「国土強靱化」路線で府中町は「強靱」な町となるのか? 2021年3月議会一般質問
《2回目》
一般市町村向けの公共事業予算は削られたうえ、国土強靱化を図るうえで、「長寿命化計画」、「民間資金の積極的な活用」、「立地適正化計画」といったハードルを越えないと国の予算がなかなかつかないわけです。実は、国土強靱化を阻むハードルは他にもあります。
●建設業者と建設労働者の減少
「国土強靱化のための3カ年緊急対策」(2018~20年度)の執行状況ですが、2019年度当初予算に計上した費用の支出率は、年度末時点で53.6%にとどまり、公共事業関係費の繰越額は2019年度において 3.9 兆円と2014 年度の 1.8 兆円に比べて2倍以上となっています*1。
財務省は、繰越額の「増加傾向が続くことは望ましくない」と言っていますが、なぜ多くの繰越額が生じるのか、それが問題です。
一つは、建設業における人手不足、技術者不足です。当町でも、公共工事が不調に終わることがあります。近年、技術者不足を理由に入札に参加しない事業者も増えています。
建設業就業者数のピークは1997年(平成9年)の約685万人でしたが2016年(平成27年)には492万人となり3割近くも減っています。建設業者数は1999年(平成11年)の約60万事業者がピークでしたが、2015年(平成27年)には約46万8000事業者となり2割減っています*2。1997年と2016年の比較で、技術者は41万人から31万人へ。技能労働者は455万人から326万人になっています*1。
国土強靱化予算がついても、その事業を実施する事業者、労働者がいない。小泉「構造改革」以後の急激な公共事業予算の減少により、建設業界全体が縮小した結果です*2。大型開発は続いていて、減った人手は、そこへ吸い寄せられ、普通の市町村の身近な公共事業をやってくれる業者と労働者が足りない事態になっているわけです。
●維持管理体制と技術系職員
もう一つの障害は市町村における維持管理体制の弱まり、具体的には土木部門の職員、技術系職員の減少です。
市町村全体の職員数は、1996(平成8)年度から2015(平成27)年度の間で2割減少しており、そのこと自体が問題ですが、土木部門の職員数は124,685人から90,967人へ3割も減っています。
その結果、技術系職員が一人もいない市町村が3割にのぼっています。技術系職員がいない市町村は、さまざまな工事を管理することができず、全て丸投げの外注となります。技術系職員の不在が災害復旧の遅れをつくり出しているのです。
総務省も「被災自治体からは、専門知識と経験の観点から、復旧・復興事業に従事する技術職員の派遣ニーズが高いが、充足していない状況」「土木職など技術職員の確保が課題」*3であることを認めています。
府中町は、十分とは言えないまでも、必要な技術系職員を確保しています。今後、施設の維持保全、防災、災害復旧など国土強靱化、安全で安心な町づくりを進めていくうえで技術職員をきちんと確保することが必要です。
そこで質問です。
①国土強靱化を進めていくためには、事業量が激変することなく建設業に安定的な仕事を確保すること、そこで働く労働者の労働条件を引き上げることが必要です。府中町単独では難しいと思いますが、広島県を要にして県内自治体が協力し合って安定的に公共事業が継続するような手立てを考える必要があるのではないでしょうか。
■財務部長
ご指摘のとおり、昨今、国全体で労働者人口の減少が問題となり、特に土木・建設業界において、人手不足が課題となっています。
業者側も現場監督や作業員が不足する中、多くの現場を抱えることができず、技術者不足を理由として、入札を辞退される事業者もございます。
国は土木・建設業界への発注時期が集中しないよう、発注時期の平準化を推進しており、当町においても、国の補正予算に対応した繰越予算や債務負担行為の活用をもって公共工事の平準化を図っています。
また、建設技能者等の処遇改善として、施工期間の設定に週休2日を前提とすることなど処遇改善に取り組んでいます。
県内自治体等との連携としては、国土交通省中国整備局、広島県土木建設局及び県内市町で構成する広島地域発注者協議会において、各市町等で取り組む項目として、①施工時期の平準化、②週休2日が取れるような適正な工期の設定、③ダンピング対策としての適正な最低制限価格の設定などを掲げ、広島地域(県域)として統一した取り組みを行っています。(事務局:国土交通省中国地方整備局及び広島県土木建築局)。
当町における業者選定は、建設工事指名業者等選定規定において、基本的な事項が定められており、その範囲内ではありますが、土木一式工事(6千万円未満)においては、町内の地域振興、また、事業者の育成という観点からも、今後も町内業者を優先的に指名していくことで、安定的な公共事業の継続を図ります。
②また、町の技術職員の確保も国土強靱化に欠くことができないと思います。技術職員の確保についての町としての見解を伺います。
■総務企画部長
町の技術職員は現在、管理職を除き、土木職23名、建築職7名です。
更に来月4月1日には、土木職1名の採用を予定しています。
議員ご指摘のとおり、国土強靭化に関して、技術職員は重要な存在であると考えています。
そのため、技術職員の退職に応じ、昨年度は2回、今年度も2回採用試験を実施したところです。
国土強靭化に資する「後期実施計画」の着実な実施に向け、引き続き適正な技術職員数の確保、またその配置に務めてまいりたいと思います。
《3回目》
町としても安定的な公共事業のため、発注する時期の平準化や建設技能者等の処遇改善を進めていることや、県内自治体などと「広島地域発注者協議会」の場でも取り組みをしていることが分かりました。さらに前へ進めていただきたいと思います。
当町の技術職員についても「重要な存在」であり、引き続き適正な技術職員の確保、配置に努めていただけるそうなので、よろしくお願いします。
以上で私の質問を終わります。
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