「国土強靱化」路線で府中町は「強靱」な町となるのか? 2021年3月議会一般質問

4.国土強靱化地域計画と府中町

(1)国土強靱化地域計画

国土強靱化基本法は、都道府県や市町村が「国土強靱化地域計画」をつくることを求めています*1。

国土強靱化地域計画策定ガイドライン(第7版)基本編』(以下、「ガイドライン基本編」)は、地域計画の位置づけについて次のように述べています。

地域計画は、国土強靱化の観点から、地方公共団体における様々な分野の計画等の指針となるものであり、国における基本計画と同様に、地域における国土強靱化に係る計画等の指針(いわゆる「アンブレラ計画」(21 頁図))としての性格を有するもの(以下「国土強靱化に係る指針性」という)です*1。

「アンブレラ計画」とは、他の計画を傘下に収め、指針となる計画を意味しているようです。「ガイドライン基本編」の図によると、地域計画は、各々の自治体の計画の中で最も上位に位置しています(各自治体の総合計画より上位か総合計画と並列)。それゆえ他の計画は地域計画に基づいて見直すことが求められます。

「ガイドライン基本編」は、「地域計画の策定、進捗を管理することによって、庁内の意識の共有や推進力の出現、関係府省庁の交付金・補助金の活用などにより、各種の施策(事業)のスムーズな進捗が期待できます」*2と述べ、国土強靱化に関わる交付金・補助金を受ける要件としています。「スムーズな進捗が期待できます」という思わせぶりな書き方をしているのは、地域計画がなければ交付金・補助金を出さないが、あったとしても必ず出すわけではないという意味でしょう。

この交付金・補助金の交付は、「重点化」「要件化」すると言います*3。

昨年度(2020年度)は、地域計画に基づき実施される取り組み、明記された事業に対し、計画の有無を「一定程度配慮する」という段階から、「予算を重点的に配分し優先的に採択する」というように位置づけを引き上げました。

今年度(2021年度)は、 地域計画に基づき実施される取り組み、明記された事業であることを交付要件とする「要件化」を検討しています。地域計画に基づき、事業が明記されていなければ交付金・補助金が得られないということです。

「見える化」も強調され、「重点化」の状況について実績をとりまとめて公表することになってり、「重点化」の支援メニューも提示されています。社会資本整備総合交付金(国土交通省)、学校施設環境改善交付金(文部科学省)、保育所等整備交付金(厚生労働省)などのメニューが、国土強靱化と結びつけられたかたちで提示され、それを上手に取り込んで地域計画に盛り込むことが求められています。

取り組み事例として、治山設備の整備、岸壁の耐震などとともに、鳥獣被害防止・捕獲、「道の駅」の整備、光ケーブル化の推進、農道、林道整備、バイパス道路整備なども紹介されていますが、国土強靱化とどういう関係があるのか分からないものもあります。

老朽化施設を更新し、安全・安心な町づくりをしていくためには、この地域計画を策定し、一つひとつの事業が採択されることが必要です。このたび、当町の地域計画案がまとまり、パブリックコメント(意見公募)も始まりました。

そこで質問です。

②府中町における「国土強靱化地域計画」のあらましについてご紹介ください。


*1)「地域計画の策定は法律上、義務規定とはなっていませんが、地域の強靱化を総合的・計画的に実施することは、地方公共団体の責務として定められています」、『国土強靱化地域計画策定ガイドライン(第7版)基本編』22頁。

 

 

(2)公共施設等総合管理計画

総務省は、2014(平成26)年、各自治体に対し、公共施設等総合管理計画を策定し、公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進するよう要請しました。 この要請を受け、当町は2017(平成29)年に「府中町公共施設等総合管理計画」を策定しています。

府中町は公共施設が県内で最も少なく、大規模改修が必要と言われる築 30年以上の施設が6割で、建替えが必要といわれる築 60 年以上の施設も3%ほどあるというのが現状です。

今後の見通しとしては、計画的な維持管理、長寿命化によって、建替えの実施時期を80 年に延ばすことができたと仮定した場合、今後40 年間の更新費用総額は300.5 億円から208.5 億円となり、92 億円の削減、また、年平均では7.5 億円から5.2 億円となり、2.3 億円の削減ができると試算しています。それに伴い、町債の償還額や一般財源額も削減することができる見込みです。

(3)維持保全計画(建築物)

この府中町公共施設等総合管理計画のもとに、昨年(2020年)、「維持保全計画(建築物)」が改訂されました。

町内の82施設・建物について、統一的な考え方に基づく現地踏査、各種評価値の更新、概算事業費の算定等を行なって全体の中での優先順位等も考慮した計画です。現地踏査が可能な79棟全てを調べ、現状を目視確認したうえで、劣化度評価・危険度評価を更新したそうです。200頁を超す「維持保全計画」を見ますと、大変な苦労されたことが分かります。

この調査に基づいて、改修優先順位も決められました。劣化度係数はa,b,c,d,d+,d++の6段階で、aは良好、bはおおむね良好、cは耐用年数に近づいている、dは耐用年数に達している、d+は他部位への影響が予想される、d++が他部位への影響または損傷個所が確認できる、となっています。

ランクd++から改修することになっており、該当するのは19棟、次のランクd+に16棟が該当しています。耐用年数に達しているdランク17棟です。82棟のうち5棟は解体ないし解体予定ですので、そのを除きますと公共施設の7割近くが何らかの改修をしなければならない状況にあります。

小中学校の校舎、屋内運動場、給食棟などが軒並み老朽化しています。緑ケ丘中学校の外壁の汚れについて、議会でも度々指摘されてきました。私もときどき緑ケ丘中学校を訪れますが、見るたびに「なんとかならないのか」「なんとかしてあげたい」と思うのです。外側ばかりか内側も大変です。廊下や階段は張ってあった樹脂が剥がれ、代わりに緑のペンキが塗ってありました。ドアが開かない教室もあり、来年度一部直すそうですが、老朽化すると次々、あちこちが壊れていくわけです。

府中南小学校、府中東小学校、府中北小学校の老朽化も著しい。

本年2月に策定された当町の「第4次総合計画 後期実施計画」に、府中小学校、府中南小学校、府中東小学校、府中北小学校、府中緑ケ丘中学校の長寿命化を図るという計画が盛り込まれました。

そこで質問です。

③府中町「維持保全計画(建築物)」をどう具体化していくのでしょうか。学校内には複数の要改修建築物があり、学校単位で一括すると「維持保全計画」にはあります。この点を含め、現時点で決まっていることがあればお答えください。

 

 

(町立緑ヶ丘中、教室のドア)

(緑ヶ丘中、廊下に貼ってあった樹脂は剥がれ、コンクリートがむき出しに)

(緑ヶ丘中、外階段)

 

総務企画部長 

令和3年度から令和7年度を計画期間とした「維持保全計画」は、公共施設の適切な維持保全を目的として、技術職員による現地踏査を踏まえた劣化度の評価、また、その改修費、更には改修の計画などを定めています。

「後期実施計画」では、財政推計から、「維持保全計画」どおりの改修を実施する財源は確保できないため、放置することにより躯体に悪影響を及ぼす、屋根・外壁の劣化度が高い施設、具体的には、屋根・外壁の状態がd++とd+のほとんどの施設に係る改修費を計上しているところです。

「維持保全計画」で取り入れている、学校単位での複数建築物の一括改修は、「後期実施計画」でも採用しており、令和3年度の府中小学校は校舎と体育館、令和4年度の府中南小学校は校舎と留守家庭児童会と府中南体育場、令和5年度の府中東小学校は校舎と体育館、令和7年度の府中北小学校は校舎と体育館について、それぞれ計上しています。

「国土強靭化地域計画」の策定よりも前に、「後期実施計画」の策定を終えた形とはなりましたが、「後期実施計画」に計上した事業の中で、「国土強靭化地域計画」に資する事業も多くございます。

「後期実施計画」を着実に推進していくことが、国土強靭化への取り組みにつながるものと考えています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください