財政調整基金を活用して暮らし・福祉に

平成28年度決算についての意見表明 2017/9/20 二見伸吾

第33号議案「平成28年度府中町歳入歳出決算の認定について」「1.一般会計歳入歳出決算」に賛成の立場から討論いたします。

歳入

まず歳入についてですが、一般会計の町税の収納率は4年連続で向上し98.4%(県内23市町中2位)、国保特別会計は82.4%(同8位)。それに伴い収入未済額も年々減少しています。

収納率を上げようとするばかりに行き過ぎた滞納処分、過酷な取り立てをしている自治体もあり、そういうなかで、一家心中する悲劇が起きています。

当町は、家庭の状況をよく把握し、ていねいに対応していると報告がありました。生活保護などの相談を福祉課にしたり、多重ローンの方には法テラスに行くように助言。生活に応じた対応を心がけ、疾病や離職等により、納付困難な方に対して経済基盤を確立できるよう、関係部署との連携を図っているとのこと。また、差し押さえは明らかに所得や預貯金があり、納付可能にもかかわらず納付がない場合に限っている。町民の暮らしを優先した対応をしていただいていることには敬意を表したいと思います。ぜひ今後ともこのガイドラインに沿った対応をしていただきたい。

不納欠損は一般会計で1770万円、380人、特別会計で4460万円、790人。内訳はいずれも「滞納処分する財産なし」がもっとも多く、ついで「生活困窮者」、「所在不明」の順になっています。所在不明も、多重債務などで住民票を移さず転居している場合が多いそうですので、3つの内訳とも広い意味で生活困窮者といえます。収納率が上がり、不納欠損も減っていますが、貧困によって滞納者が広がっていることに留意する必要があります。
一般会計の決算額は、歳入203億8,404万円、歳出197億3,871万円で、実質収支額は5億989万円の黒字です。実質公債費比率は平成26年度が12.4%、平成27年度10.8%、平成28年度8.8%へ、将来負担比率も130.4%、111.1%、96.4%と減少させています。

監査委員による「決算の概要及び審査意見(総括)」は、「一般会計の決算額は前年度と比較して、町税が10億5,363万3千円増加している。しかし、依然として財政状況は厳しく、1を超えるほど財源に余裕があるとされる《財政力指数》は0.873であり、比率が低いほど財政構造の弾力性を示す《経常収支比率》は、90%台と依然として高い数値を推移している。この状況は決して良好であるとはいえ」ないという認識を示しています。

平成28年度の数値はまだ出そろっていませんので、平成27年の数値で県内市町を比較しますと、財政力指数は府中町が0.86なのに対して県平均は0.54、経常収支比率は府中町が93.8に対して県平均は90.3です。財政力指数はトップで、経常収支比率は県平均をわずかに上回っているにすぎません。しかし、それでもなお「良好とはいえない」状態にあると監査報告はいう。県内、ひいては全国の自治体財政が大変だということです。そこには、国全体の税収不足、財源不足という問題があります。平成28年度で約6兆円、29年度で7兆円の財源不足があるといわれています(総務省「平成29年度地方財政計画の概要」)。

税収不足の要因の一つは法人税減税です。消費税導入前の法人税率は43.3%でしたが今は23.4%にまで下がっています。景気悪化による税収の落ち込みもありますが法人三税の税収は消費税が導入された平成元年から29年の累計で280兆円も減っている。

所得税・個人住民税の合計の最高税率は88%から50%まで引き下げられています。低所得者ほど負担の重い消費税ばかりを増税し、大企業、金持ちは減税する。そのことが税収不足の根本にあることを指摘しておきたいと思います。

 

議会としても6月に「社会保障、災害対策、環境対策、地域交通対策、人口減少対策など、増大する地方自治体の財政需要を的確に把握し、これに見合う地方一般財源総額の確保をはかること」をはじめとする4項目の「地方財政の充実・強化を求める意見書」を全会一致で採択しました。今後とも町議会と町が力をあわせて必要な財源を確保するために国に働きかけていくことが大切だと思います。

歳出

つぎに歳出です。

「補助金」については、おおむね妥当だと考えますが、「部活動充実費補助金」(60万円。2つの中学校で30万円ずつ)と「あきふちゅう文化協会補助金」(46万円)は、それぞれ部の数や、協会加入団体数で割れば一つの部、団体への補助はごくわずかでしかありませんので増額が必要と考えます。

住宅確保給付金、高齢者住宅整備資金、障害者住宅整備資金、家事・育児の支援訪問、居宅介護住宅改修費、介護予防住宅改修費のいずれもが申請がなく「不用額」となりました。宣伝不足や、そもそもニーズがなかったりといった問題があると思います。制度について広く周知するとともにニーズがないものは、あらたなニーズに応える施策を考えていただきたいと思います。

最後に財政調整基金です。

平成27年度の決算に際して、私は「さまざまな不安材料があるなか、行政としては《いざというときのため》、税収のあるときに積み立てておきたいという気持ちもよく分かります。しかし、町民の暮らしは年々苦しくなり、今まさに《いざ》という状態にあります。15億円の積立金が仮に必要だとしても単年度で積まず、2、3年かけて積んでもよかったのではないか。積み立てた4億6586万円の1割でも福祉と暮らしを支えるために使うべきだったと考えます」と述べ、今後の予算編成に生かして欲しいと要望いたしました。

しかし、残念ながら28年度において財政調整基金はさらに増え17億3000万円になりました。

一般的に、財政調整基金は標準財政規模の10%が適正だといわれています。当町は平成19年度から28年度までの10年間で標準財政規模の10%にあたる額は9億円前後を推移してきました。そして、財政調整基金が標準財政規模の10%を下まわったことは一度もありません。

この10年で一番少なかった平成25年度、26年度でも12%です。27年度は16%で15億円、そして28年度は18%で17億3000万円と、適正数値をはるかに上回っています。この9月議会(29年度)の補正予算で基金は1億8000万円取り崩されますが、そのほとんどが過誤納還付金、税金の還付です。暮らしのためには使われていない。

総務省は今年1月に発した事務連絡「平成29年度の地方財政の見通し・予算編成上の留意事項等について」において基金について次のように述べています。

「地方公共団体の基金については、その規模や管理などについて十分検討を行った上で、それぞれの基金の設置の趣旨に即して、確実かつ効率的な運用を行いつつ、優先的に取り組むべき事業への活用を図るなど、適正な管理・運営に努められたいこと」。

基金を適正に管理・運営し、事業に活用せよ、と総務省は言っているのです。将来の財源不足を心配して財政調整基金を必要以上に積み立てるより、町民のさまざまな願いの実現のために使うべきではないでしょうか。

繰り返します。

町民の暮らしは今まさに「いざ」というときであり、基金の一部を取り崩し、町民が切に望んでいる福祉の向上、暮らし応援のためにこそ使うべきです。

今後の予算編成や行政執行において、この点を検討していただくことを今年度決算にあたっても要望し、賛成の討論といたします。

(以上)

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議会が終わって、質問原稿を町長にお渡しいたしました。すると「これをよく見て下さい」と一枚の紙をくれました。

町長は、他市町より財政調整基金が少ないということが言いたいのです。

もちろんそのことは知っています。日本全体が財政調整基金を積み立てすぎなのです。討論でも述べていますが、一般的に財政調整基金は、標準財政規模の10%が適正規模と言われてきました。

安芸4町でみると、海田町40%、熊野町56%、坂町131%ですから、どう考えても過剰な積み立てです。

それらと比べれば府中町の17%はたしかに少ない。

しかし、他所より少ないから積むという主体性のないことでいいのか。

沢山、財調を積むということは、いま求められている必要な施策を、貯めなければできる施策を、していないということなのではないか。

そこまでして積むことがいいのか。

将来不安のために自治体に基金を積むようにさせている国政のありかたも問われなければならない。

これが討論の問題意識なのです。

 

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