ちょっと待った!ふるさと納税
●税金が他に流れる
昨年末の朝日新聞に、「ふるさと納税赤字、自治体の25%」という記事があり、2021年度、府中町は全国の町村のなかで赤字が2番目に多いと紹介されていました。本来であれば、町の収入となる一億3700万円がよそへ行ってしまったということです。ただし、75%は国から補てんされますので、約3400万円の損失となります。
「ふるさと納税」は、個人が自治体に寄付をすると特産品などの返礼品が受け取れ、寄付した金額の一部が所得税と住民税から控除される制度です。
返礼品は寄付額の3割にあたる額まで認められています。府中町から全国の自治体に出て行った一億3700万円のうち、約4千万円は返礼品として寄付した人のものになります。「さとふる」など「ふるさと納税」を仲介するサイトに手数料も払わねばなりません。ですから、府中町から消えていった一億3700万円の半分ぐらいしか他の自治体の収入増にならない。税金を使ってギフトを送っているようなもの。まったくばかばかしい仕組みです。
返礼品も、「ブランド牛かエビなどの海の幸がないと寄付が集まらない」といわれており、海も酪農もない府中町では努力のしようもありません。全く不公平です。
●高額納税者ほど優遇される
収入が多く、納税額が多い人ほど得になるということも問題です。
納める税金以上は寄付しても控除されません。控除される上限のめやすは独身あるいは共働きの場合、年収300万円なら2万7千円まで、年収500万円なら6万円まで、年収1千万円なら17万2千円まで、年収4千万円なら128万円までです。
返礼品は年収300万円の人なら8千円程度、年収4千万円の人なら40万円程度の商品が受け取れます。金持ちほどお得なんですね。
税には「所得の再分配」といって、格差を是正する働きがあります。しかし、「ふるさと納税」は、所得の多い人ほど優遇され、税のあり方を歪めるものです。
●振り回される自治体
2019年、返礼品は寄付額の「3割以下の地場商品」と改定されます。それまで静岡県小山(おやま)町は、寄付額の4割分のアマゾンギフト券を返礼品とし、全国2位の約252億円を集めました。町の一般会計当初予算の2倍です。
この寄付金で、学校給食無料化、富士山が見える公園の整備、工業団地進出企業への補助金などを実施しました。しかし、制度変更によって寄付は19年度8億円、20年度3億円へと減少。
「給食費の完全無料化は保護者に喜ばれているので続けたいが、中止や縮小、代わりに他分野の削減などの議論が起きるかもしれない」と池谷晴一町長。
「ふるさと納税」を原資に積極的な施策を打っても、制度が変わればたちまち収入を失い大変なことになる。
このように「ふるさと納税」は問題が多い制度です。みなさんの払った税金が他に流出せず、みなさんのために使えるように、本来の姿に戻ることを願います。
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