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2018-06-26

府中町における密集市街地整備と「街づくり」について(1) 2018年6月議会一般質問

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はじめに

府中町における密集市街地整備と「街づくり」について質問いたします。

大地動乱の時代

先週6月18日(月)に高槻市など大阪北部を震度6の地震が襲いました。小学校のブロック塀が倒壊し、4年生の児童が犠牲になりました。22日現在での被害は、死者5人、負傷者が7府県で406人(うち重傷者9名)。住宅の全壊1棟、半壊34棟、一部破損3,381棟、火災発生件数は大阪府と兵庫県で8件です。

震度5弱以上の地震は4月に鳥取、5月に長野北部で2回、6月17日に群馬、そして18日の大阪北部と続いています。日本列島は1995年の阪神淡路大震災以後、地震の活動期に入ったと言われています。2011年には東日本大震災、2016年には熊本地震が起きました。「大地動乱の時代」です。阪神淡路大震災のときの教訓の一つは、日本列島のどこで大地震が起きてもおかしくない、大地震の起きない地域はないということです。そして、そのことは東日本大震災と熊本地震で裏書きされ、今回の大阪北部地震へと続いているわけです。中国地方、広島県、そして府中町もそう遅くない時期に大地震が発生する可能性、危険性があります。

 

南海トラフ大地震

先日、土木学会が南海トラフ大地震が起きた場合、その経済被害は長期的に1410兆円となるであろうというショッキングな推計を発表しました(6月7日)。経済的な被害がある以前に、人的な被害、建物の倒壊、そして火災など直接的な被害もまた甚大です。
土木学会は「道路や港湾、堤防、建物の耐震化などをすることで、地震や津波による長期的な被害を3~4割減らすことができる」とも述べており、災害に強い街づくりは喫緊の課題となっています。
阪神淡路大震災では、地震直後に命を落とした約5500人のうち、8割以上が建物や家具の倒壊による圧死・窒息死でした(兵庫県監察医「神戸市内における検死統計〔1995〕」)。
災害、とりわけ大震災が起きたときに、町民のみなさんの命と安全が守れるかどうかは、災害に強い街づくりにかかっており、有効な手だての一つとして密集市街地の整備があります。

密集市街地とは

密集市街地とは、「当該区域内に老朽化した木造の建築物が密集しており、かつ、十分な公共施設が整備されていないこと、その他当該区域内の土地利用の状況から、その特定防災機能が確保されていない市街地」であると、「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」に書かれています。

具体的には、①幅4m未満の細街路や行き止まりが多く、十分に接道要件を満たしていなかったり、全く接道していない小規模な敷地が多い。②耐震性・耐火性の低い老朽木造建築物が多い、③公園が少ない、という特徴をもち、地震や火災の場合、人的にも物的にも大きな被害が予想されます。

 

1.府中町と密集市街地整備

(瀬戸ハイムから町を眺める)

府中町はどうなっているか

2016(平成28)年に町が作成した「府中町都市計画マスタープラン」から密集市街地の状況についてまとめてみました。

私たちの暮らす府中町は、面積 約10k㎡であり、そのうち山林が4.5k㎡、住宅用地が2.4k㎡です(他は道路用地など)。そこに5万2千人が暮らし、人口集中地域(面積5.6k㎡)の人口密度は9千人/k㎡です。県平均は約6千人/k㎡ですので、府中町は県平均の1.5倍の人口密度です。

①生活道路は、幅員4m未満の狭隘道路が三分の一を占めています。町の作った「町内会別ハザードマップ」によりますと石井城、本町3丁目や宮の町3丁目などは4m以上の道路がきわめて少ない状況です。

②住宅を含む建築物は、築25年以上の建築物が多く、特に町北東部において老朽化が進んでいます。空き屋率については、減少傾向にあり比較的低い水準(10.5%、県平15.9%)です。

③身近で小規模な公園は、町全域にわたって広く分布しています。

「都市計画マスタープラン」は災害危険性についても述べており、先ほども申しました①南海トラフ巨大地震、②北東部の団地――これは桜ケ丘や清水ケ丘をさすと思われますが――および榎川沿いの一部での土砂災害、③府中大川周辺の平地部での河川氾濫が想定されています。府中町での自然災害は地震と土砂災害、河川氾濫、この3つがとりわけ起きる可能性が大きいということです。

国土交通省は2003(平成15)年に、「重点密集市街地」について発表しました。「重点密集市街地」とは、延焼危険性が特に高く、地震などで大規模な火災の可能性があり、そのままでは今後10年以内に最低限の安全性を確保することが見込めず、重点的な改善が必要な密集市街地を意味しています。 当町も1地区(石井城・本町3丁目・みくまり2・3丁目)41haが重点密集市街地に指定されました。

当町にとって密集市街地整備は、町民の生命と財産を守る「災害に強い街づくり」のため、府中町の発展のために欠くことのできない課題だといえます。

そこで伺います。

①以上、私なりに府中町における「密集市街地」の問題点について述べさせていただきました。町として「密集市街地」をどのようにお考えでしょうか、見解を伺います。

建設部長 国土交通省は、平成15年7月に「地震時等において、大規模な火災の可能性があり重点的に改善すべき密集市街地」いわゆる重点密集市街地について、全国で7,971ha、400地区を公表いたしました。

議員ご指摘のとおり、府中町も1地区(石井城・本町三丁目・みくまり二・三丁目)41haが重点密集市街地として公表されました。これは、住宅の密集度として80戸/ha以上の住宅が密集する一団の市街地であること。かつ延焼の危険性として耐火に関する性能が低い住宅が大半を占めていることなど、今後10年以内に最低限の安全性を確保することが困難であり、重点的に改善が必要な地区を重点密集市街地として公表したものでございます。

その後、国土交通省では、密集市街地における建物倒壊により道路が閉塞して避難が困難となる危険性について、有識者の方からの指摘によりまして、平成24年10月に新重点密集市街地として新たに5,745ha、197地区が公表されました。これは、延焼の危険性又は避難困難性が特に高く、地震時等において最低限の安全性の確保が著しく困難で、重点的な改善が必要な地区が該当いたしますが、府中町には、この新重点密集市街地に該当する地区はございませんでした。

しかしながら、議員ご指摘のとおり、府中町においては、幅員4m未満の狭陰道路の割合が町道全体の約33%となっており、特に町の北東部においてその割合が高くなっております。

密集市街地については、その明確な基準が存在しているわけではありませんが、これら幅員4m未満の狭陰道路が多く、また、旧耐震基準の木造住宅が多く存在する地区においては、地震時などにおいて、大規模な火災に繋がる可能性、あるいは道路閉塞により避難経路が喪失してしまう可能性があり、町民の尊い人命や資重な財産の安全性の確保が困難となる問題を抱えていると認識をしております。

 

2.密集市街地の整備の難しさ

「都市づくりの課題」

ふたみ議員 つぎに、密集市街地整備をするうえでの問題点について伺います。

「都市計画マスタープラン」は、第1章のしめくくりに「都市づくりの課題」を4点あげていますが、そのうちの3つが密集市街地整備と関わっています。

第1は、「計画的な土地利用の誘導」です。「無秩序な市街地の拡大を防止し、都市の成長を管理していくことが必要」だと述べています。第2は「都市基盤充実」です。具体的には生活道路の整備、公園の整備など住環境の改善です。第3は、「市街地の安全性の向上」です。「地震、火災に対して脆弱な市街地環境を形成している地区があり」、「建物の耐震化や狭あい道路の解消など、行政と住民が連携して、市街地の安全性の向上に取り組む必要があります」と述べています。

生活道路や公園といった都市基盤を町が整備する一方、計画的な土地利用を促し、市街地の安全性を向上させるということだと思います。

密集市街地整備の難しさ

密集市街地整備に関わる、この3つの課題に取り組むことが求められているわけですが、実際にはさまざまな困難があり、一般的には次のような点が指摘されています。

①地域内の居住者には高齢者が多く、建替え等の資金の確保が難しい、あるいは、他の費用に比して優先度が低い。
②狭い敷地の所有者が多いうえに、借地、借家関係など権利関係が輻輳している場合もあり、その調整と合意形成が難しく、また、時間もかかる。
③低家賃の借家を必要とする高齢者などに対して、公営住宅の提供などの居住の安定を確保することが難しい。
④敷地が狭く、接道不良の住宅が多いため、現在の建築基準どおりの建替えでは十分な居住面積の確保ができない。

具体的にはつぎのような問題があります。

進まないセットバック

一つは、道路の幅員を広げることの難しさです。

幅員4m未満の道路に接して家を建てる場合の建築確認申請書には、建物の敷地を道路中心線から2m下がったところを敷地境界として申請をしなければなりません。家を建てる側からみれば、これまでの敷地を狭めなければならず、下がった部分は使えません。敷地が削られた分だけ家は小さくなり、いままで使っていた土地は使えないことになります。いったん下がった部分が何年かするともとに戻ってしまうというようなことも起きます。これを防ぐためにセットバックした位置を明確にし、その部分の舗装などの補助を行うなどの制度を実行している自治体もありますが、目にみえる効果は上がっているとはいえません。

道路ではない道路

もう一つの問題は、2項道路の指定を受けていない狭隘道路です。

当町にもみられますが、里道、農道、水路敷などの周辺に建物が建ってしまったケースです。これらは、日常道路として使っていますが、建築基準法上の道路ではないので原則として、これに面して建物の建築はできません。このような道路は多数存在し、これらを救済するために、建築基準法は第43条第1項にいわゆる「ただし書き規定」を設けています。

「ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない」というものです。

この規定を適用すると、狭隘道路であっても住宅が建ち、狭隘道路そのものもそのまま残されてしまいます。いつまでたっても狭隘道路がなくならないわけです。

密集市街地の整備は喫緊の課題であるにもかかわらず、以上のような難しさをあわせ持っています。全国でも、密集市街地整備は一部で成果をみせているものの、全体としてはなかなか進んでいないというのが実情です

そこで伺います。

②当町の密集市街地について、これらの点は該当するのか。また、それ以外に当町独自の困難があるでしょうか。

建設部長 議員より4つの事項について一般的な課題として挙げられましたので、当町に該当するのかという点についてご答弁させていただきます。

1つ目の「建替え等の資金の確保が難しい」のでは という課題ですが 密集市街地におきまして建築が古い住居等の建替えや耐震補強は、住民の生命・財産を守るとともに、地震後の被害の軽減につながるものです。

しかし、建物の更新には、多くの費用が必要となるため、資金の確保が難しいというケースは多くあると思われます。

当町では、平成29年度から、住宅のリフォーム・耐震診断・耐震改修に対し補助を行っておりますので、積極的に活用頂きたいと考えております。

2つ目の「土地の権利関係の複雑さ」につきましては、当町においても、土地の権利関係が複雑にからみ、利活用が困難な土地は少なからず存在するものと考えます。

3つ目の「住宅困窮者に対する公営住宅の提供など居住の安定の確保」につきましては、平成28年3月に策定した「府中町住宅マスタープラン」におきまして、居住の安定の確保として、民間及び広域的な行政間の連携を強化し、住宅セーフティネットの構築を図ることとしております。
公営住宅の情報提供等、住まいの不安の軽減を図るよう努めてまいります。

4つ目の「住宅の建替えにより居住面積の減少」についてですが

まず、建築基準法第42条第2項によるセットバック義務により敷地の有効面積の減少について、平成24年度から平成28年度の5年間における建築確認申請の件数は約900件で、そのうちの139件・約15%がセットバック義務のある物件でございました。セットバック義務のあった確認申請のうち、戸建住宅の敷地面積の平均は154㎡でしたので、居住面積が小さくなるため、建て替えが進まないという事例は当町では、少ないのではないかと推測されます。

次に密集市街地について町独自の困難があるのか?というご質問ですが、町の密集市街地の問題は、そのほとんどが道路幅員の狭さ、いわゆる狭あい道路の問題であると考えられます。

建築基準法においては、幅員4m未満の道路沿いでの建築物の建替えには、道路中心線より2m後過しなければならないという、セットバック義務がございます。

住宅の耐用年数を50年とすると、家屋の大半が更新を迎えているはずであり、その全てでセットバック義務が果たされていれば、密集市街地の問題は解消されているはずでございます。

しかしながら、町内で4m未満の道路に接している住宅の総数は、「住宅土地統計調査」によると、平成15年で8,370軒、平成25年で8,310軒と10年間での変化はほとんどなく、密集市街地の解消は進んでいないというのが、現状でございます。
建築基準法ではセットバック義務は課しておりますが、道路の築造義務まで課していないため、門塀などの工作物が時間の経過とともに突出してしまうという実態があります。
こうした状況を改善するため、当町では平成24年度より本町三丁目をモデル地区として狭あい道路整備事業を開始しております。
この事業は、後退敷地を町で買取・道路として整備するという事業ですが、6年間で10件・計186 mを整備しております。
本町3丁目で建替え等の情報があれば事業への協力を打診し、ご協力を頂いておりますが、少なからず事業への協力が得られないケースもございます。
当町のような都市部では、地価が高く、土地所有者の権利意識が強いため、後退敷地を道路として提供することへの抵抗感、そして通過車両の増加に対する危惧が事業協力を得られない主な理由として考えられます。

このように、密集市街地の整備には、行政と住民の皆様との協働により進めていく必要がございますが、総論賛成・各論反対という事態に陥りやすいことが、密集市街地整備の難しさと考えます。

 

3.密集市街地の整備をどう進めるのか

密集市街地整備の方向性

第3に、密集市街地の整備をどう進めるのかについて5点、伺います。

市街地整備にはさまざまな方法があります。一つは、土地区画整理事業や再開発事業のように既存の建物を取り壊して街を一体的に再整備する方法です。

向洋駅周辺土地区画整理事業は、事業面積が約12.2haで、当町の「都市的土地利用」地の約2.5%、住宅用地の約5%にあたります。

2002年に事業計画を決定し、既に16年が経過し、JR高架化事業の遅れが原因ではありますが、事業の終了まであと十数年かかるとみられています。計画決定から完成まで30年余。事業費も計画通り収まって177億円。今年の一般会計予算とほぼ同規模。時間も経費もかかり、移転する住民の方々も大変な苦労をされる。

広島駅南口再開発も昨年(2017年)ようやく完了しました。ABCブロックあわせて総事業費約1200億円。1981年に基本計画を策定してから完了まで36年かかり、もともといた住民や店舗はほとんど転居しています。

容積率を緩和して高い建物を建てることは、周囲に広い土地がなければ日照、採光、強風などの点で周辺地域の環境悪化をもたらします。密集市街地においては土地の高度利用は追及せず、青空の見える空間のよさを維持しながら建替えを進めていくことが大切ではないでしょうか。

区画整理事業や再開発事業を一律に否定するものではありませんが、これらの整備事業は大きな犠牲を伴います。したがって、家屋の全面除却を前提とするスクラップ&ビルド方式は密集市街地整備において相応しくなく、住民のみなさんが今住んでいる所に住み続けながら整備していく方法をとるべきだと考えます。

そこで伺います。

③密集市街地整備において、区画整理事業や再開発事業のような方法は適当でないと考えますが、町としての見解をお聞かせ下さい。(④と併せて答弁されました)

府中町の密集市街地整備に当たって、私は以下の3つの観点が重要だと考えます。

(1)修復型まちづくり

第一に、「修復型まちづくり」という手法です。

家屋の全面除却を前提とするスクラップ&ビルド方式、区画整理や再開発とは異なる手法として「修復型まちづくり」があります。
「修復型まちづくり」とは、家屋等の全面除却を前提にしないで、家屋1軒1軒の建替えや共同化を誘導し、災害時の避難路としての行き止まり道路の解消や、消防活動に必要な最小限の道路拡幅、さらに災害時の地下貯水槽と日常のコミュニティ活動の拠点としての小広場整備などを行います。
「修復型まちづくり」は、住民の合意を重視した計画を基に、家の建替えに合わせて少しずつ街を改善していく、いわばリフォーム型、リハビリ型ともいえる街づくりです。

この「修復型まちづくり」は、「連鎖のまちづくり」とも言われています。まずできるところから始め、道路づくり、広場づくりなどのまちづくりを進めようという考え方です。複数の小規模な自力による建物更新事業を促し、 それらが持続的に繋がり面的に整備が拡がるようにしていきます。

家の建替えは平均30年と言われていますので、修復的なやり方であっても、上手に連鎖することができれば少しずつではあっても、もともとの町の良さを残しつつ、30年のうちに安全で暮らしやすい街になっていくでしょう。30年は決して短い時間ではありませんが、区画整理や再開発も30年ぐらいかかるわけですから、「修復的まちづくり」がとりたてて時間がかかるということはありません。

太子堂2・3丁目のまちづくり

世田谷区太子堂2・3丁目地区は、この「修復型まちづくり」によって少しずつ街を改善していきました。1983年に事業を導入したときの建物不燃化率は31.0%、18年経った2001年は53.8%、2007年53.2%、2011年58.9%と着実に伸ばしています。不燃領域率も2001年59.3%から2011年63.4%に4.1ポイント伸びています。

太子堂のまちづくりの特徴のひとつに、「小さな公園(ポケットパーク)」があります。1984年、区が宅地だったところを用地取得し、「手づくり」「土を残す」「自主管理」による広場(トンボ広場、136,4㎡)が作られました。その後、「メダカ広場」、「だんだん広場」「すずむし広場」などが作られ、2011年までに広い公園も含めるると23か所が整備され、一人当たり公園面積は1983年0.43㎡から2011年1.88㎡へと4倍以上になっています。密集市街地につきものの圧迫感の緩和や地域コミュニティの憩いの場としての役割を果たしています。

このように、太子堂2・3丁目地区では、建替促進、公園・通り抜け整備などが着実に進んでいます、

そこで伺います。

④密集市街地整備においては、以上申しました「修復型街づくり」「連鎖の街づくり」がふさわしいと思いますが、町としてはどのように思われますか。

建設部長 3番目のご質問、『密集市街地整備における区画整理事業や再開発事業のような面的な整備手法の適用について』と4番目のご質問、『密集市街地整備における「修復型まちづくり」と「連鎖のまちづくり」』を併せてご答弁させていただきます。

密集市街地の安全性を確保するためには、
○避難路及び緊急車両の進入路を確保するための道路整備
○個々の住宅の建替え及び耐震化・不燃化
○延焼を食い止める延焼遮断帯や公園等のまとまった空地の確保
という3つの観点から 総合的に施策を展開していく必要がございます。

現在、当町においては密集市街地の安全|生の確保に向け
①向洋駅周辺土地区画整理事業
②補助街路整備事業
③狭あい道路整備事業
④住宅の耐震診断・耐震改修・リフオームの補助事業
の4つの事業を進めているところでございます。

これまでの密集市街地の整備では、区画整理・再開発事業のように古い建築物を取壊し、区画を整え道路を整備するといった面的な整備手法が採用されてまいりました。このような面的整備手法は、立地特性や費用対効果などから、適用できる地区は限定されてまいります。
当町では、平成24年度から狭あい道路整備事業、平成29年度からは住宅の耐震・リフォーム補助事業といった、議員の言われる既存のまちなみを残しつつ、地域住民の理解と協力を得て、安全性と暮らしやすさの両立を目指した事業を展開しております。
狭あい道路整備事業の整備実績は、先ほど申し上げましたとおりでございますが、現在は事業区域拡大に向けて検討を行っているところでございます。
また、住宅耐震リフォーム補助事業では、昨年は事業初年度という事もあり1件の補助でございましたが、今年度に入り3件のリフォームの申請を受け付けております。
議員ご指摘のように、こうした事業は住宅1戸の建替え等にあわせた事業であり、なかなか効果が見えずらいものではございますが、30年50年といった長期スパンで着実に事業を進め、密集市街地の安全性の確保に努めてまいりたいと考えております。

(2)府中町のよさ 路地を生かす

ふたみ議員 第二の観点は、路地を生かすことです。路地は狭隘道路であり、狭隘道路を拡幅して街の防災性を高めることが密集市街地の整備には欠かすことができません。

しかし、路地には路地のよさがある。そして路地は府中町の魅力の一つです。路地は安らぎや懐かしさを人に与えます。路地は自動車が少ないので、学校帰りの中学生が別れを惜しんで十字路で長話をしていたり、行き止まりの道では小学生がボール遊びをしている。そんな光景を目にします。石井城の出合清水(あるいは今出川清水)も路地に面しているからこその風景です。

このように路地には人間らしさ、人間くささがあると思うのです。1990年代にバブル経済がはじけて、路地が注目されるようになりました。尾道市や東京の神楽坂、谷中など、路地のよさが評価され、路地を生かした街づくりが進められています。

イオンモール広島府中にあるフードコートとレストラン街の名前は「ROJIDining(路地ダイニング)」です。イオンモールが報道関係者に配布した資料には「路地から漏れ聞こえる賑わいや人々の笑い声に思わず足を運んでしまい、はしごをしたくなってしまうような路地空間をイメージ。モールを街に見立て、一歩入り込む先にある魅力ある路地空間を演出しています」「エリア毎の通路はその名のごとく《路地》を彷彿とさせる通路が適度に空間を保ちます」とあります。路地の街、府中町にあるイオンモールだからこそ付いた名前ではないかと想像しております。私の住んでいる集合住宅の名前は「ヴィコロ宮の町」です。ヴィコロ(Vicolo)とはイタリア語で路地。家主さんのこの町への思いが伝わってきます。

密集市街地整備と「路地を生かす」ことは相反することですが、どの道路も幅員を広げるということではなく、街の安全を確保しつつ路地も残して府中町らしい街づくりをしていく必要があるではないでしょうか。

 ▼路地を守った法善寺横丁

密集市街地整備おいて路地を残すことは不可能ではありません。路地を守った街の一つに法善寺横丁があります。

2002年、法善寺横町は火事になりました。類焼した法善寺横町は道幅が2.7mで、建替えるためには道路の拡幅が必要です。しかし、この道幅の「狭さ」こそが、夫婦善哉(めおとぜんざい)の舞台にもなった法善寺横町の命てあり、「すれ違えは肩が触れ合う狭い路地を守ってほしい」との声があがりました。

結果的に、建築基準法上の「連担建築物設計制度」※の認定を受け、建築協定により防火性も確保して、法善寺横丁の心地よさを守ることがてきました。飲食街と住宅地の違いはありますが、路地を残し、路地を生かすことができることの一例として紹介いたしました。

(※)狭小な敷地が多くあって基盤が十分に整っていない市街地を対象に、一定の区域内において複数の敷地・建物(既存建築物を含む)を同一敷地内にあるものとみなし、各建築物の位置及び構造が安全上、防火上、衛生上支障ないと特定行政庁が認めるものについては、道路斜線制限などの建築規制を適用するもの。

そこで伺います。

⑤当町の密集市街地整備において、安全を確保することを前提にしつつ、府中町らしい、路地を生かす街づくりが必要だと思いますが、町としてはどのようにお考えですか。

建設部長 路地については、議員ご指摘のとおり、多くの魅力を持っております。しかしながら、魅力のある路地は、4m未満の狭陰道路であり、防災機能は高くはございません。魅力ある路地を残したとしても、最低限必要な防災機能は備えておく必要がございます。

魅力ある路地を活かしたまちづくりを行うための、主な現行制度として、建築基準法に開しては、議員も述べられました「道担建築物設計制度」などがあり、都市計画法に関しましては、「街並み誘導型地区計画」がございます。

これら現行制度は、古い街並みや商店街での事例が多く、一般住宅が立ち並ぶ密集市街地での実施は、事例も少なく地区内の高いコミュニティカが必要となってまいります。

密集市街地の問題は、先にも述べましたとおり、大規模な火災に繋がる可能性、道路閉塞により避難経路が喪失してしまう可能性があるということでございます。

当町における密集市街地の整備については、まずは防災機能の向上という課題解決を第一に考えたまちづくりを推進して参りたいと考えております。

(3)景観を整えていく

第三の観点は、街の景観を整えていくことです。

府中町のよさを残しつつ美しい街並みをつくっていく。一般的に美しい街並みの条件として、①樹木など緑があること、②敷地を塀などで囲むのではなく、街路と敷地を区切らない開放的な外構、③建物そのものは個性的であっても、色調や素材をある程度揃えていくこと、などが挙げられています。

私有地にどのようなものを建てても自由だという考え方もありますが、それぞれの住まいの外観は、プライベートなものであると同時に街並みをつくるという公共性もあわせもっています。強い規制をかけることはなじまないと思いますが、住民どうしの自主的な申し合わせによって街並みを整えていくことはできます。

また、呉市のように「美しい街づくり賞」を設けるという方法もあります。呉市の「美しい街づくり賞」は、周辺の景観に配慮し、魅力あふれる都市景観づくりに貢献している建物や壁画、サイン、オブジェなどの工作物、そして、心の豊かさを感じさせるまちづくり活動、それに貢献する作品や取り組みに対して、毎年1回選考し表彰。すまい部門、たてもの部門、まちなみ部門、リノベーション部門、まちづくり部門という5つの部門があります。

そこで伺います。

⑥当町の密集市街地整備のさい、あるいはこれは町全体にもかかわりますが、市街地整備にあたって景観を整えていく工夫がいると考えますが、この点についての町の見解をお聞かせ下さい。

建設部長 町では、平成6年に美しく豊かな景観の形成を目指して「公共事業等景観生成マニュアル」を策定いたしております。
これは、公共事業等による景観形成が景観の骨格づくりとなり、町全体の景観生成の先導的役割を果たし、住民・事業者・行政の景観づくりに対する意識高揚に繋がることからマニュアル化したものでございます。

景観形成の方針としては、住民・事業者・行政の相互協力によって、はじめてバランスのとれた優れた景観の生成が実現されることから、1.府中町の特性を理解し、生かした景観形成に取り組む。 2. 人を基準にした景観形成に取り組む。 3. 住民・事業者・行政が一体となって景観形成に取り組む。の、3つの方針を掲げております。

当町といたしましては、マニュアルに基づき、府中町の地域性・住民性にあった景観形成に今後も取り組んでまいります。

住民合意の街づくり

密集市街地の整備やこれからの街づくりは、なによりも住民合意で進めていくことが大切だと思います。

住民合意で進めていくために、全国各地で「まちづくり協議会」をつくって活動しています。まちづくり協議会は、まちづくりを推進するための組織で、まちづくりの方針や建物に関するルールなどについて地区内で話し合いを重ね、合意した方針やルールを地区まちづくり計画の素案としてまとめるなどの活動をしています。

先ほど紹介した太子堂2・3丁目地区ですが、1982年に「まちづくり協議会」をつくって「修復型まちづくり」を進めてきました。太子堂2・3丁目地区まちづくり協議会の特徴を会自身がつぎのようにまとめています。

協議会の役割
①住民の声を背景にまちづくりを話し合う場とする。
②まちづくりに必要な調査・研究を行う。
③まちづくりの計画案をつくり区長に提言する。
④その他、まちづくりの活動を進める。

まちづくりの目標
①防災性能の向上をはかる。
②快適な居住環境の形成をはかる。
③文化的なまちづくりを推進する。

 ▼協議会メンバーの構成
①太子堂地区及び周辺の関係者は誰でも自由に参加できる。
②地区外の方でも希望があれば、オブザーバーとして参加できる。
③会は原則として公開とする。

(「住民参加のまちづくり、25年のあゆみ」)

協議会にかかわったメンバーの感想を紹介します。

「トンボ広場の最初の住民説明会のとき行政の担当者から提案された図面がレンガ舗装であったのに対して、参加者から「堅すぎます、土の地面を」という意見が出され、若い担当者が『僕はこういう教育しか受けてないんです』」と思わず涙ぐんだ場面が忘れられません。公園づくりも参加も全てはじめてのできごとのはじまりでした」

「どうしたら自分たちの住んでいる街がよくなるのか住民と行政、住民と住民とが激しく、あるいはユーモアを交えて本音で議論し、そうした議論の過程で住民と行政が一体となり活動した結果、遊び場用地を区が取得し住民の方々が自分達の参加を含めた遊び場の管理方法の提案を行い、その成果として遊び場ができたことです。この結果住民と行政の信頼関係が生まれ、以降のまちづくりが進展しました」

「協議会を設立したとき、構成員が居住歴の旧い人、比較的新しい人、住宅地の人、商店街の人など、防災の視点から利害をこえて一堂に会し、自分達の住んでいるまちの空間やコミュニティを考え、どうしたらよくなるかを話し合えたことが印象的です」

「やっぱり人が印象に残ります。協議会をやるうちに参加者の方がどんどんまちづくり人になっていく姿がすごいなあと思いました」

(「太子堂のまちづくりを考える 関係者の証言(20年のあゆみ)から」)

協議会の運営はなかなか大変なようですが、住民参加の街づくりに欠かせないものだといえるでしょう

街づくり条例
この協議会の存在を区として制度的にバックアップしたのが、1982年に制定された「世田谷区街づくり条例」です。街づくり条例は、区民と区との協働作業として、住民参加によるまちづくりを制度的に位置づけたものです。
特に重点的にまちづくりを進める地区を、区議会の議決で「街づくり推進地区」として指定して、積極的にまちづくりを推進することになりました。 区が協議会を支援することや協議会からの提案を尊重することを条例は定めています。太子堂地区のまちづくりは、この「街づくり条例」によって進められてきたものなのです。
条例は、3段階の街づくりルールをつくっています

①「区民街づくり協定」(区独自の制度)~住民どうしで任意に内容を決められることが特徴で、区民が取り決め、区が登録します。
②「地区街づくり計画」(区独自の制度)~地区計画よりきめ細かく決められるのが特徴で、対象となる区域内の住民や地区街づくり協議会が原案を提案し、区が策定します。
③「地区計画」~内容は限定されますが、法的拘束力が強いのが特徴。対象となる区域内の住民や地区街づくり協議会が素案を出し、区が策定します。

法的拘束力のゆるやかな「協定」、行政指導ができる「地区街づくり計画」法的拘束力の強い「地区計画」の3つを実情に合わせて活用し街づくりをすすめていきます。地域によって様々な個性があり、街の個性を生かしつつ、より住みやすい街にしていくことが求められており、そこに暮らしている住民が中心となる「地区街づくり」が重要です。また、そういう街づくりを支えるのが街づくり条例です。

最後の質問です。

⑦密集市街地の整備やこれからの街づくりは、なによりも住民合意で進めていくことが大切です。住民合意で進めていくために、「まちづくり協議会」方式やそれを支える「街づくり条例」が必要だと考えます。町の見解をお聞かせ下さい。

建設部長 当町におけるこれからのまちづくりについては、都市計画マスタープランにおいて、第一に住民と行政との協働によるまちづくりを推進することを、取り組むべき施策の方向性として示しております。

協働による街づくりを進めるうえで、住民の役割として「自分たちのまちは自分たちで、つくり、守り、育てる」という発想のもと、主体的に地域づくり、地域活動などに参加・協力していただくことが大切であり、町といたしましても、住民意向の把握・反映に努め、都市計画法など、法に基づく制度の運用を図り、道路、公園など都市基盤の整備、街づくりを推進することが、重要な役割となってまいります。

また、地域・地区の望ましい市街地を実現するため、住民からの発議による地区計画などのまちづくりに関する提案があれば、積極的に協力して参りたいと考えております。

答弁は以上です。よろしくお願いいたします。

→2回目の質問&答弁へつづく


今回の質問作成にあたっては以下の文献を参照させていただきました。記して感謝いたします。

《参考文献》
大屋鐘吾・中村八郎『災害に強い都市づくり』新日本出版社、1993年
五十嵐敬喜ほか『美の条例 いきづく町をつくる』学芸出版社、1996年
五十嵐敬喜『美しい都市をつくる権利』学芸出版社、2002年
黒崎洋二ほか『密集市街地のまちづくり』学芸出版社、2002年
西村幸夫編著『路地からのまちづくり』学芸出版社、2006年
青木仁『日本型まちづくりへの転換』学芸出版社、2007年
宇杉和夫『まち路地再生のデザイン』彰国社、2010年
中村八郎『新たな防災政策への転換』新日本出版社、2012年
梅津政之輔『太子堂・住民参加のまちづくり』学芸出版、2015年
UR密集市街地整備検討会編『密集市街地の防災と住環境整備』学芸出版社、2017年
八木寿明「密集市街地の整備と都市防災」『レファレンス』2008.5
栗間智子「世田谷区太子堂の住民参加のまちづくり」2017年、早稲田大学文化構想部ゼミ論文
ほか

 

ふたみ伸吾 ほっとらいん

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