブック」や「バスサービスハンドブック」等の指針の基準を参考に町域を5つのエリアを設定しております。

まず、府中町は、駅または路線バスのバス停より半径500mの範囲が大半を占めており、これを「幹線交通充足地域」として設定いたしました。人口割合では90%以上となります。

つぎに、「地域内交通補完地域」として、つばきバスのバス停から半径300mの範囲内とし、つばきバスでサービスを補完している地域、みくまり・喊ケ丘・石井城・柳ヶ丘・鹿籠の一部があたりますが、この人口割合は8%であり、先ほどの「幹線交通充足地域」と合わせますと町人口の98%は公共交通を利用しやすい地域になります。
 

そして、府中町が公共交通不便地域の解消に取り組むこととしている二つの地域として、平面的な距離はサービス利用圏にあっても駅・バス停までの高低差が25m以上ある厂公共交通不便地域に準じる地域」と、駅から半径500m以上またはつばきバスのバス停から300m以上離れている「公共交通不便地域」で、桜ヶ丘・清水ヶ丘・みくまりの一部が該当します。

最後に「公共交通空白地域」として、駅から半径lkm圏外、バス停まで半径500m圏外の地域で、市街化調整区域の山中となるため人口割合は0%となります。

 

4.新しい交通施策をめぐって

公共交通不便地域をどうやって解消するのか。方法はいろいろあると思います。

現在、社会福祉協議会が町内会と協力して運行している「いくでえ」、新たに試行運転が始まっているデマンド・タクシーのほかに、他自治体で実施されているタクシー利用への助成、グリーン・スローモビリティなどがあります。

4-1 いくでえ

移動支援事業「いくでえ」は、高齢者が住み慣れた地域で自立して暮らし続けることができるよう、外出を支援し、社会参加を促進することを目的として、平成25(2013)年6月から実施されています。府中町社会福祉協議会と町内会とが協力し、桜ヶ丘、清水ヶ丘、城ヶ丘、御衣尾の4町内会に加入している概ね75 歳以上の方が対象です。

月曜日が桜ヶ丘、火曜日と金曜日が清水ヶ丘、水曜日は城ヶ丘と御衣尾を運行。1日に1往復それぞれの地域から「サンリブ府中」(ショッピングセンター)まで運行*11)。府中町社会福祉協議会が所有する定員8人の車両を町内会からのボランティアが運転し、利用料金は無料です。

*11)月・水・金=往路便9:30 発、復路便12:30 発。火=往路便13:30 発、復路便16:30 発。

利用された方の人数を、コロナの影響がない2019年度でみますと、桜ヶ丘が8.3人、清水ヶ丘の火曜日が7.4人、金曜日が9.4人、城ヶ丘・御衣尾が4.4人、全体の平均が7.3人となっています。これは往復を合わせた人数ですので、実際の利用者はその半分。桜ヶ丘と清水ヶ丘が4人、城ヶ丘・御衣尾が2人、全体の平均が4人程度です。「いくでえ」をよく利用されている清水ヶ丘の方が「金曜日午前の便は一杯のことが多いが火曜日の午後の便は利用者が少ない。私たち夫婦2人だけのことがある」と言って心配をされていました。

「いくでえ」は大変重要な役割を果たしていますが、3つの困難に直面しています。

第一に、利用者が少なく利用する人が固定されていること、第二に自動車が更新の時期に来ているけれども購入する予算的めどがたたないこと、第三に運転手の確保も困難になっていることです。2016年度から1年以上にわたって城ヶ丘は運転手の手配がつかないため運行できませんでした。

こういったこと以上に私が問題だと考えるのは、町内会の方にボランティアで運転を任せていることです。事故が起きたとき、保険に入っているでしょうから金銭については償うことができます。しかし万が一、生命に関わる事故、障害が残るような事故が起きたらどうなるのでしょうか。善意でボランティアを引き受けていただいた方に重い責任を負わせるわけにはいきません。運転はアマチュアではなくプロに任せるべきです。

4-2 デマンド・タクシー

次にデマンド・タクシーについてです。

今年(2020年)8月からデマンド・タクシーの試行運転が始まっています。デマンド型交通は、路線バスなど定期路線交通とタクシーの中間に位置します*12)。定期路線交通は、利用者の有無にかかわらず、予め定められたルートを定められた時刻に運行し、利用者は運行ルート上に設置された停留所で乗り降りします。

*12)正式にはDRT(Demand Responsiv Transport)、需要応答型交通システムという。

デマンド型交通は、利用者の予約があった場合に運行するという特徴があり、運行方式や運行ダイヤ、さらには発着地の自由度の組み合わせにより、多様な運行形態があります。2006年の道路運送法の改正により、デマンド型交通も道路運送法に基づく乗合事業に位置づけられ、一般的には地域公共交通会議で協議がととのうことが運行許可の条件となっています。

デマンド交通のメリットとしては、①路線バスの運行ルートから外れている人にとっても生活の足を確保できる、②利用者のニーズに対して柔軟に対応できる、③路線バスよりも自治体の財政負担を軽減できる、ことがあげられます。

デメリットとしては、①バスにはない予約の手間が利用者の負担になる、②利用者が増えると対応できない場合がある、③一人あたりの輸送費はバスよりも高くなる、ということがあるようです。

また、公共交通空白地域の解消のために導入した場合、「見込みに比べ利用されていない」とするケースが多いと言われています。

デマンド・タクシー事業の成否は、乗客数を安定的に維持していくことにかかっているわけです。利用者を増やすための取り組みについて、山口(議員の質問に対して「周知徹底する」「地域の声を聴く」という答弁*13)がありましたが、改めて伺います。

*13「町内会に利用状況を随時お知らせし、また、初めてデマンドタクシーを利用するにあたって、不安をお持ちの方が多いことを踏まえ、地域での声掛けをお願いするなど地域と連携し、地域の声を聴きながら事業を進めてまいります」

④利用者をどう広げ、安定的に乗客数を維持するのかに関して、周知徹底以外に考えていることはないでしょうか。

都市整備課長

清水ヶ丘、桜ヶ丘地区のデマンドタクシーの試験運行については、府中町地域公共交通網形成計画に基づく「公共交通不便地域」について、国と協議のうえ、公共交通協議会の承認を得て8月から運行し、4か月が経過したところです。

利用者数は、8月は174人で、11月には速報値で266人と伸びている状況ですが、利用者数をさらに広げ、安定的な乗客数を維持するためには、やはり公共交通を使われる地域での活動や町との連携が必要だと考えています。

現在、デマンドタクシーの利用ニーズを調査するため町内会にアンケート調査を依頼していますが、より多くの方に利用していただけなければ、財源の確保も難しくなり、事業の継続も厳しくなります。

乗客数の維持は、安定した公共交通基盤の維持にも繋がります。「地域公共交通」だけでなく、「公共交通」全体の課題として、人口減少やコロナ渦における「新しい生活様式」による利用者の減少、事業者側の運転者など労働者不足など、社会情勢の変化にも対応し、公共交通協議会のなかでしっかりと取り組んでいく必要がございます。

⑤現在は清水ヶ丘、桜ヶ丘での試行運行ですが、その結果を踏まえて他地域へ広げる考えはありますでしょうか。

先ほどの建設部長の答弁のとおり、町人口の98%は基本的に公共交通を利用しやすい地域でございます。デマンドタクシーは「公共交通網形成計画」において「公共交通不便地域」として設定した清水ヶ丘、桜ヶ丘地区について、「公共交通不便地域」の解消を図ることを目的として、試験運行を行っているところです。

現計画においては、「公共交通不便地域」以外に新たにデマンドタクシーを導入する予定はございませんが、今後、社会情勢の変化などにより「つばきバスよりも他の公共交通モードを提供することが望ましいエリア」が生じるようであれば、公共交通協議会において検討していきたいと考えます。

なお、つばきバスも含めてデマンドタクシーなどの「地域公共交通」は、鉄道や路線バスなどの「公共交通」を補完して運行する形で、公共交通全体のバランスを保っています。「地域公共交通」のサービス水準を上げすぎますと、結果的に「公共交通」のサービス水準の低下を招く恐れもあります。公共交通協議会では、そのことも踏まえながら、安定した地域公共交通の推進を図ってまいりたいと思います。

4-3 タクシー乗車への助成

第3にタクシー乗車への助成です。

昨年(2020年)2月、香川県三豊市*14)で実施されている「福祉タクシー・高齢者運転免許自主返納支援事業」について視察し説明を伺いました。

*14)香川県の西部に位置し、面積222.70k㎡、人口60,719人、22,930世帯(2021年12月1日現在)。一般会計予算は約330億円(2019年度)。

この事業は「三豊市に居住する運転免許証を有しない高齢者に対し福祉タクシー利用券(以下、利用券)を交付することにより、高齢者の交通手段の確保と経済的負担の軽減を図り、もって福祉の増進に寄与すること並びに交通事故の減少を図るため、高齢ドライバーの運転免許証の自主返納を支援することを目的とする」ものです。

対象者は毎年4月1日現在において三豊市に1年以上在住している満70歳以上で、①運転免許証を保有しない、②当該年度に運転免許証を自主返納した、③当該年度に運転免許証の有効期間が失効した、のいずれかに該当する人です。

対象者には、1年につき500円の利用券16枚(8000円分)を交付し、使用期限は年度内となっています。この利用券は、コミュニティバス回数乗車券(利用券交付対象者用)に交換して使用することもできます。

この制度ができるまでに、「高齢者運転免許証自主返納支援事業」(担当:総務課)と「福祉タクシー助成事業」(担当:福祉課)が実施されていました。

「高齢者運転免許証自主返納支援事業」は、市内に居住する満70歳以上で、自主返納した人に対して、①コミュニティバス回数乗車券、②市内温泉利用券、③三豊市商品券(いずれも5000円相当)のうち、2つを一人一回限り交付するというものです。

「福祉タクシー助成事業」は、高齢者の交通手段の確保と経済負担の軽減を目的とし、80歳以上に対して500円の利用券16枚(8000円分)を交付してきました(利用者3000人)。利用者にアンケートをとったところ、「交通弱者を優先した方がよい」という意見が多く、福祉タクシーの対象者を運転免許証を持たない70歳以上の人*15)とし、利用券を毎年度交付する現在の「福祉タクシー・高齢者運転免許自主返納支援事業」になったのです。一回限りのプレゼントから継続的支援となって免許の返納者も増えたと伺っています。

*15)対象者7,288人、登録者5,451人(2019年12月現在)

当町を含め、タクシー事業の経営環境は、大変深刻な状況にあります。三豊市のように、タクシー利用券を免許のない高齢者に交付するという施策は、交通弱者を減らすとともに、タクシー事業者への支援にもなります。町内全域の免許のない高齢者が対象となりますので、不公平感も生じにくいというメリットもあります。

そこで質問です。

⑥免許を持たない70歳以上の高齢者にタクシーやバスに使えるチケットを毎年配布することによって、交通不便地域に住む住民を含む交通弱者対策をする方法もあると思います。町としての見解をお聞かせください。

都市整備課長

連日のように、高齢者の事故がニュースで報道されており、高齢者の免許返納と運転することに変わる「手段」の確保は社会的大きな課題であると考えております。

バスやタクシーなど公共交通が充足していない地域では、その「手段」の確保に苦慮している自治体も多くあると思いますが、府中町においては、その「手段」の一つとして「公共交通」は充実しており、このことから「交通利便性」が高く中国地方で一番「住みここちがよいまち」に選ばれているものと思います。

議員ご指摘の高齢者へのサービスチケットの配布など、「公共交通」を利用した様々な課題への取り組みにつきましては「地域公共交通網形成計画」において、「高齢者の外出機会の確保」に取り組むこととしており、担当部署や関係機関との連携をしっかり図り、誰もが「おでかけ」しやすい地域公共交通の構築を図ってまいりたいと思います。

 

4-4 グリーン・スローモビリティ

第4にグリーン・スローモビリティです。

グリーン・スローモビリティは、時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービスのことで、略してグリスロと言います。4、5人乗りはゴルフカートをイメージしていただけるといいと思います。4人乗りから22人乗りまでの電動車があり、11人以上のものは中型免許が必要です。

グリーン(Green)は、排ガスを出さない、環境に優しいエコな移動サービスを意味し、スロー(Slow)はスピードが遅いことを意味しています。重大事故が起きにくく、生活道路に向いていて景色を楽しむこともできる。

国土交通省が作成した『グリーンスローモビリティの導入と活用のための手引き』は、「高齢化が進む地域での地域内交通の確保や、観光資源となるような新たな観光モビリティの展開など、地域が抱える様々な交通の課題の解決と、地域での環境に優しいエコなモビリティの普及を同時に進められます」*16)と述べています。

車両が小さいことも特徴です。「7人乗りカートであれば、同じ乗車定員の一般的な乗用車の約8割の大きさです。そのため、これまでコミュニティバスが通れなかったような道路でも活用でき」ます*17)

*16国土交通省総合政策局環境政策課『グリーンスローモビリティの導入と活用のための手引き』2021年、1頁
*17同、5頁

府中町にうってつけの交通手段ではないでしょうか。低速で走るグリスロは長距離は向かず、数百メートルから1キロメートル程度の移動に向いているといいます。

町内には、路線バスとつばきバスの停留所が随所にあります。公共交通不便地域あるいは公共交通不便地域に準ずる地域は高低差はあるものの最寄りのバス停までの距離はさしてない。バスの時刻にあわせてこれらの地域とバス停を往復することによって「不便」を軽減することができるのではないでしょうか。山田4丁目の一部ですが、道が細くてタクシーを呼んでも来てくれないという話を聞きました。そういう地域もグリスロなら通行が楽で、山田行きバス終点かニュータウン行きの宮の町5丁目のバス停に接続することができます。

そこで質問です。

⑦グリーンスローモビリティは以上のような特徴があります。デマンド交通とともに、グリスロなど多様な公共交通モードへの展開についてどのようにお考えですか。

都市整備課長

グリーンスローモビリティは、時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービスで、その車両も含めた総称です。導入により、地域が抱える様々な課題の解決や低炭素型交通の確立が期待されています。

国は、人口減少化、高齢化のほか、地域の活性化や地球温暖化など社会や地域の課題に対応していくため、議員ご指摘のグリスロのほか、AIオンデマンド交通や超小型モビリティ、そして自動運転による交通サービスなどの新たな輸送サービスの推進も図っており、今後の公共交通の方向性といたしましては、地域の課題や目的にあった、より細やかな公共交通サービスを新たな交通モードやシステムを加え、展開していくものと思われます。

府中町においても、国の動向に留意し、新たな公共交通モードの展開については、しっかりと検討、取り組んでまいりたいと考えています。

4-5 クロスセクター効果

最後にクロスセクター効果について伺います。

これまで、利用者数や収支などで地域公共交通を評価することが多かったわけですが、地域公共交通が人々の移動を支えることで、多様な活動に及ぼす効果を算定し総合的に分析しようする試みがあります。

この「交通領域にとどまらず福祉領域等他領域にまで射程に置いて行う費用対効果分析」のことを「クロスセクター・ベネフィット(Cross-Sector Benefit)分析」と呼んでいます*18)

たとえば、高齢者は外出機会が失われると寝たきりになりやすいと言われています。寝たきりの高齢者が増えると、国、自治体、被保険者の介護保険料負担が増えることにつながります。反対に、高齢者の移動が公共交通によって確保されれば、寝たきりの予防につながり、介護保険など福祉の負担を軽減させることに繋がるわけです。

*18大辻統「交通分野におけるモビリティ対策の今後のあり方について-新たな視点の導入の試み-」東京大学大学院法学政治学研究科公法選考論文、2005年
 
そこで最後の質問です。

⑧公共交通をそれだけで評価するのでなく、福祉分野に与える影響も考慮し、交通と福祉を総合的に進めていくことが必要だと考えますが、町の認識はいかがでしょうか。

都市整備課長

「公共交通」は、「買い物にいく」「病院に行く」「通勤通学に使う」など、基本的には「様々な目的」を持って利用されます。

府中町では公共交通が充実しており、なかなか認識しづらいですが、仮に公共交通が廃止されると、その目的を達成するための移動手段がなくなるため、各目的に対し、個別対応が必要になります。

公共交通があることで交通分野以外の施策費用が削減され、社会全体で見たときに支出が抑制されることを、「公共交通の有する多面的な効果」「クロスセクター効果」といいます。

現在、町としましては、公共交通サービスの提供という面では、公共交通不便地域の解消ができれば、充足されるものと考えていますが、福祉分野に与える影響などを考慮し、将来にわたって公共交通サービスの量と質を維持・確保していくことは重要であると考えています。

そのうえで、タクシー利用を含め、日常生活において公共交通サービスを利用することにハードルが生じている方については、福祉分野と連携を図り、そのハードルを解消していくことも必要であると考えています。

町では、地域公共交通網形成計画に基づき、ひろしまで一番「おでかけ」しやすいまち の構築を目指し、様々な課題についても公共交通協議会の場で話し合い、円滑な地域公共交通事業を推進して参りたいと考えています。

 

《3回目》

 

ふたみ議員 

交通の利便性が高い府中町のなかの不便地域をどう減らし、なくしていくのか。答えは一つではないと思いますし、様々な施策を組み合わせていくことも必要でしょう。

また、便利と不便は相対的な問題でもあり、中山間地ならば不便と思われないような条件でも府中町では不便と感じる。便利になればなるほど「不便」と感じる水準が高くなるわけです。さらに、若ければさほど不便でなくても、高齢化によって不便となってゆくという問題もあります。

(2001年)6月議会で質問した「立地適正化計画」のように、「不便ならば便利なところへ引っ越せばよい」という考えもありますけれども、町民一人ひとりの交通権を保障し、どこに住んでいても人間らしい生活ができるようにすることが大切だと思います。

引き続き、不便地域をなくすために多様な施策、公共交通モードを検討・実施することを要望して私の質問を終わります。


《参考文献》
島田勘資「交通政策基本法の制定について」『運輸政策研究』2014年春号、vol17
山越伸浩「交通基本法案 ~地域公共交通の確保・維持・改善に向けて~」『立法と調査』2011年5月、№316
国土交通省「交通基本法の制定と関連施策の充実に向けた基本的な考え方(案)」2010年6月
安部誠治「交通権のの意義とその必要性」『国際交通安全学会誌』2012年6月、vol34.№1
可児紀夫「地域交通における交通権の保障と国の役割」『立命館経営学』2009年1月
国土交通省中部運輸局『デマンド型交通の手引き』2013年
鎌田実「グリーンスローモビリティ(グリスロ)のさらなる発展に向けて」 国土交通省ホームページ
近藤宏一「地域公共交通をめぐる新しい状況と交通権」『住民と自治』2020年7月号

ふたみ伸吾 ほっとらいん

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