東アジア最大の基地に変貌した岩国基地 田村順玄さんの講演
田村順玄さんの承諾をいただいて、講演レジュメを掲載します。
2018年5月27日 府中町「九条の会」総会講演として
拡大強化の続く「岩国基地」の今を、現地から報告
田 村 順 玄 (岩国市議・リムピース共同代表)
1.はじめに
岩国基地の今について、全国の人々になかなか伝わっていない岩国基地の現状をお知らせする。本州で唯一の海兵隊航空基地から、海軍の空母艦載機部隊も加わって、極東最大の巨大基地になった現状。配備された航空機の総数は自衛隊も加えれば160機に、米軍機は120機を超える。
2 広島から40キロメートルしか離れていない岩国基地
しかしその現状は詳しく伝えられていない。新聞情報も、大竹市に入れば大阪本社から発行され、西部本社で書かれた記事はほとんど掲載されない。つまり、岩国基地のニュースは広島では知ることが出来ない。
3.岩国基地の拡大強化の変遷
岩国基地は米軍再編計画で厚木から空母艦載機の移転が決まり12年経った。艦載機は今年3月末に全て岩国基地へ移転を完了した。横須賀が母港の空母「ロナルド・レーガン」は間もなく出航し作戦行動を開始する。これに伴うのが、FCLP訓練とCQ訓練。大変な爆音被害が予見され、艦載機が岩国基地へ移転したという現実を突きつけられる基地沖合移設事業がその元凶だ。
大変な爆音被害が予見され、艦載機が岩国基地へ移転したという現実を突きつけられる。
日米政府は岩国市民が「悲願」と言い、進められた「岩国基地沖合移設事業」を逆手に取り、米軍再編計画の目玉となる「厚木空母艦載機部隊の移転」にすり替えた。これを押しつけてきた日米政府の思惑がある。
沖縄の米軍基地負担を全国へ分散させるという国の大義名分が、「岩国基地への新たな基地負担」を集中させている現実がある。例えば……
① これからさらに、F35Cの配備
② 空母艦載機を「C-2グレイハウンド」から「オスプレイ」に変え配備の計画。
4.市民を籠絡(ろうらく)する基地行政。
一方では、潤沢な防衛予算を地元に投入し、市民を巻き込んだ防衛関連施設の建設で市民の反基地意識を籠絡する岩国市行政の実態がある。
⑴ 埋立て土砂を採取した跡地を利用して、「愛宕スポーツコンプレックス」と呼ぶ総合スボーツ施設を米軍施設として建設し、日米共同使用として市民に開放している現状。
⑵ 米軍基地を一部日米共同使用の許可をし、軍民供用空港として使用。
岩国~羽田、岩国~那覇 の航空路を開設し市民が年間50万人利用
⑶ 岩国市長が、「基地との共存」という政治方針を掲げ、随所にその施策を取り入れ市政を推進。2018年度の岩国市一般会計予算は総額802億円。近傍類似都市の約「倍」。そのうち、防衛省の補助金等は今年だけで138億円に。
5.最近の基地の動き
空母艦載機が岩国基地への配備を終えた4月以降、街を歩けば合言葉のように、「飛行機がうるさくなりましたね」とか、「米軍機の爆音が耐えられない」と言った市民の苦情が口から出てくる。
そのうるささは異常で、最近は岩国市内だけでなくこの広島県でも多くの苦情が続発している。とりわけ、つい最近の5月8日の爆音は異常だった。基地南側の尾津町では、一日の騒音測定回数が200回を記録し、これは2010年の滑走路移設後では最高の回数だった。空母出航前の訓練が集中したからだ。
市民の苦情はこの日だけで176件集中した。
6.おわりに
横須賀が母港の空母「ロナルド・レーガン」は間もなく出航し作戦行動を開始する。これに伴うのが、FCLP訓練とCQ訓練。大変な爆音被害が予見され、艦載機が岩国基地へ移転したという現実を突きつけられる。その訓練を、5月30日から実施すると通告があった。
日本政府は今、沖縄や厚木でできなかった防衛政策の実践箇所として、岩国基地を今後も活用し使用するとしている。最終的には岩国基地を、在日米軍の「ハブ基地」とする企てもある。沖縄での新たな基地建設は前に進まずとも、当面は岩国基地を使えば問題はないという日米の安全保障体制がここにある。
以下は別紙で私がつけた(注)です。
●原子力空母「ロナルド・レーガン」
全長333メートル(東京タワーの高さと同じ)。アメリカの空母で唯一海外(横須賀)を母港としている。
●FCLP 陸上空母離着陸訓練(Field Carrier Landing Practice)。空母艦載機が行う陸上滑走路を空母の飛行甲板に見立ててタッチアンドゴーを繰り返す飛行訓練をいう。日本では夜間に行われるFCLPを NLP(Night Landing Practice)=夜間離着陸訓練と呼ぶ。
●CQ 着艦資格取得訓練(Carrier Qualification)
空母艦載機のパイロットが空母に着艦する資格を得るための試験。実際に洋上展開した空母を使い、日中と夜間、甲板に設置されたワイヤに機体のフックを引っ掛けて着艦し、十分な技量があるかを採点する。1回の訓練期間は4日間程度で、艦載機を運用する第5空母航空団のパイロット約100人が参加する。滑走路を甲板に見立てて離着陸を繰り返す陸上空母離着陸訓練(FCLP)後、10日以内に始める必要がある。
●F35B
Fは戦闘機(fighter)を意味する。F35Aは2018年度防衛費の概算要求で1機あたり147億円。レーダー電波の反射を抑え、敵に発見されるのをさけて隠密に作戦行動を行う「ステルス機」。
▼F35A 空軍向けで滑走離着陸だけを行う
▼F35B 岩国基地へ配備された海兵隊向けの短距離離陸垂直着陸機。短い距離で離陸でき、かつ、ヘリコプターと同じように垂直に着陸できる。空母甲板からでも発進可能。
▼F35C 空母での運用を行うための装備を備え、主翼や垂直尾翼、水平尾翼を大型化するとともに降着装置(脚部)の構造を強化。
「F35は空軍、海軍、海兵隊と三者の異なる要求を基本設計に取り入れた結果、機体構造が複雑になり、重量増という戦闘機としての致命傷を負った。……その鈍重ぶりは「曲がれず、上昇できず、動けない」と酷評され、2015年には40年も前に開発されたF16戦闘機との模擬空中戦で負けるという失態を演じている」(半田滋「《ポンコツ戦闘機》F35、こんなに買っちゃって本当に大丈夫?」
●C2グレイハウンド
グラマン社が開発した艦上輸送機。洋上の空母へ人員/物資を輸送する
●ボーイングV22オスプレイ
「両翼に二つの回転翼を備え、その角度を変えることでヘリのように上下動したり、飛行機のように高速で水平飛行したりできる輸送機。普天間飛行場には2012年10月に12機が配備され、翌13年9月までにさらに12機が追加された。従来の中型ヘリより速度は2倍、航続距離は5倍と言われ、沖縄の海兵隊部隊の輸送が主な任務とされる。日本政府も17機を導入する方針」(朝日新聞)。
▼なぜオスプレイは墜ちるのか
「MV-22オスプレイは、30年前からボーイング社が多額の研究費をつぎ込んで延々と開発をしてきた飛行機です。垂直に離陸することができるので滑走路がいりません。空中へ上がればプロペラを上部から前のほうへ傾けて、かなりのスピードで飛行できるのです。ヘリコプターでもあり輸送機でもある、便利な飛行機です。しかし、30年間に何度も墜落事故を起こして36人もの人が亡くなっていますので、「未亡人製造機」という異名をとっているのです。
MV-22オスプレイは、沖縄に配備されているCH-46というヘリコプターが老朽化したために転換が進められているのです。航続距離も2倍ほどになり、いいことずくめのようですが、実際にはそうではありません。CH-46の重量は175トンですが、オスプレイは4715トンで非常に重いのです。両翼についたプロペラはCH-46に比べるとはるかに小さく、4715トンの重量を支えるにしては無理があるのです。
ヘリコプターは図体の真上にローターがついていて、そこに重心があるので、簡単に言えば竹トンボと同じです。それを両翼の先のプロペラで飛ばそうとするので、重心が取りにくくたいへん不安定なので、よく墜落するのです。プロペラは直径11メートルくらいですが、機体の座高はそれよりも低いため、地上に着陸したときに回すと土を引っ掻いてしまうのです。正面を向けてプロペラを回せないので、地上を滑走するときには若干斜めに空に向かった形で飛びますが、揚力が小さいので重量のある荷物を載せられません。
この飛行機が最も危険なのは、両脇にあるエンジン2つが同時に止まったときです。2004年、沖縄国際大学に米軍の大型輸送ヘリコプターCH-53Dが墜落しましたが、それは1キロくらい飛んでから大学の壁に当たって落ちたのです。1キロ飛ぶことができたのは、オートローテーションという装置によって、エンジンが止まってもプロペラが回転すれば風を受けて若干の揚力を保ったままゆっくり地上に落下させていくことができたからです。
しかし、CH-46と比べても小さなプロペラしかないMV-22オスプレイは、オートローテーション機能で地上まで降りようと思っても、落ちるスピードのほうが速いのです。MV-22オスプレイが飛行機モードでグライダーの機能を使えば何とか地上に着陸することができるのですが、ヘリコプターの機能で空に向かって飛ぶ間にエンジンが止まった場合、すぐグライダーに切り替えようとしても12秒かかります。その間に、地上に墜落してしまうのです」(田村順玄「オスプレイ陸揚げ 岩国での闘い」『月刊マスコミ市民』2012年9月号)
●愛宕スポーツコンプレックス
スポーツ・コンプレックス(Sports Complex)は、幾つかのスポーツ競技施設を併せ持った施設。愛宕スポコンは下図の野球場、ソフト場2面の他、陸上競技場もある。
●岩国市と類似自治体の一般会計予算
岩国市 802億円 13.3万人
宇部市 635億円 16.6万人
周南市 643億円 14.2万人
山口市 871億円 20万人
尾道市 637 億円 13.9万人
東広島市 696億円 19.2万人
(府中町 168億円 5.1万人)
●ハブ基地
ハブ空港 《hubは車輪の中心部の意》各地からの航空路が集中し、乗客や貨物を目的地に中継する機能をもった、その地域の拠点となる空港。
そういう機能をもつ基地ということかな。下の図の大きな●(マル)がハブにあたる。
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