初心をたずぬべし

議員になって手書きする機会が増え、書くたびに、字の汚さにうんざり、がっかり。ワープロ、そしてパソコンという便利が道具ができて、文章を手書きすることはほとんどなくなった。もちろん、この文章もパソコンで書いている。

半年前のある朝、「そうだ!書道を習おう」と思い立ち、ネットで近所の書道教室を探したのだが、適当なところが見つからなかった。その日、たまたま知人と訪れた先が書道教室だったのだ。そのタイミングの良さにびっくり。これも何かの縁とその場で入門した。

せっかくなので毛筆も習うことにしたが、ペン字以上に汚い。師匠の手本を見ながら書くが、似ても似つかないしろものである。ガマの油売りの口上に、「(ガマガエルを)四面鏡の箱に入れると、ガマは自分の姿の鏡に映るを見て驚き、タラーリタラーリと油汗を流す」とあるが、自分の字を見たときの心境はまさにこれ。書いてはため息をつき、ため息をついては書く2時間である。

師匠は、「これは、取っておいて下さい」と一枚か二枚を選んで、保存しておくよう言う。ああ、上達を確かめるためだなと思って、大きな封筒にしまい込んでいた。

先日のこと、師匠は、「今の作品を3年後、4年後に見たときに、真摯に向き合っていた自分がとてもいとおしくなりますよ」という。

そうか、そういうことだったのか。単に上達を確かめるということではなく、初心にたちかえるために、未熟な作品をとっておく。初心忘るべからず、である。

 

  事窮(きわ)まり勢蹙(ちぢ)まるの人は、当(まさ)にその初心を原(たず)ぬべし

(菜根譚)

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