名ばかり期末手当は法の潜脱行為

名ばかり期末手当は法の潜脱行為

月給を削って期末手当を出すというアイデアがどこから出たのかは知りませんが、民間企業で同じようなことをしている会社をみつけました。総務大臣などを歴任し、現在も、安倍内閣のもとで「日本経済再生本部産業競争力会議」議員、「内閣府国家戦略特別区域諮問会議」議員をつとめる竹中平蔵氏が会長の派遣会社大手のパソナです。

無期雇用に転換した派遣社員に、通勤手当の支給を開始したのと同時に基本給の時給を減額した。通勤手当か期末手当かが違うだけで、手当の原資を月給、基本給の削減に求めるやり方は同じです。

政府は働き方改革の目玉として「同一労働同一賃金」を掲げています。しかし、パソナや当町の期末手当のように、手当支給の一方で基本給、月給を下げるなど抜け道を行く動きが広がれば、その理念は根本から揺らぐことになります。

中小企業における「パートタイム・有期雇用労働法」の適用は2021年4月からです。それまでに経営者はいろいろ検討するでしょう。

経営コンサルタントに相談するところもある。

「社長さん、実は一円も人件費を増やさずボーナスを支給することができるんです」といって基本給を削りそれを原資にしてボーナスを出すやり方を説明する。

社長は、「それは違法でないのですか」とコンサルタントに聞くことでしょう。にわかには信じがたい話です。そこでコンサルタントは胸をはって「なにしろ竹中平蔵氏が社長のパソナが始めて、府中町もやっている。何ら問題はありません」と答えます。

経営者にとって、月給を削って期末手当に充てるという府中町方式は朗報です。経費、人件費が増えない。しかし、労働者には何らメリットがなく、名ばかり形ばかりのボーナスが「支給」されるだけで月々の暮らしは大変になる。

法令等による規制を、法令で禁止されている方法「以外」の方法により免れることことを「潜脱行為」といいますが、今回の期末手当支給のやり方は、まさに「潜脱行為」にあたります。違法ではないかもしれないが、法の網を潜(くぐ)るものに他なりません。

ことは府中町約130人の嘱託職員の問題に留まらない。町内はもとより周辺市町、広島県内、そして全国の企業と労働者に与える影響は計り知れません。全国で府中町方式が蔓延することになります。町内外の民間企業で働く非正規労働者への影響は大です。

「それぞれの企業が判断し実施することで町は関係ない」などと言うことは出来ません。月給を削って期末手当に充てるという府中町方式は「潜脱行為」であり、町がその「潜脱行為」にお墨付きを与えることに他ならないからです。自治体が潜脱行為の悪い手本を示すなどということがあっていいはずがありません。

府中町方式によって、パートタイム・有期雇用労働法における「不合理な待遇差の禁止」、会計年度任用職員制度の目的である「適正な勤務条件と常勤職員との均衡」はいずれも骨抜きになります。期末手当のない1400万非正規労働者、そのほとんどが府中町の嘱託職員と同じく年収200万円以下です。

何かを増やせば何かを減らすようなことが認められれば、処遇改善、待遇差の是正は絶望的です。

非正規職員の処遇改善に後ろ向きの府中町

最後になりますが、質疑でも申しました長崎県佐々町のことをもう一度述べておきたいと思います。

非正規(192人)が職員全体の6割強を占めている佐々町は、来年4月以降、期末手当を支給し、その負担は約5500万円。府中町が嘱託職員の月給を下げずに年額2.6か月の期末手当を支給するために必要な額は約5000万円ですから、佐々町の方が府中町より500万円、1割ほど多い。

町の予算規模(一般会計)は、佐々町が約60億円で府中町はその3倍、昨年度は約170億円で今年度は約190億円。佐々町が出すことができて、府中町がなぜ出すことができないのでしょうか。出せないのではなく、出したくない。

来年度会計年度任用職員となる嘱託職員の処遇改善にはお金を使いたくないということではないでしょうか。

会計年度任用職員制度とともにパートタイム・有期雇用労働法の趣旨に背き、町の嘱託職員のみならず日本全国の非正規労働者の処遇改善、待遇差の是正に水をさす、第58号議案「府中町会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例の制定の一部改正について」反対するものであります。

以上で反対討論を終わります。


中国新聞記事 非正規ボーナス減額へ 広島県府中町、月給額に影響で労組反発

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください