府中町から豪雨土砂災害を考える ――安倍政権と湯崎県政による政治災害
●はじめに
7月6日から7日にかけ西日本を中心に豪雨で土砂崩れや水害が相つぎました。広島県内の被害状況は死者108人、安否不明者12人、住宅被害4715棟、避難されている方が1200人です(7月16日現在。中国新聞集計)。
府中町では、10日、榎川が氾濫しました。上流から流れてきた土砂と流木が橋でせき止められ、本町3丁目に濁流が流れ込んだのです。県内では広島市の安佐北区口田南、安芸区畑賀、矢野、熊野町、海田町、坂町、呉市、三原市、福山市などで大きな被害が出ています。
2014年にも広島市で豪雨災害が起き、74人もの死者が出ました。そのとき、「百年に一度の豪雨」とも言われましたが、わずか4年しか経っていません。
●河川予算を5分の1以下に
今回の豪雨災害は、自然災害ではありますが同時に、湯崎県政と自民党政権による政治災害です。まず湯崎県政についてみてみましょう。広島県はこの間、河川予算と砂防予算とをずっと削ってきました。
榎川は広島県が管理する河川であり、河川改修が必要なことは分かっていました。しかし、改修工事は遅々として進みません。なぜ進まないのか町に訊くと県の予算がつかないからだといいます。
県の予算を調べて驚きました。2000年度に378億円あった河川事業予算が、今年度(2018年度)は72億円、5分の1以下に減っています。これでは榎川改修に予算が回ってくるはずもありません。今回の氾濫は寺山橋に流木と土砂が詰まったことが直接的な原因です。予算がつき、河川改修がなされていれば災害は起きなかったはずです。
(7月11日、下流から寺山橋を撮る。土砂が埋まりポンプで水をくみ出して下流に流している)
●喉元過ぎれば削られる治山予算
もう一つは、治山の予算です。
広島県内には崩れやすい危険な急傾斜地が全国で最も多く、31987か所もあります。そのうち対策が必要なのは11372か所。その7割が未整備です。昨年は14カ所しか整備できず、1年の進捗率は0.1%にすぎません。
5月11日の広島県議会・社会基盤整備対策特別委員会で、日本共産党の辻つねお議員が「このペースだと整備完了に何年かかるか」と問うたところ「約200年」と砂防課長は答弁しました。なぜ200年もかけないと整備できないのか。グラフをみれば一目瞭然です。危険な急傾斜地ワースト1であるにもかかわらず砂防予算をずっと減らしてきました。
1995年には170億円あったものが毎年減って、1999年には140億円になりました。
この年の6月29日、広島市佐伯区や呉市などで豪雨土砂災害が起き、死者31名,行方不明者1名,家屋全壊154戸という被害が出ます。豪雨災害があったので、翌2000年度と2001年度は砂防予算が増えました(2001年度:180億円)。
しかし、災害から3年が経った2002年度から再び減りはじめ、2014年度には2001年の3分の1である59億円まで落ち込んだのです。そして、その2014年に広島市安佐南区、安佐北区を襲った豪雨災害が起きます。災害の翌年、2015年度は、82億、2016年度は97億、2017年度が105億円。ようやく100億円を超えたかと思ったら3年目の今年度(2018年度)は97億円へとまた下がる。
災害が起こった後2~3年は砂防予算が増えるけれども喉元過ぎれば予算を削る。ですからグラフのあるように、デコボコがありながらも長期的には減少傾向となっているわけです。
榎川上流のみくまり峡の砂防ダムが溢れて決壊しました。広島県は砂防ダムを造るには造ったが日常的な整備はほとんどしていない。砂防ダムは土砂によって埋まりますので、ときどきその土砂を取り除かなければなりませんが、それをほとんどしていない。だから、今回のような大雨が降ると簡単に溢れて土砂と流木が大量に流れてくる。砂防ダムはあるが砂防ダムとしての機能をもっていないのです。
●小泉構造改革によって激減
国の治山・森林整備予算はどうでしょうか。
(林野庁編『林業統計要覧』『森林・林業統計要覧』の各年度版より)
森林整備予算は2002年から、治山予算は2003年から激減しています。1998年には5669億円あった森林整備予算は2018年度には1203億円となり5分の1。治山予算は1993年に3073億円でしたが2018年度は、597億円で、やはり5分の1です。これでは必要とされる山の管理ができるはずがありません。
2012年度は予算が増えていますが、これは前年の東日本大震災によるものだと思われます。小泉構造改革によって治山・森林整備予算は大幅に削減され、それが安倍政権のもとで引き継がれている。「苛政は虎よりも猛し」といいますが、ひどい政治は、私たちに災(わざわ)いをもたらすのです。
「国の宝は山也。山の衰えは則ち国の衰えなり」
「山川は国の本なり。木草しげき山は洪水の憂いなし」
林野庁ホームページに紹介されていた江戸時代の武士と学者の言葉です。
いまこそこの先人の知恵に学ぶときです。
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