子どもが安心して過ごせる環境づくりについて 2016年第7回定例会 一般質問 (2016/12/13)

(写真は休憩中に撮ったもの。少しにやけています)

(議席番号)7番 二見伸吾です。

「子どもが安心して過ごせる環境づくり」について発言いたします。

今や6人に1人の子どもが貧困のもとで暮らしており、育児放棄も含む、児童虐待の対応数は年間7万件に及んでいます。小中学校で「学級崩壊」「授業崩壊」「いじめ」、不登校児童の増加などの問題も深刻です。

そのようななかで、いま教職員とは違った視点で学校にかかわる「スクールカウンセラー」「スクールソーシャルワーカー」を配置する学校が増えてきました。文科省によりますと、スクールカウンセラーの業務は「児童生徒に対する相談のほか、保護者及び教職員に対する相談、教職員等への研修、事件・事故等の緊急対応における被害児童生徒の心のケア」など、多岐にわたると述べ、「学校の教育相談体制に大きな役割を果たしている」と評価しております。

また、スクールソーシャルワーカーは、児童生徒を取り巻く環境によって引きおこされる問題に対処するため、児童相談所と連携したり、教員を支援したりする福祉の専門家と説明されています。家庭訪問をおこなったり、さまざまな保健・医療・福祉サービスへと導いたり、奨学金制度や就学援助制度、児童扶養手当などの手続きを支援することによって、子どもたちを取り巻く環境、とりわけ家庭に働きかける役割を担っています。

府中町においても、さまざまな困難を抱えているご家庭があり、そういう困難を抱えたお子さんへの学校での対応も大変であると聞いております。「スクールカウンセラー」についてはすでに配置をされ、このたび学校にいていただく日数を増やすそうですが、「スクールソーシャルワーカー」はまだ配置がされていません。県とも協議して、小中学校にスクールソーシャルワーカーを配置すべきです。

ソーシャルワーカーについては厚生の関係になると思いますが、配置の必要性についてどのようにお考えですか。町として配置するおつもりはありますか。町としての考えをお伺いします。

さて、次の質問です。

私は総務文教委員会に属しており、「一般質問を通告するときは、当該議員が所属する常任委員会に属する内容に関して通告しないよう努めることを例にする」と「議会運営等に関する要項」で定められているわけですが、ことの重大性から、どうしても町立中学校生徒の自死事件にふれないわけにはまいりません。みなさまのご理解、ご了解をお願いいたします。

昨年12月に町立中学校で生徒が自死するという不幸な事件が起きました。哀悼の意を表するとともにご遺族の方に心からお悔やみを申し上げます。

今回の事件について11月3日、「府中町学校運営等についての調査検討委員会」(以下、検討委員会)が答申書を提出し、教育委員会は「答申内容、課題に対する改善への提言を真摯に受けとめる」と表明しています。

答申に書かれている事件の背景・原因の分析とそれに基づく提言は、問題点も含みながら全体として重要な指摘がなされていると思います。

この答申および、町教育委員会が作成した「再発防止のための改善の方向性について」(以下、改善の方向性)を踏まえたうえで、3点、質問いたします。

第1に、入試(専願)制度について質問します。

答申が入試(専願)制度について次のように指摘していることに注目いたしました。「専願入試制度は、受験する側にとっても中学校にとっても受け入れる私立高校側にとっても有効な手段のひとつであると断った上で「その一方で、手順が不透明なままに『実質的な選抜作業を中学校側が担うことで、中学校側への作業負担と心理的な圧迫感を増幅させ、中学校本来の進路指導の在り方を阻害し、生徒一人一人の主体的で多様な心理選択の幅を矮小化している側面』も看過できない」(答申43ページ)。

まことにその通りだと思います。答申にもありますように、私立高校の指導権限は県教育委員会にはなく、「私学の独自性尊重」、要するにそれぞれの私学に委ねられているのですが、広島県私立中学高等学校協会のような団体もあります。

今回の事件をへて入試制度改善にむけて県や私学に対して要請する考えはありますでしょうか。町としての考えをお伺いします。

第2に再発防止改善策の方向性について、質問します。

答申および「改善の方向性」が、教員の「意識改革」「資質能力の向上」に重点が置かれ、教員の意識、資質の問題にすべてが押し流されていくのではないかということを危惧しております。

広島県教育委員会が12月6日に出した「府中町学校運営等についての調査検討委員会の答申における『再発防止に向けての提言』を受けての取組について」には、「教員が子供と向き合う時間を確保することを目的とした業務改善」を推進するとあり、その方向で進んでいけばいいのですが、「今後の取組」には、指導主事の指導力の一層の向上、管理職研修において校長の職責を一層自覚させる、指導主事の指導スキルを向上させるために研修の充実、主任層に対するマネジメント研修など、研修の文字が躍っています。

「意識改革」や「資質能力の向上」が求められていることはもちろんですが、現在の教職員の置かれている労働実態を考えると、それはかなり難しいのではないかとおもうのです。「意識改革」「資質能力の向上」をするためには時間が必要です。意識改革の手段、方法は研修です。現在でも多種多様な研修があり、研修とその報告書づくりに先生方は追われて、子どもたちの相手をする時間がないということもよく聞きます。

このままでは先生方をより一層追い込むことになり、さらなる多忙化が加速することになりはしないか。教育長、この点についてどのようにお考えでしょうか。
教員の「意識改革」「資質能力の向上」を図るためには多忙化を軽減し解消することがどうしても必要です。学校、教職員にゆとりを生みだし、風通しのいい職場にすることです。答申で指摘されている「お互いに協力し合う同僚性を感じ取れず、苦悩」するような学校を放っておいて、これ以上一人ひとりの努力を求めるやり方は決して成功しないと思います。

第3に、35人学級について質問します。

多忙化を解消するうえで、もっとも有効だといわれているのは、クラスの人数を減らして、先生の負担を軽減することです。昔と違い、不登校や「いじめ」、発達障害を抱えた子どもなど先生が個別に対応しなければならない児童生徒が増えており、先生が担任する児童生徒の数を減らすことが多忙化解消にもっとも有効です。

ですから、国会も2011年、全会一致で35人学級を法律にもりこみました。「新学習指導要領の本格実施や、いじめ等の学校教育上の課題に適切に対応ができるよう」にするために改正したと説明されています。

この改正によって、35人学級は2011年に小学校1年生が、2012年に2年生が35人学級になりました。その後、3年、4年、5年と順次35人学級は進むはずでしたが、安倍政権になって2013年以降ストップし、現在も小学校2年生までとなっております。そればかりか2015年度予算編成では、「小学校1年も40人学級に戻せ」「教員をもっと減らせ」(財政制度等審議会)という議論が政府内でおき、今年11月2日には、財務省が教職員を今後10年間で4万9千人を減らせとまで言い出しています。

こういう状況のなかでも都道府県は独自に35人学級を進めるようになっています。3年生以降、なんの努力もしていないのは全国で大阪府、熊本県そして広島県の3県だけです。

中国5県でみてみますと、鳥取県、島根県、山口県が中学校3年生まで35人学級、岡山県は小学校4年生まで35人学級になっています。さらに上乗せで、鳥取県と島根県は小学校1,2年生が、山口県は小学校1年生が30人学級。鳥取県は中学校1年生が33人学級です。広島県はまったく遅れています。

国や県が取り組まない以上、町として取り組むべきではないでしょうか。

このような国や県の実態についてどのようにお考えでしょうか。町として35人学級に取り組むお考えはありませんか。町としての考えをお伺いします。 以上、4点につきまして答弁を求めます。

(以上)


2回目の質問 「生徒指導規程」について

教員の多忙化が悪化しないように、研修の精選、改善を図り、業務改善を図るとの答弁でした。ぜひそのようになるにお願いいたします。

再発防止策に関連して、「生徒指導規程」について質問します。

答申は、生徒指導に係る教育的姿勢の問題をとりあげ、「生徒指導においても、『荒れ』の克服に囚われるあまり強権的・抑圧的な指導に陥」(20ページ)っていたこと、問題行動があると「形だけの指導や叱責・罰則」で対応し、「児童生徒の人間性を信じること」「児童生徒及び保護者の理解を得ること」「児童生徒との家庭や学校との『絆』を強めることが軽視されていた(29ページ)ことなどが指摘されています。

広島県教委の「提言を受けての取組みについて」(2016年12月6日)という文書でも「暴力行為発生件数を減少させることに重点を置くがあまり、ルールを守らせる指導を徹底しないと学校が崩れてしまうといった意識が強くあったため、一人一人の生徒の心を育て、生徒の心に寄り添い、将来、社会において自己実現できるような指導・支援を行うという視点が欠落していた」(5ページ)と述べています。

このような、強権的・抑圧的な指導、生徒の心に寄り添わない指導はなぜまかり通ったのでしょうか。県教委が2009年に市町教委に通知を出してつくらせた「生徒指導規程」というものがあります。

県教委の資料(「児童生徒の規範意識を醸成するための生徒指導体制の在り方について」2009年10月「生徒指導資料№32(改訂版)」)によりますと生徒指導規程とは、「問題行動を起こした児童生徒には、毅然とした対応を行う」ために「指導項目や指導方法を明確にする」もの、すなわちマニュアルなんですね。

緑が丘中学校と府中中学校の「生徒指導規程」を見せていただきました。内容はだいたい同じです。例えば府中中学校の授業規律違反--徘徊や授業妨害、暴言--があった場合には、1回目は放課後指導で、事実確認および説諭、反省文記入、保護者連絡、となっています。

2回目になりますと、事実確認および説諭は同じで、別室指導、生徒・保護者・担任・学年主任の四者面談になります。3回目、4回目以降とバージョンアップし、四者面談が、五者面談、六者面談へ、別室指導も反省文に課題学習をベースに前日の授業内容の学習、道徳学習が積み上げられ、日数も1日から最高10日間まで、場所も学年室から特別指導室へと格上げされるといったパターンが作られています。

このような生徒指導規定が「本校の教育目標を達成するためのもの」なのだそうですから、真面目な先生であればあるほど、この生徒指導規定に従って、すなわちマニュアル通り、型通りに生徒を指導していくことになります。

この指導規程こそが、「形だけの指導や叱責・罰則」で対応し、「児童生徒の人間性を信じること」「児童生徒及び保護者の理解を得ること」「児童生徒との家庭や学校との『絆』を強めること」を軽視する原因になっていると私は思います。

このような指導規程をそのままにしておいて、生徒の心に寄り添い、一人ひとりの生徒の心を育てることはできないのではないでしょうか。生徒指導規程の大幅な見直しが必要だと考えますが、見直すおつもりはあるでしょうか。見解をお伺いします。

3回目めの質問

生徒指導は生徒の人格を尊重するべきもので、規程の見直しもするということですね。ぜひその方向での改定をお願いいたします。

町長にお伺いします。スクールソーシャルワーカーを町独自で配置することや35人学級については教育委員会がお決めになることんでしょうが、決めた場合は財政的に支援していただけますでしょうか。

再発防止の思いを含めてお尋ねし、私の質問を終わります。


町教委・町長の答弁のポイント(二見メモによる)

ソーシャルワーカーは配置したい。県、国へ予算措置を要望。

専願制度の問題については11月24日、県知事へ、11月16日に県教委に要望済み。

再発防止が多忙化につながらないように研修の精選、改善に努めたい。

35人学級の町独自の実施は、採用した教員の雇用の継続をどうはかるのか、研修をどうするのかなどの問題がある。

現時点では県の制度を活用して加配を増やす方向で努力したい。

生徒指導規定は形だけのものになってはならず、あくまで人格を尊重するものでなければならない。生徒指導規程の見直しを検討している。

教育予算の充実については、町の発展のベクトルの範囲内で努力するつもりである(町長)


《資料》 府中中学校「生徒指導規定」

 

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