toggle
2021-05-03

憲法のこころを聴く(1) 日本国憲法の〝こころ〟とは

(4)平和をどうやって創るのか

  【正文】
日本国民は、恒久の平和を念願し、
人間相互の関係を支配する崇高(すうこう)な理想を深く自覚するのであって、
平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、
われらの安全と生存を保持しようと決意した。

【池田訳】
日本のわたしたちは、
平和がいつまでもつづくことを強く望みます。
人と人との関係にはたらくべき気高い理想を
深く心にきざみます。
わたしたちは、
世界の、平和を愛する人びとは、
公正で誠実だと信頼することにします。
そして、そうすることにより、
わたしたちの安全と命をまもろうと決意しました。

「人間相互の関係を支配する崇高な理想」って何でしょうか?

正文で「支配する」、池田訳で「はたらくべき」と訳されている英単語は、コントロール(control)です。「支配」というと強い力が働いているという感じがするのですが、人と人とのつながりのなかにある理想という意味だと思うのです。

人と人とのつながりのなかにある理想とは、支え合い、助け合って人間は生きてきたということではないでしょうか。

ですから、ここのところを私なりに意訳すると、「人間が支え合って生きている、という事実に裏打ちされた、人間の理想を深く自覚しよう、心にきざもう」となります。

人びとが公正で誠実であることを信頼

そのことを前提にしたうえで、平和をどのように創るのか、とっても大胆な提起をします。

「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」

すごいでしょう。ここが、日本国憲法が切り開いた新しい考え方の第1点目です。

池田訳では「わたしたちは、世界の、平和を愛する人びとは、公正で誠実だと信頼することにします。そして、そうすることにより、わたしたちの安全と命をまもろうと決意しました」となっています。

それまでの「平和のつくり方」は、どうだったか? 

今の日本の政府の考えていることと同じ。強い武器を持って、相手に負けないような国になって、そしてそのことを通じて攻めさせないようにするんだというのが、それまでの一般的な平和を求める考え方だったんですね。「武力による平和」というやつです。

日本国憲法はこの「当たり前」の考え方に異議を唱えたのです。そういう形で本当に平和は守れるのか、強い武器を持っていたら本当に攻められないのか、あるいは本当に戦争は起こらないのか。このことを、日本の経験もふまえて考え抜いた。

そうしたら、大事なのは、国とか政府とかではなくて、世界の人びとを直接信頼し、そこから平和をつくるということが、遠いようで一番近いんだという結論にいたったのです。このことに、日本国憲法は世界でまっさきに気づいた。攻めてこられないように、攻めてこられないようにと、武器をたくさんもって、結局どうなったのかといったら、逆にその武器を使って攻めていったわけです。そして戦争になる。

だから、もしほんとうに戦争をやめたいと思うのだったら、世界の平和を愛する人びとを信頼するところから始めよう。

「金正日がどうのこうの」ではなく、北朝鮮に住んでいる人びとはどうなのか、中国の人びとはどうなのか、アジアの人びとはどう考えているのか…ということ。それぞれの国で暮らしている普通の人びとは戦争を望んでいない。だから、そういう普通に暮らしている人びとを信頼し、その人たちに働きかけて平和を創ろうというのが憲法の考えなんです。

実は、ユネスコ(*1)が同じ考え方に立っています。
ユネスコ憲章前文には次のように書かれています。

政府の政治的及び経済的取極(とりきめ)のみに基く平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かなければならない。

人びとの知的・精神的な連帯によって平和を創る。これが一番強いんだ、ということ。それだけ「人びと」(people)のもつ力もついてきたのです。

だから、平和を愛する人びとが「公正」であり、「誠実」であることをまず信頼しようというのです。

「公正」の英語はjusticeで、正義とか道理という意味をもっています。「信義」と「誠実」は同じ意味で、「約束をまもる」ということです。英語はfaithで、「信頼して誠を尽くす」というのがもともとの意味だと辞書に書いてあります。

あれこれの国や政治家ではなく、それぞれの国で生きている人びとを信頼しようと決意したのです。

なにより、あの大戦で世界の多くの人びとが「もう戦争はごめんだ」と考えている。これまでの戦争で「人びと」は苦しめられ、命を奪われてきたからです。人びとは平和を強く望んでいる。だから、疑いではなく、信頼することから始めよう。これがユネスコ、そして日本国憲法の考え方なのです。

 


(*1)ユネスコ(UNESCO)は、United Nations Educational,Scientific and Cultural Organizationの頭文字で、国際連合教育科学文化機関といい、本部はパリにある。ユネスコは、第二次世界大戦が終わった1945年に、「人類が二度と戦争の惨禍を繰り返さないように」との願いを込めて、各国政府が加盟する国際連合の専門機関として創設。日本は1951年に60番目の加盟国となった。現加盟国は193カ国(2007年10月現在)。

ページ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

ふたみ伸吾 ほっとらいん

ふたみ伸吾にメッセージを送る

生活相談、町政への要望、ふたみ伸吾への激励など、メッセージをこころよりお待ちしています。

     

    関連記事

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

    PAGE TOP