大江健三郎さんが詞を書いた「『新しい人』に」
大江健三郎さんの詞が合唱曲になっていたなと調べていたら見つかりました。
2004年度Nコン(NHK全国学校音楽コンクール)高等学校の部の課題曲、「『新しい人』に」(作曲 信長貴富)です。
この曲を探した副産物で、格好の解説を立教大学ホームページで発見。
(大江さんには『新しい人よ眼ざめよ』という小説もあります。)
新しい人に
「新しい人」。ノーベル賞作家、大江健三郎が大切にした言葉である。
大江は原爆の悲惨な犠牲を見つめながら、エフェソの信徒への手紙2章15節の「新しい人」にこれからの社会の希望を見出した。
そして、若者たちに敵意を除き、和解をもたらす「新しい人」になるように、「新しい人」を目指すようにと呼び掛けた。
わたしたちの生きる今の世界には「敵意」が満ち過ぎている。価値観や思想、宗教などの違いが激しい敵意を生み出し、それはドミノのように次々と平和をなぎ倒していく。
敵意は一つになることを妨げ、人と人との間でその隔てを高くしている。しかし、聖書はその現実に抗って、敵対する双方が一人の新しい人に造り上げられるとき、平和は実現すると告知する。
「双方が一人の新しい人に」ということはどういうことか。それは敵意を抱き合う者が和解する、ということ以上に、全く新しいものの中に互いの身体を置くということ。聖書の言葉は、単なる願望や理想を語っているのではない。
一つの関係が壊れ終わり、また再び、新しい関係に生き直すために、聖書はただ素朴に、今ここで、あなたに向かって、新しく「新しい人」を生きるようにと求めている。
※本記事は季刊「立教」242号(2017年11月発行)をもとに再構成したもの(以上、立教大学ホームページより)
1. 私は好きだった、
信じることの できる自分が。
人を、生きている世界を、
その未来を 信じると、
私がいう時、
星ほどの数の子供たちが、
信じる、といっているのを感じた。
2. ある日、信じるといえなくなった。
私が生まれる四十年前の夏、
一瞬の光が、
子供たちを、
ガスにしてしまった、と知って。
それから、
信じるといおうとすると、
ガスになった子供たちが、こちらを向く。
ガスになった目で、 私を見ている。
3.いま、私は、
古い 古い 手紙を、教えられた。
争う者らを 和解させる、
「新しい人」が来た、という手紙。
私は、胸のなかでたずねる、
もう一度、「新しい人」は来るだろうか?
世界じゅうの子供たちが、
それぞれの 言葉で、答える。
---きっと来てくれる、心から信じるなら。
「新しい人」に、私は祈っている、
来てください、あなたと働きたい私らの、
いま、ここへ!
※実際には、原爆で人間はガスにはなりません。メタファー(暗喩)だと理解しています。
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