府中町の待機児解消のために(2) 12月議会 一般質問

2.府中町の待機児童数は深刻な事態

府中町における待機児童問題

では、わが町府中町の待機児童はどうなっているのでしょうか。県内市町の協力をえて状況をまとめてみました。

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今回、府中市は調査に協力していただけませんでした。待機児童が多いと思われる福山市や廿日市市のデータもありません。⑨保留児童数についての考え方も市町で違うようです。そのことを前提にしつつ、把握したデータの範囲内で県内市町と府中町の状況を比較してみます。

実数でみますと府中町の保留児童数、事実上の待機児童は128人ですが、これは広島市1,185人、東広島市181人についで3番目となります。

⑨待機児童数(保留児童)を⑪就学前児童数(0~5歳児:2015年国勢調査)とで割った⑬待機児童比率は、府中町4.08%、三次市1.82%、広島市1.81%。広島市の2倍以上います。世帯数との比較でみてもは府中町0.57%、東広島市0.22%、広島市0.21%で、府中町は突出しています。先ほど述べましたようにデータのない自治体もありますので暫定ワースト1位といったところでしょうか。

少なくても県内で待機機児童問題がそうとう深刻な自治体の一つであることは間違いありません。

保育園が絶対的に不足している

待機児童数は毎月変化しますので、調査する月がたまたま多かったり少なかったりという限界があります。府中町も10月1日には3人に減ったそうです。移ろいゆく待機児童の実態を捉えるために保育所等利用率と保育園充足率という2つの指標を使って考えてみたいと思います。
まず⑫保育所等利用率ですが、認可施設である公私立の保育園、認定子ども園、小規模保育所、事業所内保育所に通う子どもの数を足した⑦入所児童数を⑪就学前児童数で割ったもので、就学前の子どものうちどの程度、認可施設に入っているのかが分かります(表2)。

府中町は下から4番目、36.0%です。下から安芸高田市31.2%、大崎上島町34.9%、海田町35.8%、そして府中町となります。この1市3町は保育園に通っている子どもが3割台です。

利用率が低い理由は2つ考えられます。一つは保育園に預ける親が少ない。需要がないということです。大崎上島町は定員75人に対して入所児童数は73人で待機児童がゼロです。担当課に聞いたところ、町には3つの幼稚園があり、そちらに行かれる方が多いとのことでした。
もう一つは保育園が足りないので利用率が低い。これが府中町や海田町の場合です。

次に⑮保育園充足率です。⑥認可施設の定員合計を⑪就学前児童数で割ったもので、それぞれの市町の子どもの数に比べてどれだけ子どもを受け入れることができるのかを示しています。この充足率が低いのは下から、府中町31.2%、海田町34.0%、大崎上島町35.9%です。就学前の子どもに対して3割台しか認可施設がない。

高いのは、上から庄原市97.9%、神石高原町95.4%、北広島町86.1%です。保育園充足率が高い市町は、保育所等利用率も高い。利用率は、庄原市77.4%、神石高原町59.7%、北広島町81.1%で、待機児童もいません。利用率の高さは保育園定員数によって支えられている。供給が需要を生んでいるのです。

以上の検討から分かるように、府中町の待機児童は、調査した月がたまたま多かったからでもなく、ましてや、親がここでなければダメだとわがままを言っているからでもありません。

そのことは町の調査からも裏づけられています。

待機児童128人のうち、特定の園を希望している人が124人、育児休業中で復職が来年のため、いったん辞退した人が1人、入所後に求職活動を開始しようという人が2人、当初入所できる保育園を辞退し、幼稚園に通いながら待っている人が1人です。特定の園を希望して待っている124人の内訳は、幼稚園および認可外保育園等に通わせながら町内の認可保育園の入所を待っている人が31人。これから仕事を探す人が36人。家でめんどうみている人が57人でそのうちの39人は育児休業中です。(2017年9月1日現在)

幼稚園は保育時間が短い、認可外は保育料が高い。だから認可園に入りたいというのは当然です。そして、保育園に子どもを預けることができたら仕事をしたいという人がほとんどです。わがままでもなんでもありません。
府中町は就学前の子ども、約3,200人に対してわずか1,000人程度の定員しかない。幼稚園に通っている子どもは約1,100人。あとの1,100人は行くところがありません。

この1,100人のなかには、申込みをしてもどうせ入れないからと諦めてしまっている人たちがいます。申込みをする人はカウントできますが、この人たちがどのくらいいるのかその実数は分かりません。

メディケア生命保険の調査によれば、未就学児の母親の8割強が仕事に就きたいと考えています(「育児休業3年化と待機児童問題に関する意識調査」2013年7月29日)。これを府中町にあてはめてみますと500人ほどの方が就労を希望し、約700人の子どもが「潜在的待機児」であると推察されます(※)。

※3,200人(就学前児童数)-2,300人(幼稚園、保育所等利用児童数)=900人
900人÷1,69(児童のいる家庭の平均児童数)=533人(就学前児童をもつ母親の数)
533人×0.8=426人(就労を希望する母親の数)
426人×1.69(児童のいる家庭の平均児童数)=720人(推定・潜在待機児童数)

縷々述べてまいりましたが、ようするに人口5万2000人の町としてふさわしい保育園・保育施設が整備されていない。保育園の絶対数が足りない。ここに待機児童問題が起こる最大の要因があるわけです。

今後も増える保育需要

現在でも保育園・保育施設は足らないわけですが、今後さらにもっと足らなくなります。

2017(平成29)年の全国の保育園利用率は42.4%です。府中町の利用率は36.0%ですが、全国平均なみに利用率があげようとすれば1,330人分の保育園が必要です。現在の認可施設の定員合計は1,000人弱ですから約350人分以上不足していることになります。

しかも、利用率は年々上がっているわけですから、そう遅くない時期に50%に達することになるでしょう。すると、府中町は1,570人が入れるだけの保育施設が求められることになり、590人分が不足します(表3)。

政府は「男女共同参画基本計画」において25~44歳の女性就業率を2014年の70.8%から2020年に77%に引き上げるとしています。そのために必要な保育施設を32万人分整備するとした「子育て安心プラン」を発表しました。32万人分の整備計画について、2023年時点の女性の就業率を80%、保育の利用率を53.6%として試算。3割近くが保育園に申し込まないことを前提にした試算ですがそれでも必要な保育施設は1,680人分となり、700人分が足りません。

さきほどの「潜在的待機児」推定数700人と同数ですから、預ける保育園さえ用意すれば、すぐにでも達成できます。
政府の試算に対して野村総合研究所は、女性の就業率77%を達成するためには、88万6000人分の保育施設が必要であるとする別の試算を発表しています(野村総研「政府の助成就業率目標を達成するためにはどの程度の保育の受け皿が必要か」2017年5月29日)。
野村総研と同じ方法(※)で試算すると府中町で必要な保育施設は約2080人分です。あと1,100人分の保育施設をつくらないといけない。

(※)就学前児童数×子育てをしている女性の就業率(73.0%)×(1-共働きでも保育サービスの利用を希望しない児童の割合9.0%)

いずれも他都市から子育て世代が転居してこない場合での推計です。子どもが増えなくても、保育を必要とする子どもの数が増えるのです。

そこでお尋ねします。

①府中町の待機児童数(128人)は、就学前児童数比で深刻な状況にあると考えますが、町としてどのようにお考えですか

②今後、府中町の保育需要はますます増え、現状ではとても対応できないと考えられますが、この点についても町の考えをお聞かせ下さい。

福祉保健部長
この二つの質問にまとめて答弁させて頂きます。
国が定義する待機児童につきましては、毎年4月1日と10月1日現在で、国に報告しておりますが、国に報告しました待機児童数は、10月1日現在で3名でございます。議員ご指摘の「9月1日現在の特定の園を希望している等の理由による潜在的な待機児童数は、128名」であり、町として対策が必要と受け止めております。

ここ数年の保育需要の増大については、女性の社会進出等による共働き家庭の増加等の社会的要因とともに、当町の就学前児童数が微増を続けていることも要因と考えております。
保育所の定員増については、平成27年度からは、5ケ年計画であります「府中町子とも・子育て支援事業計画」において計画的に進めているところでございます。

しかし、就学前児童数が、「府中町子ども・子育て支援事業計画」策定時の人口推計を上回る結果となっており、今年度、次年度以降の保育需要数の見直しを行い、子ども・子育て会議に諮ったところでございます。今後は、新しい需要数に沿った保育環境の整備を計画し保育事業を実施してまいりたいと考えております。

 

→3.南保育所廃止の経緯について

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